※本記事は、株式会社大気社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大気社ってどんな会社?
国内外のビルや工場向けに高度な空調・塗装システムを提供するエンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1913年に建材社として創立され、1949年に株式会社建材社に改組しました。その後、暖房工事や冷房を含む空調設備の設計・施工へと事業を拡大し、1973年に現在の大気社に商号を変更しました。1974年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1980年には同市場第一部銘柄に指定されています。
現在の従業員数は連結で5,525名、単体で1,824名です。大株主の筆頭は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)です。第3位にはかつての社名と同じ建材社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.12% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.43% |
| 建材社 | 5.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は長田雅士氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長田雅士 | 代表取締役社長執行役員 | 1983年同社入社。環境システム事業部企画室長、企画本部長、Taikisha(Singapore)社長などを歴任。2023年代表取締役社長に就任し、2024年より事業開発本部長を兼務して現職。 |
| 中島靖 | 代表取締役副社長執行役員管理本部管掌兼技術本部管掌 | 1982年同社入社。環境システム事業部技術統括部長、海外統括部長、管理本部長などを歴任。2023年に代表取締役専務執行役員管理本部長に就任し、2025年より現職。 |
| 祖父江正 | 取締役専務執行役員環境システム事業部長兼地域戦略部長 | 1987年同社入社。環境システム事業部の各支店技術部長や海外技術統括部長を歴任。2023年に取締役常務執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 中川正徳 | 取締役 | 2009年みずほコーポレート銀行戦略投資部長。2012年同社入社。管理本部長、経営企画本部長等を歴任し、2025年取締役副社長執行役員。2026年より現職。 |
| 浜中幸憲 | 取締役 | 1981年同社入社。塗装システム事業部副事業部長やTaikisha USA社長などを歴任。2023年取締役常務執行役員に就任し、2025年取締役専務執行役員を経て2026年より現職。 |
社外取締役は、彦坂浩一(あかねくさ法律事務所入所)、早田順幸(元日本生命保険常務執行役員)、副島寿香(元有限責任監査法人トーマツパートナー)、中田平将(元日本電気執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境システム事業」および「塗装システム事業」を展開しています。
■環境システム事業
主に一般事務所、ホテル、病院、データセンターなどのビル空調設備や、半導体、電子部品、医薬品などの製造工場におけるクリーンルームといった産業空調設備の設計・監理・施工を行っています。また、これらに関連する資機材の製造・販売も手掛けています。
収益は顧客からの設備工事の請負代金や資機材の販売代金から得ています。これらの事業運営は、大気社のほか、国内子会社の東京大気社サービスやベジ・ファクトリー、海外子会社のTaikisha (Singapore) Pte. Ltd.など複数のグループ会社が担当しています。
■塗装システム事業
主に自動車車体・バンパーなどの自動車産業向けや、建設車両、鉄道車両、航空機などの各製造工場における塗装設備の設計・監理・施工を行っています。また、関連する資機材の開発・製造・販売、アフターケアを含めたサービスも提供しています。
収益は自動車メーカーなどを中心とした顧客からの設備工事の請負代金や資機材の販売代金から得ています。運営は大気社を中心に、米国法人のTaikisha USA, Inc.や中国法人の天津大気社塗装系統などの海外拠点も重要な役割を担い、グローバルに展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、経常利益および当期利益がともに順調な成長傾向にあります。特に直近の2026年3月期は国内外での設備投資需要を捉え、経常利益248億円、当期利益174億円と大幅な増益を達成しており、堅調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 108億円 | 130億円 | 199億円 | 199億円 | 248億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 77億円 | 85億円 | 136億円 | 103億円 | 174億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を見ると、完成工事総利益および営業利益ともに大きく増加しています。特に営業利益は前期比で約30%増と大幅な伸びを示しており、高収益化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | 450億円 | 553億円 |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 180億円 | 233億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が127億円(構成比40%)、その他が117億円(同37%)、通信交通費が20億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
環境システム事業、塗装システム事業ともに売上が増加しています。特に主力の環境システム事業は、半導体やデータセンター向けなどの産業空調分野が好調に推移し、全社売上の牽引役となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 環境システム事業 | 1,694億円 | 1,830億円 |
| 塗装システム事業 | 1,068億円 | 1,031億円 |
| 連結(合計) | 2,762億円 | 2,861億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは改善型です。営業利益と資産売却等の手元資金によって借入金の返済などを進め、財務体質を強化している局面にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -212億円 | 647億円 |
| 投資CF | -50億円 | 7億円 |
| 財務CF | 19億円 | -235億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、Purposeとして「大気をまもり、未来をひらく。」を掲げています。これは、技術と創意を通じて産業社会の高度化と地球環境の調和を図り、人々の豊かな暮らしに貢献するという存在意義を示しています。公害問題が深刻だった時代から続く「澄んだ空気を取り戻す」という強い志を原動力にしています。
■(2) 企業文化
同社は、「顧客第一」の精神を拠りどころとし、全てのステークホルダーから信頼される企業を目指しています。さらに、Visionとして「世界の知を、現場のカタチに。」を定め、「グリーンテクノロジー」や「ロボティクスオートメーション」に先端技術を掛け合わせ、世界中の現場で最適な解決策を創り出す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「10年プラン2035」において、2035年のありたい姿として「持続可能な社会の構築」に貢献するグローバルエンジニアリング企業を目指しています。この実現に向け、具体的な財務・非財務目標を設定し、事業の成長と脱炭素化を進めています。
・完成工事高:5,000億円超
・自己資本利益率(ROE):12.0%以上
・配当政策(DOE):5.0%以上
・CO2排出量(スコープ1・2):53%削減(2022年度比)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「Innovative Engineering」と「Global Inclusion」の2つの指針の下、半導体やデータセンターなどの成長産業への積極展開や、非日系企業の開拓を進めます。また、事業と財務の最適化を図り、積極的な投資活動を実行します。
・事業成長投資(R&D、新規事業関連等):65億円
・キャピタルアロケーション(M&A等):220億円
・デジタル成長投資:70億円
・成長のための人的投資:25億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を競争力の源泉と位置づけ、「大気社キャリアステージ」に基づく人材ポートフォリオの構築を進めています。キャリアプラン制度や海外トレーニー制度などの支援を拡充し、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進するとともに、技術系社員の「技術カルテ」活用による計画的な育成と技術継承に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 15.2年 | 11,600,212円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男性育児休業取得率 | 69.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(97%以上)、エンゲージメントサーベイ回答率(90%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 民間設備投資の変動リスク
同社の事業は、国内外の民間企業の設備投資動向に大きく依存しています。海外での日系企業の投資減少や、自動車メーカーの生産縮小、カーボンニュートラル対応の遅れに伴う顧客離れなどが発生した場合、受注工事高が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模自然災害に係るリスク
地震、津波、風水害などの自然災害や感染症の世界的流行が発生した場合、事業拠点が被害を受けるリスクがあります。顧客の事業活動の停滞や経済情勢への波及が長期化することで、同社の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) 海外事業の管理・統制に関するリスク
同社は海外展開を進めており、予期せぬ法規制の変更や政情不安、外貨建取引による為替変動が業績に影響を与えるリスクがあります。また、現地顧客の倒産による債権未回収や、海外関係会社の計画未達により、グループ全体の業績が悪化する可能性があります。
■(4) 技術開発に係るリスク
カーボンニュートラルや省エネルギー、オートメーション化など、顧客の高度なニーズに対応するシステム開発が遅れた場合、他社に対する競争力が低下します。これにより、受注機会の損失や企業評価の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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