※本記事は、ユーソナー株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ユーソナーってどんな会社?
法人企業データベースと顧客データ統合ツールを展開し、企業の営業活動を支援するデータマーケティング企業です。
■(1) 会社概要
1990年9月に設立し、ダイレクトマーケティングサービスを開始しました。2004年に法人企業データベースの提供を始め、2013年には主力商材となるクラウドサービスの提供を開始しました。その後も各種サービスを拡充し、2025年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
従業員数は単体で228名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の福富七海氏であり、第2位は三井物産企業投資投資事業有限責任組合、第3位は日本政策投資銀行が名を連ねており、安定的な資本関係を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 福富七海 | 49.32% |
| 三井物産企業投資投資事業有限責任組合 | 9.52% |
| 日本政策投資銀行 | 8.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長CEOは長竹克仁氏、代表取締役会長は福富七海氏が務めています。社外取締役は6名で、役員の半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長竹克仁 | 代表取締役社長CEO | 2000年に同社へ入社後、企画グループの執行役員や代表取締役社長などを歴任し、2026年3月より現職。 |
| 福富七海 | 代表取締役会長 | 1990年の同社設立と同時に代表取締役社長に就任。代表取締役CEOを経て、2022年9月より現職。 |
| 置田富士夫 | 取締役CTO | 1991年に同社へ入社後、常務取締役や取締役CIOなどを歴任し、2026年3月より現職。 |
| 鈴木彩乃 | 取締役COO | 2010年に同社へ入社後、営業本部マネージャーや企画グループ執行役員などを歴任し、2026年3月より現職。 |
| 北澤光剛 | 取締役CFO | 2003年に同社へ入社後、他社を経て2024年に再入社し管理本部執行役員に就任。2026年3月より現職。 |
社外取締役は、富永新(元日本銀行上席考査役兼参事役)、河合浩代(アイビーエス・ソフトウェア・ジャパンAccount Director)、DORFF JOHN CHRISTOPHER(チームドーフ代表社員)、小林仁子(小林仁子公認会計士事務所所長)、黒須篤夫(元東京海上日動火災保険理事内部監査部長)、清水陽平(法律事務所アルシエン共同代表パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、データベースマーケティング事業を展開しています。
■データベースマーケティング事業
全国約1,250万箇所の事業拠点を網羅した法人企業データベースと、顧客データを自動で統合・一元化できるクラウドサービスを提供しています。企業の課題や目的に応じ、経営戦略プラットフォームやスマートフォン向けマーケティングツールなどの各種サービスを柔軟に組み合わせて営業提案を行っています。
収益は主に、サービスの初期導入費用やデータのスポット提供によるフロー売上と、月額基本料などを収受する継続的なストック売上から構成されています。他社のシステムとデータ連携が可能な仕様となっており、直販形式を主体としつつ販売代理店を経由した間接販売も行っています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が毎年順調に拡大を続けており、成長基調を維持しています。利益面については、過去に一時的な特別損失の計上などによりマイナスとなる時期もありましたが、その後は着実に回復し、直近では利益率も大きく向上して過去最高水準の利益を確保しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34.1億円 | 40.4億円 | 50.4億円 | 60.7億円 | 71.9億円 |
| 経常利益 | 4.6億円 | 1.0億円 | 1.2億円 | 9.1億円 | 13.8億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 2.5% | 2.5% | 15.0% | 19.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.5億円 | 0.6億円 | 0.7億円 | 6.3億円 | 8.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。クラウドサービスの継続利用に対する売上などが堅調に推移し、利益率も前年を上回る水準に改善するなど、効率的な収益確保が進んでいます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 60.7億円 | 71.9億円 |
| 売上総利益 | 37.6億円 | 44.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.9% | 62.0% |
| 営業利益 | 9.1億円 | 13.9億円 |
| 営業利益率(%) | 15.0% | 19.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比42%)、広告宣伝費が4億円(同14%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が12億円(構成比43%)、労務費が3億円(同10%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業活動で生み出した資金と上場による調達資金を合わせて、積極的な投資を行っている積極型のキャッシュ・フロー状況といえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12.5億円 | 17.1億円 |
| 投資CF | -2.3億円 | -11.8億円 |
| 財務CF | -2.3億円 | 7.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「固有名詞で社会を支える」という企業理念を掲げています。世の中に溢れる固有名詞の情報を集約し、プライバシーの保護に配慮しながら安全に管理・利活用できる社会の実現に貢献することを目指しています。データをただ流すのではなく、付加価値を高めて最適な形で提供する「法人データの専門商社」を志向しています。
■(2) 企業文化
「非競(ひきょう)」を経営方針として掲げています。無益な過当競争を避け、自社の得意領域である法人データに特化し、近接分野は他社と協調する戦略を取っています。また、深海の潜水艦のように膨大なデータの中から外部環境の変化やターゲットを探知するソリューションを提供する姿勢を社名の由来としています。
■(3) 経営計画・目標
主力商材を継続的に成長させ、持続的な企業価値の向上を目指しています。経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高や経常利益に加え、ソナーサービスのARR(年間経常収益)、契約件数、ARPA(1契約あたりの平均売上高)、Churn Rate(解約率)を重視して進捗管理を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存顧客を維持しながら新規顧客を獲得し、企業価値の向上を図る方針です。他社のシステムと連携できる強みを活かし、競争しない協調戦略を徹底するとともに、利用状況の把握や施策提案による解約防止に努めています。また、検索スピード向上等のための積極的な投資や、情報セキュリティ体制の強化も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の継続的な発展に向け、優秀な人材の獲得・育成および長期雇用の促進を重要課題と位置づけています。多様な人材を国籍や年齢等に関わらず採用し、互いを尊重し高め合える企業風土の醸成に取り組むとともに、従業員の働き方の多様化や職場環境の整備、マネジメント能力強化を目的とした管理職研修を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 34.1歳 | 6.7年 | 6,309,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 81.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規雇用の女性労働者の産休・育休からの復帰率(100.0%)、離職率(9.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT投資マインドの減退や解約の増加
同社のサービスは企業向けであり、IT投資予算に基づいて購買されるため、景気動向の悪化等により企業側の投資意欲が減退した場合、新規契約の低迷や既存顧客の解約増加につながる可能性があります。想定を上回る解約が発生した場合は、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) 情報セキュリティとシステム障害
クラウド環境下で顧客の重要なデータを預かる事業特性上、サイバー攻撃や人為的ミスによる情報漏洩、大規模なシステムトラブルが発生するリスクがあります。これら不測の事態が生じた場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生、システム改修に多額の費用負担が生じ、事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 創業者など特定の人物への依存
同社の創業者であり代表取締役会長を務める福富七海氏は、主要株主であり事業戦略の策定等において重要な役割を担っています。複数代表制への移行や権限委譲を進め組織的な体制整備に努めていますが、何らかの理由で同氏による業務遂行が困難になった場合、同社の事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。



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