植木組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

植木組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

植木組は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建設事業を主力に不動産、建材製造、介護福祉等の事業を展開しています。直近の業績は、大型工事の順調な進捗により大幅な増収を達成し、徹底した生産性向上とコスト管理により増益を記録するなど好調に推移しています。


※本記事は、株式会社植木組の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 植木組ってどんな会社?


建設事業を中心に不動産や介護福祉など多様な事業を展開し、地域社会の基盤整備に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1885年に創業し、土木・建築工事の請負を開始しました。1948年に会社を設立し、1973年に新潟証券取引所、1982年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。1984年に同市場第一部へ指定され、現在はスタンダード市場に上場しています。また、各種子会社を設立・買収し事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で1,005名、単体で587名です。筆頭株主はウエキエージェンシーで、第2位は第四北越銀行、第3位は従業員の持株会である植木組共栄会となっており、事業会社や金融機関、社内組織が上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
ウエキエージェンシー 4.93%
第四北越銀行 4.92%
植木組共栄会 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は日下部久夫氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
植木義明 代表取締役会長 1983年1月同社入社。常務取締役、東京支店長、営業本部長、専務取締役などを経て、2006年6月代表取締役社長CEO。2024年4月より現職。
日下部久夫 代表取締役社長 1982年4月同社入社。土木部長、土木統括部長、取締役、専務執行役員などを歴任し、2022年4月代表取締役。2024年4月より現職。
植木豊 取締役専務執行役員管理統括部長総務部長 1986年4月同社入社。新潟本店副本店長兼新潟支店長、事業統括部長などを歴任し、2024年4月より現職。
力石正仁 取締役常務執行役員経営企画室長内部監査室長 1984年4月同社入社。経理部長、執行役員経理部長等を経て、2025年6月より現職。
上石邦彦 取締役(監査等委員) 1984年4月同社入社。総務人事部長、経営企画室長、内部監査室長を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、渡辺英美子(新潟市社会福祉協議会副会長)、深澤邦光(税理士)、種岡弘明(アルコール海運倉庫代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「不動産事業」、「建材製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建設事業


土木・建築工事の受注および施工を中心に、建設資材の賃貸事業などを展開しています。官公庁からの公共工事や民間企業からの設備投資など、幅広い顧客に対して社会資本整備につながる高品質な建設サービスを提供しています。

収益は、発注者からの工事請負代金や建設資材の賃貸料から得ています。運営は同社を中心に、北陸施設工業、アスカ、植木機工などの各種子会社と連携して行っています。

(2) 不動産事業


不動産の売買、賃貸、および宅地開発に関する事業を展開しています。新潟県をはじめとする各地域において、賃貸用の店舗やオフィスビル、産業廃棄物処理施設などを保有・管理しています。

収益は、販売用不動産の売却代金や賃貸物件からの賃貸料によって構成されています。運営は同社と、子会社である植木不動産が共同で行っています。

(3) 建材製造販売事業


建設工事に不可欠な各種建設資材の製造および販売を行っています。自社グループ内での利用だけでなく、一部の建設事業を営む子会社や外部顧客に向けた製品供給も担っています。

収益は、製造した建設資材の販売代金から得ています。運営は主に同社が主体となって事業を展開しています。

(4) その他


ソフトウェアの開発・販売、損害保険代理業、有料老人ホームの運営、ゴルフ場の運営など、多岐にわたる関連サービスを提供しています。

収益は、各サービスの販売代金や利用料、代理店手数料などから構成されています。運営は、ユニテック、はまなす保険企画、さくら介護サービス、高浜観光開発などの各専門子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が477億円から633億円へと成長を続けています。利益面も一時的な増減はありつつも概ね堅調に推移し、直近では利益率も向上し、過去最高水準の利益を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 477億円 489億円 559億円 507億円 633億円
経常利益 24億円 21億円 27億円 30億円 38億円
利益率(%) 5.0% 4.4% 4.7% 5.8% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 12億円 15億円 17億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営によって収益性が着実に向上していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 507億円 633億円
売上総利益 46億円 60億円
売上総利益率(%) 9.1% 9.5%
営業利益 29億円 37億円
営業利益率(%) 5.6% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が14億円(構成比36%)、雑費が5億円(同13%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が511億円(構成比92%)、その他の事業売上原価が27億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業が大型工事の順調な進捗により大幅な増収を牽引しました。その他の事業も堅調に推移した一方、不動産事業は販売用不動産の売上減少により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 444億円 570億円
不動産事業 28億円 24億円
建材製造販売事業 7億円 7億円
その他 28億円 31億円
連結(合計) 507億円 633億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長のために借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。なお、営業CFのマイナスは工事進捗による売上債権の増加などに起因しており、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 26億円 -38億円
投資CF -11億円 -14億円
財務CF 8億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会資本整備の充実に努めるとともに、地域社会の安全、安心で快適なコミュニティ創りに貢献し、顧客から信用と評価を得る満足度の高いサービスの提供を行っていくこと」および「人口減少社会の中で地元の雇用の場となるグループ経営」を共通の理念として掲げています。

(2) 企業文化


「成長を求め、挑戦を楽しむ企業へ」を基本方針とし、ESGやSDGsに配慮した企業活動を重視しています。また、コンプライアンスの徹底を重要課題に掲げ、「企業行動指針」を定めて社員への浸透を図るなど、社会から信頼される組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第15次中期経営計画(2025-2027年度)において、持続的成長とステークホルダーからの高い評価を得ることを目指し、以下の数値を目標として掲げています。

* 売上高:65,000百万円
* 営業利益:3,250百万円
* 自己資本利益率(ROE):7.0%以上
* 配当性向:33.6%

(4) 成長戦略と重点施策


「営業力強化」「技術力強化」「人財力強化」を重点テーマに設定しています。少子高齢化や市場環境の変化に対応すべく、積極的なエリア・領域開拓を進めるとともに、建設新技術の研究開発とDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進を図り、提案力と施工能力の向上に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財力強化」を重点テーマの一つに位置づけ、戦略的な成長投資に取り組んでいます。女性、外国人、中途採用者などの多様な人材の活躍を持続的成長に不可欠と捉え、全グループを通じた人材交流や育成を図るとともに、省人・省力化を促進し、パフォーマンス向上と働きがいのある職場環境づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.4歳 18.6年 7,040,681円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 107.7%
男女賃金差異(全労働者) 56.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 59.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の育児休業取得率(100.0%)、CO2排出量の削減目標(30.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク

建設業においては、工事の受注から完成までに相当の時間を要することから、発注者側の業況悪化等により工事代金回収に遅延や貸倒が発生する可能性があります。同社では与信管理を徹底し、影響の最小化に努めています。

(2) 受注環境の変化リスク

同社グループの業績は、公共投資や民間設備投資の動向に影響を受けます。予想を上回る公共事業の削減や、入札方法等の制度改正が行われた場合には、受注高が減少し業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

(3) 資材価格の変動リスク

建設コストを構成する建設資材やエネルギー価格が高騰した際、その上昇分を請負金額へ適切に反映することが困難な場合には、工事の利益率が低下し、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。