北野建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北野建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、国内外での建設事業を主軸に、ゴルフ場、ホテル、広告代理店事業を展開しています。当期の連結業績は、売上高809億円(前期比4.8%減)、経常利益41億円(同19.8%減)となり、減収減益で着地しました。


※本記事は、北野建設株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北野建設ってどんな会社?


長野県を拠点に全国および海外で建設事業を展開するほか、ホテルやゴルフ場経営も行うゼネコンです。

(1) 会社概要


1946年に北野建築工業として設立され、1948年に現社名へ変更しました。1963年には東京支店を開設し、事業エリアを拡大。1973年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1981年には同市場第一部へ指定替えとなりました。海外展開にも積極的で、1989年にはソロモン諸島にホテル事業の子会社を設立しています。

同社の連結従業員数は1,105名、単体では734名です。筆頭株主は創業家関連の一般財団法人北野財団で、第2位は公益財団法人北野美術館、第3位は北野管財合同会社となっており、創業家に関連する法人等が大株主の上位を占めています。

氏名 持株比率
一般財団法人北野財団 13.17%
公益財団法人北野美術館 8.23%
北野管財合同会社 7.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長兼社長は北野貴裕氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
北野貴裕 代表取締役会長兼社長執行役員社長情報企画本部長 1991年入社。社長室長、海外建設本部長などを経て、2007年より代表取締役会長兼社長執行役員社長。2024年より現職。
山﨑義勝 取締役専務執行役員技術本部長兼建築事業本部長 1970年入社。建築部長、建築事業本部長などを歴任し、2011年取締役専務執行役員。2024年より現職。
南澤光弥 取締役常務執行役員情報企画本部副本部長兼クライアントリレーション・渉外担当兼ブランディング・広報戦略室長兼CSR推進室部長 1990年入社。社長室次長、建築事業本部副本部長などを経て、2023年執行役員。2024年より現職。
久保聡 取締役執行役員人事本部長兼CSR推進室長 1985年入社。人事部長、管理部長などを経て、2016年執行役員人事本部長。2022年より現職。
秋田孝之 取締役執行役員経営管理本部長兼特命案件担当 元三菱UFJ銀行執行役員。生化学工業取締役を経て、2023年同社入社。2024年より現職。


社外取締役は、宇田好文(元NTTドコモ副社長)、矢崎ふみ子(税理士法人山田&パートナーズ代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「ゴルフ場事業」、「ホテル事業」、「広告代理店事業」を展開しています。

建設事業


土木、建築に関する建設工事の施工やその他関連業務、および太陽光発電事業を行っています。国内外で幅広い建設プロジェクトを手掛けています。

収益は主に施主からの工事請負代金によって構成されています。運営は同社およびキタノプロパティが行っています。

ゴルフ場事業


長野市にある「川中嶋カントリークラブ」にてゴルフ場の経営を行っています。地域に密着したレジャー施設として運営されています。

収益は利用者からのプレイフィーや施設利用料などです。運営は子会社の川中嶋土地開発が行っています。

ホテル事業


長野市でのホテル経営に加え、ソロモン諸島の「ソロモンキタノメンダナホテル」、ベトナム・ハノイ市の「ホテルデュパルクハノイ」にてホテル事業を展開しています。

収益は宿泊客からの宿泊料や料飲代金などです。運営は同社、ソロモンキタノメンダナホテルリミテッド、サクラハノイプラザインベストメントカンパニーリミテッド、キタノプロパティが行っています。

広告代理店事業


広告代理店業を営んでおり、各種メディアへの広告出稿や広告制作、コンテンツ制作などのサービスを提供しています。

収益は顧客からの広告出稿手数料や制作費などです。運営は子会社のアサヒエージェンシーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は800億円前後で推移しており、当期は前期比で減少しました。利益面では、経常利益が直近で減少傾向にあり、当期純利益も前期の過去最高水準から減少しています。利益率は5%前後を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 753億円 601億円 853億円 850億円 809億円
経常利益 30億円 29億円 44億円 51億円 41億円
利益率(%) 3.9% 4.8% 5.1% 6.0% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 19億円 16億円 34億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減少しました。売上総利益率は前期とほぼ同水準を維持していますが、販管費の増加などにより営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 850億円 809億円
売上総利益 87億円 81億円
売上総利益率(%) 10.2% 10.0%
営業利益 48億円 36億円
営業利益率(%) 5.7% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が19億円(構成比30%)、減価償却費が5億円(同9%)を占めています。売上原価については、外注費などの工事原価が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は減収減益となりました。ホテル事業は売上高、利益ともに増加し堅調に推移しています。ゴルフ場事業と広告代理店事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 814億円 770億円 43億円 32億円 4.1%
ゴルフ場事業 2.6億円 2.5億円 0.2億円 0.1億円 2.4%
ホテル事業 25億円 28億円 4億円 4億円 14.4%
広告代理店事業 8億円 8億円 0.4億円 0.2億円 2.8%
連結(合計) 850億円 809億円 48億円 36億円 4.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 -62億円
投資CF -3億円 -8億円
財務CF -13億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


顧客からの信頼を第一義に考え、高品質・高付加価値なものづくりに徹し、社会の期待に応え、ともに発展することを経営理念として掲げています。また、「品質管理」「安全管理」「コンプライアンス遵守の徹底」を事業活動の3原則とし、地域密着型経営を通じてステークホルダーの期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


「未来を育てる人がいる」をコーポレートステートメントとして掲げ、次世代を担う人材の育成や技能・知識の継承を重視しています。また、高品質・高付加価値なものづくりを通じて、快適で安全な環境を提供し、社員や家族のゆとりと豊かさの実現に努める姿勢を持っています。SDGsの達成や健康経営の推進にも積極的です。

(3) 経営計画・目標


次期の見通しとして、DXへの取り組みや人材への投資に伴う経費を見込んだ上で、以下の数値を目標として掲げています。

* 総売上高:830億円
* 営業利益:36億円
* 経常利益:40億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:25億円

(4) 成長戦略と重点施策


「コンプライアンスの重視とコーポレート・ガバナンスの強化」を経営方針に掲げ、経営効率の改善に取り組んでいます。施工面では各種管理の徹底による高品質なものづくりの提供、営業面では収益性重視と安定的な受注確保、人事面では積極的なキャリア採用による人材確保を推進しています。また、DXへの取り組みや人材育成への投資も強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と捉え、採用・育成に積極的な投資を行うことで持続的な企業価値向上を目指しています。新卒・キャリアともに多様な人材を積極的に採用し、脱年功的な人事制度のもと、社員が自律的にキャリアを選択できる環境整備を進めています。また、労働安全衛生の確保やワークライフバランスの実現にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 16.5年 8,999,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.9%
男女賃金差異(正規雇用) 62.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 25.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合向上(21.7%)、正社員一人当たり平均年間労働時間(2,278時間)、社員の研修受講費用(総額1,190万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の縮小リスク


国内経済の動向が業績に影響を与える可能性があります。景気後退による設備投資抑制での受注減少、発注者の業況悪化による代金回収遅延や貸倒れ、資材・エネルギー価格の高騰による原価上昇、災害等による需要減少などが懸念されます。

(2) 重大事故や契約不適合の発生リスク


設計・施工した物件において、施工中の重大事故や完成後の契約不適合が発生した場合、多額の費用負担が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外工事のカントリーリスク


海外工事において、政変や暴動による工事中断・中止、現地の政策や税制変更による原価高騰、政情不安による社員の安全確保の問題などが生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 為替相場の変動リスク


海外工事や海外ホテル事業を展開しているため、現地通貨での資金調達や事業運営において、急激な為替市場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。外貨必要資金については為替予約等でリスクヘッジを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。