※本記事は、株式会社高田工業所 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 高田工業所ってどんな会社?
製鉄・化学プラントの建設・保全を主力とするエンジニアリング企業。半導体製造装置事業も展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1940年に高田組として創業し、1948年に設立されました。1983年に福岡証券取引所、1993年に大阪証券取引所第二部へ上場し、2013年の市場統合を経て現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。2024年には大手エンジニアリング会社の日揮と資本業務提携契約を締結し、関係を強化しています。
連結従業員数は1,694名、単体では1,324名体制です。筆頭株主は同社と資本業務提携を結ぶ事業会社の日揮で、第2位は資産管理会社の西日本興産、第3位は光通信となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日揮 | 20.00% |
| 西日本興産 | 10.71% |
| 光通信 | 6.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は髙田 寿一郎氏が務めています。社外取締役比率は約21.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙田 寿一郎 | 代表取締役社長 | 1987年千代田化工建設入社。1990年同社入社。常務、副社長を経て2001年より現職。西日本興産社長、日本メンテナンス工業会会長も務める。 |
| 長谷川 啓司 | 代表取締役経営企画部・安全衛生管理部・品質保証部担当 | 1984年同社入社。シンガポール支店長、事業統括部長、取締役兼常務執行役員などを経て2022年より現職。 |
| 田所 弘 | 取締役コンプライアンス推進室・総務部・人事部・財務部・DX推進部担当 | 1984年同社入社。経営企画部長、財務部長、高田プラント建設社長などを経て2022年より現職。高田サービス社長を兼務。 |
| 丸山 裕 | 取締役プラント事業本部長 | 1985年同社入社。水島事業所長、八幡支社長などを経て2024年より現職。 |
| 岩本 健太郎 | 取締役営業本部長東京支店長 | 1983年同社入社。東京支店長、経営企画部長、本社工場長などを経て2023年より現職。 |
| 仲村 公孝 | 取締役技術統括部・設計技術センター・診断ソリューション部・電気計装部・エレクトロニクス部・原子力事業部・装置事業部担当 | 1986年同社入社。新規事業部長、技術本部長などを経て2023年より現職。 |
| 荒井 岳彦 | 取締役調達部担当EPC本部長 | 1986年同社入社。君津支社長、エンジニアリング部長などを経て2023年より現職。 |
社外取締役は、稲葉 和彦(元ゼンリン取締役・監査等委員)、鳥居 玲子(弁護士)、坂本 剛(QBキャピタル合同会社代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プラント事業」および「その他」事業を展開しています。
**プラント事業**
鉄鋼、化学、石油、ガス、電力、半導体、エレクトロニクスなど多岐にわたる産業設備の設計、製作、据付、配管、電気計装工事および保全・修理を行っています。また、半導体製造向けの生産装置(超音波カッティング装置等)の開発・製作も手掛けます。主要顧客は日本製鉄などの大手メーカーです。
収益は、顧客からの工事請負代金や装置の販売代金、メンテナンス役務の対価として受け取ります。運営は、主に同社が担うほか、高田プラント建設、高田サービス、渡部工業などの国内子会社や、シンガポール、マレーシア、タイなどの海外現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台後半から500億円台後半で推移しており、全体として増加傾向にあります。利益面では、経常利益が12億円から28億円の範囲で変動しつつも、直近の2025年3月期には過去5年間で最高水準の利益を達成しました。当期純利益も同様に増加しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 478億円 | 472億円 | 579億円 | 523億円 | 581億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 13億円 | 27億円 | 24億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 2.7% | 4.7% | 4.6% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 8億円 | 14億円 | 12億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約12%台で安定しています。営業利益も増収効果により増加し、営業利益率は5%台へ向上しました。全体として、増収に伴う利益拡大の基調が続いています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 523億円 | 581億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 71億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.2% | 12.3% |
| 営業利益 | 24億円 | 29億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が14億円(構成比34%)、業務委託費が4億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「プラント事業」の単一セグメントですが、事業環境としては化学プラント等の定期修理工事や製鉄プラントのカーボンニュートラル関連工事が増加しました。これにより、主力のプラント事業において売上が伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| プラント事業 | 523億円 | 581億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン:勝負型**
本業の営業キャッシュ・フローがマイナスとなる一方、借入等による財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、将来の成長や運転資金のために資金調達を行っている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | -6億円 |
| 投資CF | -16億円 | -25億円 |
| 財務CF | -6億円 | 40億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「純情 情熱 希望」を社是とし、これを基本として未来に向けた「人間創造」「技術創造」「事業創造」に取り組んでいます。また、創業100周年に向け、サステナビリティ関連ビジネスの拡大やイノベーション創出を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「一人ひとりが新しい仕事・やり方に挑戦し、レベルアップをする」ことを重視しています。挑戦をリスペクトする組織への変革を掲げ、従業員がいきいきと働ける環境づくりや、多様な人材の融合により組織活力を向上させる風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2022年度から2026年度までを期間とする「第5次中期経営計画」を推進しています。既存事業の維持・拡大と成長分野での拡大を軸に、付加価値・生産性の向上を図り、現要員体制での生産・利益拡大を目指しています。また、2030年頃をマイルストーンとした「中長期の展望」も策定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「設備技術産業の雄」への挑戦を掲げ、EPC(設計・調達・施工)分野での日揮との連携強化や、半導体関連などの新事業領域への挑戦を進めています。また、全社的な業務プロセス改革のため、資金調達を行い基幹システム(ERP)の刷新やDX活用による省人化・効率化を推進し、生産性向上を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「一人ひとりが新しい仕事・やり方に挑戦し、レベルアップし続ける人材づくり」を方針とし、能力開発やキャリアアップの機会を提供しています。多様な人材の確保に加え、社員寮の新設などの福利厚生充実や、働き方改革による職場環境の創出に注力し、「選ばれる企業」を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.1歳 | 16.4年 | 5,575,835円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 48.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 52.0% |
※女性管理職比率について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、係長級にある者に占める女性労働者の割合(7.0%)、有給休暇取得率(87.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 受注価格下落のリスク
プラント業界は経済変動や国際情勢の影響を受けやすく、景気低迷時には設備投資の抑制や受注競争の激化が起こり得ます。これに伴う受注価格の下落が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定業界・特定取引先への依存リスク
同社グループは製鉄および化学業界の顧客への売上構成比が高く、特定の大手顧客への依存度が高い傾向にあります。そのため、顧客の設備合理化や事業再編、業界全体の動向変化が、同社グループの受注高や業績に直接的な影響を与える可能性があります。
■(3) 資材価格変動のリスク
工事に必要な資材価格が高騰し、その上昇分を工事請負金額に十分に転嫁できない場合、工事採算が悪化し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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