高砂熱学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂熱学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂熱学工業は東京証券取引所プライム市場に上場する、空調設備の設計や施工を中核とする企業です。一般設備や産業向けの設備工事事業、設備機器の製造販売を展開し、国内に加えアジアを中心に海外展開も推進しています。直近の連結業績は売上高と経常利益ともに前期を上回り、好調な増収増益トレンドにあります。


※本記事は、高砂熱学工業の有価証券報告書(第146期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高砂熱学工業ってどんな会社?


空調設備の設計・施工を中核事業とし、国内外で総合的な設備構築や保守管理を提供する企業です。

(1) 会社概要


1923年に旧高砂工業の煖房工事部の権利義務を継承し、高砂煖房工事として設立されました。1943年に現在の高砂熱学工業に改称し、1969年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2014年には丸誠を完全子会社化し保守管理体制を強化、近年もタイの関連会社を連結子会社化するなど事業拡大を続けています。

同社グループの従業員数は連結で7,287名、単体で2,469名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は保険事業を展開する日本生命保険、第3位は外資系金融機関となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.64%
日本生命保険 6.83%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は小島和人氏が務めており、社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
小島和人 代表取締役社長社長執行役員 1984年同社入社。横浜支店長、大阪支店長、経営戦略本部長等を経て、2020年代表取締役社長COO。2023年より現職。
久保田浩司 代表取締役副社長執行役員営業本部長兼研究開発本部管掌兼カーボンニュートラル事業本部管掌兼コーポレート統括部管掌 1985年同社入社。東京本店副本店長、営業本部長等を経て、2024年取締役副社長執行役員。2026年より現職。
神谷忠史 取締役専務執行役員技術本部長兼関係会社担当 1986年同社入社。エンジニアリング事業部長、事業統括本部長等を経て、2024年取締役専務執行役員。2025年より現職。
森野正敏 取締役 1989年住友銀行入行。2021年同社入社、経営企画本部広報部長、財務・IR統括部長等を経て、2024年取締役執行役員。2026年より現職。


社外取締役は、内野州馬(元三菱商事代表取締役常務執行役員)、髙木敦(元Morgan Stanley Japanマネージングディレクター)、関葉子(国士舘大学教授・弁護士)、森本英香(元環境事務次官・早稲田大学法学部教授)、榊原一夫(元大阪高等検察庁検事長・弁護士)、日岡裕之(元日本航空執行役員総務本部長)、若松弘之(公認会計士若松弘之事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事事業」「設備機器の製造・販売事業」および「その他」事業を展開しています。

設備工事事業


空調設備の技術を核として、一般設備や産業設備の設計・施工、設備の保守メンテナンスや総合管理を提供しています。クリーンルーム向け関連機器の製造・据付なども手掛け、顧客はオフィスビル、工場、商業施設など国内外に多岐にわたります。

顧客から工事請負代金や保守サービス料を受け取ります。設計・施工は主に同社や日本設備工業、海外子会社が担い、保守管理はTMESなどが担当しています。

設備機器の製造・販売事業


ビル空調システムなどの設備機器の設計、製造、販売を行っています。顧客は建設会社や不動産施主などです。

空調機器などの製品販売代金を受け取ります。運営は日本ピーマックが行っています。

その他


保険代理店業務などの事業を展開しています。

保険契約に伴う手数料などを受け取ります。運営はヒューコスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高および経常利益ともに順調な拡大を続けています。特に直近2期間においては大型案件の順調な進捗や採算改善の取り組みが奏功し、売上高は4,000億円台に到達、利益率も11%台まで大きく向上して過去最高益を更新しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3027億円 3388億円 3634億円 3817億円 4239億円
経常利益 156億円 167億円 262億円 350億円 506億円
利益率(%) 5.2% 4.9% 7.2% 9.2% 11.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 117億円 109億円 179億円 262億円 341億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて工事採算の向上が進んだことで、売上総利益率は18.8%から22.1%へ、営業利益率は8.5%から11.3%へとそれぞれ大きく改善し、収益力が一段と高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3817億円 4239億円
売上総利益 716億円 937億円
売上総利益率(%) 18.8% 22.1%
営業利益 324億円 477億円
営業利益率(%) 8.5% 11.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が132億円(構成比28.6%)、事務用品費が45億円(同9.8%)を占めています。また、同社単体の完成工事原価では、外注費が1059億円(構成比48.1%)、材料費が507億円(同23.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である設備工事事業が、効率的な施工体制の構築や採算改善の取り組みによって売上高・利益ともに大きく伸長し、全社の業績拡大を力強く牽引しています。設備機器の製造・販売事業も増収増益と堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
設備工事事業 3737億円 4154億円 317億円 468億円 11.3%
設備機器の製造・販売事業 79億円 84億円 6億円 9億円 10.8%
その他 1億円 1億円 1億円 1億円 64.0%
調整額 -7億円 -10億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 3817億円 4239億円 324億円 477億円 11.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た営業利益で借入返済を行い、事業拡大や成長のための投資も手元資金でしっかりと賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 59億円 297億円
投資CF -14億円 -118億円
財務CF -127億円 -170億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.0%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「環境革新で、地球の未来をきりひらく。」をパーパスに掲げています。これまでの空気調和の技術を核としながら環境創造の事業領域を拡げ、社是である「人の和と創意で社会に貢献」を原点に、持続的な成長と付加価値を創出する企業を目指しています。

(2) 企業文化


役職員一人ひとりが「環境クリエイター」として、社内外の多様な人材と高め合いながら常に挑戦を続けていく文化を重視しています。多様な価値観を活かし、技術・営業・管理などの業務を通じて、社会課題解決に資する価値創造を成す人材の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2026」において、以下の2026年数値目標を掲げています。

* 連結受注高:4,000億円
* 連結売上高:3,700億円
* 連結経常利益:310億円
* ROE:11%以上
* 自己資本比率:50%水準

(4) 成長戦略と重点施策


空調設備事業を核として、建設事業、設備保守・管理事業、カーボンニュートラル事業、環境機器製造・販売事業の4つのドメインをDXで連携させる戦略を推進します。コア事業で収益基盤を盤石にし、得られた資金を海外事業の伸長やカーボンニュートラル事業の収益化に向けた成長投資に振り向けます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が最大の資産である」という理念のもと、品性と高い倫理観を持ち自律的に挑戦し続ける人材の育成を目指しています。また、多様性を認めて尊重し合う企業文化を醸成し、従業員が健康で能力を最大限に発揮できる労働環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 14.7年 12,457,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 90.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(2030年頃までに10%)、従業員数増加目標(2026年度までに350名以上増加)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 民間設備投資の変動に関するリスク


世界的な経済情勢の変化を受け、顧客の投資計画の中止や延期などにより、想定を上回る建設需要および空調設備需要が減退するリスクがあります。同社グループは固定費の縮減を含めた全社的な総合的取り組みによって対処する方針です。

(2) 資機材の調達コスト・納期に関するリスク


経済環境の影響により、配管や冷媒、空調機などの資機材価格が高騰したり納期が長期化したりするリスクがあります。同社グループは全店集中購買を加速させて調達機能を強化し、価格上昇の抑制や先行発注などによる工期への影響最小化に努めています。

(3) 技術員・技能者の人手不足による工程遅延リスク


資機材の調達遅延や技術員不足により、定められた納期までに工事を完了できないリスクがあります。同社グループはアウトソーシング体制の構築やITツールの活用、業務の標準化による生産性向上を図り、サプライチェーン全体での技術教育支援などを通じて体制維持に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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