高田工業所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 高田工業所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高田工業所は、東京証券取引所スタンダード市場および福岡証券取引所に上場し、鉄鋼や化学などのプラント建設・保全を主力とする企業です。直近の業績は、一部工事の翌期繰り延べなどの影響で減収減益となりました。持続的成長に向け、脱炭素設備への対応やシステム刷新による生産性向上に取り組んでいます。


※本記事は、株式会社高田工業所の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高田工業所ってどんな会社?


高田工業所は、鉄鋼や化学、エレクトロニクスなど多岐にわたる産業用プラントの建設・保全を行う企業です。

(1) 会社概要


1940年に日本化成工業(現三菱ケミカル)黒崎工場で修理工事業者として発足し、1948年に設立されました。1983年に福岡証券取引所に上場し、2013年に東京証券取引所第二部(現スタンダード市場)へ上場しています。また、シンガポールやマレーシア、タイに子会社を設立し、近年では日揮と資本業務提携を締結しています。

同社グループは連結で1,666名、単体で1,333名の従業員を抱えています。筆頭株主は同業の日揮で、第2位は代表の髙田氏が代表取締役社長を務める西日本興産、第3位は投資ファンドであるUH Partners2投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
日揮 20.02%
西日本興産 10.72%
UH Partners2投資事業有限責任組合 6.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は髙田寿一郎氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
髙田 寿一郎 代表取締役社長 千代田化工建設入社後、同社へ。統括本部受注管理部長、黒崎事業所長、経理部長、代表取締役副社長を経て代表取締役社長。
長谷川 啓司 代表取締役経営企画部・安全衛生管理部・品質保証部担当 同社入社後、シンガポール支店長、事業統括部長、タカダ・コーポレーション・アジア・リミテッド社長を経て現職。
田所 弘 取締役コンプライアンス推進室・総務部・人事部・財務部・DX推進部担当 同社入社後、営業企画部長、事業統括部長、経営企画部長、高田プラント建設代表取締役社長、財務部長などを経て現職。
丸山 裕 取締役プラント事業本部長 同社入社後、本社工場次長、黒崎事業所次長、水島事業所長、中四国支社長、プラント事業本部八幡支社長などを経て現職。
岩本 健太郎 取締役営業本部長東京支店長 同社入社後、大阪支店長、東京支店長、経営企画部長、プラント事業本部本社工場長などを経て現職。
仲村 公孝 取締役技術統括部・設計技術センター・診断ソリューション部・電気計装部・原子力事業部・装置事業部担当 同社入社後、新規事業部長、技術企画部長、企画開発部長、技術本部長、原子力事業部長などを経て現職。
荒井 岳彦 取締役調達部担当EPC本部長 同社入社後、坂出事業所長、大阪事業所長、プラント事業本部君津支社長、プラント事業本部本社工場長などを経て現職。


社外取締役は、稲葉和彦(元ゼンリン取締役)、鳥居玲子(近江法律事務所弁護士)、坂本剛(QBキャピタル合同会社代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラント事業」を展開しています。

プラント事業


鉄鋼、化学、石油・天然ガス、電力などの各種産業プラントにおける建設工事や保全・修理工事を提供しています。環境負荷低減や生物多様性の保全に向けた取り組みも進めつつ、基本設計から調達、施工までの一貫したEPC事業も展開しています。
収益源は、各産業の顧客企業から受け取る設備関連の請負対価です。事業の運営は主に高田工業所および国内外のグループ子会社が行っています。

また、エレクトロニクス関連設備分野において、半導体製造向けの超音波カッティング装置などの開発・製作も手掛けています。こちらの収益源は、機器の販売代金やエンジニアリング業務の対価であり、運営は同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は500億円台で推移していますが、直近では一部工事の翌期への繰り延べ等の影響により減収となりました。利益面でも、売上高の減少に伴い減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 472億円 579億円 523億円 581億円 537億円
経常利益 13億円 27億円 24億円 29億円 17億円
利益率(%) 2.7% 4.7% 4.6% 5.0% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 16億円 17億円 23億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しています。利益率も低下傾向にあり、本業の儲けを示す営業利益は前期から大きく減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 581億円 537億円
売上総利益 71億円 61億円
売上総利益率(%) 12.3% 11.4%
営業利益 29億円 18億円
営業利益率(%) 5.0% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が14億円(構成比32%)、業務委託費が5億円(同11%)を占めています。また、完成工事原価の内訳では、外注費が207億円(構成比50%)、経費が138億円(同33%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「プラント事業」の単一セグメントで事業を展開しています。直近の業績は、国内化学プラント等の定期修理工事の閑散期による減少や、一部建設工事の翌期繰り延べなどにより、減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
プラント事業 581億円 537億円
連結(合計) 581億円 537億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動でマイナスとなり、投資を継続しつつ財務活動で資金を調達している勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -6億円 -11億円
投資CF -25億円 -18億円
財務CF 40億円 23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も45.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是である「純情 情熱 希望」を基本とし、未来に向けて「人間創造」「技術創造」「事業創造」に取り組んでいます。既存事業の成長と新たなイノベーションの創出を通して社会に貢献することを経営の基本方針に据えています。

(2) 企業文化


同社は、社員が健康でいきいきと働く環境づくりを重視しています。「一人ひとりが新しい仕事・やり方に挑戦し、レベルアップする」ことを推奨し、挑戦をリスペクトする組織への変革を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は第5次中期経営計画を推進し、SDGsへの取り組みや「設備技術産業の雄」への挑戦を掲げています。現要員体制での生産と利益の拡大を目標とし、付加価値および生産性の向上を軸に事業構造の変革を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は脱炭素関連設備や半導体関連プラントへの投資需要に対応し、受注拡大を目指しています。また、全社基幹システム(ERP)の導入やDX・AIの活用により、業務プロセスの改革や省人化を進め、さらなる生産性向上を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「一人ひとりが新しい仕事・やり方に挑戦し、レベルアップし続ける人材づくり」を基本方針としています。多様な人材を確保し、すべての社員がいきいきと働ける職場環境の整備や、能力開発の機会提供を通じて、組織活力の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 16.6年 6,059,872円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 63.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.2%
男女賃金差異(正社員) 76.3%
男女賃金差異(非正規) 44.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注価格下落のリスク


プラント業界は国内の経済変動や国際情勢の影響を受けやすく、景気が低迷した場合には設備投資の抑制や受注競争の激化により受注価格が下落し、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定業界・特定取引先への依存リスク


同社の事業は製鉄および化学業界との関わりが大きく、特定の顧客に対する受注や完成工事高が高い割合を占めています。そのため、顧客企業の事業再編や設備合理化の動向が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 資材価格変動のリスク


資材や原材料の価格が著しく上昇した場合、それを工事請負代金に十分に反映させることが困難なケースがあり、その結果として同社の収益性が低下するリスクがあります。

(4) 製品欠陥のリスク


プラントの建設や保全において品質管理には万全を期していますが、万が一契約不適合責任や製造物責任による損害賠償が発生した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。