0 編集部が注目した重点ポイント
① 中間純利益で過去最高を更新し、通期業績予想を上方修正する
2025年度中間期の親会社株主純利益は1,713億円を記録し、中間期として過去最高益を更新しました。これを受け、通期の純利益予想を期初から150億円引き上げ、2,950億円へ上方修正しています。好調な業績を背景に、配当予想も10円増額の年間170円とするなど、株主還元への姿勢も強めています。
② 中計目標を前倒しで達成し、自己資本ROEは10%台へ到達する
現・中期経営計画の主要KPIである自己資本ROE(自己資本に対する利益率)が10.75%となり、当初目標の8%以上を前倒しで大幅に達成しました。政策保有株式の削減加速や、高採算な法人向けプロダクト与信へのシフトといった構造改革が実を結んでおり、今後はROE10%を「通過点」としたさらなる成長を目指す段階に入っています。
③ 資本活用を「新たなフェーズ」へ移行し、成長投資を加速する
2025年9月末時点で、健全性の指標であるCET1比率が運営レンジ上限の11%程度に到達しました。これにより、蓄積した資本を住信SBIネット銀行への追加投資(年度内目途)や、資産運用ビジネスの強化に優先配分する戦略へ舵を切っています。攻めの姿勢を強めることで、転職者にとっても新規事業やM&Aに関連するキャリア機会が拡大しています。
1 連結業績ハイライト
出典:三井住友トラストグループ 2025年度 中間期決算説明会 P.6
実質業務純益
1,819億円
親会社株主純利益
1,713億円
前年同期比(利益)
+29.0%
2025年度中間期は、日本株の高騰や円安といった外部環境の追い風に加え、構造的な「稼ぐ力」が向上したことで、中間期としての最高益を塗り替えました。特に、北米貨車リース事業(MSRT)の売却完了に伴う特別利益が約412億円計上されたことも、利益を大きく押し上げています。経費についてはシステム投資等で増加傾向にあるものの、収益の伸びがそれを上回り、経営効率を示すOHR(経費率)は61.9%へと改善しました。
通期予想に対する進捗状況を評価すると、親会社株主純利益の達成率は修正後の通期目標(2,950億円)に対して58.0%となっています。一見すると基準を下回るように見えますが、期初予想比では61%に達しており、下期の不透明な市場環境を織り込んだ上での上方修正であるため、全体としては極めて堅調な推移と言えます。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:三井住友トラストグループ 2025年度 中間期決算説明会 P.8
個人顧客ビジネス(三井住友信託銀行等)
事業内容:富裕層や資産形成層向けのコンサルティング、住宅ローン、ウェルス・マネジメント事業を展開しています。
業績推移:実質業務純益は277億円(前年同期比+49億円)。預金利息収益の増加により大幅増益を達成しました。
注目ポイント:対面コンサルだけでなく、NEOBANKやアプリを活用したデジタル接点の強化を推進中です。金利のある世界への回帰に伴い、預金獲得と高度な運用提案の両立が求められており、FPやプライベートバンカーのニーズが高まっています。
法人顧客ビジネス(三井住友信託銀行等)
事業内容:大企業・上場企業向けに、融資、証券代行、ESGソリューション等を提供。同社の収益の柱です。
業績推移:実質業務純益は969億円(前年同期比+132億円)。証券代行や法人与信手数料が好調に推移しました。
注目ポイント:従来の「融資」から「資産流動化」や「サステナブルファイナンス」といったプロダクト型へのシフトが加速しています。顧客企業の資本効率向上を支援するコンサルティング能力を持つ人材への期待が極めて大きくなっています。
投資家・運用ビジネス(三井住友トラストAM、アモーヴァAM等)
事業内容:年金基金や機関投資家向けの資産運用・管理。アセットマネジメント機能を集約しています。
業績推移:実質業務純益は合計で513億円。株高による運用残高の拡大が収益増に大きく寄与しました。
注目ポイント:日興アセットがアモーヴァ・アセットマネジメントへと商号変更し、グローバル展開を加速させています。プライベートアセット(インフラ・不動産等)への投資枠5,000億円を設定しており、オルタナティブ運用の専門家を急募しています。
不動産・マーケット事業
事業内容:不動産仲介(法人・個人)、証券化受託、マーケットにおける資金運用(ALM)を担います。
業績推移:不動産仲介手数料は265億円。個人向けは過去最高を更新しましたが、大型案件の反動で法人向けは微減となりました。
注目ポイント:データセンターや物流施設など、新しいアセットへの投資ニーズが拡大しています。信託機能を活かした高度なスキーム構築が必要とされており、金融と不動産の両方の知見を持つ人材が不可欠です。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:三井住友トラストグループ 2025年度 中間期決算説明会 P.11
今後の成長戦略における最大の注目点は、2026年5月に公表予定の新たな中長期目標です。政策保有株式の削減が完了した後の、安定的なビジネス利益のみで成長する「株益なき世界」を見据え、資産運用・管理ビジネスを軸とした利益構造への転換を急いでいます。
特にIT・デジタル領域には、2030年度に向けて累計1,000億円超を投じる計画です。生成AIを活用した業務プロセスの変革や、デジタルアセット(セキュリティトークン)管理プラットフォームの構築など、伝統的な銀行の枠を超えた技術革新を推進しています。これに伴い、高度IT人材やデータサイエンティストの採用枠が大幅に拡大しています。また、住信SBIネット銀行への追加投資検討(資料内で言及)など、インオーガニックな成長にも意欲的であり、戦略投資の経験者にとっても刺激的な環境と言えるでしょう。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
「貯蓄から投資へ」という日本の大きな資金循環の変化において、銀行・信託・運用のすべての機能を備えた同グループは唯一無二の立ち位置にあります。特に「インパクトエクイティ投資」や「森林信託」など、社会課題解決を直接ビジネスに昇華させる姿勢は、単なる利益追求以上のやりがいを求める方に最適です。自身の専門性が、同社の掲げる「資金・資産・資本の好循環」のどこに貢献できるかを具体化すると、強い志望動機になります。
面接での逆質問例
- 「資産運用戦略投資枠でのM&Aが進んでいますが、新しく加わった海外運用子会社とのグローバルな人材交流やノウハウ共有はどのように行われていますか?」
- 「IT投資1,000億円超という野心的な計画の中で、私の持つデジタルスキルを既存ビジネスの破壊的変革(DX)にどのように活かしてほしいと考えていますか?」
- 「資本活用が新たなフェーズに入り、成長領域への資本配分を優先する中で、現場の意思決定のスピードは以前と比べてどのように変化しましたか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル
※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
- 三井住友トラストグループ 2025年度 中間期決算説明会(2025年11月19日)
- 三井住友トラストグループ株式会社 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。