※本記事は、世紀東急工業株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 世紀東急工業ってどんな会社?
同社は道路舗装や土木を主体とした建設事業と、アスファルト合材などの舗装資材製造販売を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1950年1月に世紀建設工業として設立されました。1973年9月に東京証券取引所市場第二部へ株式上場しました。1982年5月に東急道路と合併して世紀東急工業へ商号変更し、同年11月に同取引所市場第一部へ指定替えを行っています。2025年12月にはゼネラルアクトの全株式を取得しました。
同社グループは、連結で1,169名、単体で1,011名の従業員を擁しています。筆頭株主は同社と建設工事等の請負取引を行う事業会社の東急建設で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は東急グループの中核企業である東急となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東急建設 | 24.38% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.05% |
| 東急 | 4.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長社長執行役員は平喜一氏が務めており、取締役7名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平喜一 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1984年4月同社入社。2011年4月執行役員、2015年4月常務執行役員、2017年6月取締役を歴任。2019年4月より現職。 |
| 石田和士 | 代表取締役専務執行役員コーポレート本部長 | 1985年4月同社入社。2019年6月取締役、2023年4月専務執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 樗木裕治 | 取締役専務執行役員事業推進本部長 | 1988年4月同社入社。2021年6月取締役、2023年6月事業推進本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 川野隆紀 | 取締役常務執行役員コーポレート本部副本部長兼財務部長兼AIデジタル推進部長 | 1989年4月同社入社。2024年4月常務執行役員、2024年6月取締役などを経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、清水令奈(CHANCE for ONE代表取締役社長)、小町谷育子(法律事務所Legal i プラス設立)、松本仁(松本仁公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」、「舗装資材製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設事業
道路舗装、土木などの建設工事全般に関する事業を展開し、国や地方自治体などの官公庁および民間企業を顧客としています。
主に発注者から工事の請負代金を収益として受領します。運営は同社のほか、やまびこ工業、みちのく工業、新世紀工業などの子会社や関連会社が行っています。また、東急建設などからも工事の一部を受注しています。
■(2) 舗装資材製造販売事業
アスファルト合材をはじめとする各種舗装資材の製造・販売事業を展開し、主に建設業者などの顧客へ製品を提供しています。
顧客への製品販売に伴う代金を収益として受領します。運営は同社のほか、新世紀工業、ゼネラルアクトなどの子会社や関連会社が行っています。各社間で製品や原料の売買を通じた連携も図られています。
■(3) その他
建設事業および舗装資材製造販売事業のほか、建設機械の販売、自動車等のリース事業、および売電事業などを展開しています。
リース料や売電収入、機械の販売代金を収益として受け取ります。売電事業等は同社が運営し、機械の販売や自動車等のリース事業は子会社のエス・ティ・サービスが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は公共工事の発注動向などを背景に増減を繰り返しながらも堅調に推移しています。経常利益と当期利益については、直近3年間で継続的な増益を達成しており、利益率も改善傾向にあります。事業環境の変化に対応し、着実に収益力を高めていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 851億円 | 924億円 | 880億円 | 994億円 | 953億円 |
| 経常利益 | 44億円 | 26億円 | 41億円 | 58億円 | 63億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 2.9% | 4.6% | 5.8% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 11億円 | 27億円 | 39億円 | 47億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年度の大型工事集中の反動などにより減収となり、売上総利益も減少しました。一方で、販売費及び一般管理費等のコントロールや収益性向上策が奏功し、営業利益は増益を達成しており、営業利益率も改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 994億円 | 953億円 |
| 売上総利益 | 105億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.5% | 10.1% |
| 営業利益 | 58億円 | 64億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が24億円(構成比38%)、賞与引当金繰入額が4億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設事業は、大型工事が集中した前年度の反動減により売上が減少しました。一方、舗装資材製造販売事業は、製造コスト上昇分の販売価格への反映や低環境負荷商品の販売強化を推進したことで増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 804億円 | 747億円 |
| 舗装資材製造販売事業 | 189億円 | 205億円 |
| その他 | 0.8億円 | 1.3億円 |
| 連結(合計) | 994億円 | 953億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.3%で、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -10億円 | 114億円 |
| 投資CF | -13億円 | -17億円 |
| 財務CF | -34億円 | -30億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「豊かな地域社会づくりに貢献する生活基盤創造企業」を経営理念に掲げ、社会資本の整備を責務として事業を展開しています。この考えのもと、道路建設を主軸に土木、水利・環境、舗装資材の製造販売などの領域で社会基盤整備の担い手として活動し、健全な発展と存続を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は最も重要な経営資源を「人」と捉え、「従業員エンゲージメントの高い企業風土」の醸成を重視しています。また、コンプライアンス行動規範において「安全が全てに優先すること」を掲げるとともに、個人の違いを互いに認め尊重し合うダイバーシティ推進の風土づくりにも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン『2030年のあるべき姿』および「中期経営計画(2024-2026年度)」において、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。2030年度に向けて、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,100億円
* 営業利益:80億円
* 当期純利益:50億円
* ROE:10.0%
* 自己資本比率:50%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画において、本業のさらなる競争力強化による安定収益の拡大や、海外展開を含む事業領域の拡大・新たな事業分野開拓への挑戦を重点施策としています。また、インフラ老朽化対策や防災・減災分野への展開に加え、低炭素アスファルト混合物など社会課題解決に貢献するサステナブル経営を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
競争力の源泉である「人」への教育コストを経費ではなく「投資」と位置づけ、人材の成長に積極的に取り組んでいます。多様な人材を確保し活躍の場を提供することで組織力の向上を図るほか、長時間労働の是正や業務のデジタル化を推進し、ワークライフバランスと生産性向上を両立させる新しい働き方の定着を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 14.6年 | 8,193,176円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 72.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 40.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 57.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 60.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用(総合職)における女性比率(31.0%)、従業員の有給休暇取得率(60.7%)、コンプライアンス研修参加率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共工事の発注動向と経済情勢の影響
建設事業や舗装資材製造販売事業は公共工事の発注動向に大きく影響を受けます。政府の公共事業費の大幅な縮減が行われた場合や、取引先の経営状態が悪化し貸倒れが発生した場合などは、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資材・原材料価格の変動リスク
製造する舗装資材の主要な原材料であるストレートアスファルトは、原油市場の動向によって仕入価格が大きく変動します。この仕入価格の上昇分を製品価格に転嫁できない場合や、建設資機材価格の高騰により利益率が低下した場合、収益に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 気候変動に係るリスク
地球温暖化対策としてのカーボンプライシング導入に伴うコスト増加や、夏季の気温上昇に伴う労働生産性の低下・健康リスクの増加が懸念されます。同社はICT施工による省人化や温室効果ガス削減目標の達成に向けて取り組んでいますが、対応が遅れた場合は事業に影響を及ぼす可能性があります。



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