※本記事は、株式会社インフキュリオンの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. インフキュリオンってどんな会社?
あらゆる事業者のフィンテック・パートナーとして、決済・金融のプラットフォームを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2006年に設立され、決済・金融領域におけるコンサルティングサービスから事業を開始しました。2014年にはコンサルティング事業を分社化し、純粋持株会社へと移行しています。その後、2018年にBaaSプラットフォーム「Wallet Station」、2021年に次世代カード発行プラットフォーム「Xard」の提供を開始するなど、事業領域を拡大し、2025年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
同社グループの従業員数は連結で388名、単体で266名となっています。筆頭株主は事業会社であり資本業務提携先の三井住友カードで、第2位は同じく提携先の三井住友銀行、第3位は創業者の丸山弘毅氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井住友カード | 14.42% |
| 三井住友銀行 | 14.41% |
| 丸山 弘毅 | 9.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は丸山弘毅氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山 弘毅 | 代表取締役社長 | 元ジェーシービー。2008年同社入社、取締役。ネストエッグ取締役等を経て2018年より現職。 |
| 来田 武則 | 取締役副社長 執行役員 | 元ジェーシービー。2008年同社入社。インフキュリオン コンサルティング代表取締役等を経て2023年より現職。 |
| 野上 健一 | 取締役執行役員 | 元三井住友銀行。メトセラ代表取締役等を経て2024年同社執行役員。同年より現職。 |
| 髙木 一輝 | 取締役執行役員 | 元ジェーシービー。2007年同社入社。インフキュリオン コンサルティング代表取締役等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、重富隆介(ブラックストーン・グループ・ジャパン代表取締役会長)、富岡圭(Sansan取締役)、徳田勝之(三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ペイメントプラットフォーム事業」、「マーチャントプラットフォーム事業」、「コンサルティング事業」を展開しています。
■ペイメントプラットフォーム事業
金融機関や事業者のサービスに対し、クラウド上で構築された決済・金融ソリューションをAPIで接続する事業です。ウォレット構築を支援する「Wallet Station」や、カード発行基盤の「Xard」、請求書カード払い基盤の「Winvoice」などをオープンプラットフォーム上で提供しています。
収益源は、決済処理金額などに応じて課金される従量型収入と固定の基本料収入によるストック収入のほか、初期導入や機能追加に伴うフロー収入です。運営は主にインフキュリオンおよびネストエッグが行っています。
■マーチャントプラットフォーム事業
店舗のキャッシュレス化やデジタル化を推進するためのプラットフォームを展開する事業です。マルチ決済機能を持つ端末の提供や、加盟店におけるキャッシュレス決済の処理などを行うアクワイアリングシステムの開発、運用などをワンストップで提供しています。
収益源は、決済端末の販売やシステム開発に伴うフロー収入と、決済処理金額等に応じた従量型のストック収入などです。運営は主にインフキュリオンおよびリンク・プロセシングが行っています。
■コンサルティング事業
金融機関や大手企業に対して、決済・金融領域におけるコンサルティングサービスを提供する事業です。新規事業開発時の課題抽出から企画立案、実行までの各フェーズを支援し、社会のデジタル化推進に取り組んでいます。
コンサルティングサービスの対価として収入を得ており、既存顧客からの継続的な受注が大部分を占めるため、安定的な収益基盤として機能しています。運営は主にインフキュリオン コンサルティングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は右肩上がりで成長を続けており、2022年3月期の15.5億円から2026年3月期には95.1億円まで拡大しています。経常利益は先行投資によりマイナスが続いていましたが、2025年3月期に黒字転換を果たし、収益性が改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 15.5億円 | 29.6億円 | 58.4億円 | 71.7億円 | 95.1億円 |
| 経常利益 | -8.7億円 | -4.2億円 | -6.0億円 | 1.1億円 | 3.4億円 |
| 利益率(%) | -55.9% | -14.1% | -10.3% | 1.5% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -14.4億円 | -10.7億円 | -2.6億円 | -4.3億円 | - |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に拡大し利益率が向上しています。営業利益も黒字幅を拡大させており、事業基盤の強化が利益の創出につながっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 71.7億円 | 95.1億円 |
| 売上総利益 | 31.9億円 | 45.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.5% | 48.0% |
| 営業利益 | 1.4億円 | 4.4億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 4.6% |
販売費及び一般管理費(41.2億円)のうち、役員報酬及び給料手当が14.3億円(構成比34.8%)、支払手数料が5.3億円(同12.9%)、研究開発費が3.9億円(同9.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ペイメントプラットフォーム事業は売上が大きく伸長しているものの、成長に向けた先行投資が継続しており営業損失となっています。マーチャントプラットフォーム事業は端末導入が進み、大幅な増収と利益拡大を実現しました。コンサルティング事業は売上が横ばいですが、収益性が改善し利益増に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ペイメントプラットフォーム事業 | 36.6億円 | 52.9億円 | -2.2億円 | -1.8億円 | -3.4% |
| マーチャントプラットフォーム事業 | 20.1億円 | 27.4億円 | 0.8億円 | 5.0億円 | 18.3% |
| コンサルティング事業 | 15.1億円 | 14.8億円 | 4.0億円 | 5.9億円 | 39.8% |
| 連結(合計) | 71.7億円 | 95.1億円 | 1.4億円 | 4.4億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のために資金調達を行い、積極的な投資を継続している「勝負型」の状況です。
なお、同社は決済・金融関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に未収入金の増加によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.4億円 | -4.1億円 |
| 投資CF | -2.8億円 | -3.2億円 |
| 財務CF | 8.3億円 | 44.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も51.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「決済から、きのうの不可能を可能にする。」をミッションとして掲げ、その先で実現したい未来を「あしたの世界に、いくつもの自由を。」というビジョンに込めています。あらゆる産業・事業者のフィンテック・パートナーとして、商流に関わる決済を起点にシームレスな社会を実現し、これまで不可能であったビジネスの実現を支援することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「社員一人ひとりの『好奇心』と『挑戦』を全力で支援し、そのプロセスと結果に対して『公正』に報いる」ことを人事ポリシーとして掲げています。従業員が好奇心(Curiosity)を起点に自ら学び、仲間と共に成長・躍動し続ける環境を整備し、個人の知見と組織の価値観を融合させて新たな価値創造へと繋げる文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営戦略を通して目指す中期的な成長目線として、2025年3月期を起点とした経営指標の目標を設定しています。中核となる決済処理金額(BtoB GTV)を重要な客観的指標と位置づけ、高成長の実現に向けて取り組んでいます。
* BtoB GTV成長率:年平均約50%
* 売上高:年平均約25%
* 売上総利益:年平均成長率30%以上、利益率50%以上
* EBITDA:利益率15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、決済全域を一気通貫でカバーするオープンプラットフォームの提供を通じ、顧客基盤の全方位的な拡大を進めています。また、AIを活用した機能追加によるサービス領域の拡張のほか、三井住友カード等との共同事業を通じた法人向けデジタル総合金融サービスの推進により、安定したストック収入の積み上げと持続的な成長モデルの確立を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社会インフラをアップデートし続けるため、従業員が好奇心を起点に自ら学び、仲間と共に成長する環境整備を人材育成の重要方針としています。論理的思考力やマネジメント力の強化に加え、専門書籍の購入や資格取得の支援などを通じて主体的な自己研鑽を促し、成長実感の向上と挑戦機会の最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.2歳 | 2.9年 | 7,092,837円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 137.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビジネス環境の変化について
キャッシュレス決済や金融DX市場では技術革新や顧客ニーズの変化スピードが非常に早く、同社も柔軟な対応が求められます。技術動向等を適時に把握して適切な対応ができない場合や、多額のシステム投資や人件費を要する状況に陥った場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サイバー攻撃への対応について
同社グループの事業の大多数はインターネットを介して提供されており、不正アクセス等の多様なサイバー攻撃に常時晒されています。万が一、重大なインシデントが発生した場合には、サービスの停止や損害賠償請求、ブランドへの信頼毀損が生じ、事業継続に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 人材の採用・育成について
同社グループが更なる事業拡大を実現するためには、優秀な人材の確保が必要不可欠です。人材の獲得が計画通りに進まない場合、あるいは社内の重要な人材が外部へ流出した場合には、事業規模に応じた適正な配置が困難になり、事業拡大の制約要因となる可能性があります。



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