四電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

四電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

四電工は東証プライム上場企業です。配電・電気・空調等の設備工事を主力とし、リースや太陽光発電事業も展開しています。2025年3月期連結決算は、大型工事の進捗や原価管理の徹底により、売上高・各利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社四電工 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 四電工ってどんな会社?


四国電力を親会社に持つ総合設備企業です。配電工事や建築設備工事を主力とし、四国エリアのインフラを支えています。

(1) 会社概要


1963年に南海電工として設立され、1979年に東証一部へ上場しました。1989年に現社名へ変更し、2012年以降は太陽光発電事業の子会社を相次いで設立するなど事業を拡大しています。2018年には有元温調、2019年には関西設備を子会社化するなどM&Aも推進しています。

連結従業員数は2,660名、単体では2,158名です。筆頭株主は事業会社である四国電力で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
四国電力 31.72%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.43%
四電工従業員持株会 5.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役 社長は関谷幸男氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
関谷幸男 代表取締役 社長 四国電力に入社し、執行役員電力輸送本部配電部長、常務執行役員送配電カンパニー社長補佐などを歴任。2020年に四電工に入社し専務取締役等を経て、2023年6月より現職。
山﨑直樹 代表取締役 専務執行役員企画部・人事労務部・総務部・経理部統括 四国電力に入社後、四電工社長室部長、常務執行役員社長室長兼企画広報部長などを経て、2024年6月より現職。
中川隆 代表取締役 専務執行役員技術本部長、原価管理室長 四電工に入社し、香川支店営業部長、常務執行役員香川支店長などを経て、2024年6月より現職。
山本愛朗 取締役 常務執行役員営業本部長 四電工に入社し、愛媛支店営業部長、常務執行役員愛媛支店長などを経て、2023年6月より現職。
山口隆浩 取締役 常務執行役員電力本部長、安全部・ITシステム推進室統括 四国電力に入社後、四電工電力本部配電部長、執行役員電力本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、佐野正(元四国旅客鉄道常務取締役)、戸谷美奈子(フリーアナウンサー)、橋倉荘六(元タダノ執行役員常務)、川原央(四国電力取締役監査等委員)、岡林正文(元等松・青木監査法人代表社員)、平野美紀(香川大学法学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」「リース事業」「太陽光発電事業」および「その他」事業を展開しています。

設備工事業


配電工事、送電・土木工事、電気・計装工事、空調・管工事、情報通信工事の設計・施工を行っています。顧客は親会社である四国電力グループをはじめ、官公庁や一般民間企業など多岐にわたります。

顧客からの工事代金が収益源です。運営は主に四電工が行うほか、アクセル徳島、高知クリエイト、アクセル松山、香川クリエイトなどの連結子会社も工事の一部を受注施工しています。

リース事業


工事用機械、車両、備品等のリースを行っています。主な顧客は建設関連企業やグループ会社等です。

顧客からのリース料が収益源です。運営は連結子会社のヨンコービジネスが行っています。

太陽光発電事業


太陽光発電所を保有し、太陽光発電による電気の販売を行っています。また、主要な設備について工事・管理・運営も行っています。

電力会社等への売電収入が収益源です。運営は四電工のほか、連結子会社のヨンコーソーラー、仁尾太陽光発電、桑野太陽光発電などが行っています。

その他


CADソフトウェアの開発・販売、指定管理業務、工事材料の販売、PFI事業などを行っています。

ソフトウェアの販売代金や業務委託料などが収益源です。運営は四電工のほか、連結子会社のキャデワサービス等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,000億円の大台を突破し、利益面でも順調な拡大傾向にあります。特に当期は、大型工事の進捗や徹底した原価管理により、売上高・各利益ともに過去最高を更新しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 896億円 926億円 891億円 921億円 1,059億円
経常利益 56億円 61億円 56億円 70億円 85億円
利益率(%) 6.2% 6.6% 6.2% 7.6% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 33億円 31億円 35億円 48億円

(2) 損益計算書


前期と比較して増収増益となっており、売上総利益率も高水準を維持しています。増収効果に加え、原価管理の徹底が利益押し上げに寄与しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 921億円 1,059億円
売上総利益 161億円 184億円
売上総利益率(%) 17.5% 17.4%
営業利益 64億円 81億円
営業利益率(%) 7.0% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が45億円(構成比43.6%)、退職給付費用が1億円(同0.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の設備工事業が大幅な増収増益となり、全社の業績拡大を牽引しました。太陽光発電事業も増益を確保した一方、リース事業とその他事業は減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事業 868億円 1,008億円 52億円 69億円 6.8%
リース事業 18億円 16億円 3億円 3億円 16.9%
太陽光発電事業 21億円 21億円 8億円 8億円 37.9%
その他 14億円 13億円 2億円 2億円 15.5%
調整額 - - -0億円 -1億円 -
連結(合計) 921億円 1,059億円 64億円 81億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

四電工グループは、営業活動によるキャッシュ・フローが一時的な要因により資金支出となったものの、設備投資や借入金の返済、配当金の支払いなどにより、連結会計年度末の資金残高は減少しました。営業活動では、売上債権の増加や未払金の減少、税金等の支払いなどにより資金支出となりましたが、これは支払条件変更に伴う一時的なものです。投資活動では、設備投資により資金支出が増加しました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより、前連結会計年度よりも多くの資金支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 60億円 -5億円
投資CF -6億円 -12億円
財務CF -31億円 -43億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、電力送配電設備の設計・施工・保守等を通じて電力安定供給の一翼を担うとともに、総合設備企業として、顧客に満足してもらえる高品質の設備とサービスを提供することにより、地域社会に貢献し、企業として持続的成長を目指すことを基本方針としています。

(2) 企業文化


2025年度に向けての共通目標を「チャレンジ、次なる成長ステージへ」と定め、5つの基本スタンスのもとで事業活動を展開しています。具体的には、収益力の向上、首都圏・関西圏等での信頼獲得、ライフラインを守る社会的責任の全う、人財・技術力の向上による競争力強化、ESG経営による地域貢献を掲げています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営指針2025」において、2025年度に向けた数値目標を設定しています。
* 売上高 1,000億円
* 営業利益 60億円
* ROE 8.0%

なお、これらの目標は2024年度実績において1年前倒しで達成されています。

(4) 成長戦略と重点施策


総合設備企業としての多面的な収益力の強化や広域的な事業展開の拡充に取り組んでいます。手持工事残高が高水準にある中、徹底した原価管理やVE(バリュー・エンジニアリング)提案など技術的な創意工夫により、さらなる売上・利益の積み増しに努めています。また、人材投資をはじめとする成長投資を実践し、持続的な企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材育成方針」に基づき、持続可能性と多様性を基軸とした人事施策を推進しています。長期的な視点での採用、基本技能と実践経験を融合させた教育、適性を踏まえた育成配置、公正・透明な評価・処遇制度を構築し、人材投資を行っています。また、「社内環境整備方針」により、人材が能力を発揮できる環境整備やリスク管理にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 16.3年 7,214,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 34.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用) 82.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者割合(8.9%)、女性社員採用数(12人)、障がい者雇用率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 四国電力グループの設備投資動向


主要取引先である四国電力グループの送・配電設備の建設・保守等に関連する設備投資の動向は、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、一般建設投資の縮小や受注獲得競争の激化などから、受注価格が低下し工事採算性が悪化する可能性があります。

(2) 完成工事原価の変動


調達環境の悪化等により、材料費や外注費が大幅に上昇した場合、工事採算性に影響を及ぼす可能性があります。特に、担い手不足や世界的な素材価格の高騰等による、資材価格やサプライチェーンへの影響を注視する必要があります。これに対し、労務単価及び材料代の市況把握やタイムリーな原価検討等で影響の最小化に努めています。

(3) 取引先の倒産等による債務不履行


請負工事やリース事業において、契約締結から入金されるまでの間、取引先の信用リスクを抱えています。予期せぬ経営・財務状況の悪化により、債権の回収等が困難となる事態が発生する可能性があります。このため、与信管理や長期未収入金の管理、出来高未請求チェックの徹底に努めています。

(4) 退職給付債務


確定給付企業年金制度を含む退職給付制度を採用しており、退職年金資産の運用利回りの悪化や割引率の低下は、同社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このため、政策的資産構成割合に基づき、各資産をパッシブ運用することなどにより、適切にリスク管理することとしています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。