日本リーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本リーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合電気工事会社です。鉄道電気設備工事を主力とし、JR東日本が筆頭株主であるなど強固な顧客基盤を持ちます。道路や屋内外の電気設備工事も展開しています。2025年3月期は、鉄道関連や送電線設備工事などが堅調に推移し、増収増益を達成しました。


※本記事は、日本リーテック株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本リーテックってどんな会社?


鉄道電気設備工事を核に、道路、屋内外、送電線など社会インフラを支える総合電気工事会社です。

(1) 会社概要


同社は、1942年設立の鉄道保安工業と1957年設立の千代田工事(後の千歳電気工業)を源流とします。両社は長年にわたり鉄道電気設備等のインフラ整備に従事してきましたが、2009年4月に合併し、現在の日本リーテックが誕生しました。2016年には道路設備本部と工務本部を統合して社会インフラ本部を設置するなど組織再編を進め、2022年4月の市場区分見直しにより東証プライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は1,518名、単体では1,116名です。筆頭株主は、同社の主要顧客でもある東日本旅客鉄道(JR東日本)で、発行済株式の19.47%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 19.47%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.99%
日本リーテック取引先持株会 6.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は久保公人氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
久保公人 代表取締役社長執行役員 東日本旅客鉄道入社、東京支社電気部部長、執行役員盛岡支社長などを経て、2024年6月同社入社。常務取締役を経て2025年6月より現職。
江草茂 取締役会長執行役員 東日本旅客鉄道入社、東京電気システム開発工事事務所長などを経て、2021年6月同社入社。代表取締役社長を経て2025年6月より現職。
澤村正彰 取締役常務執行役員 富士銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ情報総研執行役員などを経て、2015年6月同社入社。財務部長、経営企画部長などを歴任し2025年6月より現職。
明星久雄 取締役(常勤監査等委員) 日本国有鉄道入社、東日本旅客鉄道財務部会計課副課長、日本ホテル取締役財務部長などを経て、2020年6月同社監査役。2022年6月より現職。
神早苗 取締役(監査等委員) 保安工業入社、同社監査部長、監査役などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、井上直美(元常磐興産代表取締役会長)、穂苅裕久(元綜合警備保障取締役専務執行役員)、齋藤祐樹(東日本旅客鉄道執行役員)、檜垣直人(弁護士)、大野雅人(明治大学専門職大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気設備工事業」、「兼業事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 電気設備工事業


鉄道、道路、屋内外、送電線の各分野における電気設備工事を行っています。主な顧客は、鉄道会社、官公庁、電力会社、民間企業などです。鉄道電気設備工事では信号や電車線設備等、道路設備工事では交通信号や標識等、屋内外電気設備工事では太陽光発電システム等、送電線設備工事では架空送電線路工事等を施工しています。

収益は、顧客からの工事請負代金により構成されています。運営は、同社を中心に、株式会社保工北海道、NR電車線テクノ株式会社、東日本電気エンジニアリング株式会社等の関係会社が鉄道電気設備工事を担当し、道路設備工事等は同社や株式会社保工東北、交通安全施設株式会社などが行っています。送電線設備工事は同社等が担当しています。

(2) 兼業事業


交通施設に関する標識や交通安全用品等の製造・販売を行っています。また、機械工具や工事用資材の販売、建物・関連設備の保守・管理、事務代行業務なども含まれます。顧客は官公庁や建設関連企業などが中心です。

収益は、製品や資材の販売代金、保守・管理業務の委託料などから得ています。運営は、製造・販売業務については同社や株式会社保安サプライ、株式会社保工北海道などが、機械工具販売や保守・管理業務については株式会社シーディーサービスなどが担当しています。事務代行業務はNRシェアードサービス株式会社が行っています。

(3) 不動産賃貸事業


同社が保有する土地や建物の賃貸業務を行っています。

収益は、テナント等からの賃貸料収入です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあります。特に2025年3月期は前期比で大幅な増収となりました。経常利益も売上の増加に伴い拡大しており、直近では高い利益水準を記録しています。利益率も改善傾向にあり、堅調な業績推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 552億円 532億円 537億円 585億円 687億円
経常利益 48億円 33億円 31億円 39億円 60億円
利益率(%) 8.6% 6.2% 5.7% 6.7% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 22億円 17億円 21億円 36億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は向上しており、収益性が高まっています。営業利益も大幅に増加しており、本業の儲けを示す営業利益率も改善しています。全体として増収増益の好調な決算となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 585億円 687億円
売上総利益 76億円 98億円
売上総利益率(%) 13.1% 14.3%
営業利益 34億円 52億円
営業利益率(%) 5.9% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が17億円(構成比30.3%)、賞与引当金繰入額が8億円(同13.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の電気設備工事業が大幅な増収増益となり、全体を牽引しました。兼業事業は売上が微減となりましたが、利益は増加し利益率が向上しています。不動産賃貸事業は売上、利益ともに横ばいで推移しており、安定的な収益源となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電気設備工事業 550億円 653億円 62億円 82億円 12.6%
兼業事業 31億円 30億円 3.0億円 3.9億円 12.9%
不動産賃貸事業 3.9億円 3.9億円 2.0億円 1.9億円 48.2%
調整額 - - -32億円 -36億円 -
連結(合計) 585億円 687億円 34億円 52億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 20億円
投資CF -18億円 -12億円
財務CF -10億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「卓越した技術と誠実な施工でインフラを支え、安全・安心な社会と豊かな暮らしを未来につなぐ」というグループパーパスを制定しています。鉄道技術から発展した総合電気工事会社として、安全第一に品質向上と技術研鑽に努め、社会基盤の構築に貢献することで持続可能な社会を目指しています。

(2) 企業文化


経営の根幹として「安全」を掲げ、労働災害および重大事故ゼロを目指しています。役員・社員一人ひとりが職責を全うして安全を築き上げるという意識を持ち、チャレンジ精神で自ら考え行動することで、会社と社会の発展を目指す風土があります。また、仕事と生活の調和のとれた働きがいのある職場実現を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は10年後の目指す姿として「NR Vision 2035」を定め、その第1ステップとして「中期経営計画2027」を策定しています。持続的成長と企業価値向上を目指し、ROEの改善や株主還元の拡充に取り組んでいます。配当については、DOE(株主資本配当率)3.2%を目安としています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力強化・深度化に加え、多角化戦略としてコア技術を融合し新たな社会ニーズへの貢献や周辺領域への進出を図ります。また、将来を担う技術者の獲得やキャリアパスの提示による人財確保・エンゲージメント向上、DX推進による生産性向上、カーボンニュートラルへの貢献などに取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従来の価値観に縛られない採用活動によりブランド力を向上させ、将来を担う技術者を獲得する方針です。従業員に対しては明確なキャリアパスを提示し、自らの価値を理解してキャリア形成に取り組める仕組みを構築します。また、多様な職務経験による多能化を支援し、働きがいと働きやすさを向上させる職場風土づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 15.2年 7,037,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規) 65.3%
男女賃金差異(非正規) 56.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場の動向及び競合


事業が主として建設業に属するため、公共投資や民間設備投資の動向により市場が縮小した場合、受注額が減少し業績に影響する可能性があります。また、他社との受注競争が激化することで、工事の低採算化や収益力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法令違反


コンプライアンス体制を構築し企業倫理の強化を図っていますが、法令や諸規則に違反する行為、または疑義を持たれる行為が発生した場合、受注状況や業績に影響を及ぼす可能性があります。特に建設業許可の取り消し事由に該当するような重大な法令違反があった場合、経営に深刻な影響を与える可能性があります。

(3) 工事における事故の発生


安全を最優先に施工を行っていますが、万が一、施工過程において事故や労働災害が発生した場合、顧客からの信用失墜につながり、受注環境が悪化することで業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 東日本旅客鉄道株式会社との関係


JR東日本は同社の筆頭株主であり、主要な取引先です。同社グループの売上高において大きな割合を占めているため、JR東日本の設備投資計画の変更などが同社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、何らかの理由で両社の関係が悪化した場合には、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。