世紀東急工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

世紀東急工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、道路舗装大手の東急グループ企業です。建設事業と舗装資材製造販売事業を両輪とし、社会インフラ整備を担っています。当連結会計年度は、大型工事の進捗や製品販売価格の上昇により、売上高は994億円、経常利益は58億円となり、前期比で大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、世紀東急工業株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 世紀東急工業ってどんな会社?


道路舗装業界の大手として、建設工事と舗装資材の製造販売を展開する東急グループのインフラ創造企業です。

(1) 会社概要

1950年に世紀建設工業として設立され、1982年に東急道路と合併して現在の世紀東急工業となりました。道路舗装業界の有力企業として事業を拡大し、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。近年は長期ビジョンに基づき、既存事業の強化に加え、サステナブル経営の推進や人材投資に注力しています。

連結従業員数は1,152名、単体では1,002名です。筆頭株主はその他の関係会社であり主要な取引先でもある東急建設で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は東急グループの中核である東急となっています。同社は東急グループの一員として強固な事業基盤を有しています。

氏名 持株比率
東急建設 24.40%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.29%
東急 4.19%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長 社長執行役員は平喜一氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
平  喜 一 代表取締役社長社長執行役員 1984年入社。執行役員関東支店長、常務執行役員、取締役等を経て、2019年4月より現職。
石 田 和 士 代表取締役専務執行役員管理本部長 1985年入社。執行役員、常務執行役員、取締役、サステナブル経営戦略プロジェクトリーダー等を経て、2023年6月より現職。
樗 木 裕 治 取 締 役専務執行役員事業推進本部長 1988年入社。九州支店長、執行役員、常務執行役員、取締役事業推進本部副本部長等を経て、2025年4月より現職。
川 野 隆 紀 取 締 役常務執行役員管理本部副本部長兼財務部長 1989年入社。管理本部財務部長、執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、清水令奈(CHANCE for ONE代表取締役社長)、小町谷育子(法律事務所Legal i プラス設立)、松本仁(元デロイトグローバルボード副議長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「舗装資材製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建設事業

道路舗装工事を中心に、一般土木工事、上水道・下水道工事、スポーツ施設工事などの社会インフラ整備を行っています。官公庁や高速道路会社などの発注者、および民間企業が主な顧客です。

工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取ることで収益を得ています。運営は主に世紀東急工業が行っており、子会社のやまびこ工業、みちのく工業、新世紀工業、クマレキ工業、孝松工務店、舗道工業、舗栄建設工業、日東道路などがそれぞれの地域や専門分野で事業を展開しています。

(2) 舗装資材製造販売事業

アスファルト合材をはじめとする道路舗装材料の製造および販売を行っています。自社の建設事業で使用するほか、他の建設会社や舗装工事業者に製品を供給しています。

顧客に対する製品の販売により、販売代金を受け取ることで収益を得ています。運営は世紀東急工業のほか、子会社の新世紀工業、SEIKITOKYU MYANMAR ROAD COMPANY LIMITED、関連会社の能登アスコンなどが担当しています。また、グループ内での製品供給も行われています。

(3) その他

建設機械の販売や自動車等のリース事業、および再生可能エネルギーによる売電事業などを行っています。

建設機械の販売代金やリース料、売電収入などが収益源となります。建設機械販売およびリース事業は子会社のエス・ティ・サービスが、売電事業等は世紀東急工業が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は800億円台後半から900億円台で推移していましたが、当期は大型工事の進捗等により過去最高水準に近い994億円まで伸長しました。利益面では、原材料価格高騰の影響を受けつつも、直近2期は回復基調にあり、当期は経常利益率が5.8%まで改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 900億円 851億円 924億円 880億円 994億円
経常利益 84億円 44億円 26億円 41億円 58億円
利益率(%) 9.3% 5.1% 2.9% 4.6% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 31億円 10億円 21億円 35億円

(2) 損益計算書

前期と比較して、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は前期の11.3%から12.1%へ上昇しました。販管費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益率は4.6%から5.9%へと大きく改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 880億円 994億円
売上総利益 80億円 105億円
売上総利益率(%) 9.1% 10.5%
営業利益 41億円 58億円
営業利益率(%) 4.6% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が23億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が4億円(同7%)を占めています。売上原価においては、建設事業の完成工事原価が700億円(構成比80%)、製品売上原価が174億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益

建設事業は、大型工事の順調な進捗により大幅な増収増益となりました。舗装資材製造販売事業は、販売価格の適正化により増収を確保しましたが、原材料費や人件費等のコスト増を吸収しきれず減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 703億円 804億円 56億円 81億円 10.0%
舗装資材製造販売事業 176億円 189億円 18億円 15億円 7.9%
その他 10億円 10億円 2億円 2億円 16.3%
調整額 -146億円 -159億円 -35億円 -39億円 -
連結(合計) 880億円 994億円 41億円 58億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**営業CF/投資CF/財務CF全てのキャッシュフローがマイナスになっています(末期型)。**
※ただし、営業CFのマイナスは主に売上高および工事施工高の伸長に伴う売上債権の大幅な増加(約99億円)によるものであり、本業の収益性が悪化したわけではありません。事業拡大に伴う一時的な資金需要によるものです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 109億円 -10億円
投資CF -29億円 -13億円
財務CF -28億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「豊かな地域社会づくりに貢献する生活基盤創造企業」を標榜し、社会資本の整備を責務として事業を展開しています。道路建設を主軸に土木、水利・環境、舗装資材の製造販売等の事業領域を確保し、社会基盤整備の担い手として、健全な発展と存続を目指しています。

(2) 企業文化

「人の成長と企業の成長を両立し 持続可能な社会の実現に貢献する 真に強靭な企業グループ」を長期ビジョンとして掲げています。最も重要な経営資源を「人」と位置づけ、従業員エンゲージメントの高い風土のもと、基礎体力・危機対応力を向上させることで、予測不能な事態においても持続可能な存在となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標

2030年に向けた長期ビジョンの実現に向け、現在は第2フェーズとなる「中期経営計画(2024-2026年度)」を推進しています。2026年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:1,000億円
* 営業利益:60億円
* 当期純利益:40億円
* ROE:9.5%
* 自己資本比率:50%程度

(4) 成長戦略と重点施策

本業の競争力強化による安定収益の拡大と、将来の成長ドライバーの創出に取り組んでいます。建設事業では施工実績の蓄積や防災・減災分野への展開、舗装資材事業では低環境負荷商品の販売強化を推進しています。また、道路インフラの長寿命化技術やリサイクル技術の開発、ICT・AI活用による生産性向上、人材の採用・育成強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

競争力の源泉である「人」への育成コストを経費ではなく「投資」と捉え、人材の成長と組織力の向上を図っています。ダイバーシティ採用の推進や教育機関との連携強化による採用体制の強化、働きがいのある職場づくりによるエンゲージメント向上に取り組んでいます。また、多様化する人材に応じた柔軟なキャリア形成や教育体系の充実化を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.5歳 14.7年 7,677,221円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 43.8%
男女賃金差異(全労働者) 55.9%
男女賃金差異(正規) 59.8%
男女賃金差異(非正規) 57.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用(総合職)における女性比率(20.0%)、有給休暇取得率(55.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢と公共投資の動向

事業の主要部分を占める建設事業および舗装資材製造販売事業は、公共工事の発注動向に大きく影響を受けます。公共事業費の過度の縮減や、取引先の経営悪化による貸倒れの発生等は、同グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資材価格の変動

舗装資材の主要原材料であるストレートアスファルトの仕入価格は原油市場の動向に左右されます。価格上昇を製品価格に転嫁できない場合や、急激な需要変化による需給逼迫、為替変動等により資機材価格が高騰した場合、利益率が低下し経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 国際事業の展開

国際事業を展開するうえで、海外諸国の政治・経済情勢、為替変動、法的規制の変更など、事業環境に著しい変化が生じた場合、売上高の減少等により、同グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 感染症等の拡大

感染症等の拡大により、工事の中止や工場の操業停止を余儀なくされる事態に至った場合、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、工事の発注状況に大きな変動が生じた場合にも、公共投資の縮減と同様の理由により悪影響が生じるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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