都築電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

都築電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する情報ネットワークソリューションサービス企業です。情報通信機器の販売からシステムの開発・構築、運用・保守まで一貫して手掛けます。当期は電子デバイス事業の売却に伴い大幅な減収となりましたが、利益率の改善により経常利益は増益となり、過去最高益を更新しました。


※本記事は、都築電気株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 都築電気ってどんな会社?


情報ネットワークソリューションサービスを主力とし、機器販売からシステム開発・構築、保守サービスまでを一貫して提供するICT企業です。

(1) 会社概要


1932年に都築商店として創立し、電話交換装置等の事業を開始しました。1986年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2020年に市場第一部へ指定替え、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2021年に電子デバイス事業を分社化し、2024年に同事業を行う子会社全株式を譲渡しました。

連結従業員数は2,061名、単体は1,151名です。筆頭株主は同社と資本業務提携を行う株式会社麻生で、第2位は主要な取引先でありパートナー契約を締結している富士通、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
麻生 23.97%
富士通 12.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は吉井一典氏です。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
吉井 一典 代表取締役社長 1981年同社入社。経理部長、常務取締役、取締役執行役員専務、代表取締役副社長などを経て、2024年7月より現職。
尾山 和久 取締役 1984年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同行法人業務部長等を経て、2013年同社執行役員。取締役執行役員専務などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、瀧中秀敏(麻生代表取締役副社長)、塚原智子(富士通執行役員常務)、村島俊宏(弁護士)、松井くにお(金沢工業大学教授)、森山紀之(医療法人社団進興会理事長)、和智英樹(元日本アバイア社長)、小笠原直(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報ネットワークソリューションサービス」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 情報ネットワークソリューションサービス事業(機器)


情報・通信機器の販売を行っています。主にPC、サーバー、ネットワーク関連機器などを顧客に提供しており、Windows10のサポート終了に伴う更新需要や、モバイルワークシステム導入などのニーズに対応しています。

収益は顧客への機器販売代金です。運営は主に都築電気および連結子会社が行っています。

(2) 情報ネットワークソリューションサービス事業(開発・構築)


情報ネットワークに関わるコンサルティング、設計、開発、構築の技術提供を行っています。製造業や不動産業向けのネットワーク構築案件や、各種システム開発案件などを手掛けています。

収益は顧客からのコンサルティング、設計、開発、構築業務に対する対価です。運営は主に都築電気、都築ソフトウェア、都築クロスサポート等のグループ会社が行っています。

(3) 情報ネットワークソリューションサービス事業(サービス)


情報・通信機器、ソフトウェア等の運用・保守、クラウド等の月額サービスを提供しています。セキュリティやコンタクトセンターシステムなどの成長領域や、クラウド利用料等のストック型ビジネスが含まれます。

収益は顧客からの保守料やクラウド等の月額サービス利用料です。運営は都築電気、都築テクノサービス、コムデザイン等のグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は電子デバイス事業の売却により2025年3月期に大きく減少しましたが、利益面ではプライシングマネジメントや原価低減の効果もあり、経常利益は3期連続で過去最高益を更新するなど増益基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,200億円 1,193億円 1,239億円 1,249億円 983億円
経常利益 34億円 42億円 54億円 65億円 66億円
利益率(%) 2.8% 3.5% 4.3% 5.2% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 23億円 32億円 170億円 48億円

(2) 損益計算書


電子デバイス事業売却の影響で大幅な減収となりましたが、利益率の高いサービスや構築案件が堅調に推移し、売上総利益率は改善しました。販売費及び一般管理費も事業売却に伴い減少し、営業利益は微増を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,249億円 983億円
売上総利益 253億円 227億円
売上総利益率(%) 20.3% 23.1%
営業利益 64億円 65億円
営業利益率(%) 5.2% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料手当が79億円(構成比49%)、賞与引当金繰入額が11億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


2025年3月期は、前期に電子デバイス事業を行うグループ会社の全株式を譲渡したことに伴い、「情報ネットワークソリューションサービス事業」の単一セグメントへと移行しました。

これに伴い電子デバイス事業の売上が剥落したこと、さらに情報ネットワークソリューションサービス事業でも大型特需案件剥落による機器ビジネスの減少があったことから、連結全体としては大幅な減収(前期比21.3%減)となりました。

一方で利益面については、プライシングマネジメント等を通じた売上増と原価低減や、電子デバイス事業売却による販売費及び一般管理費の減少が寄与し、連結の営業利益は前期比0.6%増となり、3期連続で過去最高益を更新しました。

結果として、情報ネットワークソリューションサービス事業の利益率が向上し、電子デバイス事業売却などによる売上減少を利益面でカバーする形となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報ネットワークソリューションサービス事業 1,025.2億円 982.6億円 59.3億円 64.8億円 6.6%
電子デバイス事業 223.3億円 - 4.9億円 - -
調整額 - - 0.3億円 - -
連結(合計) 1,248.6億円 982.6億円 64.4億円 64.8億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金で、投資活動と借入金の返済や配当支払いを行っている、財務的に健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 50億円 34億円
投資CF 155億円 -8億円
財務CF -26億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、価値とあり方を言語化したパーパス「人と知と技術で、可能性に満ちた“余白”を、ともに。」を掲げています。この経営理念のもと、顧客や社会に対し独自の「事業的価値」と「社会的価値」を提供することで、更なる成長と豊かな世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


大切にすべき価値観・行動指針を定めた「バリューズ」を制定しています。長期ビジョンに向けて、ありたい姿を「Growth Navigator」と定め、「成長をナビゲートし、ともに創りあげる集団」への変革を目指す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2032年5月の創業100周年に向けた長期ビジョン達成のため、提供価値とポジションを高めることに挑戦しています。中期経営計画「Transformation 2026」を策定し、以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益:100億円(長期ビジョン)
* 売上高:1,500億円(長期ビジョン)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「リソースをシフトし成長事業を軌道に乗せる」ことを目指し、特に成長領域と新領域に比重を置いたポートフォリオ変革を進めています。M&Aや資本業務提携による新技術の取り込み、人への投資を強化し、ESG視点を持った「社会課題」起点のビジネスに挑戦しています。

* 成長領域の売上高:123億円(実績)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織と個人の活性化にこだわる」を人事戦略の柱とし、リーダー人材の育成、多様なプロ人材の育成、自律的に社内外に働きかけるチームづくりを推進しています。また、健康経営やワークスタイル変革、ダイバーシティ&インクルージョンを通じて、多様な人材が挑戦・活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 18.5年 9,431,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用) 74.9%
男女賃金差異(非正規) 84.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DXアソシエイト認定者数(278名)、DX検定認定者(560名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化と競争激化


情報サービス業界は技術革新や顧客ニーズの変化が速く、異業種参入などで競争が激化しています。同社グループがこれらへの対応に遅れ、提供する技術やノウハウの競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存


同社グループは富士通と重要な契約を締結し、製品・サービスを提供しています。富士通の経営方針変更等により、製品供給や仕入条件に変更が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティリスク


顧客の秘密情報や個人情報を扱っているため、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩等が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材確保・育成のリスク


同社グループが求める優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、競争力維持や事業遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。