日本のIT業界では知らない人はいないYahoo!。
インターネット黎明期の1996年に検索エンジン「Yahoo! JAPAN」を開始。Yahoo!オークション(現・ヤフオク!)、Yahoo!ニュース、ジオシティーズ、Yahoo!BB、Y!mobileなど様々なインターネットや通信サービスを提供してきました。
2019年10日1日付で持株会社に移行し、社名をZホールディングスに改め、ファッション通販のZOZO、ホテルレストラン予約サイトの一休、通販のアスクルなどを傘下に収め、関連会社のPaypayでは電子決済サービスの覇権を握ろうとしています。
就職・転職市場でも人気の高いヤフーですが、年収はいったいいくらぐらいなのか知りたいところです。しかしながら前述の通り、現在は持株会社に移行してしまい、管理部門の平均年収である有価証券報告書の情報と実際の平均年収額が大きく違っています。
そこで、ここでは2019年3月期までの情報を掲載しますので、大体の目安としてご活用ください。
ヤフーの年収はどれくらい高いのか?
まずはじめにヤフーの平均年収を見ていきましょう。
ヤフーの平均年収は765.1万円です(2019年3月期有価証券報告書)。
キャリコネに投稿された給与明細を参考にヤフーの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で440〜490万円、30歳代で670〜720万円、40歳代で870〜920万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は503.5万円(国税庁・令和元年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.52倍の額です。
ちなみに、Zホールディングスの平均年収は1105.3万円です。(2020年3月期有価証券報告書)
■ヤフーの平均年収の推移
続いて、過去5年間における年収の推移を見てみましょう。
下は平均年収と平均年齢の推移を表したものです。
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高(連結) | 純利益(連結) |
---|---|---|---|---|---|---|
2015年3月期 | 651.7万円 | 34.99歳 | 5.2年 | 5439人 | 4284.9億円 | 1339.3億円 |
2016年3月期 | 714.2万円 | 35.5歳 | 6年 | 5547人 | 6523.3億円 | 1724.9億円 |
2017年3月期 | 682.3万円 | 35.8歳 | 6.3年 | 5826人 | 8537.3億円 | 1326.3億円 |
2018年3月期 | 766.9万円 | 35.9歳 | 6.5年 | 6330人 | 8971.9億円 | 1344.1億円 |
2019年3月期 | 765.1万円 | 35.6歳 | 6.8年 | 6515人 | 9547.1億円 | 778.3億円 |
出典:ヤフー・有価証券報告書
2018年度の決算は増収減益でした。減益の理由として販売費および一般管理費の増加などを挙げています。大幅な減益になったにも関わらず、平均年収にはさほど影響がなかったようです。
ヤフーの年代別平均年収と中央値
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値をシミュレーションし、表にまとめました。
年代 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|
20代 | 30.7万円 | 73.9万円 | 376.7万円 |
30代 | 43.1万円 | 103.6万円 | 528.4万円 |
40代 | 54.7万円 | 131.4万円 | 669.9万円 |
50代 | 63.2万円 | 151.8万円 | 774万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
■ヤフーとライバル企業との比較
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 従業員数(連結) | 売上高(連結) |
---|---|---|---|---|---|---|
メルカリ | 820.6万円 | 32.4歳 | 2.2年 | 1090人 | 1792人 | 762.75億円 |
ヤフー | 765.1万円 | 35.6歳 | 6.8年 | 6515人 | 12874人 | 9547.14億円 |
楽天 | 755.7万円 | 34.4歳 | 4.6年 | 7288人 | 20053人 | 12639.32億円 |
アスクル | 669.4万円 | 40.5歳 | 7.7年 | 812人 | 3550人 | 4003.76億円 |
MonotaRO | 549.6万円 | 37.2歳 | 5.1年 | 401人 | 572人 | 1314.63億円 |
ヤフーの主力事業はEコマースですので、競合のMonotaRO、アスクル、メルカリ、楽天の5社で平均年収を比較します。(ヤフー以外は最新の有価証券報告書の情報)
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、MonotaROが549.6万円、アスクルが669.4万円、メルカリが820.6万円、楽天が755.7万円です。
この5社の中で最高額はメルカリの820.6万円で、最低額がMonotaROの549.6万円。その差はおよそ271万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではヤフーは2番目に位置します。
EC業界の給与明細(キャリコネ)
日本の平均年収を大きく上回る収入が
ヤフー30代・広告宣伝(非管理職)の 給与明細
楽天30代・広告宣伝(非管理職)の 給与明細
大塚商会20代・営業(非管理職)の 給与明細
アスクル20代・営業(非管理職)の 給与明細
ヤフーの年収が高い理由
■遅れを取っていたコマース事業が好調に
年収が高い理由を一言でいうと、高利益率の事業と、それをさらに伸長させるに足る成果の連続が大きく影響しています。
ヤフーは2003年から2017年に至るまで、21期連続の増収を記録しています。2017年は前年度比31%増の売上収益8971億円という数値で着地しました。この好況を下支えしている事業の1つは、広告事業です。ヤフーのメディア事業の営業収益率は50.9%にも上る、圧倒的な高採算性事業なのです。さらには、アクティブユーザーの増加にも努めた結果、2017年度には初めて広告収入が3000億円を突破するという快挙を成し遂げました。
また、営業利益率9.7%のコマース事業も好調です。ショッピング取扱高は前年度比31%の増となり、その72%が「Yahoo!プレミアム」会員だといいます。この会員数が約2000万人に拡大したことで、ショッピングの広告収入は250億円を超えました。こういった企業努力が実を結び、収益と社員の年収をより高く導いたといってよいでしょう。
ここまでで、十分高い収入を得られることも、年収が高い理由もわかりました。では社内でどんな人、どんな仕事をしている人がより給与が高いのでしょうか。
ヤフーの中で年収が高い職種・部署は
■エンジニアの役割が大きく給与が高い
ヤフーの数ある職種のなかで、もっとも年収が高いのはエンジニア・スペシャリストのようです。学部卒が年収430万円であることに対し、エンジニア・スペシャリストは年収500~770万円と好待遇で、初任給から段違いのスタートを切っています。
また特別一時金の存在も見逃せません。ヤフーには四半期ごとに表彰する「スーパースター制度」があり、全職種関係なく優れた成果者に一時金が付与されるのです。さらに、エンジニアが着目すべきは「黒帯制度」です。全社員の1%以下という高い倍率を勝ち抜いた優秀な技術者には、任命一時金10万円と個人活動予算100万円が付与されます。このように会社への貢献を評価する制度が、ますます年収を上向かせるキーとなっているのです。
ヤフー社員の給与明細(キャリコネ)
30代では、徐々に上昇!
20代・Webコンテンツ制作(非管理職)の 給与明細
30代・Webコンテンツ制作(非管理職)の 給与明細
やはり賞与で差が出てくる!
20代・Webオープン系プログラマー・賞与ありの 給与明細
20代・Webオープン系プログラマー・賞与なしの 給与明細
ヤフーで働く上での懸念点・課題は
■3領域で覇権を取れるのかどうか
好調に躍進しているヤフーの懸念点は、新社長が掲げる「国内3領域での首位」の難しさでしょう。
3領域とはネット広告とネット通販、モバイルペイメントのことで、それぞれに課題が存在するために容易ではないという見方があります。
ネット広告では、世界の巨人Googleには傘下にユーチューブが存在していることから、動画広告関連では圧倒的な差があります。そして通販のBtoCでは、amazonと楽天がまだまだ強く、大きな差をつけられたままの状態です。さらには後発となるモバイルペイメントでは、サービス投入や加入店開拓に遅れを取っており、競合相手に巻き返しを図れていない弱さがあることは留意しておく必要がありそうです。
ヤフーには年収以外にメリットはある?
ここまでヤフーの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
懸念点はあるものの、大枠で目指す姿を見てみると、一口に「実現不可能」とはいえなくなります。ヤフーが目指しているのは、「データドリブンカンパニー」です。これは、国内最大級のデータを強みとして、すべてのサービスにおいて相互活用を目指すというものです。
その具体例の1つに商品のレコメンド機能があります。ユーザーへより的確に推薦できるよう、サイトの利用履歴だけでなく検索履歴を組み合わせることで改善を図った結果、レコメンドした商品のクリック率が4.5倍にまで高まったというのです。
川辺社長の「日本一のデータで戦う」という宣言のとおり、同社だけの強みで目指す国内首位の先には、私たち一人ひとりに、よりパーソナライズされた社会が待っているように思えてきます。また国内最大級のデータを扱えるという点は、エンジニアにとってこれ以上ない魅力なのではないでしょうか。これから、さらに始まろうとしている大きな舵取りに優秀な人材が集うことで、古参ネット企業がどのように変わっていくのでしょう。未来がとても楽しみな企業といえます。
出典・参考
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」