森組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 森組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、関西と首都圏を基盤とする建設会社です。土木・建築事業を主力とし、不動産や砕石事業も展開しています。第92期の連結売上高は295億円(前期比6.8%増)、経常利益は10億円(同1.3%増)となり、堅調な需要を背景に増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社森組 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森組ってどんな会社?


老舗のゼネコンとして、土木・建築工事を中心に不動産、砕石事業を展開し、旭化成グループの一員として安定した事業基盤を持っています。

(1) 会社概要


1934年に設立され、1963年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。1990年に阪急電鉄の関連会社となり、その後2007年に長谷工コーポレーションの関連会社を経て、2016年に旭化成および旭化成ホームズの関連会社となりました。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場しています。

単体の従業員数は328名です。筆頭株主は事業会社である旭化成ホームズで、第2位は同業の長谷工コーポレーションです。大手企業グループとの資本関係を持ち、安定した経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
旭化成ホームズ 30.26%
長谷工コーポレーション 8.01%
森組取引先持株会 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は吉田裕司氏です。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田 裕司 代表取締役社長 1982年同社入社。土木事業本部副本部長、専務執行役員全社統括などを経て2015年4月より現職。
内山 浩二 代表取締役常務執行役員経営管理本部長総務部長 1988年同社入社。経営企画部長、経営管理本部長などを経て2024年4月より現職。
宮本 貴彰 取締役常務執行役員建築事業本部長 1988年同社入社。資材部部長、調達部担当、建築事業本部副本部長などを経て2024年4月より現職。
石井 勝則 取締役常務執行役員土木事業本部長大阪本店長(支配人) 1986年同社入社。土木事業本部営業部部長、技術評価向上部担当などを経て2024年4月より現職。
奥田 匡 取締役執行役員建築事業本部副本部長(東京管掌)働きがい改革担当 旭化成ホームズ施工技術部長を経て2016年同社入社。建築事業本部施工・技術担当などを経て2023年4月より現職。
兒玉 芳樹 取締役 旭化成ホームズ執行役員、旭化成不動産レジデンス代表取締役社長などを経て2023年6月より現職。
中園 明弘 取締役常務執行役員建築事業本部グループ営業担当 旭化成ホームズ中高層事業推進部部長、旭化成リフォーム代表取締役社長などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、竹内洋平(公認会計士・税理士)、近本茂(大阪ガスケミカル取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」「砕石事業」を展開しています。

(1) 建設事業


土木工事および建築工事全般を請け負っています。主な顧客は、官公庁(西日本高速道路や国土交通省など)および民間企業(旭化成グループ、長谷工コーポレーションなど)です。高速道路やマンション建設など、社会インフラから住環境まで幅広く手掛けています。

収益は、顧客からの工事請負代金によって構成されています。工事の進捗に応じて売上を計上する方法が主です。運営は主に森組が行っています。

(2) 不動産事業


不動産の開発、売買、交換、賃貸およびその代理、仲介業務を行っています。自社保有物件の賃貸や、不動産の有効活用提案などを手掛けています。

収益は、不動産の賃貸料や売買による代金、仲介手数料などから得ています。運営は主に森組が行っています。

(3) 砕石事業


砕石や砕砂などの製造販売および取引仲介を行っています。兵庫県西宮市の生瀬砕石所にて製品を生産しています。なお、同事業は2025年9月に他社へ譲渡される予定です。

収益は、建設資材としての砕石・砕砂の製品販売代金から得ています。運営は主に森組が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は240億円台から310億円台の間で推移しており、第92期は295億円まで回復しています。経常利益は一時的に落ち込みましたが、直近では10億円台を回復し、当期純利益も増加傾向にあります。利益率は改善傾向にあり、安定した収益基盤を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 286億円 313億円 246億円 276億円 295億円
経常利益 19億円 19億円 8億円 10億円 10億円
利益率(%) 6.8% 5.9% 3.2% 3.7% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 13億円 5億円 7億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は8%台後半で安定しており、営業利益も微増となりました。販管費が増加しているものの、増収効果により利益水準を維持・向上させています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 276億円 295億円
売上総利益 24億円 26億円
売上総利益率(%) 8.6% 8.8%
営業利益 11億円 11億円
営業利益率(%) 3.9% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が6億円(構成比37%)、支払手数料が2億円(同13%)を占めています。売上原価においては、外注費が183億円(売上原価比68%)と最も大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は、建築工事の完成工事高が増加したことで増収増益となりました。不動産事業は賃貸収入が堅調でしたが、費用増により損失を計上しました。砕石事業は生産・販売が増加し増収となりましたが、損失計上となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 269億円 288億円 20億円 22億円 7.8%
不動産事業 0.3億円 0.3億円 0.1億円 -0.2億円 -56.3%
砕石事業 6億円 7億円 1億円 -0.0億円 -0.3%
連結(合計) 276億円 295億円 11億円 11億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%で市場平均(同48.5%)を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 -42億円
投資CF -1億円 -4億円
財務CF -5億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「最高の品質と最良のサービスで、お客様の感動を」を経営理念として掲げています。どのような時代や環境下にあっても、顧客の要望に的確に応え、喜んでもらうことを最大の喜びとし、地域社会に貢献できる企業を目指すという思いが込められています。

(2) 企業文化


経営理念を実現するため、「将来を見据えた人財育成」「たゆまぬ努力による品質の保持・管理」「全社を挙げての事故・災害の撲滅」「適切なコスト、適正な価格の追求」「遵守事項の厳格運用」「地球環境との共存共生」という6つの経営方針のもと、日々の事業に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


将来のあるべき姿の実現に向けて中期経営戦略を推進しており、最終年度となる2027年3月期のモデル数値を設定しています。建設業界の動向等を踏まえ、目標数値の見直しを行っています。

* 受注高:305億円
* 売上高:300億円
* 営業利益:11億円
* 経常利益:11億円

(4) 成長戦略と重点施策


「信頼できるパートナーと共に、サステナブルな社会を建設する」等の将来像に向け、地域密着による事業基盤の強化、ICT活用によるスマート施工管理の実現、エンゲージメント向上による魅力ある企業づくり、働き方改革による4週8閉所の完全実施、業務提携によるシナジー効果の発現を基本戦略としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財の確保・育成」を最重要課題と位置づけ、新卒・キャリア採用の強化や障がい者雇用、再雇用制度を推進しています。教育面では、職位別研修に加えて共通研修(必修・選択制)を導入し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、働き方改革やエンゲージメント向上に取り組み、魅力ある職場環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 19.1年 7,225,121円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 48.6%
男女賃金差異(正規) 71.9%
男女賃金差異(非正規) 27.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、建設現場4週8閉所(76.9%)、技術職の時間外労働時間の短縮(平均時間25.7時間/月)、資格取得率(75.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向によるリスク


公共工事の削減や民間建設需要の減少、価格の大幅な変動など、建設市場の環境が著しく変化した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は顧客との信頼関係強化や事業分野の多角化によりリスク低減を図っています。

(2) 取引先の信用リスク


請負金額が大きく、代金回収が工事引渡し時になることが多いため、取引先の信用不安が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は事前与信調査の徹底などにより、貸倒れリスクの抑制に努めています。

(3) 人財の確保及び育成


少子高齢化や建設業へのイメージ等の影響により、必要な時期に有資格者や技能労働者を確保できない場合、業績に影響する可能性があります。同社は採用活動の強化や働き方改革による労働環境の改善、資格取得支援などに取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。