※本記事は、三機工業株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三機工業ってどんな会社?
建築設備を中心に、搬送システムや水処理施設などのインフラ構築も手掛ける総合エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1949年に旧三機工業の第二会社として設立され、翌1950年に東京証券取引所へ上場しました。1980年には建築・機械・環境各事業の子会社を設立し体制を強化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。2025年度には創立100周年を迎える歴史ある企業です。
同社グループの連結従業員数は2,653名、単体では2,102名です。主要株主には、資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行や明治安田生命保険などの金融機関に加え、取引先持株会である三機共栄会が名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.50% |
| 明治安田生命保険(常任代理人 日本カストディ銀行) | 9.93% |
| 三機共栄会 | 5.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性1名(社外)の計17名で構成され、女性役員比率は5.9%です。代表取締役社長は石田博一氏が務めています。社外取締役比率は29.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石田 博一 | 代表取締役社長 | 1983年入社。建築設備事業本部営業統括本部長、経営企画室長等を経て、2020年4月より現職。 |
| 長谷川 勉 | 代表取締役会長 | 1975年入社。営業統括本部長、建築設備事業本部長、代表取締役社長執行役員等を経て、2020年4月より現職。 |
| 工藤 正之 | 取締役専務執行役員 | 1985年入社。ファシリティシステム事業部長、サステナビリティ推進本部長、コーポレート本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 飯嶋 和明 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。技術研究所長、R&Dセンター長、プラント設備事業本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 新保 順一 | 取締役専務執行役員 | 1988年入社。建築設備事業本部営業統括本部長、東京支社長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 川辺 善生 | 取締役専務執行役員 | 1984年入社。管理本部長、経理本部長、最高財務責任者等を経て、2025年4月より現職。 |
| 三石 栄司 | 取締役 | 1972年入社。中部支社長、建築設備事業本部長、取締役副社長執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、山本幸央(元三井生命保険社長)、柏倉和彦(元SMBCファイナンスサービス会長)、河野圭志(元日本銀行情報サービス局長)、松田明彦(元東京ガス執行役員)、梅田珠実(元厚生労働省大臣官房審議官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建築設備事業」「機械システム事業」「環境システム事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建築設備事業
ビル空調衛生、工場向け産業空調、電気設備およびファシリティシステムなど、建築設備全般に関する事業を行っています。オフィスビル、工場、病院、研究所など多様な施設に対し、快適な環境を提供しています。
収益は、顧客からの工事請負代金が主となります。運営は、主に三機工業および三機テクノサポートなどが担当しています。
■(2) 機械システム事業
搬送システムおよび搬送機器に関する製造販売事業を行っています。工場の自動化や物流の効率化に貢献するシステムを提供しています。
収益は、顧客への製品販売および設置工事代金から得ています。運営は、主に三機工業および三機産業設備が行っています。
■(3) 環境システム事業
上下水道施設および廃棄物処理施設に関する事業を行っています。社会インフラとしての水処理や環境保全設備の設計・施工を手掛けています。
収益は、官公庁等からの工事請負代金や運営・維持管理費が主となります。運営は、主に三機工業、三機グリーンテック、三機アクアテックおよびAQUACONSULT Anlagenbau GmbHなどが担当しています。
■(4) 不動産事業
同社が保有する不動産の賃貸および管理事業を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料収入等です。運営は三機工業が行っています。
■(5) その他
主に保険代理事業、リース事業および人材派遣事業等を行っています。
収益は、手数料収入やリース料などが主となります。運営は、主に三機パートナーズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期の1,901億円から2025年3月期の2,531億円へと拡大傾向にあります。特に当期は、大型案件の進捗により売上高が伸長しました。利益面では、経常利益が2023年3月期に一時減少しましたが、その後回復し、当期は231億円と高い水準を記録しています。当期利益も同様の傾向を示し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,901億円 | 1,932億円 | 1,909億円 | 2,219億円 | 2,531億円 |
| 経常利益 | 82億円 | 98億円 | 62億円 | 128億円 | 231億円 |
| 利益率 | 4.3% | 5.1% | 3.3% | 5.7% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 70億円 | 48億円 | 84億円 | 165億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく増加しています。特に営業利益率は5.2%から8.6%へと改善しており、本業の収益性が高まっています。売上原価率の低下や販管費のコントロールが寄与していると考えられます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,219億円 | 2,531億円 |
| 売上総利益 | 346億円 | 475億円 |
| 売上総利益率 | 15.6% | 18.8% |
| 営業利益 | 116億円 | 219億円 |
| 営業利益率 | 5.2% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が117億円(構成比46%)、従業員給料手当が86億円(同34%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が2,040億円(構成比99%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の建築設備事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。機械システム事業は売上高が増加し、損失幅が縮小しています。環境システム事業は増収増益となり、利益率も改善しました。不動産事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築設備事業 | 1,824億円 | 2,083億円 | 119億円 | 205億円 | 9.9% |
| 機械システム事業 | 106億円 | 109億円 | -9億円 | -6億円 | -5.6% |
| 環境システム事業 | 264億円 | 312億円 | 10億円 | 18億円 | 5.7% |
| 不動産事業 | 25億円 | 25億円 | 9億円 | 9億円 | 35.7% |
| その他 | 1億円 | 2億円 | 0億円 | 1億円 | 38.9% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 4億円 | - |
| 連結(合計) | 2,219億円 | 2,531億円 | 128億円 | 231億円 | 9.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
豊富な営業CFで、財務CFのマイナスをカバーしています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 297億円 |
| 投資CF | 32億円 | 19億円 |
| 財務CF | -61億円 | -114億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し、広く社会の発展に貢献する」ことを経営理念として掲げています。また、超長期ビジョンとして2050年の姿「選ばれ続ける三機へ!」を掲げ、環境・社会価値の向上と企業価値の向上を両立させるCSVの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「三機スタンダード」として、経営理念のほかに「技術と英知を磨き、顧客満足の向上に努める」「コミュニケーションを重視し、相互に尊重する」「社会の一員であることを意識し、行動する」といった行動指針を定めています。これらを社内外へ浸透させ、役員・従業員のあるべき姿として共有しています。
■(3) 経営計画・目標
創立100周年を迎えた2025年度を新たな出発点とし、2030年度までの経営ビジョン“MIRAI 2030”および2027年度までの中期経営計画2027を策定しました。重点テーマ「深化と共創」のもと、以下の経営目標を掲げています。
* 2027年度 売上高:3,000億円
* 2027年度 営業利益:300億円(営業利益率10.0%)
* 2025~2027年度 ROE:16.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画2027では、既存事業の「深化」と多様なパートナーとの「共創」を重点戦略としています。具体的には、施工の効率化・省人化技術の研鑽、脱炭素社会への貢献、人的資本経営の推進などに取り組みます。また、成長投資として500億円程度を見込んでおり、新技術開発やDX推進、M&Aなどを通じて事業基盤を強化し、企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
技術力を源泉とする同社は、経営理念実現のため「三機らしい」人財の育成を掲げています。知識や知見を持ち知恵を生み出せる人財、コミュニケーション豊かな人財、社会性を持ち自ら行動できる人財を求めています。新たな経営ビジョンでは「Communication! Challenge!! Change!!!」をスローガンに、変化に対応できる力の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 18.2年 | 10,783,866円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 58.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 58.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(15.8%)、外国籍従業員比率(1.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人財確保に関するリスク
建設業界全体の人手不足を背景に、大幅な採用計画未達や離職率増加、協力会社の技術者不足が発生した場合、施工体制の維持が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、給与水準の引き上げや職場環境の改善、省力化施工の推進等に取り組んでいます。
■(2) 労働関連法令に関するリスク
建設業における労働時間上限規制の適用に伴い、延べ労働時間が低下することで、対応可能な工事量が減少し、業績に影響が出る可能性があります。BIMなどのICT活用による設計・施工の効率化を進め、生産性向上を図ることで対策を講じています。
■(3) 資機材の調達・納期及び労務費に関するリスク
為替変動やエネルギー価格上昇等による資機材価格・労務費の高騰、または資機材の納入遅延が発生した場合、利益率の低下や工期遅延による信用の失墜を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。契約への価格転嫁条項の盛り込みや早期発注、納期情報の共有化等で対応しています。
■(4) 施工中の事故及び災害に関するリスク
工事施工中に事故や災害が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。安全衛生管理の徹底や品質リスクアセスメントによるトラブル未然防止、工事賠償責任保険への加入等により、リスクの低減に努めています。



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