テクノ菱和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノ菱和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、空調衛生設備工事を主力とする設備工事会社です。産業設備工事や一般ビル設備工事のほか、電気設備工事や冷熱機器販売も手掛けています。2025年3月期の連結業績は、大型案件の受注や工事進捗が順調で、売上高は前期比14.3%増、経常利益は同55.9%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社テクノ菱和 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テクノ菱和ってどんな会社?


空調衛生設備技術を核に、産業用空調や一般ビル空調等の設備工事の設計・施工を行うエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


同社は1949年にレイト工業として名古屋市で設立され、当初は冷凍工事を主目的としていました。1953年に菱和調温工業へ商号変更し、冷暖房空調設備へ進出しました。1989年に現在のテクノ菱和へ商号変更し、1996年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同グループは連結従業員940名、単体810名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会、第2位は三菱重工グループで空調・冷蔵機器事業を担う三菱重工サーマルシステムズです。第3位には主要取引銀行である三菱UFJ銀行が名を連ねており、取引先や関連企業との安定的な関係がうかがえます。

氏名 持株比率
テクノ菱和取引先持株会 10.28%
三菱重工サーマルシステムズ 6.71%
三菱UFJ銀行 4.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は黒田英彦氏、代表取締役社長執行役員は加藤雅也氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
黒田 英 彦 代表取締役会長 1982年同社入社。常務取締役営業推進本部長、専務取締役東京本店長などを経て、2015年同社代表取締役社長に就任。2024年4月より現職。
加藤 雅 也 代表取締役社長執行役員 1982年同社入社。取締役上席執行役員管理本部長、取締役専務執行役員東京本店長などを経て、2024年4月より現職。
大石   勉 取締役専務執行役員技術部門統括 1983年同社入社。上席執行役員技術本部長兼調達本部長、取締役常務執行役員技術本部長などを経て、2025年4月より現職。
袴田 一 博 取締役専務執行役員営業本部長 1998年同社入社。執行役員横浜支店長、上席執行役員営業本部長、取締役常務執行役員営業本部長などを経て、2024年4月より現職。
鈴木 俊 夫 取締役上席執行役員管理本部長 1984年同社入社。執行役員東京本店副本店長、執行役員大阪支店長、上席執行役員管理本部長を経て、2024年6月より現職。
常木   茂 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。東京本店品質保証室長、東京本店安全品質保証部長兼工務部長、内部監査室を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、田中雅敏(三菱重工サーマルシステムズ取締役)、佐古麻衣子(桜田通り総合法律事務所パートナー)、大島浩司(元富士見地所社長)、伊豫田至(株式会社ナイス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 空調衛生設備工事業


同社グループの中核事業であり、大型空調衛生設備工事を中心として設計・施工を行っています。産業設備工事(医薬品・食品・電子デバイス関連など)や一般ビル設備工事を手掛け、「空気と水のテクノロジー」を通じて快適な環境を提供しています。

収益は、顧客である施主やゼネコン等から受け取る工事代金が主な源泉です。運営は、同社が大型案件を担当するほか、連結子会社の東京ダイヤエアコン、菱和エアコン、PT.TECHNO RYOWA ENGINEERING等が小型空調衛生設備工事を担当しています。

(2) 電気設備工事業


工場、ビル、商業施設などの電気設備工事の設計・施工を行っています。照明、動力、受変電設備などの工事を通じて、建物のインフラを支えています。

収益は、顧客から受け取る電気設備工事代金となります。運営は、主に連結子会社である松浦電機システムが行っています。

(3) 冷熱機器販売事業


三菱重工業の代理店として、冷熱(空調)機器類の販売を行っています。これらの機器は、同社グループの空調衛生設備工事業で使用される主要機器としても供給されています。

収益は、機器の販売代金となります。運営は、同社が三菱重工業から一括で仕入れた機器を、東京ダイヤエアコンや菱和エアコンなどの子会社に売り渡すほか、同社においても直接販売を行っています。

(4) その他の事業


太陽光発電施設を建設して発電した電力を売電する事業や、マンションの建設・賃貸事業、損害保険代理業などを行っています。

収益は、電力会社への売電収入、マンションの賃貸料収入、保険手数料などです。運営は、同社が太陽光発電および不動産賃貸を行い、子会社の菱和エアコンが不動産賃貸を、ダイヤランドが損害保険代理業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は右肩上がりに成長しており、特に直近2期で大きく増加しています。利益面でも、経常利益率が3%台から11%台へと大幅に改善しており、収益性の向上が顕著です。当期純利益も順調に増加傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 549億円 569億円 610億円 737億円 842億円
経常利益 21億円 34億円 36億円 64億円 99億円
利益率(%) 3.9% 5.9% 5.8% 8.6% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 21億円 23億円 44億円 70億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約105億円増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率は前期の16.8%から20.3%へと上昇しています。営業利益は前期の58億円から96億円へと大幅に増加し、営業利益率も改善しました。増収効果に加え、採算性の向上が利益を押し上げています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 737億円 842億円
売上総利益 124億円 172億円
売上総利益率(%) 16.8% 20.3%
営業利益 58億円 96億円
営業利益率(%) 7.9% 11.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が34億円(構成比44%)、その他が21億円(同27%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が657億円(売上原価合計の98%)を占めています。

(3) セグメント収益


設備工事業を含む各事業において売上高が増加しました。特に主力の空調衛生設備工事業では、産業設備工事が前期比20.5%増と大きく伸長しています。電気設備工事業は微減となりましたが、冷熱機器販売事業は18.3%増と好調でした。全社的には工事進捗が順調に推移したことが増収に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
空調衛生設備工事業 700億円 804億円
電気設備工事業 25億円 25億円
冷熱機器販売事業 11億円 13億円
その他の事業 1億円 1億円
連結(合計) 737億円 842億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を借入金の返済や株主還元に充てながら、投資も自己資金の範囲内で行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -15億円 47億円
投資CF -3億円 -2億円
財務CF -17億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「空気と水のテクノロジー」を通じて環境にやさしい生活空間の創造を目指すとともに、環境エンジニアリングを中核事業として顧客から信頼される企業となることを経営理念としています。また、人材の育成・教育を重視し、働きがいのある企業を築き、社会に貢献することを掲げています。

(2) 企業文化


同社は「環境のトータルエンジニアリング」企業として、CSR(企業の社会的責任)を重視した経営を実践することを基本方針としています。環境制御技術を駆使して社会や地球環境保全に貢献する活動を行うとともに、顧客からの「信頼」獲得と、従業員にとって働きがいのある企業風土の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期経営ビジョン『TECHNO RYOWA 2032』(最終年度2032年度)を策定しており、連結数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,000億円
* 経常利益:70億円
* ROE:10%以上
* PBR:1.0倍以上

また、直近の『中期3か年事業計画』(最終年度2026年度)では、目標数値を上方修正しています。
* 売上高:910億円
* 経常利益:105億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、急激な拡大ではなく品質の高い仕事を積み上げて着実に成長する方針です。成長戦略として、人的資本、研究開発、DX関連、ブランド力向上への積極的な投資を掲げています。特に産業設備を中心としたバランスの取れた受注活動や、人材確保のための採用・教育投資に注力しています。

* 人的投資(累計):10億円
* 研究開発投資(累計):30億円
* DX関連投資(累計):25億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を技術力の源泉と位置づけ、中長期経営ビジョンにおいて社員教育や採用活動への集中的な投資を掲げています。新卒・中途採用の強化に加え、女性や外国人の採用など多様な人材の確保を進めています。また、ワーク・ライフ・バランスの実現に向け、業務効率化や人員補強による長時間労働の是正に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 15.5年 9,803,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 10.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.3%
男女賃金差異(正規雇用) 59.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 46.3%


※男女賃金差異(正規雇用)について、近年女性の新卒採用を積極的に行っている影響があると補足されています。昇給に性別による格差はありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(64%)、育児休業からの復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向


同社グループの売上の大半は完成工事高であり、官公庁の公共投資や民間企業の設備投資動向に左右される可能性があります。景気後退による設備投資の縮小や公共工事の削減があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、保守・メンテナンス需要の取り込みやバランスの取れた受注推進により対応しています。

(2) 原材料価格の高騰


工事の着工から竣工までの期間に原材料価格が急騰した場合、資材費が上昇し、当初見込んでいた利益を確保できなくなる可能性があります。同社は全社集中購買によるスケールメリットの追求や、資材価格動向の注視、長工期工事の管理徹底により、価格上昇リスクへの対応を図っています。

(3) 施工担当技術者の確保


建設業界における少子高齢化や熟練労働者不足が懸念されています。技術者の退職や採用難により人員が不足した場合、施工能力の低下や受注機会の損失につながる可能性があります。同社は定年延長や処遇改善、積極的な採用活動や教育を通じて人材確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。