0 編集部が注目した重点ポイント
① 医薬事業の利益が前年比約80%増と大幅に伸長する
医薬事業を担う協和キリンにおいて、開発中の薬(ロカチンリマブ)に関する一時的な技術収入の計上や、研究開発費の減少が利益を大きく押し上げました。セグメント利益は前年同期比79.5%増という驚異的な成長を記録しており、グループ全体の収益基盤を支える強力なエンジンとなっています。
② 不採算資産の売却など構造改革を加速させる
2026年4月1日付で米国ウイスキー事業のFour Roses(フォアローゼズ)の売却が完了しました。現在はバランスシートの最適化に向けて、各事業内で数件の構造改革を進行させています。経営資源を成長領域へ再配分する姿勢が鮮明になっており、組織の若返りや新領域でのキャリア機会が期待されます。
③ ヘルスサイエンス事業が国内外で成長軌道に乗る
ファンケルやBlackmores(ブラックモアズ)を軸とするヘルスサイエンス領域が好調です。特に海外での販売体制強化が功を奏し、ファンケルの海外売上は前年比93.3%増と爆発的に伸びています。サプリメントやスキンケアなど、高収益な健康関連ビジネスが第3の柱として着実に育っています。
1 連結業績ハイライト
出典:キリングループ 2026年12月期 第1四半期決算 P.2
※事業利益:売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除して算出。事業の経常的な実力を測る指標として同社が重視しているものです。
当第1四半期の売上収益は5,730億円(前年同期比5.0%増)、事業利益は500億円(同37.7%増)となりました。各事業が順調に進捗したことに加え、円安による為替の後押しも追い風となっています。税引前利益も31.6%増と大幅な伸びを示しており、グループ全体の稼ぐ力が強化されていることが伺えます。
EPS(1株当たり利益)は33円となり、年初の通期計画である193円の達成に向けて順調に進捗しています。法人の所得税費用が増加したものの、それ以上に本業の稼ぎである事業利益が大きく伸びたことで、最終的な利益も2桁増益を確保しました。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:キリングループ 2026年12月期 第1四半期決算 P.4
酒類事業
事業内容:麒麟麦酒、Lion、New Belgium Brewing等を通じた、国内外でのビール・RTD(低アルコール飲料)の製造販売。
業績推移:売上収益 2,481億円(0.3%減)、事業利益 303億円(12.3%増)。国内は仮需の反動で減収もコスト効率化で増益。
注目ポイント:国内ではビール「晴れ風」や「氷結無糖」シリーズが好調。海外では豪州のLionが価格マネジメントと物流効率化で増収増益を達成しています。ブランド育成とサプライチェーン効率化の専門性が求められています。
飲料事業
事業内容:キリンビバレッジ、Coca-Cola Beverages Northeastによる、日本および米国での清涼飲料事業。
業績推移:売上収益 1,363億円(7.2%増)、事業利益 134億円(15.0%増)。日米ともに価格改定と好採算商品の拡売が寄与。
注目ポイント:米国のCoke Northeastが14.4%の増収と極めて好調です。国内でも「おいしい免疫ケア」など健康付加価値商品の安定供給に向けた、滋賀工場への新ライン導入(2028年稼働予定)など、生産体制の強化が進んでいます。
医薬事業
事業内容:協和キリンを中心とした、グローバルでの医療用医薬品の研究開発・製造販売。
業績推移:売上収益 1,184億円(13.1%増)、事業利益 172億円(79.5%増)。主力品の安定販売に加え、一時的な技術収入が貢献。
注目ポイント:主力品「Crysvita」が北米・欧州で堅調なほか、開発パイプラインの選別による研究開発費の減少で利益率が大幅に改善しています。スペシャリティファーマ(特定の疾患領域に強い製薬企業)への進化が加速しています。
ヘルスサイエンス事業
事業内容:ファンケル、Blackmoresによる健康食品、サプリメント、化粧品事業。
業績推移:売上収益 638億円(4.8%増)、事業利益 60億円(88.2%増)。海外販売網への移行が奏功し大幅増益。
注目ポイント:ファンケルのサプリメント事業が国内外で伸びており、特に海外展開が成長を牽引しています。Blackmoresも東南アジア・韓国エリアで17.9%増収を記録。クロスボーダー(国境を越えた)マーケティング人材の重要性が高まっています。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:キリングループ 2026年12月期 第1四半期決算 P.5
通期の業績予想については、年初の計画を据え置いています。中東情勢の悪化による原燃料価格の高騰など不透明な要素も多いですが、早期のコスト削減や費用コントロールによって利益目標の確実な達成を目指しています。
特筆すべきは、協和キリンにおける一部開発プロジェクトの中止(ロカチンリマブ)に伴い、浮いた研究開発費を他のパイプラインや成長投資に回せる余力が生まれたことです。また、非財務資本(人的資本など)を定量化し、企業価値を高めるための「SSBJ基準(日本版サステナビリティ開示基準)」の早期適用にも着手しています。これは、先進的な情報開示を通じて投資家との建設的対話を深める狙いがあり、IRやサステナビリティ部門、法務などのコーポレート機能においても高い専門性を持つ人材の活躍の場が広がっています。
4 求職者へのアドバイス
キリンは現在、伝統的なビール事業から「食から医にわたる領域」へとポートフォリオを大胆にシフトさせています。特に「ヘルスサイエンス」と「グローバル医薬」の2軸での成長を強調しているため、「これまでの専門性を活かして、人々の健康と幸せに直接貢献する新しいビジネスモデルを創りたい」という視点を盛り込むと、経営戦略と深く合致した志望動機になります。
「米国のCoke Northeastの好調が続いていますが、この成功体験を他エリアの飲料事業や酒類事業に横展開する具体的な構想はありますか?」「SSBJ基準の早期適用など情報開示の透明性を高めていますが、現場の意思決定プロセスや評価制度にはどのような変化が現れていますか?」など、将来の成長戦略や組織文化の変革に踏み込んだ質問が有効です。
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
復職しその後管理職になったという事例は聞かない
ただ、個人的に知っている範囲では、産後休職してから復職し、その後管理職になったという事例は聞いたことがない。
(40代前半・経営企画・男性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
・キリングループ 2026年12月期 第1四半期決算説明会資料(2026年5月14日発表)
・2026年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)



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