※本記事は、株式会社大気社 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大気社ってどんな会社?
空調設備の設計・施工を行う「環境システム事業」と、自動車塗装設備の「塗装システム事業」を柱とするグローバルエンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
同社は1913年に合資会社建材社として創立され、1949年に株式会社建材社として設立されました。1952年には塗装プラント事業を開始し、1973年に現在の商号である大気社に変更しました。1974年に東証二部へ上場し、1980年に東証一部指定となりました。2007年には現在の二大事業部制へ移行しています。
連結従業員数は5,267名、単体では1,727名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は創業時の商号を冠する法人である建材社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.30% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.60% |
| 建材社 | 5.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表者は代表取締役社長執行役員の長田雅士氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長田雅士 | 代表取締役社長執行役員 | 1983年同社入社。環境システム事業部長、経営企画本部長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 中島靖 | 代表取締役副社長執行役員管理本部管掌兼技術本部管掌 | 1982年同社入社。環境システム事業部長、管理本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 中川正徳 | 取締役副社長執行役員経営企画本部長兼サステナビリティ推進担当 | 2009年みずほコーポレート銀行入行。2012年同社入社。管理本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 浜中幸憲 | 取締役専務執行役員塗装システム事業部長 | 1981年同社入社。塗装システム事業部副事業部長、TKS Industrial Company社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 祖父江正 | 取締役専務執行役員環境システム事業部長 | 1987年同社入社。環境システム事業部技術統括部長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、彦坂浩一(あかねくさ法律事務所弁護士)、早田順幸(ニッセイ・ビジネス・サービス社長)、副島寿香(サノヤスホールディングス取締役)、中田平将(NECソリューションイノベータ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境システム事業」および「塗装システム事業」事業を展開しています。
■環境システム事業
事務所、ホテル、病院、データセンター等のビル空調設備や、半導体・医薬品等の工場における産業空調設備の設計・監理・施工を行っています。また、これらに関連する資機材の製造・販売も手掛けており、顧客はビルオーナーや各種製造業の企業などが中心です。
収益は、顧客からの工事請負代金および資機材の販売代金から得ています。運営は主に同社が行っていますが、サンエス工業、日本ノイズコントロール、東京大気社サービスなどの子会社も製造や施工、販売に関わっています。
■塗装システム事業
自動車メーカー向けを中心に、自動車車体やバンパー等の塗装設備の設計・監理・施工を行っています。また、鉄道車両や航空機、一般産業機器等の塗装設備にも展開しており、関連する資機材の製造・販売も行っています。
収益は、主に自動車メーカー等の顧客からの設備工事請負代金や資機材販売代金から得ています。運営は同社に加え、Taikisha USA, Inc.をはじめとする海外子会社が各地域で事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 2,025億円 | 2,093億円 | 2,148億円 | 2,936億円 | 2,762億円 |
| 経常利益 | 123億円 | 108億円 | 130億円 | 199億円 | 199億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 5.2% | 6.1% | 6.8% | 7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 83億円 | 72億円 | 79億円 | 156億円 | 110億円 |
2024年3月期に売上高が大きく伸長しましたが、当期はその反動等により減収となりました。一方、利益面では経常利益が高水準を維持しており、利益率も改善傾向にあります。ただし、当期純利益については前期比で減少しており、特別損失や税負担等の影響が見られます。
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益は増加しており、売上総利益率が改善しています。営業利益は微減となりましたが、概ね前期並みの水準を確保しています。コスト管理や採算性の向上が図られていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,936億円 | 2,762億円 |
| 売上総利益 | 433億円 | 450億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.8% | 16.3% |
| 営業利益 | 183億円 | 180億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が109億円(構成比40.3%)、その他が98億円(同36.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
環境システム事業は、前期に大型案件が寄与した反動等により減収減益となりました。一方、塗装システム事業は、海外での受注増加や工事進捗により大幅な増収増益を達成しました。全体としては環境システム事業の落ち込みを塗装システム事業の成長がある程度補完する形となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 環境システム事業 | 2,165億円 | 1,694億円 | 170億円 | 153億円 | 9.0% |
| 塗装システム事業 | 770億円 | 1,068億円 | 28億円 | 43億円 | 4.0% |
| 調整額 | -0.2億円 | -2億円 | 0.2億円 | 4億円 | - |
| 連結(合計) | 2,936億円 | 2,762億円 | 199億円 | 199億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン判定:勝負型
* 本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 207億円 | -212億円 |
| 投資CF | 21億円 | -50億円 |
| 財務CF | -55億円 | 19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業理念「顧客第一」と社名が示す「エネルギー・空気・水」の環境対応技術を核としています。これらの技術を通じてグローバルに事業領域を拡大し、安定的かつ持続的な成長を目指すとともに、全てのステークホルダーにとって魅力ある会社づくりを進め、社会に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「Innovative Engineering for a Sustainable Society」として、創造的なエンジニアリングによる持続可能な社会への貢献を目指しています。また、「Diversity, Equity & Inclusion as a Global Company」を掲げ、多様な人材・知見を融合し、一人一人が尊重し合う風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「10年プラン2035」および中期経営計画において、2028年3月期および長期的な財務・非財務目標を設定しています。
* 完成工事高:3,365億円(2028年3月期)
* 経常利益:227億円(2028年3月期)
* 自己資本利益率(ROE):10.3%(2028年3月期)
* 配当政策(DOE):4.0%(2028年3月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
環境システム事業では半導体・電子部品市場でのプレゼンス維持・向上を図り、ASEANでの体制強化やGX技術開発を推進します。塗装システム事業では自動化技術やカーボンニュートラル技術を軸に、四輪市場に加え非四輪市場への展開やバッテリー産業での価値創造を目指します。新規事業では社内外の技術融合により未開拓領域を探索します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバルな人材ポートフォリオマネジメントの構築を目指し、海外拠点の人材データベース化や技術カルテによる可視化を進めています。採用では奨学金制度や大学連携を活用し、専門人材を獲得します。また、海外向け育成体制の強化や魅力ある評価・報酬制度の整備により、エンゲージメント向上とグローバルな人材基盤の強化を図ります。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 15.7年 | 11,811,745円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 71.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 民間設備投資の変動のリスク
環境システム事業では海外日系企業の投資減少、塗装システム事業では自動車メーカーの生産縮小や投資減少により、受注高が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。また、カーボンニュートラル対応等の変化への遅れが顧客離れを招くリスクもあります。
■(2) 海外事業及び海外関係会社の管理・統制に関するリスク
海外での予期せぬ法規制改正、政情不安、為替変動等が業績に影響を与える可能性があります。また、現地の未回収リスクや想定外の問題発生により、海外関係会社の計画未達や業績悪化が生じ、グループ全体の経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) 技術開発に係るリスク
カーボンニュートラルや省エネ、自動化など顧客ニーズに対応した技術開発が遅れた場合、競争力が低下し受注機会の損失や信頼性の低下を招く可能性があります。これにより、グループの経営成績等に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 資材価格及び労務単価の変動リスク
燃料高騰による建設資材価格の上昇や、少子高齢化・担い手不足に伴う労務単価の高騰が発生し、これらを請負金額に十分に転嫁できない場合、工事利益率が低下し、グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。



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