0 編集部が注目した重点ポイント
① 転換社債の買入消却で株式希薄化を払拭する
2026年2月期に、2028年満期のユーロ円建転換社債(CB)の約600億円分を買入消却しました。これにより将来的な株式の希薄化懸念を解消し、1株当たり純利益(EPS)の向上を図っています。一過性の特別損失計上により最終損益は赤字となりましたが、中長期的な株主価値向上に向けた大きな構造改革です。
② 監査等委員会設置会社へ移行し意思決定を早める
2026年5月の株主総会を経て、従来の監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行します。取締役会による監督機能を強化するとともに、執行側への権限委任を進めることで、激変する経営環境下における意思決定の迅速化を目指します。ガバナンス体制の刷新により、次世代型SCへの転換を加速させる構えです。
③ 事業利益を導入し成長投資の成果を可視化する
2025年度より独自の利益指標である「事業利益」を正式導入しました。これは営業利益に持分法投資利益と受取配当金を加えたもので、成長ドライバーと位置づけるベトナム事業などの成果をより的確に把握するための変更です。百貨店以外の収益貢献を重視する姿勢を明確にしており、新たなキャリア機会の拡大が期待されます。
1 連結業績ハイライト
出典:2026年2月期(2025年度) 決算説明会 P.6
総額営業収益
1兆323億円
前年比 -0.0%
営業利益
535億円
前年比 -6.9%
事業利益
596億円
前年比 -5.9%
※事業利益 = 営業利益 + 持分法投資利益 + 受取配当金(グループ全体の稼ぐ力を示す新指標)
当連結会計年度の業績は、インバウンド需要の前年反動があったものの、国内顧客が堅調に推移したことで総額営業収益は前期並みの水準を確保しました。営業利益、事業利益ともに昨年10月時点の計画を上回って着地しており、本業の収益性は当初の想定よりも高く推移しています。親会社株主に帰属する当期純損益が81億円の赤字となったのは、転換社債(CB)の買入消却に伴う特別損失713億円を計上したためで、この特殊要因を除けば純利益も計画比でプラスとなっています。
フルイヤーの計画に対する達成度で見ると、営業利益は計画比で10億円の上振れとなっており、業績の進捗は非常に「順調」であると評価できます。不透明な外部環境下でもコストコントロールを徹底し、利益を創出する体質が強化されています。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2026年2月期(2025年度) 決算説明会 P.31
国内百貨店業
【事業内容】国内主要都市での百貨店運営。高額品やファッション、食料品を中心に幅広い顧客層へ商品・サービスを提供します。
【業績推移】営業利益は249億円(前年比12.9%減)。インバウンドの反動減が響きましたが、国内顧客の売上は既存店比でプラスを維持しました。
【注目ポイント】単なる販売から「顧客体験」の提供へシフトしており、「ヒト軸」のマーケティング強化を推進中です。外商部門のSFA(営業支援システム)導入や、アプリを通じたデジタル接点の拡大により、1人当たりの売上高向上を目指しています。データに基づいたパーソナライズ提案ができる人材の重要性が増しています。
海外百貨店業
【事業内容】シンガポール、上海、ベトナム、タイ(サイアム)での百貨店運営。地域の特性に合わせた品揃えを展開します。
【業績推移】営業利益は85億円(前年比1.9%増)。ベトナム事業が増収増益となり、全体の利益を下支えしました。
【注目ポイント】特にベトナムが好調で、化粧品などの改装効果が的中し、累損(積み重なった損失)を解消しました。2027年度にはハノイでの新店開業を控えており、海外での店舗立ち上げやMD(商品計画)の経験を持つ人材の活躍フィールドが広がっています。
金融業(高島屋ファイナンシャル・パートナーズ)
【事業内容】クレジットカード事業を軸に、保険・証券・銀行代理業などの資産管理サービスを総合的に提供します。
【業績推移】営業利益は56億円(前年比15.4%増)。カード取扱高の伸長や年会費収入の増加により、大幅な増益を達成しました。
【注目ポイント】グループの成長ドライバーとして期待されており、投融資事業(法人向け融資やファンド出資)への参入を本格化させています。百貨店の顧客基盤を金融ビジネスへ繋げる「総合金融プラットフォーム」の構築に向け、専門性の高い金融人材の採用が急務となっています。
商業開発業(東神開発等)
【事業内容】「玉川高島屋S.C.」などの大型商業施設の運営・開発。百貨店と専門店の融合によるまちづくりを推進します。
【業績推移】国内・海外合計の営業利益は124億円。既存施設の運営は堅調ですが、大規模投資に伴う経費増により微減益となりました。
【注目ポイント】2026年度までは「投資フェーズ」と明確に定義されています。「次世代型SC」への転換に向け、単なる賃貸管理から、住宅分譲、学校運営、ヘルスケアなど、不動産の用途を多角化する戦略をとっており、開発スキルの応用範囲が広がっています。
建装業(高島屋スペースクリエイツ)
【事業内容】ホテルや商業施設の内装工事、特注家具の製造販売。ラグジュアリー領域に強みを持ちます。
【業績推移】営業利益は25億円(前年比16.2%増)。受注増やコスト管理の強化により、増収増益を達成し、計画通りの推移となりました。
【注目ポイント】インバウンド需要に伴う国内ホテルの改装需要が追い風となっています。ベトナムにも子会社を設立し、日本品質の内装需要を捉えるべく海外展開も本格化しています。施工管理や空間デザインの専門家にとって、大規模案件に関われるチャンスが豊富です。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2026年2月期(2025年度) 決算説明会 P.17
2027年2月期は、総額営業収益1兆550億円(+2.2%)、事業利益643億円(+7.8%)を見込んでいます。利益成長の鍵は、国内百貨店での利益率改善と、金融・海外事業の更なる伸長です。特にベトナム事業からの配当金は22億円(前年比9億円増)を予定しており、独自の利益指標「事業利益」への貢献が顕著になる見通しです。
成長戦略の柱である「まちづくり」では、玉川高島屋S.C.の大型改装が進行中。単なる「モノ売り」から、コミュニティ形成やヘルスケアなどの「サービス提供」へと館の価値を再定義しています。採用においては、従来の小売り経験者だけでなく、不動産・金融・ITなどの異業種スペシャリストの受け入れ体制がさらに強化されるでしょう。2031年の創業200周年に向けた「基盤構築」の最終仕上げを担う、非常にやりがいのあるタイミングです。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
高島屋は今、百貨店の枠を超えた「身近なプラットフォーム」への進化を掲げています。単なる販売スキルではなく、例えば金融×小売、不動産開発×地域活性化といった、「グループのシームレス化」に自分の経験がどう貢献できるかを語ることが有効です。特にベトナムでの成功事例や、国内での「まちづくり」戦略に共感を示し、その実現に向けた「自立と共創」の姿勢を強調しましょう。
面接での逆質問例
・「次期中期経営計画から収益創出フェーズへ移行するとのことですが、私の担当予定の現場ではどのような具体的成果が期待されていますか?」
・「導入された『事業利益』という指標によって、現場の意思決定プロセスや投資の判断基準にどのような変化が起きていますか?」
・「人的資本経営の推進において、中途採用者に期待される役割や、キャリアパスの柔軟性について教えてください。」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
上司の許可がなければシフトの調整が難しい
正社員として働く場合、家庭の事情に関わらず、上司の許可がなければシフトの調整が難しく、通勤が負担になることもあります。
(40代後半・システムエンジニア・女性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
・株式会社高島屋 2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
・株式会社高島屋 2026年2月期(2025年度) 決算説明会資料



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