クラレの転職研究 2025年12月期3Q決算に見るキャリア機会

クラレの転職研究 2025年12月期3Q決算に見るキャリア機会

クラレの2025年12月期3Q決算は、在庫評価差額の影響等で大幅減益となるも、修正後の通期計画に対しては進捗率77%超と順調な推移を見せました。自己株式取得による過去最大の株主還元、米国環境ビジネスでの大型契約、タイ拠点の黒字化など、変革を担う専門職への期待が高まっています。


0 編集部が注目した重点ポイント

総還元性向約204%に達する株主還元を断行する

2025年10月までに約300億円の自己株式取得を完了しました。これに伴い2025年度の総還元性向は、期初計画を大幅に上回る約204%となる見込みです。資本効率を重視し、株主への利益配分を強力に推し進める経営姿勢は、企業の財務健全性と将来への自信の表れであり、長期的なキャリアを築く上で安心材料となります。

活性炭事業で米国PFAS規制対応の大型契約を締結する

環境ソリューション分野において、米国最大の上下水道事業会社であるアメリカンウォーター社との契約を締結しました。有害物質であるPFAS(有機フッ素化合物)の除去に対する社会的ニーズを背景に、活性炭事業の成長性が高まっています。グローバルな社会課題の解決に直結するプロジェクトが増えており、環境技術に関わる専門人材の重要性が拡大しています。

米国ベンチャーNelumbo社を新規連結し技術力を強化する

2025年12月期当3Qより、表面処理技術に強みを持つNelumbo Inc.を新規連結しました。既存の化学技術にベンチャー企業の機動力と先端技術を融合させることで、次世代の成長ドライバー育成を加速させる方針です。研究開発や技術営業といった職種において、スタートアップ的なスピード感を持って新規事業を立ち上げるキャリア機会が拡大する可能性があります。

1 連結業績ハイライト

在庫評価差額のマイナス影響等により減益となるも、修正後の通期計画に対しては順調に推移しています。
2025年度1Q実績(上期実績を含む全体感)

出典:2025年度第1四半期 決算説明 P.2

売上高

5,934億円

前年同期比 △3.5%

営業利益

463億円

前年同期比 △37.3%

親会社株主純利益

227億円

前年同期比 △51.1%

2025年12月期第3四半期累計期間の売上高は5,934億円、営業利益は463億円となりました。欧米経済の停滞に伴う販売数量の減少や、在庫評価差額による利益の押し下げが響き、前年同期比で大幅な減益となっています。また、米国工場の製造一時停止といった一過性要因も業績に影響しました。

通期業績予想については、足元の事業動向を踏まえて営業利益を600億円へ下方修正しました。しかし、当3Q累計時点での修正後予想に対する進捗率は77.2%に達しており、達成に向けて業績は順調に推移しています。下期以降は原燃料価格の落ち着きや、タイ拠点を活用した拡販による利益貢献が期待されます。

2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド

基幹のビニルアセテート事業が調整局面にある一方、タイ拠点活用によるイソプレン事業の改善が目立ちます。
報告セグメントごとの売上高及び利益

出典:2025年12月期 第3四半期決算短信 P.4

ビニルアセテート事業

事業内容:ポバール樹脂、光学用ポバールフィルム、高機能中間膜など、世界シェアNo.1製品を多数有する最主力セグメントです。

業績推移:売上高3,013億円(前年同期比4.5%減)、営業利益485億円(同31.2%減)。欧米需要低迷と在庫評価差額が響きました。

注目ポイント:アジアでの建築・自動車用途向け競争激化に対し、「セントリグラス」等の高付加価値品へのシフトを加速しています。地産地消のグローバルネットワークを再構築できるサプライチェーン管理や、環境対応型素材の用途開発を担う技術人材が求められています。

注目職種:高機能素材開発、グローバルSCM企画、技術営業(建築・自動車向け)

イソプレン事業

事業内容:イソプレンゴム、エラストマー、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」などを展開。タイ拠点の活用が鍵となります。

業績推移:売上高585億円(前年同期比4.3%増)、営業損失21億円(前年は55億円の赤字)。タイ拠点の安定稼働で収支が大幅改善しました。

注目ポイント:電気・電子用途や自動車用途での需要回復を捉え、販売構成の改善が進んでいます。タイ拠点を起点としたアジア・グローバル市場への積極展開を進めており、製造プロセスの最適化や、現地の顧客ニーズを反映した製品カスタマイズを担えるプロフェッショナルが不可欠です。

注目職種:プラントエンジニア(海外駐在含む)、樹脂材料設計、グローバル営業

機能材料事業

事業内容:メディカル(歯科材料等)、環境ソリューション(活性炭等)、メタアクリルを展開する多角化領域です。

業績推移:売上高1,484億円(前年同期比2.5%減)、営業利益63億円(同32.1%減)。米国寒波や生産トラブルの影響を受けました。

注目ポイント:審美治療用歯科材料が欧米で好調。また、活性炭は米国の環境規制(PFAS除去)を背景に長期的成長が見込まれます。ヘルスケアや環境といった非ボラティリティ分野での事業拡大を牽引する、グローバルマーケティングや規制対応の専門職にチャンスがあります。

注目職種:ヘルスケア事業開発、薬事(医療機器)、環境ソリューション営業

繊維事業

事業内容:人工皮革「クラリーノ」やビニロンなどを展開。自動車の内装や高級アパレルに強みを持ちます。

業績推移:売上高437億円(前年同期比5.3%減)、営業利益12億円(同40.8%減)。欧州需要の低迷が響きました。

注目ポイント:EV(電気自動車)の生産調整影響を受けていますが、サーキュラーエコノミー(資源循環)に対応した環境配慮型人工皮革への需要は根強く、付加価値の高い「エシカル素材」としての地位を確立中です。サステナブル素材のブランド価値を高める企画人材が求められています。

注目職種:サステナブル素材企画、自動車内装営業、ブランド戦略

トレーディング事業

事業内容:クラレグループ内外の商材を扱う商社機能。樹脂・化成品や繊維製品の貿易を担います。

業績推移:売上高490億円(前年同期比1.7%増)、営業利益42億円(同3.2%増)。スポーツ・アウトドア衣料向けが好調でした。

注目ポイント:不透明な外部環境下でも唯一の増益を確保。グループの製造・販売を繋ぐハブとして機能しています。高機能原糸や環境対応商品の拡販が進んでおり、川下市場のトレンドを捉え、グループの技術と市場ニーズを結びつける調整力のある人材が活躍しています。

注目職種:海外営業(商社)、サプライチェーンコーディネーター、新規商材開発

3 今後の見通しと採用の注目点

米国関税政策などの地政学的リスクに対し、グローバル拠点を活用した「生産地と販売地のベストミックス」で対抗します。
米国関税政策による影響と対応

出典:2025年度第1四半期 決算説明 P.12

クラレは現在、米国の関税政策や欧州経済の停滞といった外部要因の影響を大きく受けています。質疑応答では、米国拠点からの輸出が多い現状に対し、「地産地消」の体制構築をさらに進める方針が示されました。これは単なるコスト削減ではなく、供給の安定性を高めるための戦略的布陣です。グローバルな生産拠点を機動的に組み替える、高度なオペレーション能力が現場に求められています。

また、2025年2月に見直した中期経営計画に基づき、総額1,500億円規模の株主還元を推進しつつ、早期のROE 10%達成を目標に掲げています。Nelumbo社の買収に見られるように、外部技術の取り込みによるポートフォリオの変革を模索しており、M&A後の組織統合(PMI)やオープンイノベーションを主導できるスペシャリストの需要が高まっています。

4 求職者へのアドバイス

HINT 志望動機のヒント

クラレは「世のため人のため、他人のやれないことをやる」という強い企業文化を持っています。志望動機では、活性炭による環境汚染物質の除去や、タイ拠点での収支改善といった具体的マイルストーンに触れつつ、自身の専門性が同社の「独創的な技術力」をどう商機に繋げられるかを語るのが有効です。また、Nelumbo社の買収など外部連携を強化する変革期であることを踏まえ、組織に新しい風を吹き込みたいという姿勢も評価されるでしょう。

Q&A 面接での逆質問例
  • 「Nelumbo社の新規連結など外部技術の導入が進んでいますが、中途入社者にはオープンイノベーションの橋渡しとしてどのような役割を期待されますか?」
  • 「米国関税政策などの地政学的リスクを受け、グローバルな生産体制の再配置において、現場の意思決定プロセスはどう変化していますか?」
  • 「活性炭事業のPFAS規制対応など、社会貢献度の高い事業領域において、若手や中途採用者が主導権を持って挑戦できる環境はありますか?」

5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)

決算資料や公式発表だけでは見えにくい、現場で働く社員・元社員の実体験(口コミ)を、転職判断の参考となるよう編集部で選定しています。
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休日も取りやすい環境が整っている

平日の勤務時間は比較的短く、休日も取りやすい環境が整っています。特に土日祝日はしっかり休めるので、プライベートの予定も立てやすいです。

(40代前半・システムエンジニア・女性) [キャリコネの口コミを読む]
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残業が常態化し予定を立てるのが難しい

勤務時間が長く、ワークライフバランスの改善が求められる職場でした。特に、定時を過ぎた残業が常態化しており、急な業務依頼や締め切りの変更が頻繁に発生するため、プライベートの予定を立てるのが難しかったです。休日も少なく、年末年始やゴールデンウィークの休暇がないため、リフレッシュする機会が限られていました。健康管理が難しく、心身の疲労が蓄積しやすい環境でした。フレックスタイム制やリモートワークの導入が進んでおらず、社員の声を反映する取り組みも少ない印象です。

(20代後半・システムエンジニア・女性) [キャリコネの口コミを読む]
※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。

使用した主な公開資料:

  • 2025年12月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  • 2025年度第1四半期 決算説明資料
  • 株式会社クラレ 「2025年度第1四半期決算説明会」質疑応答要旨

この記事の執筆者

2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。


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