ETSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ETSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の持株会社。中核事業は送電線建設等の電気工事業と、ビル・マンション管理等の不動産関連事業です。2024年10月に持株会社体制へ移行し設立された第1期決算では、売上高113億円、経常利益7億円を計上しました。再生可能エネルギー関連工事の受注が好調に推移しています。


※本記事は、株式会社ETSグループ の有価証券報告書(第1期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ETSグループってどんな会社?


電気工事と不動産管理を軸に事業を展開する持株会社。東北地方を中心とした送電線工事に強みを持ちます。

(1) 会社概要


同社は2024年10月、ETSホールディングスの単独株式移転により設立されました。事業の源流は1935年設立の山加商会に始まり、1948年に山加電業へ商号変更、2017年にETSホールディングスとなりました。2024年の持株会社化に伴い、ETSホールディングスが保有していた東京管理やユウキ産業などを直接子会社化し、グループ経営体制を再編しています。

連結従業員数は241名(単体は持株会社のため記載なし)。筆頭株主は不動産賃貸管理事業を行うアムス・インターナショナルで、第2位は個人株主の德原榮輔氏、第3位はアムス・インターナショナルの関連会社であるアムス・エステートです。親会社のアムス・インターナショナルを中心に安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
アムス・インターナショナル 29.19%
德原 榮輔 14.11%
アムス・エステート 4.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上江洲剛氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%(取締役7名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
上江洲 剛 代表取締役社長 2003年アムス・インターナショナル入社。同社代表取締役を経て、2021年ETSホールディングス(現ETSライン)取締役。2025年1月より現職。
榊原 範昭 常務取締役 1978年山加電業(現ETSライン)入社。東北送電事業本部長、電力インフラ事業本部長などを歴任し、2021年より同社常務取締役。2024年10月より現職。
日下 直 取締役 2007年アムス・インターナショナル入社。ETSホールディングス(現ETSライン)総務人事部長などを経て、2024年10月より現職。
加藤 慎章 取締役 日本GE、ソネディックス・ジャパン等を経て、2020年ETSホールディングス(現ETSライン)代表取締役社長。2025年1月Aggreko Japan社長兼任。
黒川 弘務 取締役 1983年検事任官。法務事務次官、東京高等検察庁検事長を経て、2021年黒川経営コンサルティング合同会社代表社員。2024年10月より現職。


社外取締役は、若狭正幸(元大阪国税局長)、後藤健志(元帝国データバンク釧路支店調査課長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気工事業」「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電気工事業


電力会社向けに架空送電線や変電所の建設工事を行うほか、再生可能エネルギー発電所やデータセンター向けの特別高圧変電設備工事などを手掛けています。主要顧客は東北電力ネットワークや東京電力パワーグリッドなどの電力会社です。

工事請負契約に基づき、工事の進捗に応じて収益を認識します。運営は主にETSホールディングス(現ETSライン)、岩井工業所、DCラインが行っており、東北・関東・中国地方などで事業を展開しています。

(2) 不動産関連事業


マンションやオフィスビルの管理、清掃、設備メンテナンス、警備、内装工事などを提供しています。建物の維持管理に対する需要の多様化や高経年化に対応し、管理品質の向上や改修工事の提案を行っています。

管理組合や建物所有者から、管理業務の対価として管理料や工事代金を受け取ります。運営は主に東京管理(現ETSOK)、ユウキ産業(現ETSクリア)、エトスホテル、合同会社東山が行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電による売電事業を行っています。固定価格買取制度などに基づき、電力会社へ電力を販売することで収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第1期決算における売上高は113億円、経常利益は7億円となりました。利益率は6.1%で、親会社株主に帰属する当期純利益は5億円を計上しています。設立初年度のため過年度との比較はありませんが、主力事業である電気工事業が牽引し、黒字でのスタートとなっています。

項目 2025年9月期
売上高 113億円
経常利益 7億円
利益率(%) 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円

(2) 損益計算書


第1期の売上高は113億円、売上総利益は14億円、営業利益は7億円となりました。売上総利益率は12.5%、営業利益率は6.4%です。電気工事業における大型工事の順調な進捗が利益確保に寄与しました。

項目 2025年9月期
売上高 113億円
売上総利益 14億円
売上総利益率(%) 12.5%
営業利益 7億円
営業利益率(%) 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比33%)、役員報酬が1億円(同14%)を占めています。売上原価においては、外注費などの工事関連費用が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


電気工事業は、電力インフラの更新需要や再エネ関連工事が好調で、全社売上の約85%を占める中核事業となっています。不動産関連事業も建物管理や修繕工事が安定的に推移し、利益に貢献しました。

区分 売上(2025年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
電気工事業 95億円 5億円 5.4%
不動産関連事業 17億円 2億円 9.2%
その他 0.3億円 -0.1億円 -55.9%
調整額 -0.1億円 1億円 -
連結(合計) 113億円 7億円 6.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラスの「救済型」に分類されます。なお、営業CFのマイナスは主に売上債権の増加によるものであり、税引前利益は7億円の黒字を計上しています。

項目 2025年9月期
営業CF -11億円
投資CF 2億円
財務CF 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「この街に明かりを灯すのは私達 ~100年の伝統から100年の未来へ~」をパーパス(存在意義・誇り)として掲げています。ライフラインである電力を提供する企業として、資源エネルギー庁の系統整備に基づき、カーボンニュートラル実現に向けた持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


サステナビリティ経営を重視し、人材の多様性確保を成長の源泉と捉える文化があります。年齢、性別、国籍、障害の有無にかかわらず多様な人材を積極的に採用・登用し、次世代リーダーシップ研修やボルダリング研修などの独自研修を通じて人材育成に注力しています。また、建設業の働き方改革を推進し、柔軟な組織体制づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


企業価値の向上を重要課題とし、受注拡大と利益率向上に取り組んでいます。具体的な収益性の目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高営業利益率:5.0%

(4) 成長戦略と重点施策


2050年のカーボンニュートラル実現に向けた送電線強化や、データセンター等の電力多消費施設への対応を成長機会と捉えています。電力事業では東北地区を中心とした広域連系整備や老朽設備更新、設備事業では再エネ・蓄電池工事への参画を進めます。また、DX推進による業務効率化や、不動産関連事業でのサービス領域拡大による相乗効果の発揮を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を「資本」と捉え、多様性の確保と育成に注力しています。実務者研修や安全研修に加え、資格取得支援や社員面談を推進し、能力を最大限発揮できる環境を整備しています。また、女性労働者の活躍推進のため、ウェルネス休暇の導入や時短勤務期間の延長など、就業規則の改定を通じて労働環境の改善を図っています。

(2) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 0.0%


※労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 反社会的勢力リスク


建設現場等において反社会的勢力からの不当な接触を受けた場合、社会的信用の失墜や営業活動の制限を招く可能性があります。同社は取引時の誓約書締結や定期的な注意喚起を行い、万一の際は警察等と連携して契約解除を含む断固とした対応をとる体制を整備しています。

(2) 大規模災害による影響


地震や風水害等の大規模災害が発生した場合、ライフラインの停止や資材・人員不足により工事の中断・遅延が生じる可能性があります。また、事業所や資機材への直接的な損害が発生することで、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 受注価格の低下


建設業界における受注競争の激化により、受注価格が低下するリスクがあります。厳しい市場環境下で価格競争がさらに進行した場合、利益率の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 取引先への依存リスク


売上高の多くを特定の電力会社(東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド等)に依存しています。これらの主要顧客からの受注動向や設備投資計画の変更が、グループ全体の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。