#新日本空調転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、新日本空調株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新日本空調ってどんな会社?
空気調和や環境保全設備の設計・施工を中核とし、幅広い分野の環境づくりに貢献するエンジニア集団です。
■(1) 会社概要
1969年に東洋キヤリア工業から工事事業部門が分離独立して設立されました。1990年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1993年に同市場第一部銘柄へ指定されました。その後、中国やスリランカ、シンガポールなどに海外拠点を設立し、2022年には東京証券取引所のプライム市場へ移行しています。
現在、従業員数は連結で1,698名、単体で1,256名です。筆頭株主は新日本空調協和会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 新日本空調協和会 | 8.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.30% |
| 新日本空調従業員持株会 | 4.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長経営企画担当は廣島雅則氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 廣島雅則 | 代表取締役社長経営企画担当 | 1990年同社入社。首都圏事業本部ファシリティソリューションセンター長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 伊藤雅基 | 取締役専務執行役員技術統括担当 | 1990年同社入社。大阪支店長、首都圏事業本部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 井上聖 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1987年同社入社。管理本部人事部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 野田英勝 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1987年同社入社。首都圏事業本部都市施設事業部副事業部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 夏井博史 | 取締役会長 | 1979年同社入社。首都圏事業本部長、代表取締役社長等を歴任し、2024年6月より現職。 |
| 森本利彦 | 取締役監査等委員(常勤) | 1983年同社入社。管理本部経理部長、海外事業統括本部副本部長等を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、村中健一(元大蔵省入省・元横浜税関長)、水野靖史(弁護士)、梅原由美子(Value Frontier代表取締役)、成相明子(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設備工事事業」を展開しています。
■設備工事事業
空気調和、冷暖房、換気、環境保全、温湿度調整、除塵、除菌、給排水、衛生設備、電気設備などの設計・監理ならびに工事請負を行っています。幅広い分野の環境づくりに貢献し、快適な空間の創造だけでなく、省エネルギーや脱炭素化を推進する技術も提供しています。
収益は主に顧客からの設備工事の請負代金から得ています。運営は同社のほか、国内子会社の新日空サービスが施工協力や保全業務を、日宝工業が電気・産業施設設備工事を担っています。海外では中国、香港、シンガポール、スリランカ、ベトナムなどの各子会社が空調設備工事やコンサルティング業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、完成工事高は堅調に拡大を続け、直近では1,549億円に達しています。これに伴い経常利益も右肩上がりで成長し、利益率は6.9%から10.3%へと大きく改善しました。旺盛な建設需要の取り込みと、採算性改善やプロジェクト管理の高度化が利益成長に寄与しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,122億円 | 1,280億円 | 1,377億円 | 1,549億円 |
| 経常利益 | 79億円 | 97億円 | 120億円 | 159億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 7.6% | 8.7% | 10.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 56億円 | 72億円 | 97億円 | 122億円 |
■(2) 損益計算書
完成工事高は前期比で大きく伸長し、売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあり、施工体制の効率化や採算管理の強化が収益性の向上に結びついていることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,377億円 | 1,549億円 |
| 売上総利益 | 220億円 | 272億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.0% | 17.6% |
| 営業利益 | 113億円 | 151億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 9.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が59億円(構成比49%)と最も大きな割合を占め、次いで地代家賃が8億円(同6%)となっています。また、完成工事原価については、外注費が578億円(構成比45%)、材料費が260億円(同20%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは「設備工事事業」の単一セグメントで事業を展開しています。当期はストックビジネスや地域戦略の強化により、大型案件の進捗や旺盛な建設需要を着実に取り込み、売上規模を順調に拡大させました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 設備工事事業 | 1,377億円 | 1,549億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益および有価証券の売却等により資金を確保し、借入金の返済を進める改善局面となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 142億円 | 116億円 |
| 投資CF | 20億円 | 2億円 |
| 財務CF | -102億円 | -52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会と自然の調和を育み、未来へ向けた思いを満たす。(Fill your tomorrow)」を使命として掲げています。人や社会、環境の調和を尊重し、空調を核とする事業を通して顧客や社会からの期待に応えることを目指しています。未来における持続的な企業価値の向上を図るべく、グループ全員で価値観を共有し事業を展開しています。
■(2) 企業文化
「調和」「探究」「真摯」「絆」を価値観として定めています。社会や自然とのつながりを大切にし、豊かな発想力と熱意を持って新たな価値創造に挑む文化があります。また、何事にも強くしなやかに向き合い、職場の仲間や協力会社と成し遂げる喜びを分かち合う「絆」を重視し、誠実な姿勢で仕事に取り組む環境が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2030年を節目とする長期経営方針「SNK Vision 2030」のもと、中期経営計画PhaseIII(2026~2029年度)を推進しています。最終年度である2030年3月期の経営数値目標として、以下の達成を目指しています。
・受注工事高:2,200億円
・完成工事高:2,000億円
・営業利益:240億円(営業利益率12.0%)
・ROE:18%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
健康や脱炭素を統合した価値「カイテキ」の創造を掲げ、デジタルとグリーンを両輪とした戦略を推進します。省エネルギーや資源循環を通じた環境価値の提供、データ連携やAI活用による業務プロセスの最適化に注力します。さらに、成長投資として4年間で300億円規模を投じ、人的資本やデジタル基盤の強化、未来成長領域の創造に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員の成長とエンゲージメント向上を通じて組織の持続的な価値創出を目指しています。採用から育成、配置、定着までを一体と捉え、人材情報の可視化による適材適所の実現や、業務プロセスの標準化による働き方の高度化を進めています。また、挑戦を後押しする環境整備や、学びと伝承が循環する仕組みづくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 15.9年 | 10,943,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 96.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 69.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向と資機材価格の変動
国内外の景気後退や設備投資の減少が生じた場合、受注機会の減少や工事採算の悪化に繋がるリスクがあります。また、エネルギー価格や資機材価格、物流費の高騰が調達コストを押し上げ、工期遅延や収益の低下をもたらす可能性があります。
■(2) 法令・規制変更への対応
建設業法や労働安全衛生法などの各種法令による規制を受けており、これらが改廃された場合には新たな費用負担や事業活動の制約が生じるリスクがあります。コンプライアンス違反が発生した場合、社会的信用の失墜や事業停止に繋がる恐れがあります。
■(3) 新技術開発とイノベーションの遅れ
脱炭素社会の実現やデジタル化に向けて新たな技術開発やイノベーションを推進していますが、先行的な投資が必要となります。想定した成果が得られない場合や、競争環境において技術の陳腐化が生じた場合、将来の成長力や収益性に影響を及ぼす可能性があります。



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