※本記事は、株式会社ツナググループ・ホールディングス の有価証券報告書(第19期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ツナググループ・ホールディングスってどんな会社?
アルバイト・パートを中心とした採用代行(RPO)やDXリクルーティング、人材派遣・紹介サービスを展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
2007年に株式会社ツナグ・ソリューションズとして設立され、アルバイト・パート専門のコンサルティングを開始しました。2017年に東証マザーズへ上場し、2019年には持株会社体制へ移行して現社名へ変更しました。2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しています。2024年にはNISSOホールディングスとの資本業務提携を行い、事業領域を拡大しています。
連結従業員数は511名、単体では386名です。筆頭株主は、資本業務提携先であり人材サービスを展開するNISSOホールディングスです。第2位は創業者の米田光宏氏、第3位は同氏の資産管理会社である株式会社米田事務所となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NISSOホールディングス | 18.81% |
| 米田 光宏 | 5.26% |
| 米田事務所 | 5.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は米田光宏氏が務めています。なお、取締役5名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 米田 光宏 | 代表取締役社長 | 1993年リクルートフロムエー(現リクルート)入社。2007年同社設立し代表取締役社長就任。2021年代表取締役社長兼CEOを経て、2024年12月より現職。 |
社外取締役は、多田斎(元だいこう証券ビジネス社長)、六川浩明(弁護士)、中江康人(AOI TYO Holdings代表取締役)、藤野賢治(日総工産代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヒューマンキャピタル事業」、「スタッフィング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ヒューマンキャピタル事業
企業の採用活動を支援するRPO(採用代行)、IT技術を活用したDXリクルーティング、求人メディアサービスなどを提供しています。主な顧客は多店舗展開する小売・飲食業や、製造・物流・医療業界の大手企業です。特にRPOでは採用手法の選定から面接設定までをワンストップで代行し、応募数向上やコスト削減を実現しています。
収益は、顧客企業からの業務委託料やシステム利用料、広告掲載料などから得ています。運営は主に、株式会社ツナグ・マッチングサクセスおよび株式会社ツナグ・ソリューションズが行っています。DX領域では「Findin」などの自社サービスを展開し、オウンドメディアへの集客支援も行っています。
■(2) スタッフィング事業
倉庫・物流・製造業界を中心とした人材派遣および日々紹介、医療・看護業界向けの人材紹介を行っています。また、派遣スタッフの研修店舗を兼ねたコンビニエンスストアの運営も行っています。これにより、人材の募集から育成、派遣までを一貫して提供できる体制を構築しています。
収益は、顧客企業からの派遣料や紹介手数料、およびコンビニ店舗の売上などから得ています。運営は、日総工産との合弁会社である株式会社LeafNxT、株式会社ツナググループ・コンサルティング、および株式会社チャンスクリエイターが行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、本社部門が所管するその他の収益獲得活動などを行っています。
収益は、グループ外へのサービス提供等によるものです。運営は主に同社(ツナググループ・ホールディングス)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、コロナ禍以降の人材需要回復を取り込んでいます。利益面では、2021年9月期は損失を計上しましたが、その後はV字回復を果たし、直近では利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 110億円 | 127億円 | 150億円 | 164億円 | 183億円 |
| 経常利益 | -1.0億円 | 2億円 | 4億円 | 6億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | -0.9% | 1.7% | 3.0% | 3.8% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | 4億円 | -0.1億円 | 4億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は43.6%と高い水準を維持しており、営業利益率も前年から改善しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 164億円 | 183億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.7% | 43.6% |
| 営業利益 | 6億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が27億円(構成比38%)、給与及び賞与が18億円(同25%)を占めています。売上原価においては、具体的な費目別の金額記載はありませんが、人材サービス特有の媒体費や外注費などが含まれていると考えられます。
■(3) セグメント収益
主力のヒューマンキャピタル事業が売上・利益ともに伸長し、全社の業績を牽引しています。スタッフィング事業も増収となりましたが、利益面では損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヒューマンキャピタル事業 | 125億円 | 139億円 | 13億円 | 18億円 | 13.2% |
| スタッフィング事業 | 39億円 | 44億円 | -1億円 | -1億円 | -2.7% |
| その他 | 0.0億円 | 0.3億円 | -5億円 | -8億円 | -2511.3% |
| 調整額 | -8億円 | -3億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 164億円 | 183億円 | 6億円 | 9億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスであることから「改善型」です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 11億円 |
| 投資CF | -4億円 | 0.5億円 |
| 財務CF | -1億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.2%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは企業理念として「つなぐ、つなげる、つながる。」を掲げ、経営理念として「採用市場のインフラになる」を目指しています。労働力不足という社会課題に対し、多様な人々が働く機会を得られるよう支援し、社会全体の労働需給ギャップ解消に貢献することを目的としています。
■(2) 企業文化
従業員一人ひとりの継続的な成長を支援することが社会課題解決につながるという考えのもと、ダイレクトコミュニケーションを重視する文化があります。従業員の声を経営に反映させるエンゲージメント調査や、優れた取り組みを表彰・共有する「TSUNAGU GROUP AWARD」などを通じ、自発的な貢献意欲を高める風土醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2030年に予測される年間約50億時間の労働需給ギャップの解消を喫緊の課題と捉え、その解決に向けた事業推進を目標としています。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、この社会課題解決への貢献度合いを成長の指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
労働市場の複雑化に対応するため、RPO事業ではコンサルティング領域を強化し、外国人材やアルムナイ(退職者)支援などの循環型採用モデル構築を目指します。DXリクルーティング事業では、自社採用サイトへの集客型サービス「Findin」を中心に、多様化するWeb集客手法を取り入れます。
また、スタッフィング事業においては、従来の倉庫・物流に加え、医療・介護領域への展開を進め、即戦力人材の安定供給を図ります。NISSOホールディングスとの提携など、外部パートナーとの協業も積極的に推進し、事業領域の拡大とサービスの質的向上に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自己変革を実行できる人的資本強化」をマテリアリティの一つに掲げ、採用・育成・制度・風土の4領域で施策を推進しています。新卒採用からのリーダー輩出を目指すとともに、ジョブ型等級制度や目標管理制度(MBO)により、年齢や性別に関係なく能力と成果を公平に評価する仕組みを整えています。また、選択型福利厚生制度の導入など、多様な働き方を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 37.2歳 | 8.9年 | 4,224,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.4% |
| 男性育児休業取得率 | 36.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 81.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、受講者数(延べ2,124人)、研修費時間(17,494時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新に関するリスク
DXリクルーティング領域などにおいて、インターネット・IT技術を基盤とした事業を行っています。技術革新や業界標準の変化が激しいため、新技術への対応遅れや、システム改修に多額の費用が発生した場合、または新サービスの品質確保が困難となった場合、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 新規事業展開に伴うリスク
新サービスの開発、他社との提携、M&Aなどを通じて積極的に事業を拡大しています。しかし、環境変化により計画通りに進捗しない場合や、M&A後に予期せぬ債務が発覚した場合、関係会社株式の評価損やのれんの減損処理などが発生し、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 個人情報及び機密情報の取扱いに関するリスク
事業において多数の求職者の個人情報を扱っているため、情報漏洩や不正使用が発生した場合の影響は甚大です。管理体制を強化していますが、万が一こうした事態が生じた場合、損害賠償請求や社会的信用の低下により、事業運営に重大な支障をきたす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。