太平電業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

太平電業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。国内外の火力・原子力発電所等における各種プラント設備の建設工事および補修工事を主力事業としています。直近の決算では、大型工事の端境期等の影響で売上高は減少しましたが、工事採算の改善等により営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも増加し、減収増益となりました。


※本記事は、太平電業株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 太平電業ってどんな会社?


各種プラント設備の建設・補修工事を主軸に、国内9支店および海外拠点を展開するエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1947年に設立され、同年大阪・九州支店を開設しました。1949年に建設大臣登録を受け、1972年に東京・大阪両証券取引所市場第一部に指定替上場を果たしました。その後、2014年の東北支店、2017年の東京・若狭支店新設を経て全国体制を強化し、2019年には西風新都バイオマス発電所を開設しました。

連結従業員数は1,903名、単体では1,543名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位はUHPartners2、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.00%
UHPartners2 6.91%
光通信 6.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長執行役員は野尻穣氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
野尻 穣 代表取締役社長執行役員 1984年同社入社。補修部長、執行役員補修部長、上席執行役員工事本部長、取締役上席執行役員工事本部長などを歴任し、2013年4月より現職。
伊藤 浩明 代表取締役専務執行役員 1987年同社入社。補修部長、取締役上席執行役員営業本部長兼電力事業本部長、取締役常務執行役員営業本部長などを経て、2024年7月より現職。
日下 慎也 取締役常務執行役員 1986年同社入社。経理部長、執行役員経理部長、取締役上席執行役員総務管理本部長などを経て、2023年7月より現職。
岡本 真吾 取締役常務執行役員 1987年同社入社。執行役員東北支店長、取締役上席執行役員技術本部長兼電力事業本部長などを経て、2025年5月より現職。
事口 悟 取締役上席執行役員 1991年同社入社。建設部工事企画課長、執行役員大阪支店長などを歴任し、2024年7月より技術本部長として現職。


社外取締役は、和田一郎(弁護士)、小島冬樹(弁護士)、山田攝子(弁護士)、白寄まゆみ(淑徳大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設工事部門」および「補修工事部門」事業を展開しています。

(1) 建設工事部門


国内外において、火力・原子力発電設備、製鉄関連設備、環境保全設備、化学プラント等の据え付けや改造工事、およびこれらに付帯する電気計装、保温、塗装工事等を行っています。また、各種プラント設備の解体や廃止措置等の事業も手掛けています。

収益は、顧客である電力会社やプラント機器メーカー等から、請負契約に基づく工事代金として受け取ります。運営は主に太平電業が行うほか、子会社の富士アイテック他2社および関連会社の東京動力も施工を担っています。

(2) 補修工事部門


各種プラント設備の定期点検、日常保守、修繕維持等の事業を行っています。発電設備の安定稼働を支えるメンテナンス業務が主体であり、発電事業もこの部門に含まれています。

収益は、建設工事部門と同様に、電力会社やプラント機器メーカー等からメンテナンスや修繕工事の対価として受け取ります。運営は主に太平電業が行い、子会社の富士アイテック他3社、関連会社の東京動力も施工を行い、子会社の豊楽興産が部品・機器販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,200億円台後半で安定的に推移していましたが、直近では若干の減少が見られます。一方で利益面では、経常利益率が8%〜12%程度の高い水準を維持しており、当期純利益も堅調に推移しています。全体として、高い収益性を確保しながら安定した経営を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,278億円 1,269億円 1,258億円 1,294億円 1,257億円
経常利益 83億円 131億円 151億円 115億円 138億円
利益率(%) 6.5% 10.3% 12.0% 8.9% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 56億円 84億円 106億円 84億円 98億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高はわずかに減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益が増加しました。これに伴い、売上総利益率および営業利益率が改善し、利益体質が強化されていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,294億円 1,257億円
売上総利益 198億円 233億円
売上総利益率(%) 15.3% 18.6%
営業利益 100億円 130億円
営業利益率(%) 7.8% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が38億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が3億円(同3%)を占めています。売上原価については、外注費が588億円(売上原価比62%)、経費が180億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設工事部門は、事業用火力発電設備工事および環境保全設備工事の減少により減収減益となりました。一方、補修工事部門は、事業用火力発電設備工事や環境保全設備工事の増加により増収となり、利益も大幅に伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設工事部門 470億円 392億円 16億円 15億円 3.9%
補修工事部門 824億円 865億円 122億円 155億円 17.9%
調整額 - - △38億円 △40億円 -
連結(合計) 1,294億円 1,257億円 100億円 130億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**救済型**
営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスである一方、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF △46億円 △25億円
投資CF △9億円 1億円
財務CF △17億円 26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均(9.4%)とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.3%で市場平均(24.2%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社会のインフラを支える建設会社として、「謙虚で 誠実に そして果敢に」を理念とし、産業社会の繁栄に寄与することを目指しています。また、持続可能な社会の実現に向け、安全性、エネルギーの安定供給、経済性、環境性の「S+3E」を大前提とした事業運営を行っています。

(2) 企業文化


同社は「企業行動憲章」の中で、個人の人権と個性を尊重し、働きやすい職場環境をつくることを明文化しています。また、「倫理行動規準」に基づき、法令遵守や社会規範の尊重を徹底し、誠実で公正、透明な企業風土の醸成に努めています。安全を最優先とし、「本質安全化」や「一仕事一確認」といった意識を現場に浸透させています。

(3) 経営計画・目標


電力業界における「DXとGXの進展による電力需要増加への対応」と「脱炭素化に向けた構造転換」の両立を目指し、2040年を見据えた電源構成に対応するための取り組みを進めています。具体的な数値目標としては、各事業年度における受注高、売上高、利益等の予算達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


原子力発電所の再稼働対応や安全対策工事の継続、大型火力発電所の建設に向けた人材確保、および海外拠点の体制強化を進めます。また、自社のバイオマス発電所を中心に林業・農業をパッケージ化した「グリーンプロジェクト」を推進し、地域循環型社会の実現と企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「責任者になれる人材の育成」を目標に掲げ、階層別研修や資格取得報奨金制度等によりスキルアップを支援しています。また、多様な人材の確保に向けて中途採用や女性活躍推進を強化し、「JITAN45」運動を通じた働き方改革や育児支援プロジェクトにより、ワークライフバランスの実現と定着率の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 16.1年 7,630,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 38.7%
男女賃金差異(全労働者) 62.7%
男女賃金差異(正規雇用) 60.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(23.8%)、有給休暇取得率(66.7%)、復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原子力事業の工事延伸による影響


原子力発電所の再稼働や新規制基準への対応状況、自然災害の発生などにより、予定していた工事が延伸するリスクがあります。同社は全国展開の強みを活かし、事業所間で柔軟に人員調整を行うことで、適切な対応を図っています。

(2) 重大な労働災害発生のリスク


建設・補修工事の施工中に重大な労働災害が発生する可能性があります。同社は「本質安全化」に向けた物的対策や安全教育、協力会社とのパトロール等を徹底し、災害の未然防止に努めています。

(3) 重大な不適合発生のリスク


施工不良や製品の不具合により、重大な品質不適合が発生するリスクがあります。施工要領書の整備、作業前検討会の実施、「自主検査推進プロジェクト」による確認徹底などを通じ、品質の維持・向上に取り組んでいます。

(4) 工事原価変動のリスク


材料費や労務費の高騰により工事コストが上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は工法の改善や将来の需要予測に基づく供給量の確保、協力会社との連携強化により、コスト変動リスクの最小化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。