テクノ菱和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノ菱和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノ菱和は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、空調衛生設備工事の設計や施工、冷熱機器販売などを展開する企業です。直近の業績では、企業の設備投資を背景とした大型物件の受注や生産性向上により、売上高987億円、経常利益165億円と大幅な増収増益を達成しており、堅調に成長を続けています。


**※本記事は、株式会社テクノ菱和の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. テクノ菱和ってどんな会社?


空調衛生設備工事を中心に、冷熱機器販売などを展開するトータルエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


同社は1949年にレイト工業として名古屋市で設立され、冷凍工事施工から事業を開始しました。1953年に菱和調温工業へ商号を変更し、冷暖房空調設備や給排水衛生設備の分野へ進出しました。1989年に現在のテクノ菱和へと社名を改め、1996年には東京証券取引所市場第二部への上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で981名、単体で856名規模の体制です。主要株主の状況を見ると、筆頭株主はテクノ菱和取引先持株会であり、第2位は事業の提携先である三菱重工サーマルシステムズ、第3位は三菱UFJ銀行となっています。

氏名 持株比率
テクノ菱和取引先持株会 10.27%
三菱重工サーマルシステムズ 6.88%
三菱UFJ銀行 4.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は加藤雅也氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤雅也 代表取締役社長執行役員 1982年同社入社。上席執行役員管理本部長、取締役専務執行役員東京本店長などを経て、2024年4月より現職。
黒田英彦 取締役会長 1976年ナミレイ入社、1982年同社入社。常務取締役などを経て2015年に代表取締役社長に就任。2026年4月より現職。
大石勉 取締役専務執行役員技術部門統括兼技術本部長 1983年同社入社。上席執行役員技術本部長などを経て、2024年4月に取締役専務執行役員技術部門統括に就任し、2026年4月より現職。
袴田一博 取締役専務執行役員営業本部長兼営業企画部長 1986年ナミレイ入社、1998年同社入社。上席執行役員営業本部長などを経て、2024年4月に取締役専務執行役員に就任し、2026年4月より現職。
鈴木俊夫 取締役常務執行役員管理本部長 1984年同社入社。執行役員東京本店副本店長、上席執行役員大阪支店長などを経て、2024年6月に取締役上席執行役員に就任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、田中雅敏(三菱重工サーマルシステムズ取締役)、佐古麻衣子(桜田通り総合法律事務所パートナー)、大島浩司(富士見地所代表取締役社長)、伊豫田至(ナイス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空調衛生設備工事業」「電気設備工事業」「冷熱機器販売事業」および「その他の事業」を展開しています。

空調衛生設備工事業


同社が大型空調衛生設備工事を中心として設計・施工するほか、東京ダイヤエアコンや菱和エアコンなどの子会社4社が小型空調衛生設備工事の設計・施工を担当しています。
収益は顧客からの工事代金として受け取ります。運営は同社のほか、東京ダイヤエアコン、菱和エアコン、アール・デザインワークス、PT.TECHNO RYOWA ENGINEERINGが行っています。

電気設備工事業


建物の電気設備工事の設計・施工を行っています。空調設備と連携した総合的な設備構築を担い、顧客に最適な環境システムを提供しています。
収益は顧客からの電気設備工事代金として受け取ります。運営は子会社である松浦電機システムが行っています。

冷熱機器販売事業


三菱重工業の代理店として一括で仕入れた冷熱機器類を販売しています。主要機器として使用する小型空調衛生設備工事用の機器をグループ会社へ販売するほか、一部は直接販売も行っています。
収益は冷熱機器の販売代金として受け取ります。運営は主に同社が行っています。

その他の事業


環境への配慮や収益源の多様化を目的として、太陽光発電施設を建設して発電した電力を売電する事業や、マンションを建設し賃貸する不動産事業、損害保険代理業などを展開しています。
収益は売電収入や家賃収入、保険代理店手数料として受け取ります。運営は同社のほか、菱和エアコン、ダイヤランドが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は569億円から987億円へと一貫して拡大し、経常利益も34億円から165億円へと大幅に伸長しています。直近では大型物件の受注や生産性向上が寄与し、利益率も16.7%まで高まるなど、収益力の強化が顕著に表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 569億円 610億円 737億円 842億円 987億円
経常利益 34億円 36億円 64億円 99億円 165億円
利益率(%) 5.9% 5.8% 8.6% 11.8% 16.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 23億円 44億円 70億円 114億円

(2) 損益計算書


売上高は842億円から987億円へ増加し、売上総利益率も20.4%から25.1%へと大きく改善しています。また、営業利益率も11.4%から16.0%へと上昇しており、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 842億円 987億円
売上総利益 172億円 248億円
売上総利益率(%) 20.4% 25.1%
営業利益 96億円 158億円
営業利益率(%) 11.4% 16.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が39億円(構成比42%)と最も多く、次いでその他が25億円(同27%)、賞与引当金繰入額が8億円(同8%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が725億円(構成比98%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


空調衛生設備工事業は産業設備工事や一般ビル設備工事が順調に進捗し、大幅な増収となりました。電気設備工事業や冷熱機器販売事業も着実に売上を伸ばしており、すべての事業において前年を上回る実績を残しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
空調衛生設備工事業 804億円 944億円
電気設備工事業 25億円 29億円
冷熱機器販売事業 13億円 13億円
その他の事業 1億円 1億円
連結(合計) 842億円 987億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 47億円 121億円
投資CF -2億円 -9億円
財務CF -18億円 -43億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は『「空気と水のテクノロジー」を通じて環境にやさしい生活空間の創造を目指す』、『環境エンジニアリングを中核事業とし、ひろくお客様から「信頼」される企業を目指す』、『人材の育成・教育を重視し働き甲斐のある企業を築き、社会に貢献する』という経営理念を掲げています。環境制御技術を駆使して社会に貢献するとともに、「環境のトータルエンジニアリング」企業として地球環境保全に貢献する活動を行っています。

(2) 企業文化


同社は、すべての事業活動を通じて取引先や地域社会、従業員などのステークホルダーに対して価値を創出し、信頼を獲得していくことで、社会全体と共に持続的に成長していくことを重視しています。ESG(環境、社会、ガバナンス)経営を推進し、企業市民としての責務を果たすとともに広く社会に貢献することを基本方針として掲げ、CSR活動を通じたサステナブルな社会の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期3か年事業計画において、着実な成長と企業価値の向上を目指しています。最終年度となる2027年3月期の目標数値を設定しており、中長期的な視点で持続的な成長を遂げるための具体的なマイルストーンを定めています。

* 売上高:1,000億円
* 経常利益:165億円
* ROE:15%以上
* PBR:2.0倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、急な拡大は求めず、品質の高い仕事を一つひとつ積み上げて着実に成長するよう事業を展開することを基本方針としています。社員教育と採用を含めた人的資本、研究開発、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連、ブランド力向上に積極的に投資し、新たな付加価値を加えることで更なる成長につなげていく戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業の中長期的な成長のために技術力を支える「人材」の存在が欠かせないと考え、「社員教育や採用活動に集中的に投資して人的資本の充実を図る」ことを掲げています。社会のニーズや多様化に対応できる人材を育成することで競争力の強化を図る一方、長時間労働の是正やワーク・ライフ・バランスの推進など、働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 15.4年 10,919,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.2%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 58.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 49.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(63%)、育児休業からの復職率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向による影響


同社の売上高の大半は個別受注による完成工事高であり、官公庁の公共投資予算や民間企業の設備投資動向に大きく影響を受けます。国内外の景気後退により投資意欲が減退した場合、受注が減少するリスクがあります。対策として、保守・メンテナンス需要の積極的な取り込みや、景気動向に大きく影響されないバランスの取れた受注態勢の構築に取り組んでいます。

(2) 原材料の価格高騰と資材の価格変動


工事の着工から竣工までに期間を要するため、見込工事原価を作成してから実際に資材を購入するまでの間に、原材料の価格が高騰した場合、当初予想した利益を確保できなくなるおそれがあります。これに対し、調達本部による全社集中購買でスケールメリットを活かすとともに、資材価格動向を注視し長工期工事の管理を徹底することで対応しています。

(3) 施工中の人的災害および工事災害


産業設備工事や稼働中の工場等でのリニューアル工事において、人的災害や物損事故が発生した場合、工場の操業を止めてしまうおそれや多額の損害賠償責任が生じるリスクがあります。保険によるカバーのほか、全事業所に安全品質保証部門を設置し、定期的なパトロールや検査を実施して災害の撲滅に取り組んでいます。

(4) 施工担当技術者の確保と高齢化


建設業界における少子・高齢化の影響により、熟練労働者の不足や施工人員の不足が生じた場合、技術力や施工能力の低下を招き、受注機会の損失につながるリスクがあります。同社は定年延長や定年後再雇用者の処遇改善により高齢者を有効活用するほか、現役世代の処遇改善や積極的な採用・教育を通じて人材の確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。