#Speee転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社Speee の有価証券報告書(第18期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Speeeってどんな会社?
DX(デジタルトランスフォーメーション)を軸に、不動産・リフォーム領域のマッチングや企業のマーケティング支援、金融インフラ開発を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、モバイルSEO事業(現Webアナリティクス事業)を開始しました。2014年には不動産売却マッチングサービス「イエウール」を開始し、事業の柱を構築しました。2018年にはブロックチェーン技術を扱う子会社Datachainを設立。2020年にJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で661名、単体で601名です。筆頭株主は代表取締役の大塚英樹氏で、第2位は同氏の資産管理会社と推測される株式会社Print、第3位は創業者の久田哲史氏となっています。経営陣が主要株主として名を連ねており、オーナーシップの強い資本構成と言えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大塚 英樹 | 22.48% |
| 21.86% | |
| 久田 哲史 | 19.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役は大塚英樹氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚 英樹 | 代表取締役 | 2008年に入社し、2011年より現職。株式会社RiTAKEや株式会社バルーンの代表取締役も兼任。DatachainおよびThinQ Healthcareの取締役も務める。 |
| 久田 哲史 | 取締役データプラットフォーム事業部長 | 2007年に同社を設立し代表取締役に就任。2011年より取締役。現在はDatachain代表取締役およびPrint代表取締役を兼任している。 |
| 渡邉 昌司 | 取締役コンプル事業部長 | アイレップ、シーエー・モバイルを経て2008年に入社。2009年より取締役。ThinQ Healthcare代表取締役を兼任している。 |
| 西田 正孝 | 取締役CFO | 朝日監査法人(現あずさ監査法人)、ネオキャリア、SBIRoboを経て2009年に入社し、同年より取締役。Velocity取締役を兼任。 |
| 田口 政実 | 取締役デジタルトランスフォーメーション事業本部長 | ナムコ、エディア取締役副社長COOなどを経て、2017年より取締役デジタルトランスフォーメーション事業本部長を務める。Velocity取締役を兼任。 |
社外取締役は、長谷部潤(大和総研を経てコロプラ取締役等を歴任)、惠美早百合(M&Aキャピタルパートナーズ等を経てバヅクリ常勤監査役)、山中健児(石嵜・山中総合法律事務所代表弁護士)、髙松悟(髙松公認会計士・税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レガシー産業DX事業」、「DXコンサルティング事業」、「金融DX事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) レガシー産業DX事業
不動産売却「イエウール」、外壁塗装「ヌリカエ」、介護施設検索「ケアスル 介護」などのマッチングプラットフォームを提供しています。産業としての歴史が長く、デジタル化が遅れている領域において、ユーザーと事業者を結びつけるサービスを展開しています。
収益は、プラットフォームを通じたユーザーの紹介や成約に応じた手数料を、不動産会社、リフォーム業者、介護施設事業者などの顧客から受け取る成果報酬型が中心です。運営は主にSpeeeが行っています。
■(2) DXコンサルティング事業
企業のマーケティング活動を支援するため、データ分析に基づくコンサルティングや広告運用代行を提供しています。「Webアナリティクス」によるサイト改善提案や、ネイティブアド配信プラットフォーム「UZOU」などを通じて、顧客の成果最大化を支援します。
収益は、コンサルティングサービスに対する月額報酬や、広告出稿量に応じた手数料、広告配信プラットフォームの利用料などを顧客企業から受け取ります。運営は主にSpeeeが行っています。
■(3) 金融DX事業
次世代金融インフラの構築を目指し、ステーブルコインやトークン化預金などのデジタルアセット関連技術を活用した開発を行っています。クロスボーダー送金基盤構築プロジェクトなどを推進し、ブロックチェーン技術の実用化に取り組んでいます。
現在は開発投資フェーズにあり、将来的な収益源として育成中です。事業運営は主に子会社のDatachainが行っており、金融機関等との実証実験などを進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大傾向にあり、直近5年間で着実に成長を続けています。一方、利益面では2023年9月期以降、先行投資の影響により変動が大きく、直近の2025年9月期は経常損失、当期純損失となっています。成長投資と収益確保のバランスを取るフェーズにあると言えます。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 127億円 | 112億円 | 136億円 | 157億円 | 164億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 16億円 | 8億円 | 6億円 | -7億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 14.1% | 6.2% | 3.8% | -4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 11億円 | -10億円 | 2億円 | -10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費が増加したため、営業損失を計上しています。特に将来の成長に向けたコスト負担が増加していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 164億円 |
| 売上総利益 | 131億円 | 128億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.1% | 78.0% |
| 営業利益 | 5億円 | -7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | -4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が76億円(構成比56%)、給料及び手当が21億円(同15%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費などの労務費関連が中心となっています。
■(3) セグメント収益
レガシー産業DX事業は売上増ながら集客効率悪化や投資により減益となりました。DXコンサルティング事業は単価向上等により増収となり、利益も安定しています。金融DX事業は開発投資が先行しており、売上計上は限定的で赤字幅が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| レガシー産業DX事業 | 111億円 | 113億円 | 13億円 | 10億円 | 8.6% |
| DXコンサルティング事業 | 47億円 | 51億円 | 19億円 | 18億円 | 36.0% |
| 金融DX事業 | 0億円 | - | -4億円 | -13億円 | - |
| 連結(合計) | 157億円 | 164億円 | 5億円 | -7億円 | -4.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、財務活動において長期借入れや株式発行による収入を主な資金獲得源としています。営業活動では、税金等調整前当期純損失の計上が主な要因となり、資金の使用が見られました。投資活動では、無形固定資産や有形固定資産、投資有価証券の取得による支出がありました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -13億円 | -8億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -1億円 | 53億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションを掲げています。テクノロジーを活かしながら既存ビジネスを柔軟に組み合わせ、新しいサービスを生み出すことで新しい価値を提供し続け、成果を積み重ねることでより大きな課題に立ち向かい、未来を引きよせたいと考えています。
■(2) 企業文化
有価証券報告書には具体的な企業文化や行動指針に関する記述は見当たりませんが、ミッションに基づき、多様な産業領域のデジタルトランスフォーメーションを推進する姿勢が示されています。また、データ分析と利活用、プロダクト化、顧客への提供を一貫して行う体制を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、より高い成長性及び収益性を確保する視点から、以下の指標を重要な経営指標と捉えています。
* 売上高成長率
* 営業利益率
* EBITDA
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、事業発展による単価・収益性向上、事業開発による顧客数増加、新規事業開発の3つを基本戦略としています。特に金融DX事業においては、次世代の収益の柱として育成を目指し、クロスボーダー送金基盤などのプロジェクトやトークン化預金関連事業に注力しています。
5. 働く環境
同社的人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
継続的な事業成長のために、人材の増強と組織体制の充実に注力しています。特にエンジニアやデータサイエンティストなどの専門職種の採用競争が激化する中、採用方法の多様化や教育・人材育成制度の確立を進め、採用から定着に至るまでの体制整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(約598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 29.6歳 | 3.2年 | 5,731,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.2% |
| 男性育児休業取得率 | 89.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員における女性比率(30.5%)、平均勤続年数(3.1年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告・関連市場について
インターネット広告市場は拡大傾向にありますが、景気動向や広告主の戦略に左右されやすく、市場成長が阻害される状況が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新について
急速な技術変化やクライアントニーズの変化に対応するため、人的・資本的投資を継続していますが、対応の遅れや競合他社による革新的技術の開発があった場合、競争力が低下し業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 新規事業について
金融DX事業など新規事業への投資を行っていますが、当初の予測と異なる状況が発生し計画通りに進まない場合、減損損失の計上が必要になるなど、投資回収ができず業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 継続的な事業投資について
レガシー産業DX事業での広告宣伝や、金融DX事業でのブロックチェーン技術への投資を積極的に行っていますが、投資期間の長期化や計画通りの収益が得られない場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。