※本記事は、HENNGE株式会社 の有価証券報告書(第29期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. HENNGEってどんな会社?
クラウドサービスのセキュリティ対策「HENNGE One」を主力とするSaaS企業です。
■(1) 会社概要
1996年に設立され、1997年にLinuxサーバ管理ツールの販売を開始しました。2011年よりSaaS販売に注力し、主力サービスの基盤を築きました。2019年にHENNGEへ商号変更するとともに東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2025年には米国に子会社を設立し、グローバル展開を加速させています。
連結従業員数は390名(単体378名)です。筆頭株主は創業者の小椋一宏氏で、第2位は同じく創業メンバーで副社長の宮本和明氏です。第3位も創業メンバーで副社長の永留義己氏であり、経営陣が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小椋 一宏 | 24.33% |
| 宮本 和明 | 11.22% |
| 永留 義己 | 10.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は小椋一宏氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小椋 一宏 | 代表取締役社長 | 有限会社ホライズン・デジタル・エンタープライズ(現同社)設立、代表取締役社長就任。2018年よりクラウド・プロダクト・ディベロップメント・ディビジョン担当執行役員を兼務し現職。 |
| 宮本 和明 | 代表取締役副社長 | 有限会社ホライズン・デジタル・エンタープライズ(現同社)入社、代表取締役副社長就任。2023年よりインターナル・DX・ディビジョン担当執行役員を兼務し現職。 |
| 永留 義己 | 取締役副社長 | 有限会社ホライズン・デジタル・エンタープライズ(現同社)入社、取締役副社長就任。2022年よりプロダクト・プランニング・アンド・リサーチ・ディビジョン担当執行役員を兼務し現職。 |
| 天野 治夫 | 取締役副社長 | 同社入社、ビジネス・アドミニストレーション・ディビジョン担当執行役員兼ディビジョン統括等を経て、2020年取締役副社長就任。 |
| 後藤 文明 | 取締役(監査等委員/常勤) | アライドテレシス入社、ゴンゾ執行役員CFO、モンスター・ラボ取締役副社長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、髙岡美緒(元マネックスグループ執行役員)、加藤道子(ウーブン・キャピタルパートナー)、早川明伸(弁護士法人トラスト代表弁護士)、小内邦敬(Ebisu税理士法人代表パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「HENNGE One事業」および「プロフェッショナル・サービス及びその他」事業を展開しています。
■(1) HENNGE One事業
企業が利用する様々なクラウドサービスに対して横断的に、セキュアなアクセスとシングルサインオンを実現する「HENNGE One」を提供しています。アクセス制御などのID管理、誤送信対策などの情報漏洩対策、標的型攻撃対策などの機能を備え、企業のクラウド導入を支援しています。
収益は、顧客企業から受け取る年額のサービス利用料(サブスクリプション)です。契約更新時に解約されない限り売上が積み上がるリカーリング・レベニューモデルを採用しています。運営は主にHENNGEが行い、台湾および米国の連結子会社も販売を担っています。
■(2) プロフェッショナル・サービス及びその他事業
企業向けに、大量のメールを高速かつ確実に配信するクラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」などを提供しています。なりすましメール対策や送信ドメイン認証に対応し、企業のシステムからネットワーク経由で利用できる仕組みを構築しています。
収益は、サービスを利用する企業からの利用料等です。運営はHENNGEが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近の第29期は売上高が100億円を突破し、経常利益も前期比で大幅に伸長しました。利益率も年々向上しており、高い収益性を維持しながら規模を拡大させています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 56億円 | 68億円 | 84億円 | 109億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 5億円 | 7億円 | 10億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 8.0% | 10.5% | 12.0% | 17.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 5億円 | 8億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は80%台後半という高い水準を維持しており、SaaSビジネス特有の高い収益構造が見て取れます。営業利益率も前期より大幅に改善しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 109億円 |
| 売上総利益 | 70億円 | 94億円 |
| 売上総利益率(%) | 84.1% | 86.5% |
| 営業利益 | 10億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 12.1% | 16.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が18億円(構成比23.5%)、広告宣伝費が10億円(同12.6%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のHENNGE One事業が順調に拡大し、全社売上の大部分を占めています。プロフェッショナル・サービス及びその他事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| HENNGE One事業 | 77億円 | 103億円 |
| プロフェッショナル・サービス及びその他事業 | 6億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 84億円 | 109億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュを元に借入金の返済や自己株式の取得を進めつつ、成長投資も行っている健全型です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 27億円 |
| 投資CF | -0億円 | -13億円 |
| 財務CF | -2億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は40.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「テクノロジーの解放(Liberation of Technology)」を経営理念に掲げています。急速に変化するテクノロジーと、それを享受したい人々との間にあるギャップを埋める橋渡し役となり、独自の技術や先端技術を企業が使いやすい形で提供することで、世界の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
失敗を恐れず変化に挑戦し続ける文化を重視しています。多様性を受け入れ、自律的な組織運営を行うために「HENNGE WAY」という行動指針を定めています。また、社内公用語を英語とし、国籍やバックグラウンドの異なる人材が活躍できる環境を作ることで、変化への対応力を高めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、HENNGE One事業のLTV(顧客生涯価値)最大化を重要な経営指標としています。特に現在はARR(年間経常収益)の最大化に着目しており、2029年9月期にはグループ全体のARRを200億円にすることを目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業のARR最大化に向け、契約企業数の拡大、ARPU(ユーザーあたり単価)の向上、平均ユーザー数の最大化に取り組んでいます。具体的には、営業人員の増員、広告宣伝による認知向上、販売パートナーとの連携強化に加え、M&Aや出資を通じた新機能・新サービスの開発を推進しています。また、米国子会社設立によるグローバル展開や、AI技術等の新技術への対応も強化しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい環境で成長し続けるため、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の採用と育成を重視しています。英語を社内公用語とし、ダイバーシティを尊重する環境を整備することで、国内外から優秀な人材を確保しています。また、従業員の自律的なキャリア形成を支援し、研修プログラムや学習機会の提供を通じてスキル向上を促しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 35.3歳 | 4.5年 | 8,478,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.6% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 136.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍従業員比率(20.1%)、有給休暇取得率(74.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化
クラウドサービス市場の成長鈍化や競争激化、または同社が環境変化に適応できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は機能改善や新機能開発、カスタマーサクセスの強化により差別化を図り、リスク低減に努めています。
■(2) 技術革新やサービス提供環境への対応
AIなどの技術革新や市場環境の変化への対応が遅れた場合、または連携するクラウド型グループウェアの仕様変更等があった場合、業績に影響する可能性があります。同社は新技術の積極的な検証や投資を行い、市場ニーズに適時に応える技術力の維持に努めています。
■(3) 特定の事業者サービスへの依存
主力サービスはAWS(Amazon Web Services)を基盤としており、AWSの障害や戦略変更、価格改定などが業績に影響を与える可能性があります。同社は代替サービスの検討等を継続的に行い、リスク分散を図っています。
■(4) 人材の採用・育成
事業拡大に必要な人材の確保が計画通り進まない場合、成長に影響を及ぼす可能性があります。同社はダイバーシティの推進や英語公用語化により、国内外から優秀な人材を採用・育成する体制を強化しています。



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