クオンツ総研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クオンツ総研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するクオンツ総研ホールディングス(旧社名の株式会社M&A総研ホールデ)は、M&A仲介事業とコンサルティング事業を主軸に展開しています。直近の連結業績は、売上収益が166億円と前期比で微増収となった一方、コンサルティング事業等への先行投資の影響により税引前利益は48億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社クオンツ総研ホールディングス の有価証券報告書(第7期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2026年1月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

なお、株式会社クオンツ総研ホールディングスは、2026年1月1日付で旧社名の株式会社M&A総研ホールディングスから名称変更されました。

1. クオンツ総研ホールディングスってどんな会社?


M&A仲介事業を主軸に、AI技術を活用した効率的なマッチングとコンサルティングを展開する企業です。

(1) 会社概要


2018年にM&A仲介業務を目的として設立され、AI技術会社との提携を経て2022年にグロース市場へ上場しました。その後、2023年に持株会社体制へ移行しプライム市場へ変更、コンサルティング事業や資産運用関連の子会社を設立するなど業容を拡大しています。

連結従業員数は690名です。筆頭株主は創業者の佐上峻作氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
佐上 峻作 57.96%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.29%
BROWN BROTHERS HARRIMAN (LUXEMBOURG) SCA CUSTODIAN FOR ARCUS FUND SICAV - ARCUS JAPAN FUND 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は佐上峻作氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
佐上 峻作 代表取締役社長 2013年マイクロアド入社、2015年Alpaca(現スマートメディア)設立・代表取締役。2018年同社設立、2019年より現職。M&A総合研究所代表取締役社長も兼任。
矢吹 明大 取締役 2010年キーエンス入社、2015年日本M&Aセンター入社。2019年同社入社・営業本部長。2020年より現職。M&A総合研究所取締役営業本部長も兼任。
鏡 弘樹 取締役 2006年中京銀行(現あいち銀行)入行、2016年ストライク入社。2024年M&A総合研究所執行役員、2025年同社取締役、2025年10月同社執行役員CFOを経て同年12月より現職。


社外取締役は、水谷亮(Beyond X代表取締役)、上山亨(カケルパートナーズ代表社員)、青木美佳(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「M&A仲介事業」、「コンサルティング事業」および「その他」事業を展開しています。

M&A仲介事業


AIとDX技術を活用し、譲渡希望企業と買手候補企業のマッチングから成約までを支援するM&A仲介サービスを提供しています。特に後継者不在の中小企業の事業承継や成長戦略型M&Aのニーズに対応しています。

収益は、M&A成約時に譲渡企業および買手企業から受領する仲介手数料(完全成功報酬制を採用)等から構成されています。運営は主に株式会社M&A総合研究所が行っています。

コンサルティング事業


戦略・IT・DX領域における総合コンサルティングサービスを提供しています。テクノロジーを活用したDX戦略や経営戦略策定、PMI(合併・買収後の統合)支援などを通じ、クライアントの企業価値向上を支援しています。

収益は、顧客企業から受領するコンサルティングフィー等から構成されています。運営は主に株式会社クオンツ・コンサルティングが行っています。

その他


資産運用コンサルティングやオペレーティング・リース事業を展開しています。M&A後の資産運用ニーズ等に対応するサービスを提供しています。

収益は、コンサルティング報酬やリース料収入等から構成されています。運営は株式会社資産運用コンサルティングや株式会社総研リースなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

同社は2025年9月期より、従来の日本基準に替えてIFRS(国際財務報告基準)を適用しています。

直近2期間(IFRSベース)の業績を見ると、売上収益は横ばいで推移していますが、利益面では大幅な減少が見られます。これは、主力のM&A仲介事業が落ち着きを見せる中、中長期的な成長を見据えて新規展開する「コンサルティング事業」において、人材採用や組織体制の強化に向けた先行投資(売上原価および販管費の増加)を積極的に行っていることが主な要因です。

この積極的な投資フェーズへの移行に伴い、税引前利益と当期利益は前期と比較して大きく減少し、利益率も低下傾向にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 165億円 166億円
税引前利益 82億円 48億円
利益率(%) 49.8% 28.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 57億円 27億円

(2) 損益計算書


売上収益は微増ですが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。営業利益は前期の約6割程度の水準となっています。利益率は低下していますが、依然として高い水準を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 165億円 166億円
売上総利益 120億円 100億円
売上総利益率(%) 72.3% 60.4%
営業利益 83億円 48億円
営業利益率(%) 49.9% 28.8%


販売費及び一般管理費のうち、採用費が18億円(構成比34.2%)、広告宣伝費が9億円(同18.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


M&A仲介事業は減収減益となりましたが、コンサルティング事業は売上収益が大幅に増加しました。コンサルティング事業は先行投資フェーズにあり、損失を計上しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
M&A仲介 163億円 151億円 86億円 57億円 38.0%
コンサルティング 2億円 15億円 -2億円 -8億円 -54.2%
その他 0.0億円 0.0億円 -0.4億円 -1億円 -
調整額 - - -0.1億円 -0.5億円 -
連結(合計) 165億円 166億円 83億円 48億円 28.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しつつ、投資活動や自己株式取得等の財務活動に資金を使用しており、改善型(事業拡大に伴う投資を含む)の傾向を示しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 57億円 13億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -27億円 -70億円


企業の収益力を測るROE(親会社所有者帰属持分利益率)は、積極的な先行投資フェーズにありながらも39.2%と市場平均を大きく上回る高水準を維持しています。一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は62.8%**であり、こちらも市場平均を上回る健全な財務基盤を確保しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「M&A Techにより未来のM&A市場を創造する」を企業理念としています。従来のアナログなM&A仲介手法をテクノロジーで刷新し、成約スピードの向上と価格抑制を実現することで、多くの企業がM&Aを検討できる社会の創出を目指しています。

(2) 企業文化


効率化とテクノロジー活用を重視する文化があります。AIマッチングアルゴリズムや自社開発のDXシステムにより、属人性を排除した効率的な業務運営を推進しています。また、完全成功報酬制を採用するなど、顧客にとってのハードルを下げる公正な姿勢も重視しています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としての経営計画は記載されていませんが、経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上収益と営業利益を重視しています。また、成約件数、成約単価、アドバイザー数などを重要指標(KPI)として管理し、継続的な増加を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


M&A仲介事業の拡大に向け、優秀なアドバイザーの採用と育成、AI技術の強化による成約率向上を推進します。具体的には、採用チャネルの強化や教育制度のシステム化、AIマッチング精度の向上に取り組みます。また、システム開発への投資や情報管理体制の強化も進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀なM&Aアドバイザーの採用と育成を最重要課題としています。多様なバックグラウンドを持つ人材から、専門知識や営業力のある人材を採用し、AIを活用した効率的な業務環境により未経験者でも成果を出せる体制を整えています。また、持株会制度等のインセンティブも提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社は純粋持株会社であり、従業員がいないので、平均年間給与等は開示されていません。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 41.1%
男女賃金差異(正規) 42.0%
男女賃金差異(非正規) 122.2%


※上記は連結子会社(株式会社M&A総合研究所)の実績です。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&A市場の変動リスク


国内M&A市場は後継者不足等を背景に拡大傾向にありますが、景気悪化や自然災害等により買収ニーズが縮小した場合、市場が低迷し、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競争激化のリスク


M&A仲介業務は参入障壁が比較的低く、多数の競合他社が存在します。同社はAI活用等で差別化を図っていますが、競争が激化した場合には、手数料の低下や案件獲得の困難化により、経営成績に影響が出る可能性があります。

(3) 人材の確保・育成リスク


事業成長には優秀なM&Aアドバイザーの確保が不可欠です。雇用情勢の変化により必要な人材を採用できない場合や、育成が計画通りに進まない場合、また人材が流出した場合には、事業運営に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定人物への依存


代表取締役社長である佐上峻作氏は創業者かつ大株主であり、経営において重要な役割を果たしています。組織的な経営体制の構築を進めていますが、現時点では同氏への依存度が高く、同氏の業務遂行が困難になった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。