※本記事は、株式会社ナカノフドー建設の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ナカノフドー建設ってどんな会社?
日本と東南アジアで建設・不動産事業を展開する総合建設会社です。
■(1) 会社概要
1885年に石材業として創業し、1942年に株式会社中野組として法人化しました。1975年のシンガポール現地法人設立を皮切りに東南アジアへ進出しています。2004年に不動建設株式会社の建築事業を譲り受け、現社名へ変更しました。2022年の市場区分見直しにより、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は1,357名、単体では783名です。筆頭株主は創業家に関連する公益財団法人大島育英会で、第2位はその他の関係会社である不動産賃貸業の関東興業、第3位は大株主として名を連ねる個人です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人大島育英会 | 19.66% |
| 関東興業 | 12.65% |
| 大島義和 | 8.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は飯塚隆氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯塚隆 | 代表取締役社長 | 1982年同社入社。東京本店長、営業本部長等を経て2023年4月より現職。 |
| 大島義信 | 取締役副社長 | 京都大学大学院准教授等を経て2020年同社入社。社長室長等を経て2023年4月より現職。 |
| 加藤頼宣 | 取締役専務執行役員 | 三菱東京UFJ銀行渋谷支社長を経て2011年同社入社。国内建設事業本部副本部長等を経て2015年4月より現職。 |
| 小古山昇 | 取締役常務執行役員 | 1985年同社入社。国内建設事業本部長、総務部長等を経て2025年4月より現職。 |
社外取締役は、河村守康(元株式会社虎ノ門実業会館社長)、福田誠(元不動建設株式会社社長)、小髙光晴(株式会社MBサービス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」の報告セグメント、および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設事業
日本国内および東南アジア(シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム)において、総合建設業を営んでいます。オフィスビル、工場、倉庫、商業施設、教育施設、医療施設、住宅など多岐にわたる建築工事および土木工事を手掛けています。
工事請負契約に基づき、顧客から請負代金を受け取ります。日本国内ではナカノフドー建設および連結子会社等が、東南アジアではナカノシンガポール等の現地法人が運営を行っています。
■(2) 不動産事業
日本国内および東南アジア(マレーシア)において、不動産賃貸業を展開しています。自社保有のオフィスビル、賃貸マンション、商業施設などを活用し、安定的な収益基盤の構築を図っています。
テナントからの賃貸料収入が主な収益源です。日本国内ではナカノフドー建設および株式会社NFリアルティ等が、東南アジアではナカノコンストラクションSDN.BHD.が運営を行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、再生可能エネルギー事業(太陽光・風力発電事業)、保険代理業、PFI事業などを行っています。
売電収入や保険手数料などが収益源となります。再生可能エネルギー事業はナカノフドー建設が、保険代理業は株式会社NFエージェンシーが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台から1,100億円台で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面では、2022年3月期に経常損失を計上しましたが、その後は30億円台の利益水準まで回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,160億円 | 965億円 | 1,145億円 | 1,074億円 | 1,105億円 |
| 経常利益 | 18億円 | -6.3億円 | 31億円 | 38億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | -0.6% | 2.7% | 3.6% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 21億円 | 16億円 | 11億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率は改善傾向にあります。営業利益も増加しており、本業の収益性は堅調に推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,074億円 | 1,105億円 |
| 売上総利益 | 92億円 | 99億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.6% | 9.0% |
| 営業利益 | 32億円 | 33億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が34億円(構成比45.4%)、賞与引当金繰入額が3.5億円(同4.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設事業(日本)は、売上高が減少したものの、工事採算の改善などにより営業利益は大幅に増加しました。建設事業(東南アジア)は、売上高が増加したものの、一部工事における工事採算の低下などにより営業利益は大幅に減少しました。
不動産事業(日本)は、賃貸事業を中心に売上高が増加し、営業費用の減少などもあって増収増益となりました。その他の事業は売上高の増加などにより増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業(日本) | 837億円 | 811億円 | 15.9億円 | 25.9億円 | 3.2% |
| 建設事業(東南アジア) | 223億円 | 280億円 | 9.7億円 | 0.0億円 | 0.0% |
| 不動産事業(日本) | 13億円 | 13億円 | 6.0億円 | 6.6億円 | 50.0% |
| その他の事業 | 1.2億円 | 1.3億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 22.4% |
| 連結(合計) | 1,074億円 | 1,105億円 | 31.9億円 | 32.8億円 | 3.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業、投資、財務の3つのキャッシュ・フローがすべてマイナスとなっていますが、決して「資金繰りが危機的な末期型」ではありません。営業CFのマイナスは、税金等調整前当期純利益(約37億円)をしっかりと計上している一方で、売上債権の増加や仕入債務の減少といった建設業特有の運転資金の増減によるものです。
また、財務CFのマイナスは長期借入金の返済や配当金の支払によるものであり、むしろ順調に有利子負債の削減と株主還元ができている健全な状態を示しています。期末の現金残高(現金及び現金同等物)も約200億円を確保しており、資金繰りに懸念は見られません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -21億円 | -44億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -4億円 |
| 財務CF | -8億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誠意と熱意と創意の三意を以てお客様の信頼におこたえし、社業の発展を通して社会に貢献する」という社是を経営の基本方針としています。この方針のもと、コンプライアンスを徹底し、技術力の強化を中心とする経営基盤の改革を推進して持続的成長を目指しています。
■(2) 企業文化
加速する経営環境の変化に適応するため、技術力の強化を中心とする経営基盤の改革を推進する風土があります。また、社是にある「誠意と熱意と創意」を重視し、顧客の信頼に応える姿勢を大切にしています。持続的成長に向けた改革と、社会貢献への意識が根底にあります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、3ヵ年の中期経営計画「中計86」をスタートさせています。2028年3月期(最終年度)の数値目標として以下を掲げています。
* 建設事業売上高合計:1,270億円
* 連結営業利益:33億円
* 連結純利益:25億円
* 海外事業比率:35%以上
* 投資総額:50億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「国内建設事業のさらなる収益性改善と海外建設事業の拡大」を基本方針としています。国内では業務内製化やリノベーション事業強化、土木事業拡大を推進し、海外では東南アジアでのエリア拡大や拠点体制拡充を進めます。不動産その他事業では収益力強化や再生エネルギー事業拡大を検討します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
国内建設事業では「人材力の充実」を掲げ、経験重視の人材育成と次期リーダー育成を推進しています。海外事業では現地拠点の増員を含む人材確保と育成に注力しています。また、所定外労働の削減や男性社員の育児休業取得推進など、働きやすい環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.6歳 | 16.7年 | 7,625,010円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 79.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内建設市場リスク
主要事業である国内建設事業において、建設市場が想定以上に縮小した場合や、主要資材価格が急激に上昇した場合、また技能労働者が著しく減少するなど事業環境に変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外建設市場リスク
東南アジアを中心に海外建設事業を展開していますが、進出国における政治・経済情勢や法制度などに著しい変化が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 不動産市場リスク
主に国内で不動産賃貸事業を行っていますが、賃貸市場の需給動向の変化などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 工事施工等リスク
工事施工中に予期せぬ重大事故が発生したり、完成物件に不具合が生じたりすることで、多額の修復費用や訴訟等による損害賠償が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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