森組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 森組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

森組はスタンダード市場に上場し、土木・建築を中心とする建設事業を展開しています。直近の業績は、売上高がやや減少したものの、採算性の改善等により営業利益及び経常利益は増益を達成しました。財務状況は改善型で推移しており、地域社会に密着した事業基盤の構築と生産性向上により持続的な成長に取り組んでいます。


※本記事は、森組の有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森組ってどんな会社?


建設事業を中核とし、不動産事業なども展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1934年に設立され、1963年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2007年に長谷工コーポレーションの関連会社となり、2016年には旭化成ホームズの関連会社となりました。また、長年にわたり生瀬砕石所にて砕石事業を行ってきましたが、2025年に同事業を譲渡しています。

同社(単体)の従業員数は311名です。筆頭株主は事業会社の旭化成ホームズで、第2位も事業会社の長谷工コーポレーションとなっています。さらに、第3位には同社の取引先持株会が名を連ねており、事業パートナーや取引先を中心とした強固な株主構成となっています。

氏名 持株比率
旭化成ホームズ 30.26%
長谷工コーポレーション 8.01%
森組取引先持株会 7.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長社長執行役員全社総括経営管理本部長は内山浩二氏です。社外取締役比率は18.2%となっています。

氏名 役職 主な経歴
内山浩二 代表取締役社長社長執行役員全社総括経営管理本部長 1988年同社入社。経営企画部部長、執行役員等を経て2022年常務執行役員。2024年代表取締役常務執行役員に就任し、2026年より現職。
宮本貴彰 取締役常務執行役員建築事業本部長大阪本店長(支配人) 1988年同社入社。資材部部長等を経て2015年執行役員。2022年取締役常務執行役員に就任し、2026年より現職。
石井勝則 取締役常務執行役員土木事業本部長 1986年同社入社。営業部部長等を経て2016年執行役員。2022年取締役常務執行役員となり、2026年より現職。
中園明弘 取締役常務執行役員建築事業本部グループ営業担当 2017年旭化成ホームズ技術本部中高層事業推進部部長、2021年旭化成リフォーム代表取締役社長。2024年同社取締役常務執行役員となり現職。
奥田匡 取締役上席執行役員建築事業本部副本部長(東京管掌) 2015年旭化成ホームズ施工本部施工技術部長。2016年同社執行役員となり、2021年取締役。2026年より現職。
吉田裕司 取締役 1982年同社入社。営業統括部長等を経て、2015年に代表取締役社長に就任。2026年より現職。


社外取締役は、竹内洋平(公認会計士・税理士)、近本茂(元大阪瓦斯取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」「砕石事業」を展開しています。

建設事業


土木・建築その他建設工事全般に関する事業を提供し、官公庁や民間企業を主な顧客としています。道路や建築物など、多様なインフラや施設の整備を通じて地域社会の発展を担っています。

収益は、発注者からの工事の請負代金として受け取ります。運営は同社が行っており、伝統ある施工管理力を活かして高品質・高性能にこだわった施工を提供することで、顧客との信頼関係を構築しています。

不動産事業


不動産の開発・売買、交換及び賃貸並びにその代理、仲介に関するサービスを提供しています。建設事業を補完する役割として、不動産に関連する多様なニーズに対応しています。

収益は、保有する不動産の賃貸収入や、売買・仲介に係る手数料等として受け取ります。運営は同社が行っており、市場動向を見極めながら不要な不動産の保有は行わない方針で堅実な事業展開を進めています。

砕石事業


兵庫県西宮市の生瀬砕石所にて、砕石、砕砂等の製造・販売事業を提供していました。建設資材として不可欠な製品を供給し、建設市場を支える役割を担ってきました。

収益は、顧客への砕石・砕砂等の販売代金として受け取ってきました。運営は同社が行ってきましたが、持続的な成長や環境変化への対応を勘案し、2025年10月に南海砂利へ事業譲渡しました。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は年度により増減があり直近では減収となっていますが、経常利益および当期純利益は着実に増加傾向にあります。利益率も改善が進んでおり、原価管理の強化や採算性を重視した受注活動の成果が表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 313億円 246億円 276億円 295億円 280億円
経常利益 19億円 8億円 10億円 10億円 13億円
利益率(%) 5.9% 3.2% 3.7% 3.6% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 5億円 7億円 9億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率も大きく改善しています。また、営業利益率も上昇しており、物価上昇等の環境下においても適切にコストを管理し、本業の収益力を高めていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 295億円 280億円
売上総利益 26億円 30億円
売上総利益率(%) 8.8% 10.7%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 3.7% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が6億円(構成比34%)、支払手数料が2億円(同15%)を占めています。また、売上原価の大部分は完成工事原価が占めており、売上原価全体の98%となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は減収となったものの、設計変更協議や追加契約の締結による工事採算性の改善により増益を達成しました。不動産事業は黒字転換を果たしています。一方、砕石事業は事業譲渡の影響により減収および赤字となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業 288億円 277億円 22億円 27億円 9.6%
不動産事業 0.3億円 0.3億円 -0.2億円 0.1億円 33.3%
砕石事業 7億円 3億円 -0.0億円 -0.9億円 -29.1%
調整額 -億円 -億円 -11億円 -12億円 -%
連結(合計) 295億円 280億円 11億円 13億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローと資産売却等による投資活動によるキャッシュ・フローがともにプラスとなり、それらの資金を用いて借入金の返済など財務活動を行っている改善型の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -42億円 26億円
投資CF -4億円 6億円
財務CF -5億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「最高の品質と最良のサービスで、お客様の感動を」を経営理念として掲げています。どのような時代や環境下においても、お客様の要望に的確に応え、喜んでいただけることを最大の喜びとし、明日への糧として地域社会に貢献できる企業を目指しています。

(2) 企業文化


経営理念を実現するため、「将来を見据えた人財育成」「たゆまぬ努力による品質の保持・管理」「全社を挙げての事故・災害の撲滅」「適切なコスト、適正な価格の追求」「遵守事項の厳格運用」「地球環境との共存共生」の6つの経営方針を重んじ、日々事業に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


特定の経営指標のみを目標とするのではなく、中期経営戦略の遂行に注力しています。施策の進捗や業界動向を考慮し、最終年度のモデル数値を設定・見直しながら事業を推進しています。

* 売上高:272億円
* 営業利益:11.6億円
* 経常利益:11.6億円

(4) 成長戦略と重点施策


「信頼できるパートナーと共に、サステナブルな社会を建設する」等の将来像に向け、地域に密着した事業基盤の構築やICT活用によるスマート施工管理を目指しています。また、従業員エンゲージメントの向上や働き方改革(4週8閉所の完全実施)を推進し、持続的な企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


少子高齢化や技術承継が課題となる中、人財の確保・育成を事業活動の根幹をなす最重要課題と位置づけています。従業員一人ひとりが自主性を持って新たな知識やスキルを習得しやすい環境づくりを行い、会社へのエンゲージメントを高めることで、相互成長を実現する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 18.9年 7,570,110円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 157.0%
男女賃金差異(全労働者) 50.1%
男女賃金差異(正規雇用) 68.2%
男女賃金差異(パート・有期) 29.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、重大な労働災害(0件)、品質事故(0件)、建設現場4週8閉所(77.0%)、技術職の時間外労働時間(月平均26.1時間)、障がい者雇用率(2.9%)、資格取得率(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向によるリスク


予想を上回る公共工事の削減や民間需要の減少、価格の大幅な変動などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、信頼関係にある顧客を中心とした営業活動や、将来にわたり安定的に事業量を確保するために多様な分野の工事を受注することに注力しています。

(2) 取引先の信用リスク


建設業では工事毎の請負金額が大きく、引き渡し時期に多額の代金が支払われるため、取引先が信用不安に陥った場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、優良顧客を中心とした事業展開を基本とし、事前与信調査を徹底して貸倒れリスクの抑制に努めています。

(3) 人財の確保及び育成


少子化や同業他社との採用競争激化により人財の確保が困難となり、必要な時期に有資格者や技能者を配置できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、積極的な採用活動に加え、作業所の完全週休二日制実施や時間外労働の削減など働き方改革を推進しています。

(4) 資材価格等の変動


労務費や原材料価格が高騰した際、その増加分を請負金額に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は、市場の価格動向を徹底的に調査し、資材価格の高騰が予測される場合には早期の買い付けを行うことでリスクを軽減しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。