※本記事は、株式会社オークファンの有価証券報告書(第19期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オークファンってどんな会社?
膨大な売買データとAI技術を活用し、BtoB取引のDX化やD2Xコマースを推進する流通インフラ企業です。
■(1) 会社概要
同社は、2007年に株式会社デファクトスタンダード(現サークラックス)のメディア事業を新設分割して設立され、ネットオークションの価格比較サイト運営を開始しました。2013年に東証マザーズへ上場し、2015年にはBtoB卸モールを運営する株式会社NETSEAを子会社化しました。その後、2021年に株式会社スマートソーシングを吸収合併し、2022年の市場区分見直しにより東証グロース市場へ移行しました。直近では、2025年にD2Xコマース事業を本格化させています。
連結従業員数は163名(単体103名)です。筆頭株主は代表取締役社長の武永修一氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるS173株式会社です。創業社長が株式の約半数を保有するオーナー経営体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 武永 修一 | 39.92% |
| S173株式会社 | 9.03% |
| 水元 公仁 | 2.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は武永修一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 武永 修一 | 代表取締役社長 | 2004年にデファクトスタンダード(現サークラックス)を設立し代表取締役に就任。2007年の同社設立時より代表取締役社長を務める。複数の関連会社で役員を歴任し、現職。 |
| 石丸 啓明 | 取締役 | 2009年にエターメント監査役に就任。2019年に同社入社後、執行役員を経て、オークファンパートナーズ等の子会社代表取締役を歴任。2024年12月より現職。 |
| 海老根 智仁 | 取締役 | 1991年大広入社。オプト(現デジタルホールディングス)の代表取締役社長CEO、取締役会長等を歴任。モブキャスト等の取締役を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、牧野正幸(ワークスアプリケーションズ設立者・元代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソリューション事業」「プラットフォーム事業」および「インキュベーション事業」を展開しています。
■(1) ソリューション事業
商品価値の可視化・最適化を推進するソリューションを提供しています。主なサービスには、流通相場データを活用した『aucfan.com』、ネットショップ一元管理サービス『タテンポガイド』、RPAツール『オークファンロボ』、副業支援サービス『good sellers』などがあります。EC事業者や個人事業主などが主な顧客です。
収益源は、主に有料会員からの課金収入およびネット広告収入です。また、ツール利用料やスクール受講料なども収益となります。運営は主にオークファンが行っています。
■(2) プラットフォーム事業
企業の在庫・滞留商品等の流通を支援するマーケットプレイスを運営しています。主なサービスは、BtoB卸モール『NETSEA』、オフライン展示会『OSR展示商談会』、および中国生産商品のOEM自社ブランド販売を行う『AP LAB』などのD2Xコマースです。メーカーや卸売業者(サプライヤー)と小売店(バイヤー)が顧客です。
収益源は、流通金額に応じた手数料、サプライヤーからの月会費、出店料、および商品販売収益です。運営は、株式会社SynaBiz、オーエスアールネット株式会社、大阪船場流通マート株式会社などが行っています。
■(3) インキュベーション事業
事業投資および投資先企業の支援を行っています。中長期的な競合優位性の構築を目的とし、知見とネットワークの獲得を目指しています。また、将来の成長基盤となる新規事業の開発や、海外事業の展開もこのセグメントに含まれます。
収益源は、営業投資有価証券の売却益および投資先企業へのコンサルティング収益です。運営は、株式会社オークファンインキュベートなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年9月期から2024年9月期にかけて売上高は減少傾向にあり、利益面でも2025年9月期には経常赤字に転落しました。利益率は一桁台前半から中盤で推移していましたが、直近ではマイナスとなっています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 84億円 | 63億円 | 51億円 | 48億円 | 47億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 3億円 | 3億円 | 4億円 | -2億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 5.0% | 6.6% | 7.3% | -3.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 0.5億円 | 2億円 | -1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となり、売上総利益も減少しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業損益は赤字に転じています。売上原価率の上昇と販管費負担の増大が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 47億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.3% | 46.6% |
| 営業利益 | 4億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | -4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.1億円(構成比26%)、回収手数料が2.2億円(同9%)を占めています。売上原価においては、商品仕入や外注費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
ソリューション事業は増収増益となりましたが、プラットフォーム事業とインキュベーション事業は減収となり、特にインキュベーション事業は大幅な赤字を計上しました。プラットフォーム事業も赤字転落しており、主力事業の収益性低下が全体の業績悪化要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション | 26億円 | 28億円 | 6億円 | 6億円 | 22.2% |
| プラットフォーム | 17億円 | 16億円 | 1億円 | -1億円 | -6.2% |
| インキュベーション | 6億円 | 3億円 | 1億円 | -3億円 | -119.8% |
| 調整額 | -1億円 | -2億円 | -4億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 48億円 | 47億円 | 4億円 | -2億円 | -4.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持していますが、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で得た資金を借入返済や投資に充てている「健全型」に近い状態ですが、当期は赤字のため財務バランスには注意が必要です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 2億円 |
| 投資CF | -2億円 | -5億円 |
| 財務CF | 4億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「RE-INFRA COMPANY」をコーポレートアイデンティティと定義しています。社会に存在する様々な「RE(再構築・再定義・再流通など)」を統合し、唯一無二の流通インフラを構築することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、各サービスを利用する個人事業主や副業者などを「Appreciator(アプリシエイター)」と定義しています。「Appreciate」には「真価を認める」「感謝する」という意味があり、価値を見出し感謝できる人々が活躍できる社会の実現を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な企業価値向上を目指しており、現在は事業転換期にあるとして事業ポートフォリオの再構築を重要課題としています。既存事業の収益性改善や新規事業の収益化を進めることで、持続的な成長モデルへの転換を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「BtoB取引市場のDX化」に加え、「D2Xコマース」領域を新たな成長ドライバーと位置づけています。OEM自社ブランド「AP LAB」やライブコマース「NETSEA MallLive」への先行投資を進め、収益性の高い事業ポートフォリオの確立を目指しています。
* 既存事業の収益性・成長性等を評価し、リソースを将来性の高い領域へ集中配分
* D2Xコマース事業の商品供給体制や販売チャネルの最適化
* 海外事業戦略の再評価と重点領域の選定
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
優秀な人材の確保と定着を重要課題とし、性別や国籍を問わず多様な人材を採用しています。人事評価にコンプライアンス項目を設定し、意識の高い人材を重用する方針です。また、選択的時差出勤やリモートワーク制度など柔軟な働き方を支援し、職場定着率の向上と若手社員が挑戦できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 34.6歳 | 3.6年 | 5,464,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は、男性の育児休業取得率などを公表しています。なお、女性管理職比率や男女賃金差異については有価証券報告書に記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 女性管理職比率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 検索エンジン・インターネット広告への対応
同社サービスの利用者の多くは検索エンジンやネット広告経由で流入しています。検索エンジンのアルゴリズム変更等により検索順位が変動したり、広告配信が困難になったりした場合、集客数が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定のサービスへの依存
同社グループの収益は「NETSEA」等のマーケットプレイス収入に大きく依存しています(2025年9月期売上高の約35%)。法的規制や予期せぬ事象によりサイト運営が困難になったり、利便性が低下して利用者が減少したりした場合、経営成績に影響が出る可能性があります。
■(3) 海外の事業展開
中国を中心とした海外BtoB卸市場の開拓や越境EC事業を展開していますが、各国の政治・経済情勢、法規制の変更(輸出入管理や投資規制など)等のリスクが存在します。これらが顕在化した場合、海外事業の遂行や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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