戸田建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

戸田建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

戸田建設は東京証券取引所プライム市場に上場する大手総合建設会社です。建築・土木工事を主力とし、国内投資開発や環境・エネルギー事業など幅広く展開しています。直近の業績は、大型工事の順調な進捗や採算性の向上により増収増益のトレンドで推移しており、自己資本比率やROEも市場平均を上回る優良企業です。


※本記事は、戸田建設株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 戸田建設ってどんな会社?


建築と土木の請負を主力としながら、不動産開発や洋上風力発電等の環境領域にも注力する総合建設企業です。

(1) 会社概要


同社は1881年に個人事業として土木建築請負業を開業したのが始まりです。1949年に建設大臣登録を受け、1969年に東京証券取引所へ上場しました。その後、国内外に営業網を拡大し、近年は不動産投資開発事業や海外事業の強化、国内初の浮体式洋上風力発電事業など環境・エネルギー分野へも参入しています。

同社グループの連結従業員数は7,286名、単体では4,404名体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主が事業会社の大一殖産で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
大一殖産 14.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.09%
日本カストディ銀行(信託口) 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長は今井雅則氏、代表取締役社長執行役員社長は大谷清介氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
今井雅則 代表取締役会長 1978年同社入社。大阪支店長、執行役員副社長、代表取締役社長などを経て、2021年4月より現職。
大谷清介 代表取締役社長執行役員社長 1982年同社入社。東京支店建築工事部長、関東支店長、常務執行役員などを経て、2021年4月より現職。
山嵜俊博 取締役執行役員副社長コーポレート本部長 1982年同社入社。管理本部財務部長、コーポレート本部長などを経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、伊丹俊彦氏(元大阪高等検察庁検事長)、荒金久美氏(元小林コーセー品質保証部長)、室井雅博氏(元野村総合研究所代表取締役副社長)、水原潔氏(元小松製作所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築」「土木」「国内投資開発」「国内グループ会社」「海外グループ会社」「環境・エネルギー」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 建築

国内外において、オフィスビルや工場、商業施設などの建築工事の施工等を行っています。官公庁や民間企業を主な顧客とし、企画から設計、施工まで総合的なサービスを提供しています。
収益源は、顧客からの建築工事請負代金です。運営は主に同社が行い、海外では子会社TobicがBIMモデルの作成業務などを受託して建設プロセスの効率化を支援しています。

(2) 土木

国内外において、道路やトンネル、インフラ施設などの土木工事の施工等を行っています。国土交通省などの官公庁案件や民間企業のインフラ整備を主な顧客としています。
収益源は、顧客からの土木工事請負代金です。運営は同社が主体となり、関連会社のJapan Wind Farm Constructionが洋上風力施工船舶の保有等に関する事業を手掛けています。

(3) 国内投資開発

国内において、オフィスビルや商業施設など不動産の自主開発、売買および賃貸等を行っています。自社開発物件の価値向上を通じた都市開発を推進しています。
収益源は、不動産の売却益やテナントからの賃貸収入です。運営は同社が主体で行い、子会社の戸田建設不動産投資顧問が不動産投資の運用業務等を担っています。

(4) 国内グループ会社

国内子会社を通じて、建築・土木一式工事や設備工事、ビル管理業、人材派遣業、ホテル事業、農業事業など、建設周辺領域からライフサポートまで多角的なサービスを提供しています。
収益源は、各事業の工事代金や管理手数料、サービス利用料などです。佐藤工業や昭和建設が建設工事を、戸田ビルパートナーズがビル管理を、東和観光開発がホテル運営を行うなど、複数社で運営しています。

(5) 海外グループ会社

アジア・オセアニアや北米、南米地域において、現地日系企業や外資企業の建築工事施工、不動産の売買・賃貸、およびホテル事業などを展開しています。
収益源は、海外での工事請負代金や不動産売却・賃貸収入です。Thai Toda CorporationやToda Vietnam等が建設工事を、Toda America等が不動産事業を行い、Toda Asia Pacificが統括管理しています。

(6) 環境・エネルギー

カーボンニュートラル社会の実現に向け、ブラジルでの陸上風力発電や、長崎県五島市沖での浮体式洋上風力発電事業、国内の太陽光発電事業を展開しています。
収益源は、発電した電力の売電収入などです。TODA Investimentos do Brasilが陸上風力を、同社および五島フローティングウィンドパワーなどが洋上風力発電事業を運営しています。

(7) その他の事業

PFI事業において、公共施設の建設・維持管理・運営等を民間資金とノウハウを活用して行っています。
収益源は、国や地方自治体等からのサービス提供対価です。エスシーシー・ヒューマンコミュニティサービスなどの子会社が事業主体となって運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は大型工事の進捗等により概ね増加傾向にあり、直近では6,000億円を突破しました。利益面でも、資材高騰などの影響を受けつつも採算性向上の取り組みが奏功し、増益基調で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,015億円 5,472億円 5,224億円 5,867億円 6,457億円
経常利益 281億円 190億円 255億円 291億円 440億円
利益率(%) 5.6% 3.5% 4.9% 5.0% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 162億円 66億円 115億円 244億円 309億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益も増加しています。適正工期の確保や採算性を重視した受注活動、生産性向上の取り組みにより、売上総利益率および営業利益率ともに改善が進んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,867億円 6,457億円
売上総利益 639億円 799億円
売上総利益率(%) 10.9% 12.4%
営業利益 266億円 382億円
営業利益率(%) 4.5% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が180億円(構成比33%)、賞与引当金繰入額が60億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建築セグメントが売上を牽引しており、国内および海外グループ会社も順調に売上を伸ばしています。土木セグメントは堅調に推移し、環境・エネルギーセグメントは洋上風力発電等の稼働により大きく売上を拡大させています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建築 3,117億円 3,608億円
土木 1,171億円 1,216億円
国内投資開発 463億円 313億円
国内グループ会社 536億円 610億円
海外グループ会社 570億円 677億円
環境・エネルギー 9億円 33億円
連結(合計) 5,867億円 6,457億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済等を行いつつ、将来に向けた設備投資などを手元資金と営業キャッシュ・フローで賄う健全な状態を保っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 264億円 625億円
投資CF -612億円 -205億円
財務CF 7億円 -438億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「社会の発展への貢献」「社業の持続的成長」「ステークホルダー価値の向上」を経営方針に掲げています。グローバルビジョン「“喜び”を実現する企業グループ」のもと、お客様、社員、協力会社など社会全体の喜びをつくり出し、成長を続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化

同社は「人がつくる。人でつくる。」をコンセプトに、「多様性を力に」する組織風土を重視しています。同質的な組織から脱却し、多様な背景を持つ人材が能力を発揮できるインクルーシブな環境整備を進め、コンプライアンスの徹底や心理的安全性の高い職場づくりに努めています。

(3) 経営計画・目標

同社は「中期経営計画2027」において、将来を見据えた確固たる基盤構築と収益力向上を目指し、以下の目標数値を設定しています。

* 連結売上高:8,000億円程度
* 営業利益:435億円以上
* 当期純利益:350億円以上
* ROE(自己資本利益率):10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策

確固たる強みを見極め、競争優位に資する同社グループ独自の「突出価値」の創造を目指しています。営業・作業所での提供価値を高めるタテ展開と、建設事業と戦略事業の連携を深めるヨコ展開を推進し、デジタル化の加速や技術開発への投資拡充により事業基盤を一層強固なものにしていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は「自己発働型人財」の獲得・育成を戦略の中核に据え、「管理・課題解決型」から「価値創造・変革型」の組織への転換を進めています。年功的要素を排した実力主義の人事制度の導入や、多様な個性の活躍推進、現場(フロントライン)への大胆な人材シフトを通じた対応力の強化に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.3歳 18.4年 10,382,444円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 76.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(17.6%)、次代の課長代理級を担う主任級の女性比率(23.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設資材の価格高騰・供給遅延

原油由来の建設資材の価格高騰や供給遅延、中東情勢の影響によるエネルギー価格の上昇によるコスト増加リスクが存在します。同社は市況動向を注視し、調達先の多様化や適正な工期設定、価格転嫁などの対策によりリスク軽減を図っています。

(2) 気候変動と自然災害リスク

気温上昇による労働環境の悪化や、水害等の自然災害による保有不動産・建設現場の被災リスクがあります。同社はTCFDの提言に基づくリスク分析を行い、現場の省力化や無人化、作業者の健康管理デバイスの導入、防災・減災工事への注力などの対策を進めています。

(3) 労務需給の逼迫と人手不足

建設業界における技術者や技能労働者の高齢化と慢性的な人手不足、および時間外労働の上限規制等による労務需給の逼迫リスクが存在します。同社は、人事制度の改革や働きがい向上、デジタル技術の活用による生産性向上に取り組み、人材の確保と定着を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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