テモナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テモナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場企業です。EC事業者向けにサブスクリプションビジネス支援に特化したシステムやサービスを提供するEC支援事業を主力としています。当連結会計年度の業績は、売上高が微増し、営業損益および経常損益が黒字転換するなど、収益性の改善が見られる増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、テモナ株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テモナってどんな会社?


サブスクリプションビジネスに特化したEC支援サービスを展開し、SaaS型のシステム提供で安定収益を積み上げる企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年に設立され、2009年にリピート通販専用WEBサービス「たまごカート(現たまごリピート)」を開始しました。2017年に東証マザーズへ上場し、2019年には東証一部へ市場変更を果たしています。その後、2022年の東証プライム市場を経て、2023年に東証スタンダード市場へ移行しました。直近では2024年11月にサブスクソリューションズを設立し、フィンテック分野へも進出しています。

同社グループの従業員数は連結で115名、単体で69名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業者である佐川隼人氏の資産管理会社であるgatz、第2位は佐川隼人氏本人となっており、創業者の影響力が強い体制です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社gatz 35.05%
佐川隼人 23.01%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は本多渉氏が務めています。社外取締役比率は約71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
佐川 隼人 代表取締役会長 2000年平成コンピュータ入社。2008年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2025年10月より現職。日本サブスクリプションビジネス振興会代表理事も務める。
本多 渉 代表取締役社長 2002年ワークスアプリケーションズ入社。2018年同社入社後、執行役員として事業本部を牽引。2021年取締役兼執行役員COOを経て、2025年10月より現職。


社外取締役は、内藤真一郎(元ファインドスター代表取締役)、荻原猛(元ソウルドアウト代表取締役社長)、岡田理(元日立建機取締役監査委員長)、板倉奈緒子(板倉公認会計士事務所代表)、柗田由貴(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「EC支援事業」「エンジニアリング事業」「フィンテック事業」を展開しています。

EC支援事業


サブスクリプションビジネスに特化したECサイト構築システム「サブスクストア」や「たまごリピート」などを提供するほか、集客、顧客対応、物流などの運営支援サービスも行っています。BtoC事業者向けだけでなく、BtoB向けの「サブスクストアB2B」やリアル店舗向けの「サブスクアット」も展開し、幅広い業態に対応しています。

収益は、主にシステムを利用するEC事業者からの月額利用料(リカーリング収益)および決済手数料(GMV連動収益)から成り立っています。また、カスタマイズ対応による受託開発収益も得ています。運営は主にテモナが行っており、子会社のAISもWeb制作受託などで関与しています。

エンジニアリング事業


システム開発の受託サービスや、顧客企業に対してソフトウェアエンジニアのスキルを提供するシステムエンジニアリングサービス(SES)を行っています。顧客のシステム開発ニーズに応じた技術支援や開発リソースの提供が主な業務です。

この事業の収益源は、顧客企業からのシステム開発受託料やエンジニアリングサービスの対価です。運営は連結子会社であるサックルが担っています。

フィンテック事業


サブスクリプションビジネスに関連したファイナンスサービスを提供しています。具体的には、サブスク型ファイナンスサービスであるサブスククレジット等のサービスを展開し、事業者の資金繰りや決済面での支援を行っています。

収益源は、金融サービスの提供に伴う手数料収入などが主となります。この事業は、2024年11月に設立された連結子会社のサブスクソリューションズが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は一定の水準を維持しつつ推移していますが、利益面では変動が見られます。過去には赤字を計上する期間もありましたが、当期においては経常利益および当期利益ともに黒字転換を果たしており、収益性の改善が進んでいることがうかがえます。

項目 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 23億円 23億円 18億円 18億円
経常利益 -1.9億円 -0.8億円 -0.6億円 1.5億円
利益率(%) -8.6% -3.3% -3.2% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.8億円 -1.3億円 -3.9億円 0.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は横ばいですが、売上原価の減少により売上総利益が増加しています。さらに、販売費及び一般管理費が大きく圧縮されたことで、営業損益が前期の赤字から当期は黒字へと大きく改善しました。コスト構造の見直しや生産性向上の取り組みが利益面での回復に寄与している様子が見て取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 18億円 18億円
売上総利益 9億円 10億円
売上総利益率(%) 51.3% 53.3%
営業利益 -0.6億円 1.6億円
営業利益率(%) -3.1% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比37%)、支払手数料が1億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


EC支援事業は減収となったものの、利益面では黒字転換し収益性が向上しています。一方、エンジニアリング事業は増収となり、利益もしっかり確保しています。新設されたフィンテック事業は立ち上げ期のため損失となっていますが、全体としては主力のEC支援事業の収益改善が連結業績の黒字化を牽引しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
EC支援事業 15億円 14億円 -0.4億円 1.6億円 11.4%
エンジニアリング事業 3.6億円 4.1億円 -0.1億円 0.2億円 5.7%
フィンテック事業 - 0.1億円 - -0.3億円 -433.9%
調整額 - - -0.1億円 0.0億円 -
連結(合計) 18億円 18億円 -0.6億円 1.6億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラスであり、本業で現金を稼ぐ力が回復しています。投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなっていますが、これは敷金等の回収による収入が固定資産取得支出を上回ったためです。財務活動によるキャッシュ・フローもプラスで、長期借入による資金調達を行っています。営業CFと資金調達に加え、資産の動き等も含めて資金を確保し、事業の転換や基盤強化を進めている「再建・転換型」の状況と言えます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 0.3億円 2.2億円
投資CF -1.2億円 0.1億円
財務CF -2.0億円 0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「サブスクで世の中を豊かに」をパーパスとして掲げています。ストック型のビジネスモデルであるサブスクリプションビジネスを普及させることにより、事業者が価値の高いサービスを提供し続け、人々の満足を追求することで、豊かな世の中の実現を目指しています。また、サブスクリプションビジネスの成功に欠かせない「サブスク総合支援企業」を目指しています。

(2) 企業文化


同社はパーパスの実現に向け、社員が体現すべき「9つの行動指針」を定めています。これには「強みを作ってとがらせる」「なぜなぜ思考を深める」「スピーディーに行動する」「変化と失敗を恐れずチャレンジする」「相手の期待値を超える行動をする」「みんなのためにぶっちゃけ合う」「当事者として取り組む」「ポジティブを伝播する」「利他的に行動する」が含まれます。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的な事業拡大と企業価値向上のため、売上高、営業利益及び経常利益を重視しています。また、投資対効果を適切に図る観点から、以下の指標により経営上の目標達成状況を判断しています。

* 1人当たり売上高:2,000万円
* 売上高営業利益率:20%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存領域での着実な成長として、SaaS機能の拡充や保守体制の強化に加え、広告・物流なども含めた総合支援を推進します。また、新規事業としてサブスククレジット等のフィンテック事業への投資による事業規模拡大を図ります。さらに、他企業との業務提携やM&Aの活用、技術革新への対応も進め、持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、高い専門性を有する人材の獲得と能力向上が成長に不可欠と考えています。性別や国籍等を問わない人物本位の採用を行い、多様な視点や価値観を尊重する方針です。また、実力・能力主義の報酬体系や教育研修制度の充実、業務効率化、フレックス制度やリモートワーク(週3日出社)などの環境整備を通じて、人材の拡充と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.1歳 4.4年 5,342,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規) 87.9%
男女賃金差異(非正規) -


※女性管理職比率および男性育児休業取得率については、女性活躍推進法に基づく情報公開項目として「採用した労働者に占める女性労働者の割合」「年次有給休暇の取得率」を選択しているため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用に占める女性労働者の割合(0%)、社員の有休消化率(70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ビジネスモデルに関するリスク

同社グループは、インターネット環境の進化とEC市場の拡大を前提に事業を展開しています。新たな法的規制の導入や技術革新の停滞、通信コストの改定などによりインターネット市場の発展が阻害された場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) EC市場の動向

EC市場の拡大を想定していますが、法規制の強化やトラブル発生等により市場発展が期待通りに進まない場合、業績に影響が出る可能性があります。また、多くの企業が参入しているため、差別化や機能向上が十分に行えない場合や競争が激化した場合には、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) システムおよび情報管理

サービスは通信ネットワークとコンピュータシステムに依存しており、不正アクセスや自然災害等によるシステム障害が発生した場合、信用低下や損害賠償につながる可能性があります。特に2025年10月には一部サーバーへの不正アクセス痕跡が確認されており、情報管理体制の強化が重要課題となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。