植木組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

植木組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する新潟県地盤の総合建設会社です。建設事業と不動産事業を柱に、建材製造や介護福祉事業なども展開しています。直近の業績は、大型工事の端境期等の影響で減収となりましたが、工事採算性の向上により営業利益・経常利益ともに増益を達成しています。


※本記事は、株式会社植木組 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 植木組ってどんな会社?


1885年創業の新潟県柏崎市に本社を置く老舗ゼネコンです。地域に密着した社会資本整備を担っています。

(1) 会社概要


1885年に創業し、土木・建築工事の請負を開始しました。1948年に株式会社として設立され、1973年に新潟証券取引所へ上場、1984年には東京証券取引所市場第一部に指定されました。その後、介護福祉事業やゴルフ場運営など事業の多角化を進めています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は993名、単体では600名です。大株主の構成は、筆頭株主が株式会社ウエキエージェンシー、第2位が地元金融機関の株式会社第四北越銀行、第3位が取引先持株会である植木組共栄会となっています。

氏名 持株比率
ウエキエージェンシー 4.94%
第四北越銀行 4.93%
植木組共栄会 4.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は日下部久夫氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
植木 義明 代表取締役会長 1983年入社。営業本部長、技術本部長などを歴任し、2006年に代表取締役社長CEOに就任。2024年4月より現職。
日下部 久夫 代表取締役社長 1982年入社。土木本部長、専務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
植木 豊 取締役専務執行役員管理統括部長総務部長 1986年入社。新潟本店副本店長、事業統括部長などを歴任。2024年4月より現職。
上石 邦彦 取締役(監査等委員) 1984年入社。総務人事部長、経営企画室長、内部監査室長を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、渡辺英美子(新潟日報社元執行役員)、深澤邦光(元新潟税務署長・税理士)、種岡弘明(元経済産業省・日本アルコール物流会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」「建材製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建設事業


土木工事および建築工事の請負施工を行っています。また、子会社を通じて建設資材の賃貸事業も展開しています。主要な顧客は官公庁や民間企業であり、道路や河川などのインフラ整備から、工場や商業施設などの建築まで幅広く手掛けています。

収益は、顧客である発注者からの工事請負代金および資材の賃貸料から得ています。運営は主に同社が行っているほか、北陸施設工業、アスカ、村田電気商会、ワールドスイコー、佐藤建設などが施工を、植木機工が資材賃貸を担当しています。

(2) 不動産事業


不動産の売買、賃貸および開発を行っています。宅地開発事業などに伴う工事の一部も請け負っています。地域社会のニーズに応じた不動産開発や有効活用を推進しています。

収益は、不動産の購入者からの売買代金や、テナントからの賃貸料収入から得ています。運営は同社および子会社の植木不動産が行っています。

(3) 建材製造販売事業


建設資材の製造販売を行っています。製品は自社の建設事業で使用されるほか、外部への販売も行われています。アスファルト合材などの建設資材を安定的に供給する役割を担っています。

収益は、建設会社などの顧客からの製品販売代金から得ています。運営は同社が行っています。

(4) その他


ソフトウェア開発、損害保険代理業、介護福祉事業、ゴルフ場運営などを行っています。建設・不動産以外の分野でも多角的にサービスを展開しています。

収益は、ソフトウェアの販売代金、保険手数料、老人ホームの利用料、ゴルフ場のプレーフィなどから得ています。運営はユニテック(ソフト開発)、はまなす保険企画(保険)、さくら介護サービス(介護)、高浜観光開発(ゴルフ場)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期分の業績を見ると、売上高は400億円台後半から500億円台半ばで推移しています。直近の2025年3月期は前期比で減収となりましたが、利益面では経常利益が増加し、利益率も改善傾向にあります。当期純利益も安定的に確保しており、堅実な経営が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 488億円 477億円 489億円 559億円 507億円
経常利益 26億円 24億円 21億円 27億円 30億円
利益率(%) 5.4% 5.0% 4.4% 4.7% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 12億円 12億円 15億円 17億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益は増加しており、収益性が向上しています。売上総利益率は7.9%から9.1%へ改善しました。これに伴い、営業利益も増加し、営業利益率は5.6%となりました。工事採算の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 559億円 507億円
売上総利益 44億円 46億円
売上総利益率(%) 7.9% 9.1%
営業利益 26億円 29億円
営業利益率(%) 4.6% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比38%)、雑費が5億円(同13%)を占めています。売上原価においては、外注費や材料費が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、大型工事の端境期等により減収となりましたが、工事利益率の向上により増益を達成しました。不動産事業は販売用不動産の売上減少により減収減益となりました。建材製造販売事業は売上増ながら原材料費高騰で減益、その他事業は除雪業務の増加等により増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 494億円 444億円 20億円 23億円 5.1%
不動産事業 33億円 28億円 4億円 3億円 11.2%
建材製造販売事業 6億円 7億円 1億円 1億円 16.7%
その他 25億円 28億円 2億円 3億円 10.5%
調整額 △6億円 △5億円 △1億円 △1億円 -
連結(合計) 559億円 507億円 26億円 29億円 5.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金と借入金を活用して、投資活動を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF △7億円 26億円
投資CF △4億円 △11億円
財務CF △7億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、建設・不動産事業を柱に、介護福祉やソフトウェア開発などの事業を通じて社会資本整備に貢献することを目指しています。地域社会の安全・安心で快適なコミュニティ創りに寄与し、顧客から信頼されるサービスの提供と、人口減少社会において地元の雇用の場となるグループ経営を共通の理念として掲げています。

(2) 企業文化


社会・経済動向に即した顧客対応の向上が重要であるとの認識のもと、組織的な営業力の向上に力を入れています。営業、設計、施工部門が一体となった受注活動を展開する体制をとっており、全社一丸となって社員一人ひとりの能力とパフォーマンスの向上に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


第15次中期経営計画(2025-2027年度)において、持続的成長とステークホルダーからの信頼獲得を目指しています。2026年3月期の連結経営数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:600億円
* 営業利益:24億70百万円
* ROE:7.0%以上
* 配当性向:34.5%

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン「UEKI VISION 150」に基づき、「営業力強化」「技術力強化」「人財力強化」を重点テーマとしています。建設新技術の研究開発とDX促進、働きがいのある職場環境づくりに取り組みます。また、市場動向に応じた事業エリア・領域の開拓を進め、エネルギー・エンジニアリング分野などでのサービス展開を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財力の強化」を経営課題の一つに掲げ、建設技術者や技能労働者の不足・高齢化に対応しています。全グループを通じた人材交流や育成を中長期的に図り、生産性の改善と省人・省力化を促進することを目標としています。また、技術資格取得の奨励や教育指導の徹底により、個々の技術力向上を通じた現場力の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 18.7年 6,838,585円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.2%
男女賃金差異(正規) 58.8%
男女賃金差異(非正規) 48.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注環境の変化


公共事業の削減や入札制度の変更など、予期せぬ制度改正が行われた場合、受注機会の減少や競争激化により、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先の信用リスク


建設業は工事の着手から完成・引渡しまでに長期間を要するため、発注者の経営状況の悪化などにより、工事代金の回収遅延や貸倒れが発生するリスクがあります。これにより、財務状態に影響が出る可能性があります。

(3) 資材価格の変動


原材料価格の高騰が発生した際、その上昇分を請負金額に十分に転嫁できない場合、工事採算が悪化し、同社グループの利益を圧迫する可能性があります。

(4) 資産保有リスク


同社は不動産や有価証券を保有しており、これらの時価が下落した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。市場動向によっては、財政状態や経営成績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。