高砂熱学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂熱学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、空調設備の設計・施工を主力事業としています。直近の連結業績は、売上高3817億円、経常利益350億円と増収増益を達成しました。建設需要が底堅く推移する中、効率的な施工体制の構築や採算改善の取り組みが奏功し、過去最高益を更新しています。


※本記事は、高砂熱学工業株式会社 の有価証券報告書(第145期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高砂熱学工業ってどんな会社?


空調設備の技術を核として、あらゆる用途のビル・工場・施設等の環境制御を行う「環境クリエイター」企業です。

(1) 会社概要


同社は1923年11月に高砂煖房工事として設立され、1943年に現在の社名となりました。1973年8月には東京・大阪証券取引所市場第一部へ指定替えを行っています。2014年10月には株式会社丸誠を完全子会社化し、ビルメンテナンス事業を担うTMESを発足させました。2022年4月の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は5,858名、単体では2,365名体制です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行(信託口)で、第2位は大手生命保険会社です。第3位には外国法人の資産管理を行う銀行が名を連ねており、国内外の機関投資家が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.60%
日本生命保険相互会社 6.74%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長社長執行役員には小島和人氏が就任しています。社外取締役は7名で、取締役会の過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
小島 和人 代表取締役社長社長執行役員 1984年同社入社。横浜支店長、経営戦略本部長などを経て、2020年代表取締役社長COO就任。2023年6月より現職。
久保田 浩司 取締役副社長執行役員営業本部長兼研究開発本部管掌 1985年同社入社。東京本店副本店長、営業本部長などを歴任。2022年取締役常務執行役員を経て、2024年4月より現職。
神谷 忠史 取締役専務執行役員技術本部長兼関係会社担当 1986年同社入社。事業統括本部長、品質・環境・安全担当などを歴任。2024年4月より現職。
森野 正敏 取締役執行役員財務・IR統括部長兼コーポレート部門管掌 1989年住友銀行入行。同行本店営業第八部長などを経て2021年同社入社。財務・IR統括部長を務め、2024年6月より現職。
中村 正人 取締役監査等委員 1984年三菱銀行入行。2014年同社入社。国際事業統括本部副本部長、経営企画本部長などを歴任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、内野州馬(元三菱商事代表取締役)、髙木敦(インフラ・リサーチ&アドバイザーズ代表取締役)、関葉子(銀座プライム法律事務所弁護士・公認会計士)、森本英香(元環境事務次官)、榊原一夫(元大阪高等検察庁検事長)、日岡裕之(元日本航空執行役員)、若松弘之(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事事業」「設備機器の製造・販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事事業


同社グループの中核事業であり、空調設備の技術を核とした一般設備および産業設備の設計・施工を行っています。また、設備の保守メンテナンスや設備総合管理サービスも提供しており、ビルのライフサイクル全体をサポートしています。国内のみならず、中国、東南アジア、インド、メキシコなど海外でも事業を展開しています。

収益は、顧客である建設会社や施主からの工事請負代金および保守メンテナンス料などから得ています。運営は、国内では主に高砂熱学工業と同社連結子会社のTMES、関連会社の日本設備工業が行っています。海外においては、高砂建築工程(中国)有限公司やタカサゴシンガポール Pte. Ltd.などの在外子会社が設計・施工を担っています。

(2) 設備機器の製造・販売事業


空調機器等の設計・製造・販売を行う事業です。同社グループの技術力を活かした製品開発を行い、市場に供給しています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受領します。運営は、連結子会社である日本ピーマックが行っています。

(3) その他


設備工事および機器製造以外の付帯事業として展開されています。

収益は、保険代理店業務の手数料などから得ています。運営は、連結子会社であるヒューコスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2752億円から3817億円へと着実に拡大しています。経常利益も139億円から350億円へと大幅に増加しており、利益率も5.1%から9.2%へと向上傾向にあります。特に直近2期における利益成長が著しく、増収効果に加えて採算性の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,752億円 3,027億円 3,388億円 3,634億円 3,817億円
経常利益 139億円 156億円 167億円 262億円 350億円
利益率(%) 5.1% 5.2% 4.9% 7.2% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 100億円 117億円 109億円 179億円 262億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が約5.0%増加し、売上総利益率は16.5%から18.8%へと2.3ポイント改善しています。これにより営業利益は34.0%の大幅増益となり、営業利益率も6.7%から8.5%へ上昇しました。工事採算の改善と増収効果が利益を押し上げています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,634億円 3,817億円
売上総利益 599億円 716億円
売上総利益率(%) 16.5% 18.8%
営業利益 242億円 324億円
営業利益率(%) 6.7% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が111億円(構成比28%)、事務用品費が37億円(同9%)、賞与引当金繰入額が35億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の設備工事事業は売上が5.1%増加し、利益は33.7%増と大幅な増益を達成しました。設備機器の製造・販売事業も増収増益を確保しています。その他事業は規模は小さいものの、増収増益となりました。全体として、コア事業である設備工事の好調が全社業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事事業 3,555億円 3,737億円 237億円 317億円 8.5%
設備機器の製造・販売事業 78億円 79億円 4億円 6億円 7.4%
その他 0.9億円 1億円 0.5億円 0.8億円 68.9%
調整額 -5億円 -7億円 -0.1億円 0.1億円 -
連結(合計) 3,634億円 3,817億円 242億円 324億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだキャッシュ(営業CFプラス)を使って、借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を行いつつ、投資(投資CFマイナス)も実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -131億円 59億円
投資CF -81億円 -14億円
財務CF -5億円 -127億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%で市場平均(プライム非製造業平均)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「環境革新で、地球の未来をきりひらく。」をパーパスとして掲げ、社是である「人の和と創意で社会に貢献」を原点としています。空調設備の技術を核に、持続的な成長と付加価値を創出し、ビジネスパートナーと共に環境価値を共創する企業を目指しています。

(2) 企業文化


役職員一人ひとりが「環境クリエイターⓇ」として、社内外の多様な人材と高め合いながら常に挑戦を続けることを重視しています。「環境クリエイターⓇ」とは、単に環境事業に携わるだけでなく、技術・営業・管理・経理などのあらゆる業務を通じて社会課題解決に資する価値創造を行う人材を指します。

(3) 経営計画・目標


2040年に向けた長期ビジョンの下、現在は第1フェーズとして「中期経営計画2026 Step for the FUTURE」を推進しています。最終年度である2026年度には以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:4,000億円
* 連結経常利益:320億円以上
* ROE:12.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


空調設備事業を核として、①建設事業、②設備保守・管理事業、③カーボンニュートラル事業、④環境機器製造・販売事業の4つの事業ドメインをDXで連携させる変革を進めています。特に2026年度まではコア事業である建設事業の収益基盤を盤石にし、得られた資金を事業領域拡大に向けた成長投資へ振り向ける方針です。

* T-BaseⓇ(プラットフォームによる生産管理)の活用拡大
* 海外事業の伸長とカーボンニュートラル事業の収益化
* 人的資本への投資強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が最大の資産である」という理念に基づき、自律的に挑戦し続ける「環境クリエイターⓇ」の育成を目指しています。多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、性別や国籍等に関わらず多様性を尊重する企業文化の醸成と、健康でいきいきと働ける労働環境の整備に取り組んでいます。具体的には、タカサゴ・シン・アカデミーを中心とした教育体系の構築や、1on1による対話促進などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 15.0年 11,291,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.7%
男女賃金差異(正規) 59.5%
男女賃金差異(非正規) 65.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員数(2,365名)、男性育児休職取得率(1週間以上)(86.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 民間設備投資の変動に関するリスク


世界的な経済情勢の変化等により、顧客の投資計画が中止・延期・変更された場合、建設需要や空調設備需要が減退し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、固定費の縮減を含めた全社的な取り組みで対処する方針です。

(2) 資機材の調達コスト・納期に関するリスク


ダクト、配管、空調機などの資機材価格の高騰や納期長期化が発生し、これらを請負金額に転嫁できない場合、工事原価が増加するリスクがあります。購買体制の強化や全店集中購買による調達コスト抑制、先行発注や仕様変更の提案による工期影響の最小化に取り組んでいます。

(3) 技術員・技能者の人手不足による工程遅延リスク


建設業界全体での人手不足により、協力会社を含めた技術員や技能者が確保できず、工期内の完工が困難になるリスクがあります。アウトソーシングの活用、DXによる生産性向上、協力会社への支援強化などを通じて施工能力の維持・確保に努めています。

(4) 労務関連法制に係るリスク


2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されたことに伴い、労働時間の減少が施工能力の縮小につながり、売上高が減少するリスクがあります。T-BaseⓇプロジェクト等による生産性向上や、働き方改革による適正な労働時間管理を進め、リスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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