日本電設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。鉄道電気工事を主力とし、一般電気工事や情報通信工事も展開する設備工事会社です。JR東日本が筆頭株主であり、同社からの受注が売上の約半数を占めます。当連結会計年度は、豊富な手持工事の進捗により売上高・各利益ともに過去最高を更新し、増収増益となりました。



※本記事は、日本電設工業株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本電設工業ってどんな会社?


鉄道電気工事のリーディングカンパニーとして、JR東日本をはじめとする鉄道インフラの整備を支える企業です。

(1) 会社概要


1942年、当時の鉄道省の要請により鉄道電気工業として設立されました。1949年に現社名へ変更し、建設業登録を行っています。1962年に東証二部へ上場し、1973年に東証一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

同グループは連結従業員4,676名、単体2,553名の体制です。筆頭株主は、主要な受注先でもある東日本旅客鉄道(JR東日本)で、発行済株式の約19%を保有しています。第2位以降は信託銀行や共済会が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 19.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.98%
日本電設工業共済会 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は安田一成氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安田 一成 代表取締役社長 1988年東日本旅客鉄道入社。同社執行役員鉄道事業本部電気ネットワーク部長などを経て、2018年日本電設工業取締役就任。2022年6月より現職。
谷山 雅昭 代表取締役専務取締役社長補佐、経営企画・安全・鉄道・情報通信・システム担当 1985年日本電設工業入社。情報通信本部長、常務執行役員経営企画本部長などを歴任。2024年6月より現職。
外川 友司 常務取締役営業・環境エネルギー・技術開発担当 1984年日本電設工業入社。執行役員営業統括本部副本部長兼東京支店長、常務執行役員営業統括本部長などを歴任。2024年6月より現職。
松井 克彦 常務取締役関連事業・監査・財務・人事・総務担当 1992年日本電設工業入社。人事部長、総務部長、執行役員西日本統括本部大阪支店長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、倉元政道(明電舎特任顧問)、加藤修(東日本旅客鉄道常務執行役員)、水上渉(日本電設工業出身・常勤監査等委員)、川俣尚高(弁護士)、近藤邦弘(元高砂熱学工業常勤監査役)、福島美由紀(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「関連事業等」を展開しています。

鉄道電気工事


電車線路、発変電、送電線、電灯電力、信号工事など、鉄道運行に必要な電気設備の整備を行います。最大の得意先であるJR東日本をはじめ、公営・民営鉄道やモノレール等の安全・安定輸送を支えるインフラ構築を担っています。

工事代金が主な収益源です。運営は主に日本電設工業が担い、日本電設電車線工事、日本電設信号工事、東日本電気エンジニアリングなどのグループ会社と連携して施工体制を構築しています。

一般電気工事


オフィスビル、商業施設、駅周辺の再開発案件などにおける建築電気設備工事を行います。大型再開発工事や老朽化した既存設備の更新需要に対応し、データセンターなどの成長分野にも注力しています。

施主やゼネコンからの工事代金が収益源です。日本電設工業を中心に、NDK総合サービス、NDK電設、NDK西日本電設などが連携し、全国規模で事業を展開しています。

情報通信工事


鉄道通信設備や携帯電話基地局、ネットワークインフラの構築などを行います。通信事業者各社の基地局建設や、駅構内・トンネル内での通信環境整備などを手掛けています。

通信キャリアや鉄道会社からの工事代金が収益源です。日本電設工業、日本電設通信工事、東日本電気エンジニアリングなどが施工を行っています。インフラシェア事業として企画から保守までの一貫サービスも展開しています。

環境エネルギー工事


再生可能エネルギー発電設備の建設や、ビルの省エネ化(ZEB)、空調・給排水衛生設備工事などを行います。脱炭素社会の実現に向け、太陽光発電や風力発電関連の工事を受注しています。

工事代金が収益源です。日本電設工業、東日本電気エンジニアリング、石田工業所などが連携し、電気・空調・衛生設備の複合的な提案を行っています。

関連事業等


電気設備の企画・設計・積算・監理や保守・管理、電気機器・材料の製作・販売、不動産賃貸、情報サービス、教育・図書出版など、設備工事に関連する周辺事業を展開しています。

機器販売代金、不動産賃貸料、システム開発費などが収益源です。NDK総合サービス、NDKイッツ、NDKアールアンドイーなどが各専門分野を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高(完成工事高)は2023年3月期まで減少傾向にありましたが、その後は増加に転じ、2025年3月期には2,169億円と過去最高を記録しました。経常利益も直近3期で連続して増加しており、利益面での成長が顕著です。当期利益も順調に推移しており、売上・利益ともに収益性は向上傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高(完成工事高) 1,957億円 1,736億円 1,721億円 1,940億円 2,169億円
経常利益 154億円 87億円 109億円 149億円 194億円
利益率(経常利益率)※ 7.9% 5.0% 6.3% 7.7% 8.9%
当期利益(親会社株主帰属) 95億円 52億円 72億円 100億円 132億円

(2) 損益計算書


売上高(完成工事高)は前期の1,940億円から2,169億円へと増加し、それに伴い売上総利益(完成工事総利益)も前期比で増加しています。営業利益も134億円から179億円へと増加し、売上総利益率および営業利益率ともに向上していることから、本業の収益力が強化されていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高(完成工事高) 1,940億円 2,169億円
売上総利益(完成工事総利益) 285億円 343億円
売上総利益率(%)※ 14.7% 15.8%
営業利益 134億円 179億円
営業利益率(%)※ 6.9% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が58億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が20億円(同12%)を占めています。人件費関連が販管費の主要な要素となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で十分な利益(税金等調整前当期純利益202億円)を計上しているものの、売上高(完成工事高)が過去最高となったことに伴う売上債権の大幅な増加や、支払サイトの短縮(仕入債務の減少)により、営業CFはマイナスとなっています。また、有形固定資産の取得などの設備投資を積極的に行っているため、投資CFもマイナスとなっています。

これらの事業拡大に伴う運転資金の増加や成長投資に必要な資金を、短期借入金(40億円の純増)などで調達しているため、財務CFはプラスとなっています。本業の収益力は向上しており、事業の成長と積極的な投資を支えるために前向きな資金調達を行っている「事業拡大・投資先行型」の状況と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 74億円 -43億円
投資CF -42億円 -58億円
財務CF -79億円 1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


お客様本位の精神で安全・確実な業務を遂行し、顧客の信頼を高めることを基本としています。人々の生活や経済を支える社会的に重要なインフラの創造を通じて社会に貢献し、品質の高い設備づくりを目指して企業努力を重ねることを理念として掲げています。

(2) 企業文化


「安全は会社経営上の最重要課題」と位置づけ、社会インフラの構築・維持に寄与する体制づくりを推進しています。また、「人間中心企業」として、働き方改革や個々の取り組みを通じて経営基盤を強化し、「人間力の向上」と「本物志向の実践」により企業価値の向上を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期以降3年間の中期経営計画「日本電設3ヶ年経営計画2024」を策定しています。2032年3月期(第90期)のあるべき姿に向けた足掛かりとして、「飛躍への挑戦」を副題に掲げ、以下の数値目標を設定しています。

* 売上高2,304億円(2026年3月期目標)
* 営業利益176億円(2026年3月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


持続的成長に向け、安全・品質レベルの向上とガバナンス徹底、新たな挑戦への風土づくり、人材確保と施工体制の強化などを重点テーマとしています。DXの実践や生産性向上への投資、環境・社会への貢献活動を通じて、従業員エンゲージメントを高め、協力会社との連携を強化する「チームNDK」の実行力を高める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の経営資本と位置づけ、性別や国籍を問わない幅広い採用と、障がい者雇用の推進により多様性を確保しています。教育面では、半世紀以上の歴史を持つ研修施設「中央学園」等で実践的な技術教育を行い、エキスパートを育成しています。また、働きがいのある職場環境づくりや健康経営を推進し、人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 15.4年 8,484,187円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり基準外賃金及び賞与が含まれています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.3%
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用) 67.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 49.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一級電気工事施工管理技士の新規資格取得者数(40人)、年次有給休暇の年間平均取得日数(14.0日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客依存のリスク


同社グループの完成工事高に占める東日本旅客鉄道(JR東日本)の比率が高いため、同社の設備投資計画の変更や削減が行われた場合、同社グループの受注活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 社会的信用力低下のリスク


工事施工の過程で重大な事故が発生した場合、社会的に厳しい批判を受け、信用力の低下により受注活動に悪影響が生じる可能性があります。また、建設業法等の法令違反があった場合、営業停止等の処分を受けるリスクがあります。

(3) 受注事業のリスク


建設業は受注産業であり、他社との競争激化による採算悪化や、資材価格・労務費の高騰が工事原価を押し上げる可能性があります。また、協力会社の人材確保が困難になった場合、施工体制に影響が出る恐れがあります。工事代金の回収遅延や貸倒れのリスクも内在しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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