インフォマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インフォマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インフォマートは東京証券取引所プライム市場に上場し、企業間電子商取引を行うBtoBプラットフォームの運営を主力事業としています。飲食業界向けの受発注や全業界向けの請求書デジタル化サービスを提供しています。直近の業績は、利用企業の増加や料金改定が寄与し、大幅な増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、インフォマートの有価証券報告書(第28期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. インフォマートってどんな会社?


企業間電子商取引プラットフォームの運営を通じて、企業の受発注や請求書等のデジタル化を支援しています。

(1) 会社概要


1998年にフード業界向け企業間電子商取引プラットフォームの運営を目的に設立されました。2006年に東証マザーズへ上場し、2015年に東証一部へ市場変更しました。同年には全業界向けの請求書デジタル化サービスを開始し、2024年にはタノムを子会社化するなど事業領域と提供サービスの拡大を続けています。

従業員数は連結で856名、単体で828名体制です。筆頭株主はシンガポールの投資ファンドのTHE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の米多比昌治氏となっています。

氏名 持株比率
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD. 21.15%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.06%
米多比昌治 5.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は木村慎氏が務めており、取締役9名のうち4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
木村慎 代表取締役社長 2000年に菱食に入社。ディーコープを経て2007年に同社へ入社。経営企画本部事業推進第1部部長や執行役員、取締役副社長などを歴任し、2026年1月より現職。
村上肇 取締役副社長 1989年に東京フードサービスへ入社。2002年に同社へ入社し、会員支援部部長や人事・総務部門執行役員などを歴任。2022年に取締役となり、2026年1月より現職。
長尾收 取締役 1982年に三井物産へ入社し、米国三井物産上席副社長などを歴任。2018年に同社へ入社し代表取締役社長に就任。2022年に取締役会長となり、2024年4月より現職。
中島健 取締役 1988年に三和銀行へ入行。2010年に同社へ入社し取締役に就任。経営企画本部長や常務取締役を経て、2022年に代表取締役社長に就任。2026年1月より現職。
藤田尚武 取締役 1992年に日産トレーデイングへ入社。2001年に同社へ入社し管理本部長や取締役に就任。2018年に代表取締役副社長、2022年に取締役副社長となり、2026年1月より現職。


社外取締役は、加藤一隆(元ジェフグルメカード社長)、岡橋輝和(元カナダ三井物産社長)、兼川真紀(インテグラル法律事務所パートナー)、李成一(エル・ティー・エス取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BtoB-PF FOOD事業」および「BtoB-PF ES事業」を展開しています。

BtoB-PF FOOD事業


飲食チェーンやホテル、給食などの買い手と、食品卸やメーカーなどの売り手間で日々の受発注業務をデジタル化する「BtoBプラットフォーム受発注」を提供しています。また、商品規格書のデータベース化や提出業務を効率化する「BtoBプラットフォーム規格書」を展開し、食の安心・安全体制の強化を支援しています。

収益源は、システムの運営者として利用企業から受け取る月額のシステム使用料および初期セットアップ費用です。主力事業として同社がシステムの安定的かつ継続的な提供を行っているほか、子会社のタノムが食品卸と外食個店間のデジタル化を推進するサービスを展開しています。

BtoB-PF ES事業


全業界を対象に企業間の請求書をデジタル化し、受取・発行業務の時間を短縮する「BtoBプラットフォーム請求書」を提供しています。さらに、新規開拓や商取引を行う「BtoBプラットフォーム商談」や、見積もりから発注・請求までを一元管理する「BtoBプラットフォームTRADE」を展開しています。

収益源は、ペーパーレス化や業務効率化を実現する各プラットフォームの継続利用に対して顧客企業から受け取る、定額のシステム使用料です。同社が主体となって、取引先の多い大手企業とそのグループ企業を中心にシステムの導入を促進し、継続的な機能拡張とサービス運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で順調な成長を遂げています。利益面では一時的な踊り場があったものの、直近2期で大幅な増益に転じており、経常利益率も15%を超える水準まで改善して高い収益性を示しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 98.4億円 110.0億円 133.6億円 156.3億円 188.2億円
経常利益 10.2億円 4.7億円 6.3億円 11.9億円 28.4億円
利益率(%) 10.4% 4.2% 4.7% 7.6% 15.1%
当期利益 6.5億円 3.2億円 2.0億円 7.9億円 24.6億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益も順調に拡大し、粗利率は70%を超える高い水準に到達しています。クラウド基盤の最適化などによる原価抑制が寄与し、営業利益率は前期から大きく向上して高い収益性を確保しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 156.3億円 188.2億円
売上総利益 96.5億円 137.6億円
売上総利益率(%) 61.8% 73.1%
営業利益 12.0億円 28.6億円
営業利益率(%) 7.7% 15.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が30億円(構成比27%)、販売促進費が18億円(同16%)を占めています。また、売上原価においては、データセンター費が17億円(構成比33%)、ソフトウエア償却費が10億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


BtoB-PF FOOD事業は、受発注システムの利用企業増加や料金改定の実施により順調な増収増益となりました。BtoB-PF ES事業においても、インボイス制度を契機とした請求書デジタル化の需要を取り込み、売上が拡大した結果、営業黒字への転換を果たしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
BtoB-PF FOOD事業 99.5億円 119.3億円 19.4億円 27.6億円 23.1%
BtoB-PF ES事業 56.8億円 68.9億円 -7.5億円 1.1億円 1.6%
連結(合計) 156.3億円 188.2億円 12.0億円 28.6億円 15.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業で利益を出し、積極投資を行う積極型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 20.7億円 46.7億円
投資CF -29.1億円 -31.0億円
財務CF 2.1億円 2.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世の中の役に立ち、世の中に必要とされ、世の中に喜んでいただける事業を通じ、お客様と共に会社も個人も成長し続け、社会に貢献していきます。」という経営理念を掲げています。企業間取引のプラットフォーマーとして、業界や国の垣根を越えて世界に広がるシステムを構築し、グローバルなBtoBプラットフォーム企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、すべての事業活動の基盤である「人」を重要な経営資本と捉え、多様な人材が自らの才能を最大限に発揮し、自律的に行動するプロフェッショナルとして活躍できる環境づくりを重視しています。「ありがとう」や「おめでとう」を贈り合うサンクスカード制度など、称賛と感謝の文化を醸成し、新たな価値を創造し続けられる企業文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期的視野に基づいた中期業績目標として、2026年12月期において以下の数値を掲げています。

* 売上高200億円
* 営業利益50億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「本業(BtoBプラットフォーム)の強化」「増収増益基調の継続、高収益性への回帰」「出資先のシナジー拡大&収益化」を中期経営方針として掲げています。FOOD事業では外食個店と食品卸間のデジタル化や関連アプリの拡販を進め、ES事業では大手企業を中心とした請求書システムの導入加速と新プロダクトの推進を図ることで、売上成長の継続と高収益化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は従業員一人ひとりの成長を不可欠と考え、「人材」と「組織・職場」の両面からアプローチする人的資本投資に力を入れています。個人の強みを引き出すキャリア支援施策や階層別研修を通じて自律的なキャリア形成を後押しするとともに、ライフスタイルに合った働き方を実現できる柔軟な就業環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社単体従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.6歳 5.8年 6,684,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.8%
男性育児休業取得率 75.9%
男女の賃金差異(全労働者) 86.5%
男女の賃金差異(正規雇用労働者) 90.0%
男女の賃金差異(パート・有期労働者) 182.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の割合(40.0%)、女性の産休・育休復帰率(100.0%)、男性の産休・育休復帰率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害とサイバー攻撃のリスク


同社の事業は通信ネットワークとサーバーシステムに依存しており、自然災害やアクセス集中によるサーバーダウン、またはマルウェア感染などのサイバー攻撃によってシステム障害が発生した場合、サービスの継続が困難となり、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法制度の変更や規制強化への対応遅延


電子帳簿保存法やインボイス制度などの税務関連法規、個人情報保護法といった広範な法的規制を受けています。制度の大幅な改廃への対応が遅れた場合や、データプライバシー規制の強化に伴うシステム改修コストが増加した場合、サービスの競争力低下や顧客離脱を招くリスクがあります。

(3) IT人材の獲得・定着における競争激化


継続的な成長には優秀なエンジニアなどのIT人材の確保が不可欠ですが、獲得競争は激化しています。人材確保が計画通りに進まない場合や、専門人材の社外流出が生じた場合、プロダクト開発の遅延や組織全体の生産性低下を引き起こし、成長機会を逸失する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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