就職活動と同様に転職先候補として、仕事の内容が似通っている同業他社を選択肢にする場合も少なくありません。待遇面を見比べるのは容易だとしても、勤務先の状況や雰囲気など内情を比較することはなかなか難しいものです。そういう場合にもっとも有効的なのは口コミを活用すること。今回は日本を代表する銀行である、三菱UFJ銀行とみずほ銀行の2社を比較します。
三菱UFJ銀行が全ての項目で優勢
まずは「働きやすさ評価チャート」を見て見ましょう。
このチャートは、キャリコネの口コミ投稿者に、労働時間、仕事のやりがい、仕事のストレス度、休日数、給料、ホワイト度の各項目についての満足度を5点満点で評価したものの平均を表しています(総合評価は6項目の平均値)。点数のつけ方には基準を設けておらず、主観的な判断で採点してもらっています。
総合評価では三菱UFJ銀行は3.3、みずほ銀行は3.1とさほど差がありませんが内訳をみると全ての項目で三菱UFJ銀行が優勢となっています。
得点の特長を見ていくと、両社共に休日数・労働時間・給与の満足度・企業のホワイト度で得点を伸ばしています。両社共に余暇が充実しており、給与も十分満足していることが伺えます。一方、仕事のストレス度の低さでは両社共に得点を落としています。詳しく口コミを分析していきましょう。
口コミ分析ではみずほ銀行が大幅マイナス評価
続いて、実際に投稿された口コミを分析していきます。
同じく投稿者の主観的な目線での情報ですが、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論を応用し口コミを分析、数値化しました。
二要因理論にならい、動機づけ要因に「達成」「承認」「仕事」「責任」「昇進と成長」、不満誘発要因に「経営方針」「監督」「人間関係」「作業環境」「賃金と雇用の安定」を設定し、1つの口コミに対し、プラス評価なのかマイナス評価なのかを判断してポイントを加算していきます。そうして算出された結果が【図2】のグラフで、各項目が獲得した数値は左の表に記載しました。
2社を比較したところ、動機づけ要因(モチベーション)では三菱UFJ銀行が-8.1ポイント、みずほ銀行が-26.7ポイントと、2社ともマイナスという結果になっています。満足度要因では三菱UFJ銀行が11.6ポイント、みずほ銀行は-14.4ポイントと、三菱UFJ銀行がプラスの得点なのに対し、こちらでもみずほ銀行は大幅にマイナスとなっています。単純にみずほ銀行の社員は三菱UFJ銀行の社員よりも多く不満を抱えているということなのでしょうか?
動機づけ要因、満足度要因それぞれのポジティブ/ネガティブ意見を見ていきましょう。
■動機付け要因
似通ったグラフになりつつも、所々で差が出ており、総合的に見ると三菱UFJ銀行のほうが優勢に見えます。目立つのは両者ともにポイントを集めた、「承認」「仕事」「昇進と成長」の項目です。実際の口コミで両社の違いを見ていきましょう。
まず比較するのは「承認」の項目です。「承認」の項目は評価基準の正当性やそれによる報酬などについての口コミを集計しています。
三菱UFJ銀行では「圧倒的に、新卒入社した社員(プロパー社員)が大多数です。転職してきた社員でも活躍されている方もいたので、出世や待遇に違いがないともいえるかもしれません。」、みずほ銀行では「新入社員と中途社員ではそれほど差はなく、能力による面が大きい。」「男性、女性問わず、意向や実力次第で管理職を目指せる制度は整っているように思える。」という口コミがみられました。両社共に新卒と中途や男女の差によって評価が変わる事はないと読み取れます。
次に「仕事」についてです。「仕事」の項目は、仕事内容への興味や充実度を示します。任される仕事の面白さや、社会や会社に貢献している実感など、やりがいを感じている場合にポイントが高くなります。こちらは両社共にポジティブな口コミもネガティブな口コミも多くなっています。ここではポジティブな口コミを紹介します。
三菱UFJ銀行では「お客様の経営課題について膝を付き合わせて話し合うことができます。」「社会貢献要素も強く、自分以外のために頑張りたい人には向いている。」、みずほ銀行では「地方銀行と違い、大きなプロジェクトに携われることが多い。君やから任せられると言われることにやりがいを感じる。」「事業に必要なヒトモノカネのうち、カネについて支援できる点は非常にやりがいがあり、日本経済を支えている自信がある」と、社会貢献とお客様に感謝されるという部分にやりがいを感じるという口コミが多く見られました。
「昇進と成長」の項目では両社共にポジティブな口コミが多く寄せられています。
三菱UFJ銀行では「法人営業を通じて財務、法務、税務、不動産、預金事務等かなり幅広な知識が身につく。」、みずほ銀行では「お客様から教えて頂く事、学ぶ事が多く、人間的に成長出来ます。」という口コミが多く見られ、人間として成長できるという内容の口コミが大多数を占めています。向上心のある方に良い環境といえるでしょう。
実際にみずほ銀行の「達成」に関する口コミでは、「目標と言う名のノルマ。やってもやっても増え続け、いくら収益をあげても、給与やボーナスにはなかなか反映されない。」「お客様にとって利益にならないことをノルマの達成だけのために進める日々…。」と営業職の方から目標を追うことの辛さを訴える口コミが多くよせられていました。
一方、「承認」と「仕事」の項目では両社共にネガティブな口コミが多く寄せられています。まずは「承認」の項目から見ていきましょう。
三菱UFJ銀行では「能力で出世するとは限らず、人付き合いがよく無難な人が出世する。」「査定の面接等はありますが、反映されているかどうかはよくわかりません。」「女性一般職は昇給が四年で止まります。」「(女性の)総合職で実力のある方は、実力以上に評価されます。しかし実力に見合ってないケースが多い。」
みずほ銀行では「人間が評価するため、半期の査定時に上司との関係如何では評価が甘い場合も、厳しい場合もある。」「査定は上司の主観による部分が大きい。良くも悪くも日本の会社らしく、能力主義の要素がないわけではないが薄い。」「仕事が出来る女性は当然管理職を目指すだろうと思われ、希望していないのにそのコースに乗せられることもあります。」という口コミがよせられていました。
両社共に、評価される上では上司との関係性が大事という意見がとても多いです。一般的な日系企業といえるでしょう。また、どちらの企業も女性の管理職増加やワークライフバランスについて取り組んでいるようですが、現段階では裏目に出ている部分もあるようです。しかし取り組んでいない企業よりは女性も働きやすいと予想されます。
次にポジティブな意見も多かった「仕事」の口コミです。
三菱UFJ銀行では「決められたことを決められた通りに淡々とやる仕事。」「絶対にミスをしてはいけないというプレッシャーが永遠と続く」「思っていた以上に会社の内部の事務手続き、ルール、規制が多い。」、みずほ銀行では「融資案件、運用案件さまざまな案件には面倒で複雑な事務が付き物」「お客様のためにと言っているが、やっていることは自分の成績のためにお客様に何を売るかを考えるという逆の行動。」という口コミがみられました。
どちらの会社でも書類が重要視されていて量が多く、ミスが許されない状況がストレスのようです。それに加え、みずほ銀行では数字のために売りたくない商品を売る葛藤が多くみられました。
三菱UFJ銀行社員の口コミ(キャリコネ)
昇格の仕組みについて
「まず、7年目に代理に昇格します。その際には融資(含む格付)が確り出来、 横串項目の推進が確り出来る事、拠点長から推薦してもらえることが重要。一度バツが付くと……」
■満足度要因
続いて、満足感を高めたポジティブ要因を見てみましょう。
「経営方針」「監督(上司の監督スキル)」「人間関係」「作業環境」「賃金と雇用の安定」という5つの要因がありますが、これらの要因について「不十分である」と感じたときに、人は不満足感を覚えます。ただし、これらの要因がたとえ満たされたとしても、いわば当たり前であるべきことなので、積極的な満足感をもたらすとは限りません。
グラフで目に付くのは三菱UFJ銀行の「作業環境」のポイントの高さです。「作業環境」の項目は残業時間や休日出勤、福利厚生などを表しています。
実際に三菱UFJ銀行には、「残業に関しては非常に厳しくなってきて、営業店は19時~20時には帰れる。」「有給取得は全行的に推奨されており、長期休暇、ミニ連休、スポット休暇など、人員の調整が問題無ければ取れる。」「仕事柄、業務を家で出来ないので、プライベートとの区別は付けやすい。」「出産、育児、介護等で、会社への不満は聞いたことがありません。」という口コミがよせられました。
みずほ銀行でも「遅くまで残業をすることはなかった。事務担当なので休日もカレンダー通り。相談会などで休日出ている営業のメンバーもまれで、代休をしっかりとっていた。」「残業時間は年々規制されている方向にある。45時間以内の残業が前年度だったが、今年度は35時間。」「育児休暇も産前休暇や産後休暇も充分にとれます。職場に復帰した後も時短勤務で働く事ができますので、福利厚生は抜群です。」という口コミがありました。
両社共に残業は少々あるようですが、社員の方は概ね満足していると感じます。福利厚生は充実しているようで、特に産休・育休に関しては心配いらないという声が多くみられました。また、三菱UFJ銀行は有給休暇の消化を全社的に推進しているようで、口コミには休暇の取りやすさについての意見が多くありました。
口コミでは「上司によっては、パワハラ、モラハラが耐え難いものがある。」「給料はいいと思いますが、その分上司には絶対服従で、ストレスフルな環境で頑張る必要があります。」という上司への不満が多く寄せられていました。
三菱UFJ銀行でも「上司が優秀とは限らず、様々な所で我慢が必要。」という口コミはありましたが、みずほ銀行ほどの不満は感じていないようです。
次に「人間関係」をみていきます。
三菱UFJ銀行では「隔月ごとに異動があるため、歓迎会、送別会があり、そのほかの飲み会もたくさんあります。」「会社関係の飲み会が非常に多く、ワークライフバランスは微妙なとことかもしれない。」という飲み会の多さや断りづらさに関する口コミが多くなっていました。
みずほ銀行では「詰めの文化がある。」「職場の雰囲気がよくない。上司との関係が悪く、叱責されることもしばしばあった。」という口コミが見られ、上司の厳しい指導と雰囲気の悪さを指摘する声が多いと感じました。目標を必ず達成するという意気込みも感じられるので、社内の雰囲気が悪いと感じるかは個人の価値観によって変わる可能性もあります。
みずほ銀行社員の口コミ(キャリコネ)
業績に対する詰めについて
「支店長次第で全く職場の雰囲気が違う。業績に対する詰めの文化が残っている為、 そういった環境でいかに目標を達成するのかが重要。期末等の負荷がかかる状況において……」
どちらも余暇はとりやすいが、それぞれ個性の強い社風
三菱UFJ銀行とみずほ銀行という銀行のツートップ。つねに比較されてきたライバル同士であり、また大企業ゆえの好待遇も互角の人気企業です。銀行という業種の性質上、責任が重い仕事となるため、お客様に喜んで頂けたときの感動はひとしおだと感じるようです。加えて、報酬の多さと福利厚生の充実や産休育休の取りやすさは大企業ならではだと感じます。
口コミを読み、分析していくと、それぞれの会社の文化の違いが見えてきました。
三菱UFJ銀行では、付き合いの良い人が出世するという口コミが多数ある上での飲み会の多さ。みずほ銀行では、目標達成のための非常にストイックな姿勢がうかがえます。
どちらも悪い面だけではないため、どちらの会社が合うかはご自身のタイプによるといえます。岐路に立った時こそ、転職経験者の口コミを、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。