【財務分析】新規上場のハウテレビジョン 「超ハイクラス人材」を囲い込める強み

【財務分析】新規上場のハウテレビジョン 「超ハイクラス人材」を囲い込める強み

学生向け「外資就職ドットコム」と若手社会人向け「Liiga」という2つのリクルーティング・プラットフォームを運営しているハウテレビジョン。4月24日に東京証券取引所マザーズに新規上場を果たしましたが、彼らの現状はどうなっていて、どこに将来性があるのか。財務諸表を分析します。


ビジネスモデル:難関大生を囲い込み、キャリアアップを支援

ハウテレビジョンは、2010年2月設立。社名の由来は、創業当初にハウツー動画サービスを立ち上げようとしていたため。これがうまくいかない一方、代表の音成洋介氏が就職活動で苦労した経験をまとめた就活指南ブログが人気になったため、事業の母体にしたそうです。 

「キャリアプラットフォーム事業」の単一セグメントですが、上場時の説明資料によると、事業は就活生向け「外資就活ドットコム」、若手社会人向け「Liiga(リーガ)」、語学、ビジネス教育、留学など人材採用以外の「キャリアアップ支援ビジネス」の3つに分かれます。

(1) 外資就活ドットコム

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ハウテレビジョンの主力事業である「外資就活ドットコム」は、学生のグローバルキャリア志向の高まりもあり、学生数が減少する中で会員数やユーザー送客数(広告クリック数)を増やしています。

ビジネスモデルは、外資系で新卒採用を検討している募集企業からの広告収入で稼ぐというもの。強みは登録学生の「質の高さ」です。

外資就活ドットコム会員の大学別分布では、約8割が難関大学の学生となっており、広告を掲載する企業側も「優秀な人材を確保できる可能性が高いところに広告を出す」メリットを感じられる点が業績につながっているといえます。

2019年1月期の有価証券報告書によると、累計登録会員数は168,959人、月間平均送客が28,090人、月間平均DAU数は3,274名となっています。

(2) Liiga(リーガ)

Liiga(リーガ)Icon outbound

https://liiga.me/

若手プロフェッショナルのスキルアップ・キャリアアップ支援サービス

外資就活ドットコムの累計登録者16万人の情報を生かすべく、若手社会人向けの転職支援サービス「Liiga(リーガ)」を2017年1月期よりリリースしました。

外資就活ドットコムの登録会員は「挑戦志向が高く」「ハイクラス人材」であるため、転職市場においても人気な人材として注目を集める可能性が高く、Liigaではキャリアアップ志向の高い人材をターゲットに転職者と企業及び転職エージェントとをマッチングさせるモデルとなっています。

2019年1月末時点でLiigaの登録会員数は24,946名で、月間平均マッチング数560名と拡大しています。Liigaの場合は、転職者とエージェント及び企業とマッチングした場合には一定の紹介料を徴収する形を取っており、外資就活ドットコムとは異なる収益モデルを構築しています。

損益計算書(PL):売上高は前期比69%増

ハウテレビジョンは2019年4月24日、東証マザーズ市場に上場し、あわせて過年度の決算を公表しました。2019年1月期の売上高は前期比69%増の6億5900万円、営業利益は約7倍の7200万円でした。

2017年1月期までは営業赤字でしたが、翌期より黒字転換を果たしました。また営業利益率も10.9%と前期より7.8ポイント向上しています。2020年1月期の会社予想では、売上高が前期比25%増の8億2500万円、営業利益は39%増の1億円を見込んでいます。

なお、セグメント別の業績では、現状では「外資就活ドットコム」が売上高の9割を占めており、残りの1割が「Liiga」となっています。ただし説明資料は、2018年1月期(100万円)および2019年1月期(6900万円)の経常利益に「Liigaによる売上拡大が寄与」しているとしています。

貸借対照表(BS):財務面での安全性は未確立

総資産は2年で1.6倍、自己資本は2.5倍に増加と順調に増えています。

会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は、2019年1月期で47.6%。短期的な支払能力を測る流動比率は、同140.9%。ともに2期で向上していますが、サービス業界平均(52.9%、262.8%)には及びません。財務面での安全性確立は、これからの課題です。

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力は高い

営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローは、2017年1月期のマイナスからプラスに転換しており、キャッシュを積み上げる体制が取れています。

売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業キャッシュフローマージンも、2017年1月期の-6.2%から10%台まで伸びています。サービス業の平均が7.5%ですから、現金を稼ぐ力は比較的高いといえるでしょう。

営業活動で現金を生み出せていないのに、将来のための設備投資を行い、借入金の返済も行っていたフェイズから、営業活動で生み出した現金を投資活動や借入金の返済にあてられるフェイズに成長しているといえるでしょう。

なお、営業キャッシュフローマージンが直近で18.2%から13.4%にやや悪化しています。これは営業キャッシュフローが7100万円から8800万円と増えているものの、売上高の前期比69%という大きな伸びに追いつかなかったためです。

売上高増加に伴い売上債権が増加すると、手元のキャッシュフローが一時的に悪化します。今後マージン率は改善してくると予想されますし、現状10%以上を超えているため心配は無用でしょう。

資本効率分析:ROE・ROAは業界平均以上

当期純利益は2017年1月期の赤字を脱し、2期連続で大きく伸びています。

これに伴い、すべての資産を使って利益を生み出す効率を測るROA(総資産利益率)は18.8%、株主のお金を使って利益を生み出す効率を測るROE(自己資本比率)は43.3%と、業界平均(9.5%、10.7%)をともに上回っています。

まとめ

外資就活ドットコムは、難関大生の先輩から後輩への「口コミ」経由での会員登録が過半数を占めており、ハイレベルな人材を取り込める入り口をガッチリ固めています。

ターゲットを「グローバルプロフェッショナルに興味がある、能力の高い人」だけに絞っており、単に数の多さを追求せずに質を保っているところが、結果につながっているようです。

ただし就活はおおよその時期が決まっており、転職も人生で何度も行うものではありません。季節要因に影響されない安定した業績を上げ続けていくためには、人材採用に限らない語学、ビジネス教育、留学などの「キャリアアップ支援ビジネス」の比重を上げていくことが不可欠です。

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