0 編集部が注目した重点ポイント
① 不採算事業の撤退と国内生産体制の再構築を加速させる
2025年度より「中期経営計画2027」に基づき、構造改革を断行しています。海外ではOji Fibre Solutionsの段原紙事業から撤退を完了(2025年6月)し、豪州パッケージング事業の売却も決定しました。国内でも王子ネピアの工場閉鎖など最適生産体制の構築を進めており、効率化による収益力の底上げを図っています。
② 大型M&Aによりサステナブルパッケージング分野を強化する
2024年4月にWalki社(フィンランド)を新規連結したことに加え、2025年9月には溶解パルプやバイオエタノールを手掛けるAustroCel社(オーストリア)の買収を決定しました。従来の紙パルプ事業を超え、環境負荷低減に寄与する高付加価値なサステナブル製品やバイオマスビジネスへのポートフォリオ転換を急ピッチで進めています。
1 連結業績ハイライト
出典:2025年度 第2四半期 決算説明会資料 P.6
売上高
9,150億円
前年同期比 -0.9%
営業利益
167億円
前年同期比 -55.0%
中間純利益
109億円
前年同期比 -55.0%
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が9,150億円、営業利益が167億円となりました。Walki社の新規連結効果はあったものの、海外でのパルプ市況悪化や、物流費・人件費といったコスト上昇が利益を圧迫しました。また、為替レートの変動に伴う外貨建債権債務の評価替えにより、為替差損が発生したことも経常利益を押し下げる要因となりました。
通期予想に対する進捗状況について、修正後の通期営業利益予想450億円に対し、中間期実績は167億円で進捗率は37.1%となっています。パルプ市況の回復遅れや国内の販売数量減を背景に通期予想を下方修正しており、現時点では進捗が遅れている状況です。下期に向けた着実な価格転嫁と構造改革による効果の創出が鍵となります。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2025年度 第2四半期 決算説明会資料 P.9
生活産業資材
【事業内容】 段ボール原紙・加工、白板紙、包装用紙、および「王子ネピア」ブランドを展開するホームケア・ウェルネスケア事業を担当。(注:当期よりサステナブルパッケージング事業等を集約)
【業績推移】 売上高4,620億円(前年比 +2.7%)、営業利益52億円(同 -39.3%)。Walki社の買収効果により増収を確保しました。
【注目ポイント】 グローバル展開が加速しており、東南アジアでの液体紙容器新工場の設立や、欧米を拠点とするWalki社との連携など、「環境配慮型パッケージ」のスペシャリストとしての活躍機会が広がっています。不採算工場の閉鎖に伴う生産性の最適化も進めており、サプライチェーン管理の経験者にとっても挑戦しがいのあるフェーズです。
機能材
【事業内容】 特殊紙、感熱紙、粘着材、フィルムなど、高度な加工技術を要する高付加価値製品の製造・販売。
【業績推移】 売上高1,155億円(前年比 -4.9%)、営業利益54億円(同 -32.1%)。国内は価格修正により利益を維持しましたが、海外の価格競争が影響しました。
【注目ポイント】 変圧器用プレスボードの生産能力を現行の約3倍に増強することを決定するなど、電力インフラ需要を取り込んだ成長戦略が鮮明です。また、通販向けヒートシール紙など成長分野へのシフトを推進しており、専門性の高い技術営業や開発人材のニーズが高まっています。
資源環境ビジネス
【事業内容】 海外・国内での植林、パルプ製造、およびエネルギー(バイオマス発電等)事業を展開。
【業績推移】 売上高1,909億円(前年比 -5.6%)、営業利益53億円(同 -70.0%)。パルプ市況の下落が直撃し大幅減益となりました。
【注目ポイント】 業績は市況に左右されるものの、木質バイオマスビジネスの中核化に向けた投資を継続しています。豪州で動物用医薬品原薬の承認を取得するなど、医薬・ヘルスケアという新領域への進出が加速しており、既存の森林アセットを活用した新規事業開発を牽引できる人材に期待が寄せられています。
印刷情報メディア
【事業内容】 新聞用紙、印刷用紙、情報用紙の製造・販売。成熟市場における生産体制の最適化を担う。
【業績推移】 売上高1,362億円(前年比 -6.8%)、営業利益35億円(同 -44.4%)。需要減少が継続しており、厳しい状況が続いています。
【注目ポイント】 苫小牧工場のマシン停止など、需要構造の変化に合わせた抜本的な生産体制最適化を推進中です。単なる縮小ではなく、既存設備の転用や高付加価値品へのシフトなど、ものづくりの変革を通じた収益化が課題となっており、変革管理やプロセス改善のスキルを持つ人材の活躍の場があります。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2025年度 第2四半期 決算説明会資料 P.32
今後の成長戦略において特筆すべきは、森林資源の多角的活用を加速させる「木質バイオマスビジネスの中核化」です。インドのChemfield社の買収や、オーストリアのAustroCel社の買収決定により、溶解パルプやバイオリファイナリー(再生可能な生物資源を原料に、バイオ燃料や化学品を製造する技術)領域でのグローバルな主導権を狙っています。また、農業用紙製マルチシート「OJIサステナマルチ」による収量向上など、サステナブル製品の売上高を2035年度までに3,000億円規模に拡大する意向です。
経営陣の姿勢としては、政策保有株式の縮減による資産のスリム化や、配当性向50%への引き上げ、自己株式取得の機動的実施など、資本効率の向上を強く意識しています。構造改革に伴う痛みも伴いますが、2027年度のROE 8%達成に向けた変革の意思は固く、守りの「製紙業」から攻めの「環境資源企業」へと転換する過程で、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる余地は非常に大きいと言えます。
4 求職者へのアドバイス
王子グループは今、単なる紙メーカーから「木質バイオマスを活用した総合環境企業」へと劇的なポートフォリオ転換の真っ只中にあります。面接では、伝統ある事業基盤を活かしつつ、サステナブルな新市場(バイオ医薬品、環境配慮型パッケージなど)を切り拓こうとする姿勢に共感を示しましょう。特に、Walki社やAustroCel社の買収による「グローバルな事業変革」に自身のどのような専門性(海外ビジネス、研究開発、構造改革など)を貢献できるかを具体的に伝えるのが効果的です。
- 「中期経営計画2027で掲げられている不採算事業の撤退と成長分野への投資というメリハリの中で、現場のモチベーション維持や組織文化の統合(PMI)において注力されていることはありますか?」
- 「木質バイオマスを起点とした医薬品や代替素材の開発において、異業種出身の専門人材には具体的にどのようなリーダーシップを期待されていますか?」
- 「海外売上高比率が高まる中で、国内の製造拠点からグローバルなサプライチェーンマネジメントを担うキャリアパスはどのように描けるでしょうか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
残業代は働いた分つけることができる
よほど緊急な案件が入らない限り月55時間以上残業してはいけないことになっているが、残業代は働いた分つけることができる。
(27歳・技術・男性) [キャリコネで給与明細を見る]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料
- 王子ホールディングス株式会社 2025年度 第2四半期 決算説明会資料(2025年11月7日発表)
- 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(2025年11月7日発表)



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。