北野建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北野建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北野建設は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建設事業を中心にゴルフ場事業、ホテル事業、広告代理店事業などを展開する企業です。直近の業績では、売上高が788億円と前年から減少したものの、経常利益は50億円と増加しており、減収増益となっています。地域密着型経営で高品質なものづくりを強みとします。


※本記事は、北野建設株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北野建設ってどんな会社?


同社は長野県を本拠地とし、建築・土木工事を主力にホテルやゴルフ場などの関連事業も手掛ける総合建設会社です。

(1) 会社概要


1946年に長野市で北野建築工業として設立され、1948年に北野建設へ商号変更しました。1973年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1981年に市場第一部銘柄に指定されています。海外展開も進めており、1989年にソロモン諸島国でホテルを設立、2014年にはベトナムのホテル事業会社を子会社化しています。

現在の従業員数は連結で1,143名、単体で778名体制となっています。大株主の状況は、筆頭株主が一般財団法人北野財団で、第2位が公益財団法人北野美術館、第3位が北野管財合同会社となっており、創業家や同社にゆかりのある財団および資産管理会社が上位を占める構成です。

氏名 持株比率
一般財団法人北野財団 13.16%
公益財団法人北野美術館 8.23%
北野管財合同会社 7.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼社長執行役員社長情報企画本部長(上席執行役員)は北野貴裕氏が務めています。取締役6名のうち2名が社外取締役で、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
北野貴裕 代表取締役会長兼社長執行役員社長情報企画本部長(上席執行役員) 1991年同社入社。社長室長、常務、専務を経て、2003年代表取締役副社長に就任。2007年より代表取締役会長兼社長執行役員社長を務め、現在に至る。
山﨑義勝 取締役専務執行役員技術本部長兼建築事業本部長(上席執行役員) 1970年同社入社。東京本社建築部長、本社建築本部長などを経て、2011年取締役専務執行役員に就任。現在は技術本部長兼建築事業本部長として現職。
久保聡 取締役執行役員人事本部長兼ブランディング・広報戦略室長兼CSR推進室長(上席執行役員) 1985年同社入社。人事本部次長、管理部長などを経て、2016年執行役員人事本部長に就任。2022年に取締役執行役員となり、現職。
秋田孝之 取締役執行役員経営管理本部長兼特命案件担当(上席執行役員) 1986年三菱銀行入行。生化学工業取締役上席執行役員を経て、2023年同社入社。執行役員経営管理本部長に就任し、2024年より現職。


社外取締役は、矢崎ふみ子(税理士法人山田&パートナーズ顧問)、杉浦康之(三菱商事顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「ゴルフ場事業」、「ホテル事業」、「広告代理店事業」を展開しています。

建設事業


土木、建築に関する建設工事の施工、その他関連業務及び太陽光発電事業、建築物の総合管理及び警備業を行っています。官公庁および民間の発注者からの工事を請け負います。

収益源は、施主との工事契約に基づく建設工事の施工による対価です。運営は主に北野建設と同社子会社のキタノプロパティが行っています。

ゴルフ場事業


長野市にある「川中嶋カントリークラブ」において、ゴルフ場経営を行っています。ゴルフプレーヤーや会員に対してゴルフ場施設の利用サービスを提供しています。

収益源は、会員及びその他顧客からのプレイフィーなどのゴルフ場の利用料です。運営は連結子会社の川中嶋土地開発が行っています。

ホテル事業


国内外でホテルの経営および運営を行っています。長野市のホテルのほか、ソロモン諸島やベトナムのハノイ市で宿泊施設を利用する顧客向けにサービスを提供します。

収益源は、宿泊客からの宿泊代金や料飲店等の利用料です。運営は北野建設のほか、連結子会社のソロモンキタノメンダナホテルリミテッド、サクラハノイプラザインベストメントカンパニーリミテッド、キタノプロパティが行っています。

広告代理店事業


各種メディアへの広告出稿、広告制作、各種コンテンツ制作等のサービスを提供しています。広告主となる企業や団体が主な顧客となります。

収益源は、広告出稿や各種制作物の提供により顧客から受け取る役務収益です。運営は連結子会社のアサヒエージェンシーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は601億円から853億円の間で推移しており、当期は788億円となっています。経常利益は29億円から51億円の範囲で安定的に推移し、利益率も4.8%から6.4%へ上昇傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 601億円 853億円 850億円 809億円 788億円
経常利益 29億円 44億円 51億円 41億円 50億円
利益率(%) 4.8% 5.1% 6.0% 5.0% 6.4%
当期利益 19億円 16億円 34億円 29億円 33億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高が減少する一方で売上原価の減少により売上総利益は増加しています。結果として売上総利益率は10.0%から12.5%へ、営業利益率は4.5%から5.9%へとそれぞれ改善し、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 809億円 788億円
売上総利益 81億円 98億円
売上総利益率(%) 10.0% 12.5%
営業利益 36億円 46億円
営業利益率(%) 4.5% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が19億円(構成比27%)、減価償却費が5億円(同8%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が643億円(構成比96%)、兼業事業売上原価が28億円(同4%)となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、主力である建設事業が全体の売上の大部分を占めており、当期は減収ながら増益を達成しています。ホテル事業も売上・利益ともに前年を上回り、ゴルフ場事業も堅調に推移していますが、広告代理店事業は微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業 770億円 749億円 32億円 41億円 5.5%
ゴルフ場事業 2億円 3億円 0.1億円 0.1億円 3.0%
ホテル事業 28億円 29億円 4億円 4億円 15.3%
広告代理店事業 8億円 7億円 0.2億円 0.2億円 3.0%
連結(合計) 809億円 788億円 36億円 46億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -62億円 -42億円
投資CF -8億円 -13億円
財務CF -12億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客からの信頼を第一義に考え、高品質・高付加価値なものづくりに徹し、社会の期待に応え、ともに発展する」を経営理念として掲げています。地域密着型経営を通じてステークホルダーからの期待に応え、その利益を第一に考えて経営を行うことを目指しています。

(2) 企業文化


「品質管理」「安全管理」「コンプライアンス遵守の徹底」を事業活動の3原則として掲げています。また、コーポレートステートメントとして「未来を育てる人がいる」を掲げ、人材の育成や技能の継承を重視し、安全で働きやすい職場環境の提供を通じて豊かな社会の実現に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


次期の連結業績見通しとして、総売上高860億円、営業利益50億円、経常利益53億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円の達成を目標として掲げています。財務指標等の相対価値のみに左右されず、各ステークホルダーから寄せられる信頼の醸成によって構築される絶対価値の向上を目指しています。

* 総売上高860億円
* 営業利益50億円

(4) 成長戦略と重点施策


施工面では安全管理や品質管理を徹底し、高品質なものづくりの提供を目指します。営業面では収益性重視の基本方針に基づき、意思決定の迅速化を図って安定的な受注確保を推進します。また、人材面では積極的なキャリア採用による人材確保を行い、財務面では健全性の維持と安定的な配当の継続に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と捉え、積極的な採用活動と育成への投資を行う方針です。多様な人材を排除せず通年で採用を行い、脱年功および実力主義に基づく人事制度を導入しています。従業員が自身の望むキャリアを選択できるよう、教育機会の提供や柔軟な働き方を支援する職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 15.9年 9,298,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 93.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 27.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合(25.0%)、正社員一人当たり平均年間労働時間(2,258時間)、社員の研修受講費用(総額4,100万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の縮小リスク


景気後退や企業の設備投資抑制による受注機会の減少、資材やエネルギー価格の高騰による原価上昇などが、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、発注者側の業況悪化に伴う工事代金回収の遅延リスクも存在します。

(2) 重大事故や契約不適合の発生リスク


同社グループが設計・施工した物件において、施工途中における重大事故の発生や、完成後に契約不適合が認められた場合、多額の費用負担が生じる可能性があり、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 海外工事のカントリーリスク


海外での建設事業において、政変や暴動の発生による工事の中断、現地政府の政策や税制等の変更による原価高騰リスクがあります。また、急激な為替市場の変動により、海外工事やホテル事業の業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。