戸田建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

戸田建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する準大手ゼネコンです。建築事業、土木事業、国内投資開発事業、環境・エネルギー事業などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、手持ち工事の進捗や大型開発物件の竣工・販売等により、前期比で増収増益となりました。



※本記事は、戸田建設株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 戸田建設ってどんな会社?


建築・土木工事の請負を中心に、不動産開発や環境エネルギー事業も展開する準大手ゼネコンです。

(1) 会社概要


1881年1月に初代戸田利兵衛が土木建築請負業を開業し、1936年7月に株式会社戸田組として設立されました。1963年7月に現在の戸田建設へ商号を変更しています。1971年2月に東京証券取引所市場第一部へ指定替となり、2022年4月には同取引所の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は6,910名、単体従業員数は4,315名です。筆頭株主は大一殖産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
大一殖産 14.19%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.33%
日本カストディ銀行(信託口) 3.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員社長は大谷 清介氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
今井 雅則 代表取締役会長 1978年4月入社。大阪支店長、建築本部執務、人財戦略室長などを経て、2021年4月より現職。
大谷 清介 代表取締役社長執行役員社長 1982年4月入社。千葉支店長、関東支店長、管理本部執務などを経て、2021年4月より現職。
山嵜 俊博 取締役執行役員副社長コーポレート本部長 1982年4月入社。管理本部財務部長、投資審査室長などを経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、伊丹 俊彦(元大阪高等検察庁検事長・弁護士)、荒金 久美(元コーセー取締役)、室井 雅博(元野村総合研究所副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築」「土木」「国内投資開発」「国内グループ会社」「海外グループ会社」「環境・エネルギー」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建築事業


国内および海外において、オフィスビル、工場、病院、学校、商業施設などの建築工事の施工等を行っています。官公庁および民間からの工事請負が中心です。

収益は、発注者である顧客からの請負工事代金が主な源泉となります。運営は主に同社が行っています。

(2) 土木事業


国内および海外において、トンネル、橋梁、ダム、鉄道、上下水道などの土木工事の施工等を行っています。また、洋上風力発電施設の建設に関連する事業も手掛けています。

収益は、官公庁および民間顧客からの請負工事代金が主な源泉となります。運営は同社が行っており、関連会社のJapan Wind Farm Constructionも洋上風力施工船舶の保有等を行っています。

(3) 国内投資開発事業


国内において、オフィスビルや物流施設などの不動産の自主開発、売買、および賃貸等を行っています。また、不動産投資の運用業務等も展開しています。

収益は、不動産の売却益、賃貸料、および運用報酬などが主な源泉となります。運営は同社および戸田建設不動産投資顧問が行っています。

(4) 国内グループ会社事業


国内連結子会社が行う事業で、建築・土木工事、設備工事、ビル管理、人材派遣、建設資材販売、ホテル運営、農業事業などが含まれます。

収益は、各事業における工事代金、管理料、サービス料、商品売上などが源泉となります。運営は、佐藤工業、昭和建設、アペックエンジニアリング、TGCゼネラルサービス、戸田道路、戸田ビルパートナーズ、東和観光開発、TODA農房などが行っています。

(5) 海外グループ会社事業


海外連結子会社が行う事業で、東南アジアを中心とした建築工事の施工や、米国・インドネシア等での不動産売買・賃貸、ホテル事業などを行っています。

収益は、海外における工事代金、不動産売却益、賃貸料、ホテル宿泊料などが源泉となります。運営は、Thai Toda Corporation、Toda Vietnam、Toda America、PT Toda Group Indonesia、Coherent Hotelなどが行っています。

(6) 環境・エネルギー事業


ブラジルにおける陸上風力発電事業や、国内における浮体式洋上風力発電事業、太陽光発電事業、電力卸供給事業などを行っています。

収益は、売電収入や工事代金などが主な源泉となります。運営は、TODA Investimentos do Brasil、五島フローティングウィンドパワー、オフショアウィンドファームコンストラクション、フローティング・ウィンド・アグリゲーションなどが行っています。

(7) その他


PFI事業などを展開しています。

収益は、PFI事業からのサービス対価などが源泉となります。運営は、エスシーシー・ヒューマンコミュニティサービスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は5,000億円台で推移しており、直近の2025年3月期には5,867億円と過去5年で最高を記録しました。利益面では、2023年3月期に一時的に落ち込みましたが、その後回復基調にあり、2025年3月期には当期利益が244億円まで増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,071億円 5,015億円 5,472億円 5,224億円 5,867億円
経常利益 304億円 281億円 190億円 255億円 291億円
利益率(%) 6.0% 5.6% 3.5% 4.9% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 167億円 162億円 66億円 115億円 244億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は12.3%増加し、売上総利益も21.7%増加しました。売上総利益率が改善したことで、販管費の増加を吸収し、営業利益は48.8%の大幅な増益となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,224億円 5,867億円
売上総利益 548億円 648億円
売上総利益率(%) 10.5% 11.1%
営業利益 179億円 266億円
営業利益率(%) 3.4% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が166億円(構成比33%)、賞与引当金繰入額が49億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


建築事業は大型工事の進捗により増収増益となりました。国内投資開発事業は販売用不動産の売却が増加し、大幅な増収となっています。一方、環境・エネルギー事業はブラジルでの売電価格低下等により営業損失が拡大しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建築 2,880億円 3,116億円 65億円 169億円 5.4%
土木 1,125億円 1,171億円 75億円 75億円 6.4%
国内投資開発 224億円 463億円 39億円 48億円 10.3%
国内グループ会社 495億円 536億円 19億円 32億円 5.9%
海外グループ会社 487億円 571億円 15億円 12億円 2.0%
環境・エネルギー 13億円 9億円 -4億円 -10億円 -
連結(合計) 5,224億円 5,867億円 179億円 266億円 4.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「積極型(営業+、投資-、財務+)」です。本業で稼いだ資金に加え、外部からの調達資金も活用して、成長のための投資を積極的に行っている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 621億円 264億円
投資CF -489億円 -612億円
財務CF 10億円 74億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会の発展への貢献」「社業の持続的成長」「ステークホルダー価値の向上」を経営方針として掲げています。また、2015年に策定したグローバルビジョン「“喜び”を実現する企業グループ」のもと、お客様、社員、協力会社、地域社会、株主など全てのステークホルダーにとっての喜びを創出し、それを自信と誇りに変えて成長し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


創業150周年に向けた「未来ビジョンCX150」において、「価値のゲートキーパー」として協創社会の実現に貢献することを掲げています。「多様性を力に」をスローガンに、情報や機能の新しい組み合わせを実現し、新たな価値を創造する文化を重視しています。また、サステナビリティビジョン2050では「より良い未来をつくる企業グループ」を目指す姿として定めています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2027」を策定し、2027年度を最終年度とする目標を設定しています。収益成長とともに資本効率を意識した経営を推進し、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:8,000億円程度
* 営業利益:435億円以上
* 営業利益率:5.4%以上
* 当期純利益:350億円以上
* ROE:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「見極め、つなぐ。」を基本方針とし、確固たる強みを見極め、総合知としての活用を通じて独自の「突出価値」を創造することを目指しています。具体的には、営業・作業所での提供価値を高める「タテ展開」と、建設事業と戦略事業の連携を深める「ヨコ展開」を推進し、高収益化を図ります。また、人財のフロントシフト、デジタル・技術開発への投資拡充、資本効率の向上により事業基盤を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財戦略を投資と位置付け、「人事制度刷新」「働き甲斐改革」「人財開発」「ウェルネス・DE&I」「グローバリゼーション」の5つの領域で施策を展開しています。役職と連動した等級・報酬制度や新たな評価制度を導入し、納得性と公平性を向上させています。また、次世代経営人財の育成や、男性育児休業取得率100%の継続など、多様な人材が活躍できる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 18.7年 9,410,230円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.8%
男女賃金差異(正規雇用) 66.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(17.0%)、女性上級管理職比率(0.9%)、女性役員比率(22.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動及び調達リスク


建設資材価格の高騰や需給逼迫により、調達コストが増加したり、必要な資材の確保が困難になる可能性があります。これにより、工事原価の上昇や工期の遅延が発生し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、早期発注や調達ルートの多様化、価格転嫁の交渉などを進めています。

(2) 労働力不足及び労働環境の変化


建設業界全体での就業者数の減少や高齢化に加え、時間外労働の上限規制の適用などにより、労働力不足が深刻化しています。十分な施工体制を確保できない場合、工事の進捗遅れや受注機会の逸失につながる可能性があります。同社は、省人化・省力化施工の推進、DXによる生産性向上、協力会社との連携強化などに取り組んでいます。

(3) 海外事業展開に係るリスク


海外での事業展開においては、各国の政治・経済情勢の変動、法規制の変更、為替変動、商慣習の違いなどのリスクが存在します。特に地政学的リスクの高まりや急激なインフレ等は、現地の事業環境を悪化させ、損失を招く可能性があります。同社は、現地情報の収集強化やリスク管理体制の整備、現地パートナーとの協業などを通じてリスク低減を図っています。

(4) 自然災害・事故等リスク


地震、台風、豪雨などの自然災害や、工事現場での事故、感染症の流行などが発生した場合、工事の中断や工期の遅延、損害賠償責任などが生じ、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。同社は、BCP(事業継続計画)の策定・運用、安全管理体制の徹底、感染症対策の実施などにより、これらのリスクへの備えを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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