香陵住販 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

香陵住販 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。茨城県および東京都において、不動産の売買・賃貸仲介、賃貸管理を主軸とする総合不動産企業です。第44期は、主力である自社企画投資用不動産の販売が好調に推移したほか、管理戸数の増加によりストック収益も伸長し、売上高・各利益ともに増収増益を達成しました。


#記事タイトル:香陵住販転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、香陵住販株式会社 の有価証券報告書(第44期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 香陵住販ってどんな会社?


茨城県水戸市を拠点に、不動産流通事業と管理事業を展開する地域密着型の総合不動産企業です。

(1) 会社概要


1981年に茨城県水戸市で設立され、1988年には自社企画投資用不動産「フォーライフ水戸」を商品化しました。その後、茨城県内を中心に店舗網を拡大し、2018年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場を果たしました。2021年には不動産特定共同事業法の許可を取得し、ファンド事業も開始しています。2024年には茨城県守谷市に支店を開設するなど、エリア拡大を進めています。

連結従業員数は240名、単体では232名です。筆頭株主は創業者の薄井宗明氏で、第2位は役員の菅原敏道氏です。第3位のフラクタル・ビジネスは、薄井氏およびその近親者が議決権の過半数を所有する資産管理会社と推測されますが、有価証券報告書上の記述からは詳細は確認できません。

氏名 持株比率
薄井 宗明 33.73%
菅原 敏道 7.71%
フラクタル・ビジネス 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は金子 哲広氏が務めています。社外取締役比率は8.3%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 哲広 代表取締役社長 1998年同社入社。各営業本部長や常務取締役を経て、2023年12月より現職。
薄井 宗明 代表取締役会長 1981年同社設立、代表取締役就任。2023年12月より現職。
菅原 敏道 専務取締役第一営業本部長 1987年同社入社。常務取締役、PM事業本部長などを経て、2025年10月より現職。ジャストサービス代表取締役も兼任。
神長 春美 取締役第三営業本部長 1997年同社入社。つくば研究学園支店長、第四営業本部長、第一営業本部長などを経て、2024年10月より現職。
中野 大輔 取締役財務管理本部長 1999年同社入社。経営企画部長、執行役員経営管理部長、経営管理本部長を経て、2025年10月より現職。
須能 享 取締役第二営業本部長 2003年同社入社。上野駅前支店長、執行役員東京支社長などを経て、2020年12月より現職。
菊池 秀一 取締役不動産開発事業本部長 2003年同社入社。水戸第二ブロック長、KASUMIC代表取締役、第四営業本部長などを経て、2025年10月より現職。
鳴尾 嘉人 取締役経営戦略本部長 2012年同社入社。ソリューション事業部統括部長、第三営業本部長、第一営業本部長などを経て、2025年10月より現職。


社外取締役は、加藤 雅之(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産流通事業」「不動産管理事業」を展開しています。

(1) 不動産流通事業


賃貸不動産および売買不動産の仲介業務を行うほか、仕入不動産商品や自社企画投資用不動産の販売を行っています。仕入不動産商品は土地や中古住宅をリノベーションして販売し、自社企画投資用不動産「レーガベーネ」シリーズは用地取得から企画、建設、入居者募集までを行い、投資家へ販売しています。

収益源は、仲介業務における仲介手数料や、不動産販売による売上代金です。また、不動産ファンド事業などの取り組みも行っています。運営は主に香陵住販が行っています。

(2) 不動産管理事業


賃貸不動産の管理業務(プロパティマネジメント)として、賃料収納、契約更新、保守メンテナンス、入居者管理などを行っています。また、同社グループ保有不動産の賃貸やコインパーキング事業、自社所有の太陽光発電設備による売電事業も展開しています。

収益源は、物件オーナーからの管理委託手数料、賃貸物件の賃料、コインパーキング利用料、および電力会社への売電収入などです。運営は香陵住販および子会社のジャストサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに増加基調を維持しており、特に直近の第44期では売上高・利益ともに過去最高水準に達しています。利益率も安定して高い水準を保っており、成長性と収益性を両立した経営が続いています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 78億円 87億円 93億円 100億円 115億円
経常利益 6億円 8億円 9億円 10億円 10億円
利益率(%) 8.1% 9.1% 9.2% 9.8% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 5億円 6億円 7億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は若干低下していますが、営業利益および営業利益率は前年を上回る水準を確保しています。販管費も増加していますが、売上の伸びがそれを上回っており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 100億円 115億円
売上総利益 39億円 41億円
売上総利益率(%) 38.9% 35.8%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 10.0% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比42%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産流通事業は、自社企画投資用不動産「レーガベーネ」シリーズの販売や大型土地の売却等が寄与し、売上・利益ともに増加しました。不動産管理事業も、管理戸数の増加やコインパーキングの稼働率向上、自社物件の賃料収入増により、売上高は増加しています。全社的な増収が利益拡大につながっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
不動産流通事業 74億円 86億円 8億円 9億円 10.2%
不動産管理事業 26億円 30億円 10億円 10億円 32.8%
その他 - - - - -
調整額 - - - - -
連結(合計) 100億円 115億円 10億円 11億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「救済型」です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -7.1億円 -6.5億円
投資CF 0.1億円 5.5億円
財務CF 10.8億円 1.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様満足度」の向上、「働く私たちの幸福」の追求、および「社会との調和を重んじ地域発展に貢献するとともに、関係する人々に信頼される企業」を目指すことを企業理念に掲げています。より質の高い不動産商品作りと幅広い提案力によって地域社会の発展に貢献し、地域で愛される企業となることを経営の方針としています。

(2) 企業文化


同社は、地域に根ざした営業活動を重視しており、エリアの店舗を中心とした顧客との関係構築や情報収集を大切にしています。また、企業の社会的責任やSDGsへの取り組み、コンプライアンスの強化など、信頼性を重視する文化を持っています。さらに、従業員の幸福追求を理念に掲げ、働きがいのある職場環境づくりにも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「永遠に続く会社」であるために、持続的な成長とストックビジネスの強化による安定収益の拡大を重要視しています。
* 自己資本比率:30%以上を維持し、40%を目指す
* ROE(自己資本利益率):10%以上を維持
* 株主還元:株主資本配当率(DOE)2.8%以上を目標とし、累進配当を実施
* 中期経営計画「KORYO2027」最終年度目標(上方修正後):売上高130億円以上、営業利益13.0億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、不動産売上高への過度な依存を避けつつ、売上高の拡大と安定収益の積み上げによる利益率向上を目指しています。具体的には、自社企画投資用不動産「レーガベーネ」の強化、ドミナント出店による市場占有率の向上、IT技術の活用によるDX推進などを重点施策としています。また、多角的な提案営業による空き家・遊休地活用や、サステナビリティ経営の推進にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業エリアの拡大に伴い、専門性を有した人材の育成と確保が必要であると考えています。資格取得支援の拡充や社内外の研修への参加を促進し、プロフェッショナルな人材を育成することを目指しています。また、女性管理職比率の向上や、育児・介護と仕事の両立支援など、多様な人材が活躍できる社内環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 40.0歳 9.4年 6,226,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 52.7%
男女賃金差異(正規雇用) 78.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(2027年9月までに17%以上)、育休取得率目標(2027年9月までに女性100%、男性30%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


不動産売上高と仲介事業収益は、景気、金利、地価、税制等の外部要因の影響を強く受けます。景気悪化や金利上昇、不動産投資への融資姿勢の変化等により顧客の売買意欲が減退した場合、同社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合の激化


不動産流通・管理事業は参入障壁が低く、競合他社の新規参入やエリア拡大により競争が激化する可能性があります。特に、ドミナント戦略を展開する水戸・ひたちなかエリアにおいて他社が勢力を強めた場合や、新エリアでの展開が進まない場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 有利子負債への依存と金利変動


不動産商品の仕入れや設備投資により有利子負債比率が高くなる傾向にあります。棚卸資産の回転期間短縮等で財務安定を図っていますが、新たな開発資金の借り入れ時などに金融機関の融資姿勢の変化や金利上昇が生じた場合、経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 販売用不動産の仕入れ及び工事原価


不動産売上高の構成要素である土地・中古住宅や自社企画投資用不動産の商品化において、建築費の高騰や資材価格の上昇、または災害等による工事原価の上昇が発生した場合、利益率が低下し、同社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。