※本記事は、日本リーテック株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本リーテックってどんな会社?
電気設備工事業を中心に、交通安全用品の製造や不動産賃貸なども幅広く手がける総合電気工事会社です。
■(1) 会社概要
1942年に鉄道保安工業として設立され、鉄道保安装置の設置を開始しました。1957年に後の千歳電気工業となる千代田工事を設立し、1963年に保安工業が東証二部に上場しました。その後、2009年に保安工業と千歳電気工業が合併し、現在の日本リーテックに商号変更しました。
従業員数は連結で1,434名、単体で1,124名です。筆頭株主は事業会社の東日本旅客鉄道で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は電気設備工事を行う日本電設工業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東日本旅客鉄道 | 19.58% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.12% |
| 日本電設工業 | 4.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は久保公人氏が務めています。社外取締役の割合は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 久保公人 | 代表取締役社長執行役員監査部担当リスク統括担当コンプライアンス担当 | 1989年東日本旅客鉄道入社。同社盛岡支社長等を経て2024年日本リーテック入社。2025年より現職。 |
| 江草茂 | 取締役会長執行役員 | 1992年東日本旅客鉄道入社。同社東京電気システム開発工事事務所長等を経て2021年日本リーテック入社、2022年社長。2025年より現職。 |
| 澤村正彰 | 取締役常務執行役員企画部長 | 1986年富士銀行入行。みずほ情報総研執行役員等を経て2015年日本リーテック入社。2025年より現職。 |
| 神早苗 | 取締役(監査等委員) | 1989年保安工業入社。NRシェアードサービス取締役サービス事業部長等を経て2022年日本リーテック取締役(常勤監査等委員)。2024年より現職。 |
社外取締役は、井上直美(元常磐興産代表取締役会長)、穂苅裕久(元綜合警備保障取締役専務執行役員)、齋藤祐樹(東日本旅客鉄道執行役員)、檜垣直人(檜垣総合法律事務所設立)、明星久雄(元日本ホテル取締役財務部長)、大野雅人(開志創造大学特任教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気設備工事業」「兼業事業」「不動産賃貸事業」を展開しています。
■(1) 電気設備工事業
鉄道電気設備、道路設備、屋内外電気設備、送電線設備の工事請負を行っています。主な顧客は東日本旅客鉄道をはじめとする鉄道事業者や、官公庁、高速道路会社、電力会社などであり、社会インフラを支える幅広い電気設備工事を提供しています。
顧客から工事の完成引渡しに応じて工事請負代金を受け取ります。運営は主に日本リーテックが行っており、子会社の保工北海道や保工東北、交通安全施設、シーディーサービスなどがそれぞれの専門領域において一部の工事や業務を担っています。
■(2) 兼業事業
交通施設に関する標識および交通安全用品の製造・販売業務を行っています。道路設備工事などの知見を活かし、安全な交通環境の維持に貢献する製品を各種インフラ事業者や関連企業向けに提供しています。
商品および製品の出荷時に顧客から代金を受け取る収益モデルです。運営は主に日本リーテックが行うほか、子会社の保安サプライ、保工北海道、保工東北、交通安全施設が関連製品の製造・販売を担当しています。
■(3) 不動産賃貸事業
自社グループが所有する土地やオフィスビルなどの不動産物件を賃貸する事業を展開しています。余剰資産の有効活用を図り、安定的な収益基盤の構築を目指しています。
物件の賃貸期間にわたって、入居テナントから毎月安定した賃料収入を受け取る収益モデルです。本事業の運営は、子会社を介さず日本リーテックが単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は増収増益基調で推移しています。特に直近では、主要顧客である鉄道事業者や官公庁、電力会社からの大型プロジェクト工事を多数受注し、売上高は740億円を突破しました。利益面でも継続的な価格交渉や生産性向上の取り組みが奏功し、経常利益率も10%台へと改善しています。
| 項目 | 第13期 | 第14期 | 第15期 | 第16期 | 第17期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 532億円 | 537億円 | 585億円 | 687億円 | 740億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 31億円 | 39億円 | 60億円 | 78億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 5.7% | 6.7% | 8.7% | 10.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 21億円 | 28億円 | 47億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の伸長に加え、受注時採算の改善効果により、売上総利益率および営業利益率ともに向上しています。増収効果と原価低減の取り組みにより、収益性が着実に高まっています。
| 項目 | 第16期 | 第17期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 687億円 | 740億円 |
| 売上総利益 | 108億円 | 130億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.8% | 17.6% |
| 営業利益 | 52億円 | 71億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 9.6% |
販売費及び一般管理費(59億円)のうち、従業員給料手当が17億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が8億円(同14%)を占めています。売上原価(610億円)の内訳は、完成工事原価が586億円(同96%)と大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電気設備工事業において、屋内外電気設備部門の商業施設改修工事や送電線設備部門の大型工事が牽引し、大幅な増益を達成しました。兼業事業や不動産賃貸事業も堅調に推移し、全セグメントで増収増益となっています。
| 区分 | 売上(第16期) | 売上(第17期) | 利益(第16期) | 利益(第17期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電気設備工事業 | 653億円 | 705億円 | 82億円 | 102億円 | 14.4% |
| 兼業事業 | 30億円 | 32億円 | 4億円 | 4億円 | 13.2% |
| 不動産賃貸事業 | 4億円 | 4億円 | 2億円 | 2億円 | 51.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -36億円 | -37億円 | -% |
| 連結(合計) | 687億円 | 740億円 | 52億円 | 71億円 | 9.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業とされる「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 第16期 | 第17期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 47億円 |
| 投資CF | -12億円 | -16億円 |
| 財務CF | -14億円 | -29億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「卓越した技術と誠実な施工でインフラを支え、安全・安心な社会と豊かな暮らしを未来につなぐ」というグループパーパスを掲げています。鉄道の技術から発展した総合電気工事会社として、安全を第一に品質向上と技術研鑽に努め、広く社会基盤の構築に貢献することで持続可能な社会を目指しています。
■(2) 企業文化
「安全は経営の根幹である」という基本方針のもと、労働災害および重大事故ゼロを目指して全社員が自らの職責を全うする姿勢を重視しています。また、常にチャレンジ精神で自ら考え行動する「変革と挑戦」の意識改革に取り組み、仕事に誇りを持ち自己成長に努める、働きがいのある職場づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「NR Vision 2035」の達成に向け、第1ステップとして「中期経営計画2027」を推進しています。資本効率の向上と株主還元の拡充を重視し、安定的かつ累進的な配当を実施する方針です。
* ROE目標:9.0%(当初目標8.0%から上方修正)
* DOE(株主資本配当率)目安:3.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の生産性を追求して収益力を強化するとともに、保有するコア技術を融合し、データセンターや系統用蓄電池などの未来に向けた価値創造事業へ参画して収益源の多角化を図ります。また、DX戦略「RICS」を推進し、工事施工から管理部門に至る全業務のデジタル化による生産性向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「成長を実感するキャリア形成支援」「心理的安全性とオープンなコミュニケーション」「公正な評価と処遇」を三本柱とする人財ポリシーを定めています。「自律・共創・挑戦」を体現する人財を育成するため、自律的なキャリア形成を支援する研修や、次世代経営層を育成するサクセッションプランを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第17期 | 43.0歳 | 15.5年 | 7,792,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向と競争激化
同社グループは主として建設業に属するため、公共投資や民間の設備投資等の動向により市場が著しく縮小した場合、受注額が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。また、同業他社との受注競争が激化することで低採算化が進み、収益力が低下するリスクを抱えています。
■(2) 工事における重大事故の発生
同社グループは工事の安全を全てに優先して施工を行っていますが、施工過程において事故や労働災害を発生させた場合、顧客からの信用を失墜させる恐れがあります。その結果、今後の受注環境に多大な悪影響を与え、経営成績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 東日本旅客鉄道への売上依存
同社の売上高構成において、筆頭株主である東日本旅客鉄道向けの鉄道電気設備工事が大きな割合を占めています。同社とは事業上の強固な協力関係にありますが、同社の設備投資計画の変更や、何らかの理由により関係が悪化した場合、同社グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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