アトラエ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アトラエ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、成功報酬型求人メディア「Green」や組織力向上プラットフォーム「Wevox」などのPeople Tech事業を展開しています。2025年9月期の業績は、売上高76億円(前期比0.1%減)と横ばいでしたが、当期純利益は12億円(前期比66.3%増)と大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社アトラエ の有価証券報告書(第22期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アトラエってどんな会社?


テクノロジーによって人の可能性を拡げる「People Tech」事業を軸に、求人メディアや組織改善サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2003年に設立され、2006年に成功報酬型求人メディア「Green」の提供を開始しました。2016年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2018年には市場第一部へ変更(2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行)を果たしています。2017年には組織力向上プラットフォーム「Wevox」をリリースするなど、HR領域での事業を拡大させてきました。

現在は連結子会社を持たず、単体で事業運営を行っています。従業員数は124名です。筆頭株主は創業者である新居佳英氏の資産管理会社である合同会社ラウレアで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。経営陣が主要株主として名を連ねており、オーナーシップを持った経営が行われています。

氏名 持株比率
合同会社ラウレア 29.96%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.79%
新居 佳英 6.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役CEOは新居佳英氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
新居 佳英 代表取締役CEO 1998年インテリジェンス入社。2000年インサイトパートナーズ代表取締役を経て、2003年同社設立。アルティーリ代表取締役CEO等を兼任し、現在に至る。
岡 利幸 取締役CTO 2007年同社入社。エンジニアとして開発を牽引し、2012年取締役CTOに就任。現在に至る。
鈴木 秀和 取締役CFO 2005年大和証券SMBC(現大和証券)入社。2018年同社入社、同年取締役CFO就任。アルティーリ取締役CFO等を兼任し、現在に至る。


社外取締役は、小笹留美子(元NTT社員)、戸塚隆将(シーネクスト代表取締役)、雪丸真吾(虎ノ門総合法律事務所弁護士)、森尚美(公認会計士)、波田野馨子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは「People Tech事業」の単一セグメントで、成功報酬型求人メディア「Green」や、組織力向上プラットフォーム「Wevox」を運営しています。

(1) Green(成功報酬型求人メディア)


「Green」は、IT・Web業界のエンジニアやデザイナー採用に強みを持つ求人メディアです。ビッグデータ解析を用いたレコメンド機能により、求職者と企業の最適なマッチングを実現しています。

料金体系は採用成功時に費用が発生する成功報酬型を採用しており、求人企業は初期費用以外の掲載料リスクを抑えて利用できます。運営は同社が行っています。

(2) Wevox(組織力向上プラットフォーム)


「Wevox」は、従業員のエンゲージメントを可視化し、組織改善を支援するSaaS型プラットフォームです。パルスサーベイと呼ばれる短いアンケートを定期的に実施することで、組織の状態をリアルタイムに把握できます。

導入企業から受け取る月額または年額のシステム利用料が主な収益源です。4,100社以上の組織で利用されており、運営は同社が行っています。

(3) 新規事業(Yentaほか)


ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」などを展開しています。「Yenta」は人工知能を活用してビジネスパーソン同士の出会いを創出するサービスです。

有料プランの利用料などが収益源となります。長期的な成長のために複数の新規事業開発に取り組んでおり、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は76億円から86億円の間で推移しており、直近の2025年9月期は微減となりました。一方で利益面では、経常利益率が10%台後半から20%台へと改善傾向にあります。特に直近では当期純利益が大きく伸長しており、収益性の向上が見られます。

項目 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 66億円 78億円 86億円 76億円
経常利益 11億円 9億円 15億円 18億円
利益率(%) 16.1% 11.9% 18.0% 23.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 3億円 7億円 12億円


※2025年9月期より連結財務諸表を作成していないため、2025年9月期は個別財務諸表の数値を記載しています。

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益率は高い水準を維持しています。販管費の抑制なども寄与し、営業利益率は改善しました。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 86億円 76億円
売上総利益 76億円 74億円
売上総利益率(%) 87.9% 96.7%
営業利益 17億円 19億円
営業利益率(%) 19.3% 24.3%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が29億円(構成比52%)、給与及び手当が7億円(同13%)を占めています。売上原価に関しては、外注費が1億円(構成比55%)、労務費が1億円(同38%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「People Tech事業」の単一セグメントで、サービスごとの利益は開示していません。主力の「Green」は売上が減少しましたが、「Wevox」は導入企業の増加により増収となり、事業ポートフォリオの多角化が進んでいます。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
Green 51億円 44億円
Wevox 24億円 32億円
新規事業 0.7億円 0.5億円
合計 76億円 76億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで稼いだ資金を自社株買いや配当による株主還元、および投資に充当しており、財務の健全性は保たれています。これは典型的な「健全型」のキャッシュ・フローと言えます。

項目 2025年9月期
営業CF 19億円
投資CF -5億円
財務CF -16億円


※2025年9月期は個別財務諸表ベースの数値です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョンを掲げています。社員が誇りを持てる組織と事業を創造し、関わる人々がファンとなるような会社を目指しています。また、「テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく」という想いを込め、自社を「People Tech Company」と再定義しています。

(2) 企業文化


同社は、出世を前提としたヒエラルキーの強いピラミッド型組織ではなく、フラットかつプロジェクト単位で柔軟に動ける組織運営を徹底しています。意欲ある社員が「働きがい」を感じられる組織創りを追求し、全社員に権利と責任を付与した自律分散型の組織運営を行っています。不必要な管理やルールを排除し、情報の透明性を高めることで、社員一人ひとりの経営者視点と当事者意識を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は継続的な事業拡大と企業価値向上のため、以下の指標を重要指標としています。

* 売上高
* 生産性(社員一人当たり売上高)

(4) 成長戦略と重点施策


既存の人材紹介サービスをテクノロジーで代替(リプレイス)し、HR領域における新たな市場創造を目指しています。具体的には、「Green」のシェア拡大を図るとともに、「Wevox」による組織改善支援、「Yenta」によるビジネスマッチングを推進しています。

* サービスの知名度向上(マスメディア広告の活用検討)
* 新規事業における収益拡大(WevoxやYentaの収益化)
* ビッグデータの有効活用(データ解析精度の向上)
* グローバル市場への進出(海外市場調査、英語コミュニケーションの導入)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀で意欲ある人材の採用、育成、定着を最重要事項と捉えています。特に新卒採用を中心とした組織創りを行い、価値観や人間性の一致を重視した厳選採用を実施しています。若い社員が高い柔軟性と技術キャッチアップ力を発揮できるよう、フラットな組織で権限委譲を進め、長期的に高いエンゲージメントを持って活躍できる環境を提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.0歳 4.6年 7,143,000円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び持株会奨励金を含め、譲渡制限付株式及びストック・オプションによる株式報酬費用は除いております。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) Greenへの依存


同社の売上高の約6割は「Green」によるものです。Wevoxや新規事業の収益化を進めていますが、依然として依存度は高い状況にあります。新規事業の成長が計画通りに進まない場合や、Greenの売上が変動した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合企業との競争激化


人材サービス業界は参入障壁が低く、多くの競合が存在します。同社はテクノロジー活用による差別化を図っていますが、若手テック企業の台頭や海外企業の参入、大手人材会社が労働集約型からテック型へ転換した場合など、競争環境の変化により優位性が低下する可能性があります。

(3) システムのリスク


全サービスをインターネット経由で提供しており、売上計上もシステムで自動化されています。大規模なプログラム不良、自然災害、不正アクセス等によりシステム障害が発生した場合、サービスの停止や売上処理の不具合が生じ、業績や信用に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。