※本記事は、明星工業株式会社の有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 明星工業ってどんな会社?
同社は、高い技術力を活かした熱絶縁工事を中核に、エネルギーの有効利用と環境保全に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1944年に明星工業所を創業して保温・保冷工事請負業を開始し、1947年に会社設立されました。1971年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1984年には同第一部へ指定替されています。1987年にはよしみねを買収してボイラ事業へ進出し、2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行して事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で768名、単体で362名です。大株主の状況については、筆頭株主はNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLCで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は公益財団法人富本奨学会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 8.96% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.76% |
| 公益財団法人富本奨学会 | 5.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は栁瀬徹次氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 栁瀬徹次 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。東京営業1部長、海外営業推進部長等を経て、2023年7月より現職。 |
| 篠原基嗣 | 取締役執行役員支店統括部長兼技術統括部長兼品質・安全管理部担当兼調達部担当兼浜松工場担当 | 1986年同社入社。中国・四国支店長、環境事業統括部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 藤野景三 | 取締役執行役員営業統括部長兼工事統括部長兼タングープロジェクトダイレクター | 1983年同社入社。MEISEI INTERNATIONAL PTE. LTD.代表等を経て、2025年4月より現職。 |
| 都木裕 | 取締役執行役員管理本部長兼総務部長兼経営企画室長兼関連会社担当 | 1985年同社入社。総務部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 髙瀬善久 | 取締役(監査等委員) | 1985年同社入社。大阪営業部長、近畿・中部支店長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、上村恭一(上村恭一事務所所長・誠光監査法人代表社員)、岸田光正(岸田光正税理士事務所所長)、西村強(ストロング会計事務所所長)、髙橋理恵子(弁護士法人淀屋橋・山上合同パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設工事事業」および「ボイラ事業」を展開しています。
■建設工事事業
熱絶縁工事、建材工事(クリーンルーム)、冷凍冷蔵低温設備工事など、多岐にわたる分野で材料の製造および施工を行っています。国内外のプラントや建築物において、石油・石油化学分野や天然ガス関連施設など、幅広い顧客のニーズに対応した防熱・保冷技術を提供しています。
収益源は、顧客からのプラント新設およびメンテナンスの工事請負代金や材料の販売代金です。事業の運営は、同社のほか、材料製造を担う日本ケイカル、施工を担う明星建工やエムエステック、さらに海外現地法人などの子会社が連携して行っています。
■ボイラ事業
ボイラおよび産業用機械器具の製造、施工、販売、据付を国内外で展開しています。バイオマス発電設備や産業用ボイラの新設工事を中心に、社会が求めるエネルギーの安定供給と安全確保、ならびに再生可能エネルギーの活用に貢献する製品や技術を提供しています。
収益源は、顧客からのボイラ設備の新設工事の請負代金や、既存ボイラの更新およびメンテナンス工事に伴う代金です。事業の運営は、主に製造と施工を専門とする子会社のよしみねが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第83期にかけて増加傾向にありましたが、直近の第84期は国内外の大口工事案件の進捗が減少した影響により減収に転じています。利益面でも、売上高の減少と新工場稼働などのコスト負担増が響き、直近は大幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 484億円 | 559億円 | 604億円 | 663億円 | 603億円 |
| 経常利益 | 56億円 | 73億円 | 85億円 | 112億円 | 83億円 |
| 利益率(%) | 11.7% | 13.0% | 14.2% | 16.9% | 13.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 40億円 | 42億円 | 42億円 | 70億円 | 70億円 |
■(2) 損益計算書
完成工事高の減少に伴い完成工事総利益も減少し、売上総利益率は低下しています。一方で、人件費等のコスト負担増によって販売費及び一般管理費は増加しており、結果として営業利益率は大幅に低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 663億円 | 603億円 |
| 売上総利益 | 157億円 | 132億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 21.9% |
| 営業利益 | 106億円 | 77億円 |
| 営業利益率(%) | 16.0% | 12.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が20億円(構成比37.0%)、法定福利費が4億円(同7.0%)を占めています。また、完成工事原価のうち、外注費が216億円(売上原価構成比67.4%)、材料費が45億円(同14.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設工事事業は国内メンテナンス工事が堅調だったものの、大口案件の減少により減収減益となりました。ボイラ事業も大口案件の進捗減少と新工場のコスト負担増が響き、減収と大幅な減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設工事事業 | 589億円 | 541億円 | 101億円 | 73億円 | 13.6% |
| ボイラ事業 | 73億円 | 62億円 | 5億円 | 2億円 | 3.9% |
| 連結(合計) | 663億円 | 603億円 | 106億円 | 77億円 | 12.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 69億円 | 65億円 |
| 投資CF | -5億円 | 23億円 |
| 財務CF | -47億円 | -56億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客の創造と信頼の確保」「社会への貢献」「未来への挑戦」の3つの経営理念を掲げています。エネルギーとエコロジーの豊かな共存を企業に課せられた重要なテーマと捉え、コア事業である断熱工事・技術を通じてエネルギーの有効利用に貢献するとともに、地球規模の課題である省エネルギーや環境保全を推進しています。
■(2) 企業文化
「改革、スピード&チャレンジ」を行動指針として掲げ、グループ全体への浸透を図っています。事業環境が激しく変化する中で、将来のあるべき姿を見据えたサステナビリティ経営の確立を目指し、企業風土の醸成と意識改革を推進することで、常に一歩先をリードする挑戦を続ける文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度からスタートした中期経営計画において、「未来の躍進に繋げる投資」を基本方針としています。経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を用いており、総合的な判断による経営の最適化を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
脱炭素社会に向けた新たなビジネスチャンスの創出に向け、既存事業の深化による収益基盤の持続的な強化、事業ポートフォリオの再構築や海外市場での受注拡大といった持続的な成長戦略を展開しています。将来的なエネルギー源となる水素・アンモニアに係る防熱技術の開発や、デジタル化・グローバル化に適応した経営基盤の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営環境の変化に適応し競争力を強化するため、従業員一人ひとりが自身の力量を高めて挑戦を続けることを重視しています。OJTを軸としつつ、工事・技術部門の専門人材とマネジメント人材の育成を目指し、ビジネススキルの習得や人権、コンプライアンスに関する教育機会を継続的に提供する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 13.8年 | 7,260,593円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.7% |
| 男性育児休業取得率 | 16.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※パート・有期労働者の男女賃金差異は該当者がいない等の理由により記載がありません。また、男女の賃金差異は、男性労働者と比較して女性労働者の平均勤続年数が短いこと及び管理職比率が低いこと等が主な要因となっています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内需要市場の変動と価格競争の激化
主要な事業対象である石油・石油化学分野において、設備投資の伸び悩みや国内マーケットの縮小、価格競争の熾烈化が進んでいます。国内需要の停滞や長期的な減少傾向が続いた場合、同社グループの収益基盤が影響を受け、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業と為替変動リスク
アジア地域を中心に展開する海外事業において、テロや政情悪化、予期せぬ法的規制の変更、市況の悪化などがリスクとなります。また、急激な為替相場の変動や金利の上昇が発生した場合、海外での工事採算や事業運営に影響が生じ、業績を圧迫する可能性があります。
■(3) 見積りリスクと不採算工事の発生
工事収益や原価総額の見積りは、工程の遅れや想定外の事象発生により見直しが必要となる場合があります。工事施工段階で想定外の追加原価などが発生し、不採算工事となった場合、同社グループの業績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。



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