0 編集部が注目した重点ポイント
① ポリプラスチックスの事業をダイセルへ統合する
2026年4月1日付で、主要連結子会社であるポリプラスチックスの事業を簡易吸収分割によりダイセルに統合しました(ポリプラスチックスはHPPホールディングスへ商号変更)。グループ全体の経営効率化とソリューション提案力の強化を進めており、エンジニアリングプラスチック事業を中心に新たなキャリア機会が拡大しています。
② ドイツのCOC樹脂プラントで減損324億円を計上する
2026年3月期において、ドイツの連結子会社が建設中のCOC(環状オレフィン・コポリマー)樹脂第2プラントについて需要拡大の遅れや投資額増に伴い324億円の減損損失を計上しました。投資回収計画を再構築しつつ高付加価値用途に特化し、2027年度中の稼働に向けた安定化を進めています。
③ 2027年3月期より新セグメント体制へ移行する
2027年3月期より、事業構造改革の加速に向けて「ハイパフォーマンスポリマーズ」「マテリアル」「セイフティ」「スマート」「ライフサイエンス」の新セグメントへ再編されました。ポートフォリオ管理を一段と強化し、成長牽引事業へのリソース集中を徹底しています。
1 連結業績ハイライト
出典:2026年3月期 決算説明資料 P.2
売上高
5,796億円
前期比 ▲1.2%
営業利益
421億円
前期比 ▲31.0%
EBITDA
854億円
前期比 ▲16.6%
親会社株主に帰属する当期純利益
102億円
前期比 ▲79.4%
※EBITDA = 営業利益 + 減価償却費(事業から生み出される現金創出力を示す指標)
2026年3月期の通期連結業績は、セイフティ事業での中国・インド向け自動車エアバッグ用インフレータの販売増加があったものの、マテリアル事業におけるアセテート・トウのローカル顧客の在庫調整や、エンジニアリングプラスチックの新プラント稼働に伴う減価償却費等の増加により、売上高5,796億円、営業利益421億円と減収減益となりました。さらに、ドイツのCOC樹脂第2プラントに係る減損損失(324億円)の計上により純利益は102億円にとどまりました。
一方で、通期計画に対する達成状況としては、修正予想の売上高5,760億円、営業利益410億円を上回って着地しており、全体として概ね順調に進捗した決算といえます。減損処理により不採算資産の整理を早期に完了させたことで、次期以降のV字回復に向けた経営基盤が整っています。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2026年3月期 決算説明資料 P.9
メディカル・ヘルスケア事業
事業内容: 光学異性体分離用キラルカラムや、エクオールをはじめとする機能性食品素材・サプリメント原料等を製造・販売しています。
業績推移: キラルカラムの販売伸長やサプリメント向け「エクオール」の需要増により、売上高162億円(前期比+12.4%)、営業利益4億円(同+63.6%)と増収増益でした。
注目ポイント: 健康意識の高まりによりサプリメント素材が好調であり、米国でのマーケティング本格化に向け各種認証取得を進めています。国内外での市場開拓やライフサイエンス分野の研究開発を推進するスペシャリストへの期待が高まっています。
💡 注目職種: ライフサイエンス研究員、ヘルスケア商品企画、グローバル技術営業
スマート事業
事業内容: 半導体材料向け溶剤、フォトレジスト材料、脂環式エポキシ化合物、機能フィルム等を展開しています。
業績推移: 半導体市場の回復に伴う電子材料向け溶剤の伸長等により、売上高377億円(前期比+1.2%)、営業利益5億円(前年営業損失8億円からの黒字化)となりました。
注目ポイント: 不採算事業の撤退効果に加え、生成AI市場拡大に伴いEUV(極端紫外線)向けレジストポリマー等の最先端材料開発が加速しています。質疑応答でも言及された通り、顧客の安定調達ニーズが高く価格転嫁も順調であり、技術開発を担うエンジニアが強く求められています。
💡 注目職種: 半導体材料開発エンジニア、プロセス開発、高機能化学品技術営業
セイフティ事業
事業内容: 自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)や電気自動車(EV)向け電流遮断器などを開発・製造しています。
業績推移: 中国自動車メーカーの生産回復やインドでの拡販により、売上高1,041億円(前期比+6.7%)、営業利益61億円(同+55.0%)と大幅増益を達成しました。
注目ポイント: 北米拠点の生産性改善(稼働率85%以上を維持)が利益に貢献しています。インドでの新規ライン稼働などグローバル需要の拡大が続いており、現場の改善活動や技術設計、品質保証を牽引するモノづくり人材の重要性が増しています。
💡 注目職種: 自動車用安全部品設計エンジニア、品質保証、海外工場生産管理
マテリアル事業
事業内容: 酢酸および酢酸誘導体、タバコフィルター用アセテート・トウ、液晶ディスプレイ向け酢酸セルロースなどを手がけています。
業績推移: ローカル顧客のアセテート・トウ在庫調整や酢酸市況下落等により、売上高1,613億円(前期比▲12.0%)、営業利益150億円(同▲49.5%)となりました。
注目ポイント: 一酸化炭素(CO)プラントのトラブル対策(2026年5月定修でのバックアップ機能強化等)を進めて安定稼働を図っています。質疑応答で言及された通り、価格改定や採算重視の販売シフトを行っており、プラント保全技術やサプライチェーン最適化の担当者が不可欠です。
💡 注目職種: 化学プラントプロセスエンジニア、保全技術者、化学品SCM担当
エンジニアリングプラスチック事業
事業内容: ポリアセタール(POM)樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマー(LCP)、PPS樹脂などの高機能エンジニアリングプラスチックを展開しています。
業績推移: AIサーバー向けLCPやPPSの販売が大幅増加し、売上高2,547億円(前期比+2.7%)となったものの、償却費増等により営業利益192億円(同▲29.1%)となりました。
注目ポイント: AIサーバー向け光コネクタ部品用途等の需要が好調に推移しています。2026年4月のダイセルへの事業統合を通じてグループのノバセルや自社事業との緊密な連携を進めており、樹脂コンパウンドや材料ソリューションを提案できる技術者の活躍機会が広がっています。
💡 注目職種: 高機能樹脂テクニカルサービスエンジニア、材料開発研究員、デバイス向け技術営業
その他事業
事業内容: 水処理用分離膜モジュール(メンブレン事業)や運輸倉庫業などを手がけています。
業績推移: 水処理用分離膜の販売減少等により、売上高54億円(前期比▲5.5%)、営業利益9億円(同▲6.3%)となりました。
注目ポイント: グループ全体の物流・環境インフラをサポートする基盤として、着実な運用改善が進められています。
💡 注目職種: 物流スペシャリスト、インフラ管理
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2026年3月期 決算説明資料 P.6
2027年3月期(2026年度)の連結業績は、売上高5,950億円(前年度比+2.7%)、営業利益425億円(同+1.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益320億円(同+214.3%)を見込んでいます。AIサーバー向け樹脂(LCP・PPS)の拡大やエアバッグ用インフレータの増販に加え、前年度に計上した減損損失の剥落により純利益が急回復する計画です。
質疑応答で言及された通り、アセテート・トウのローカル顧客の在庫調整は2027年1月以降の解消が見込まれているほか、POM等の原料高に対してはインデックス連動や個別値上げによる価格転嫁を進めています。2026年4月からのポリプラスチックスの事業統合をはじめ、事業ポートフォリオの選択と集中(約7割の構造改革を完了)を着実に進めており、グループ全体の収益性向上を牽引できる専門人材の重要性が一段と高まっています。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
ポリプラスチックスの吸収統合や新セグメント体制への刷新など、ダイセルは大胆な構造改革の実行フェーズにあります。AIサーバー向け樹脂や半導体材料、自動車安全部材などの高成長分野において、自身の専門知識や現場改善力を活かしてグループの収益力強化やソリューション提案にどう貢献できるかを具体的に言語化することが有効です。
面接での逆質問例
「2026年4月からのポリプラスチックスとの事業統合や新セグメント移行に伴い、配属想定部署では他事業とのシナジー創出や新しい価値の提供に向けてどのような挑戦が期待されていますか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル
※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料
- 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
- 2026年3月期 決算説明資料
- 2026年3月期 決算説明会 質疑応答要旨



上場企業の四半期決算から、面接で差がつく「志望動機」や「逆質問」のヒントを導き出す専門チーム。3ヶ月ごとの業績推移と戦略の遂行状況をキャリコネ独自の現場データと照合し、求人票だけでは見えない企業の「現在地」を可視化します。投資家向け情報を、転職希望者が選考を有利に進めるための武器に変える、実戦的な企業研究を配信中。