0 編集部が注目した重点ポイント
① Altium社の買収完了でプラットフォーム企業へ転換する
2024年8月1日に電子機器設計支援ソフトの世界的リーダーであるAltium社の買収を完了しました。これにより、従来の半導体単体を提供する「プロダクト企業」から、設計・ライフサイクル管理までを一気通貫で支援する「プラットフォーム企業」への変革を加速させています。ソフトウェア領域でのキャリア機会が劇的に拡大する重要な転換点です。
② 産業・インフラ・IoT事業が前年比で成長を牽引する
市場環境が軟化している自動車向け事業に対し、産業・インフラ・IoT向け事業は前年同期比で9.8%の増収を達成しました。特にインフラ向けが堅調に推移しており、特定の市場に依存しない多角的な事業構造へのシフトが進んでいます。多種多様な産業アプリケーションの知識を持つエンジニアにとって、活躍の場が広がっています。
③ M&Aシナジーによる収益基盤の強化を推進する
買収したAltium社やTransphorm社の技術を統合し、コスト削減と売上拡大の両面でシナジー創出を開始しています。Altium社のARR(年間経常収益)は前年同期比15%増と好調で、2025年内には統合プラットフォーム「Renesas 365」のローンチも予定されています。買収後の統合プロセス(PMI)に関わる管理部門や、クロスセルを推進する営業職の重要性が高まっています。
1 連結業績ハイライト
出典:2025年12月期 第3四半期 プレゼンテーション P.6
売上収益(3Q)
3,342億円
(前年同期比 -3.2%)営業利益率(3Q)
30.9%
(前年比 +2.4pts)
2025年12月期第3四半期の売上収益は3,342億円となり、前年同期比では微減となりましたが、Non-GAAP営業利益率は30.9%と高い収益性を確保しています。なお、Non-GAAP指標とは、企業買収に伴う無形資産の償却や株式報酬費用など、恒常的な経営成績と直接関係のない一過性の項目を調整したものです。
通期予想に対する進捗状況については、9か月累計の売上収益が9,676億円に達しており、通期予想(1兆3,076億円)に対し、進捗率は約74.0%と概ね順調に推移しています。自動車市場の在庫調整という向かい風がある中で、コスト削減やミックス改善により利益率が向上している点は、転職先としての安定性と成長性を示すポジティブな材料といえます。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2025年12月期 第3四半期 プレゼンテーション P.8
自動車向け事業
事業内容:エンジンや車体を制御するマイコン、車載情報機器向けのSoC(System on Chip)、パワー半導体などを提供しています。
業績推移:3Q売上収益は1,592億円(前年同期比 14.1%減)。市場の軟化や流通在庫の調整により減収となりました。
注目ポイント:短期的には在庫調整の影響を受けていますが、車載制御および車載情報領域での高い市場シェアは揺らいでいません。次世代のE/Eアーキテクチャ(車両の電子・電気構造)に対応する高機能マイコンの開発には、組み込みソフトウェアの深い専門性を持つ人材が不可欠となっています。
産業・インフラ・IoT向け事業
事業内容:スマート工場を実現する産業用マイコン、通信インフラ向けの高性能アナログ、家電・ヘルスケア向けIoTソリューションを展開しています。
業績推移:3Q売上収益は1,737億円(前年同期比 9.8%増)。全社売上の過半を占めるまでに成長しています。
注目ポイント:インフラ向け事業が好調に推移し、全社の成長ドライバーとして機能しています。特にデータセンター向けや工場自動化(FA)領域でのプレゼンスが高まっており、BtoBビジネスの経験者や、特定の産業ドメインに精通したソリューション営業・開発者のニーズが急増しています。
ソフトウェア・プラットフォーム(Altium等)
事業内容:(注:2024年3Qより新規連結)電子回路基板の設計ソフトウェアや、クラウドベースの設計ライフサイクル管理ツールを提供しています。
業績推移:グループARRは前年同期比 15%増とオーガニック成長を継続。サブスクリプション収入の拡大が進んでいます。
注目ポイント:ルネサスが目指す「プラットフォーム企業への転換」の核となる事業です。ハードウェアとソフトウェアを統合したUX(ユーザー体験)の提供を目指しており、SaaSビジネスの知見や、クラウド基盤の開発・運営スキルを持つIT人材にとって、既存の半導体メーカーにはない刺激的なフィールドが用意されています。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2025年12月期 第3四半期 プレゼンテーション P.2
ルネサスは現在、従来の半導体販売モデルからの脱却を図っています。年内には新プラットフォーム「Renesas 365」のローンチを予定しており、設計者がクラウド上でデバイスの選定からシミュレーション、試作までを完結できる環境を構築します。これにより、エンジニア顧客との接点が大幅に強化され、単なる「部品メーカー」ではない強固なビジネスモデルが確立されます。
また、Wolfspeed社との再建支援契約(RSA)に基づき、同社への預託金を転換社債や株式に転換し、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の安定供給を確保する体制も整えられています。さらに、2026年には「Capital Market Day」を開催し、プラットフォーム企業としての新たな進捗報告が行われる予定です。今後の採用においては、これらデジタル変革を推進できる人材や、グローバルなM&Aシナジーを具体化できる能力がより重視されるでしょう。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
ルネサスが掲げる「プロダクトからプラットフォームへ」という戦略的転換に、自身のスキルがいかに寄与できるかを言語化しましょう。特にAltium社との統合によって、半導体メーカーとしての枠を超えた「デジタライゼーション」が進んでいる点は、IT系出身者にとっても強力な志望動機になります。また、「産業・インフラ・IoT」という安定成長領域での市場拡大についても触れると、事業理解の深さをアピールできます。
面接での逆質問例
「Altium社との統合によるシナジー創出において、現場レベルではどのような部門間連携が求められていますか?」「年内ローンチ予定のRenesas 365は、既存のハードウェア営業のスタイルをどのように変えていく想定でしょうか?」「車載市場の調整局面において、中長期的な成長に向けた次世代開発へのリソース配分はどのように判断されていますか?」など、最新の経営戦略に基づいた具体的な質問が効果的です。
5 転職者が知っておきたい現場のリアル
休日出勤はほぼありません
月一回は見回りのある定時退勤日がありますので、この日はみなさん率先して早く帰ってます。休みは基本、土日祝で休日出勤はほぼありません。
(30代後半・電気・電子回路設計・男性) [キャリコネの口コミを読む]労働環境に問題
労働環境に問題を感じる。会社設立から何度も人員削減を繰り返しているため、中堅以上で経験豊富な人材が少ないです。そのため、若手社員は先輩を頼ることが難しいでしょう。私は若手ではありませんが、それでも「誰に聞いたらよいのか」わからず、困惑することが多々ありました。
(40代前半・システムコンサルタント・男性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料
- ルネサス エレクトロニクス株式会社 2025年12月期 第3四半期 プレゼンテーション
- ルネサス エレクトロニクス株式会社 2025年12月期 第3四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- ルネサス エレクトロニクス株式会社 2025年12月期 第3四半期 決算概要(ニュースリリース)



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。