※本記事は、大阪油化工業株式会社 の有価証券報告書(第64期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大阪油化工業ってどんな会社?
精密蒸留技術を核として、化学品の受託加工や研究開発支援、プラントエンジニアリングを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1949年に大阪油化工業所として創業し、1962年に大阪油化工業株式会社を設立しました。1963年に独自設計の減圧蒸留装置を設置して以来、技術力を蓄積し、2017年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。近年では2019年に子会社ユカエンジニアリングを設立、2021年に株式会社カイコーを子会社化するなど体制を強化しています。
連結従業員数は52名、単体では41名です。筆頭株主はエルアール株式会社で、第2位は同社代表取締役社長CEOの堀田哲平氏、第3位は個人株主の森田成之氏です。エルアール株式会社は直近で新たに主要株主となりました。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エルアール株式会社 | 34.25% |
| 堀田 哲平 | 22.80% |
| 森田 成之 | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名(監査等委員)の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは堀田哲平氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀田 哲平 | 代表取締役社長CEO | 2003年マスミューチュアル生命保険入社。2006年同社専務取締役、2014年代表取締役社長を経て、2025年12月より現職。 |
| 野村 直樹 | 取締役専務執行役員製造部長兼工場長COO | 2001年同社入社。製造課課長、副工場長、取締役製造部長兼工場長、専務取締役を経て、2025年12月より現職。 |
| 戸村 吉裕 | 取締役常務執行役員技術営業部長 | 日本油脂(現日油)入社。同社大阪支社化成品営業部長等を歴任後、シンコールケミカル・ターミナルを経て2021年同社入社。2025年12月より現職。 |
社外取締役は、本田佳人(元株式会社アイフラッグ管理本部長)、金川正(元株式会社りそな銀行内部監査部上席マスター監査員)、橋森正樹(橋森・幡野法律会計事務所代表弁護士)、中辻洋司(大阪工業大学特任教授)、宮宇地景子(宮宇地公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「受託蒸留事業」および「プラント事業」を展開しています。
■(1) 受託蒸留事業
創業以来培ってきた技術と経験を基に、顧客から預かった原料を同社の蒸留装置にて分離・精製し、製品として提供する受託加工を行っています。また、基礎研究段階から製造規模までのデータ収集や最適な蒸留方法の提案など、研究開発支援も行っています。主な顧客は、電子材料、医薬品、化粧品、自動車等のメーカーです。
収益は、顧客からの受託加工費や研究開発支援費によって構成されています。運営は主に大阪油化工業が行っており、顧客の最終製品の価値向上に貢献しています。
■(2) プラント事業
顧客が自社で蒸留を行うための蒸留装置および工場排水処理等のろ過装置を取り扱っています。同社設備での試験データに基づいた装置の設計・販売に加え、実際の運転時の技術支援や生産体制確立のためのコンサルティングも行っています。
収益は、装置の設計・製造・販売代金および納入後の保守サービス料から得ています。運営は、同社グループのユカエンジニアリング株式会社が行っています(なお、株式会社カイコーは2025年10月にユカエンジニアリング株式会社に吸収合併されています)。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年9月期から2025年9月期までの業績を見ると、売上高は10億円から12億円前後で推移しています。2024年9月期に売上が一時的に落ち込み利益も低迷しましたが、2025年9月期には売上高が回復し、利益面でも改善傾向が見られます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12.2億円 | 11.8億円 | 12.4億円 | 9.9億円 | 11.8億円 |
| 経常利益 | 1.3億円 | 1.4億円 | 1.1億円 | 0.2億円 | 1.4億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 11.9% | 9.0% | 2.0% | 11.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.3億円 | 1.2億円 | -0.8億円 | -0.6億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、当期は大幅な増収増益となりました。売上高は約2割増加し、それに伴い売上総利益率も改善しています。営業利益率も大きく向上しており、本業の収益力が回復しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9.9億円 | 11.8億円 |
| 売上総利益 | 4.1億円 | 5.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.1% | 48.5% |
| 営業利益 | 0.2億円 | 1.4億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 11.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.0億円(構成比22%)、支払手数料が0.7億円(同17%)を占めています。売上原価については、労務費や経費が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
受託蒸留事業は、半導体・電子材料向けの需要回復や資源・エネルギー関連の案件増加により増収となりました。一方、プラント事業は案件の長期化による期ずれの影響で減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 受託蒸留事業 | 8.7億円 | 11.0億円 |
| プラント事業 | 1.1億円 | 0.8億円 |
| 連結(合計) | 9.9億円 | 11.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがマイナスであり、本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.5億円 | 2.1億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | -0.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.8%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社業を通じ、豊かな価値を創造し、社会の発展に貢献する」という経営方針を掲げています。この方針に基づき、顧客のニーズに機敏に対応し、業績の向上に努めています。
■(2) 企業文化
同社は、「精密蒸留・精製という社業を通じ、豊かな価値を創造し、社会の発展に貢献します」というCSR基本方針を持っています。また、競争力の源泉は人材にあるとし、専門性を高める技術研修や安全指導、勤務環境の整備等へ積極的に投資する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中長期的な成長力・収益力の強化の観点から、重視する経営指標として以下の項目を掲げています。
* 売上高
* 営業利益
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長に向けて、人材育成、既存事業の強化、新規事業の拡大、経営管理体制の強化に取り組んでいます。特に、設備新設による生産能力増強や、「受託蒸留事業」から「プラント事業」までの一貫したサービス提供によるソリューション提案力の強化に注力しています。
* 人材の採用及び育成への積極的な投資
* 受託蒸留事業における設備新設と周辺サービスへの展開
* プラント事業の認知度向上とメンテナンス体制の充実
* 権限委譲による意思決定の迅速化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を競争力の源泉と位置づけ、自主性を尊重した育成を行っています。ワークライフ・バランスを重視し、長時間労働の撲滅や有給休暇の取得を推進しています。また、60歳定年後も70歳までの継続雇用制度を導入するなど、多様な働き方の両立を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.7歳 | 10.4年 | 5,842,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均所定時間外労働(8.6時間)、年次有給休暇取得率(93.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の採用及び育成
同社グループは少人数で業務を遂行しており、専門性の高い人材が競争力の源泉です。今後の事業拡大に伴い人材の採用や技術承継が計画通りに進まなかった場合、あるいは既存の人材が流出した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 災害の発生
生産拠点は枚方工場のみであるため、同拠点において地震や火災などの大規模な災害が発生した場合、操業に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。BCPの策定や耐震対策を進めていますが、リスクを完全に排除できるものではありません。
■(3) 特定販売先への依存
売上高の一定割合を特定の大口顧客(ダウ・東レ株式会社、住友商事ケミカル株式会社など)に依存しています。これら主要顧客の方針変更により取引が終了または大幅に縮小された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 新規事業の展開
成長戦略の一環として「プラント事業」の育成を進めていますが、市場分析やサービス開発に時間を要したり、計画通りに進捗しない可能性があります。新規事業が軌道に乗らず収益化できない場合、投資コストが負担となり業績に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。