※本記事は、株式会社ナカノフドー建設の有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナカノフドー建設ってどんな会社?
■(1) 会社概要
1885年に開業し、石材を主とする土木建築工事を手がけたのが始まりです。1942年に中野組へ組織変更し、1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1975年以降は東南アジアへ進出し海外事業を拡大しています。2004年にナカノフドー建設へ商号変更し、不動建設の建築事業を譲り受けました。
現在の従業員数は連結で1,394名、単体で790名となっています。筆頭株主は関連財団である公益財団法人大島育英会で、第2位はその他の関係会社として同社に工事の発注等を行う関東興業、第3位は個人の大島義和氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人大島育英会 | 20.82% |
| 関東興業 | 12.65% |
| 大島義和 | 7.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は飯塚隆氏が務めており、社外取締役の比率は27.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯塚隆 | 代表取締役社長 | 1982年4月同社入社。2019年4月常務執行役員東京本店長等を経て、2023年4月より現職。 |
| 大島義信 | 取締役副社長 | 2008年5月京都大学大学院特定准教授。2020年4月同社入社。2021年執行役員等を経て、2023年4月より現職。 |
| 加藤頼宣 | 取締役 | 2009年5月三菱東京UFJ銀行渋谷支社長。2011年7月同社入社。2015年専務執行役員等を経て、2026年4月より現職。 |
| 小古山昇 | 取締役常務執行役員 | 1985年4月同社入社。2019年常務執行役員国内建設事業本部長等を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、河村守康(元三菱地所等)、福田誠(元不動建設社長等)、小髙光晴(関東興業専務取締役等)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」「不動産事業」および「その他」の事業を展開しています。
■建設事業
日本および東南アジア(シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム)において、建築物等の建設および設計を請け負う総合建設業を展開しています。
主に民間や官公庁の顧客から工事請負契約に基づく建設代金を受け取ります。日本の事業はナカノフドー建設や連結子会社のトライネットなどが担当し、東南アジアではナカノシンガポールやナカノコンストラクションなどが運営を行っています。
■不動産事業
日本および東南アジアにおいて、賃貸オフィスビル、商業施設、賃貸住宅などを所有し、不動産賃貸事業を展開しています。
保有する不動産物件のテナントや利用者から賃貸料などの収益を得るモデルです。日本ではナカノフドー建設およびNFリアルティなどが運営し、東南アジアではマレーシアのナカノコンストラクションなどが担当しています。
■その他の事業
太陽光・風力発電による再生可能エネルギー事業や、保険代理業、PFI事業などを展開しています。
ナカノフドー建設や連結子会社のNFエージェンシーなどが事業の運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は965億円から1381億円へと拡大傾向にあります。経常利益は一時赤字を計上したもののその後回復し、直近では60億円に到達しています。利益率もマイナスから4.3%へと順調に改善しており、堅調な成長を遂げていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 965億円 | 1145億円 | 1074億円 | 1105億円 | 1381億円 |
| 経常利益 | -6億円 | 31億円 | 38億円 | 37億円 | 60億円 |
| 利益率(%) | -0.6% | 2.7% | 3.6% | 3.4% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 16億円 | 11億円 | 22億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
2期間の損益構成を比較すると、売上高は1105億円から1381億円へと大きく成長しています。それに伴い売上総利益も99億円から136億円へ増加し、売上総利益率は9.0%から9.8%へと改善しました。営業利益も順調に伸びており、収益性が向上している状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1105億円 | 1381億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 136億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.0% | 9.8% |
| 営業利益 | 33億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が44億円、賞与引当金繰入額が4億円を占めています。
■(3) セグメント収益
売上高のセグメント別推移を見ると、日本の建設事業が811億円から755億円へと減少した一方、東南アジアの建設事業は280億円から611億円へと大幅に増加し、全体の増収を牽引しました。日本の不動産事業は13億円から14億円へと安定して推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本建設事業 | 811億円 | 755億円 |
| 東南アジア建設事業 | 280億円 | 611億円 |
| 日本不動産事業 | 13億円 | 14億円 |
| その他 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 1105億円 | 1381億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」のパターンを示しています。営業利益や資産売却等による手元資金を活用して、借入金の返済などを進めている改善局面にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -44億円 | 104億円 |
| 投資CF | -4億円 | 5億円 |
| 財務CF | -9億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「誠意と熱意と創意の三意を以てお客様の信頼におこたえし、社業の発展を通して社会に貢献する」という社是を経営の基本方針に掲げています。社会から信頼され、社業を通じて持続的な発展と社会への貢献を果たすことを存在意義として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
グループ全社でコンプライアンスを徹底する高い倫理観を重視しています。また、加速する経営環境の変化に適応するため、技術力の強化を中心とする経営基盤の改革を推進し、持続的成長を目指す柔軟で前向きな組織風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「中計86」(2026年3月期~2028年3月期)において、最終年度の数値目標を以下の通り定めています。
* 建設事業売上高合計:1,270億円
* 連結営業利益:33億円
* 連結純利益:25億円
* 海外事業比率:35%以上
* 成長投資:69億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「国内建設事業のさらなる収益性改善と海外建設事業の拡大」を基本方針に掲げています。国内建設事業では、技術力の強化による顧客対応の迅速化や人材力の向上を図ります。海外建設事業では、外資系顧客への対応強化や事業領域の拡大を推進し、あわせてM&AやDXの推進、人的資本への投資にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の育成と技術の継承と蓄積」の方針のもと、ワークエンゲイジメントの向上を目指した環境整備と自立型人材の育成強化を推進しています。施工管理技術者等の専門人材の育成や若手社員の早期戦力化を図るとともに、海外事業においては現地人材の育成や拠点間の人材交流を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 16.1年 | 8,121,691円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 84.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内建設市場リスク
国内の建設市場において、想定を上回る市場規模の縮小や主要資材価格の急激な上昇、技能労働者の著しい減少など、事業環境に変化が生じた場合、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外建設市場リスク
東南アジアを中心に海外建設事業を展開しているため、進出国の政治・経済情勢や法制度等に著しい変化が生じた場合、事業運営や収益に悪影響を及ぼすリスクを抱えています。
■(3) 工事施工等のリスク
工事施工中の予期せぬ重大事故や完成物件の不具合等が発生した場合、多額の修復費用や訴訟等による損害賠償の支払いが生じ、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 取引先信用リスク
発注者や協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合、資金の回収不能や施工の遅延等が発生し、事業の進捗および業績に影響を及ぼす可能性があります。



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