藤田エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤田エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する総合設備工事企業です。建設設備の設計・施工を主軸に、機器販売、メンテナンス、電子部品製造まで多角的に展開しています。直近の業績は、売上高326億円(前期比1.2%増)、経常利益31億円(同33.1%増)と増収増益を達成しており、堅調に推移しています。


※本記事は、藤田エンジニアリング株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤田エンジニアリングってどんな会社?


群馬県を拠点に、空調・給排水・電気などの建築設備工事から産業用機器の販売・保守、電子部品製造までを手掛ける総合エンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


同社は1964年10月に藤田工事として設立され、1986年3月に現在の藤田エンジニアリングへ商号変更しました。2004年12月にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2013年7月には東証JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。その後、市場区分の見直しに伴い、2022年4月に東証スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で610名、単体で252名です。筆頭株主は同社社長の藤田実氏で、第2位は取引先持株会、第3位は同社関連会社で不動産賃貸等を行う日東興産です。経営陣や関連企業、取引先が安定的に株式を保有する構造となっています。

氏名 持株比率
藤田実 25.15%
藤田エンジ取引先持株会 11.51%
日東興産 7.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤田実氏が務めています。社外取締役比率は約14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田実 代表取締役社長 1989年に入社し、取締役、常務を経て2005年より現職。グループ会社の藤田テクノ、藤田ソリューションパートナーズの社長も兼務する。
須藤久実 常務取締役 1989年に入社。経理部長、企画経理本部長、経営管理本部長などを歴任し、2021年より現職。
泉典浩 取締役 1981年に入社。工事部長、工事本部長、技術本部長などを経て、2021年より現職。
北嶋忠継 取締役 1989年に入社。営業部長、営業本部長などを歴任し、2021年より現職。
長素啓 取締役 2001年に入社。工事統括部長を経て、2019年より現職。
小暮春人 取締役 1985年に入社。埼玉支店長、開発営業部長を経て、2021年より現職。


社外取締役は、花崎哲(元群馬銀行常務取締役・ぐんぎんリース社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「機器販売及び情報システム事業」「機器のメンテナンス事業」「電子部品製造事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) 建設事業


オフィスビルや工場などの空調・給排水衛生・電気設備の設計・施工を行います。主な顧客は官公庁や民間企業で、ビル設備工事、産業設備工事、環境設備工事などを手掛けています。

収益は、顧客からの工事請負代金が主な源泉です。運営は主に同社が担当し、海外では子会社のFUJITA ENGINEERING ASIA PTE.LTD.が資産管理を行っています。

(2) 機器販売及び情報システム事業


産業用機器(空調機、ポンプ等)の販売や、情報通信機器の販売・施工、ソフトウェアの開発・販売を行っています。工場やオフィスの生産性向上・効率化を支援するソリューションを提供します。

収益は、機器の販売代金や施工費、システム開発費などが柱です。運営は主に子会社の藤田ソリューションパートナーズが行っています。

(3) 機器のメンテナンス事業


空調設備や給排水設備などの保守・点検、修理、設備の据付工事を行います。設備の長寿命化や省エネ提案などを通じて、顧客の設備環境をサポートします。

収益は、顧客からの保守契約料や修理代金、工事代金などから得ています。運営は主に子会社の藤田テクノが行い、マレーシアではFUJITA TECHNO MALAYSIA SDN.BHD.が事業展開しています。

(4) 電子部品製造事業


電子部品の検査、選別、組立や、関連装置の製造を行っています。半導体市場などの需要に応じた製造受託サービスを提供しています。

収益は、電子部品の加工賃や検査料、装置の販売代金などです。運営は主に子会社の藤田デバイスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は263億円から326億円へと着実に成長しています。特に直近の2025年3月期は、経常利益が31億円を超え、利益率も9.6%に達するなど収益性が向上しています。当期純利益も9億円台から17億円台へと大きく伸長しており、増収増益基調が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 263億円 277億円 272億円 323億円 326億円
経常利益 19億円 20億円 19億円 23億円 31億円
利益率(%) 7.1% 7.4% 7.0% 7.3% 9.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 9億円 9億円 12億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら、売上総利益が大きく増加しており、売上総利益率は15.0%から17.9%へと改善しました。これに伴い営業利益も22億円から30億円へと大幅に増加し、営業利益率は9.0%に達しています。原価管理や採算性の向上が利益拡大に寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 323億円 326億円
売上総利益 48億円 58億円
売上総利益率(%) 15.0% 17.9%
営業利益 22億円 30億円
営業利益率(%) 6.8% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が14億円(構成比48%)、雑費が6億円(同22%)を占めています。売上原価については、PL本体に内訳の記載はありませんが、売上原価率は前期の85.0%から82.1%へ低下しています。

(3) セグメント収益


主力である建設事業は、ビル設備工事の減少により売上は微減しましたが、利益は大幅に増加し収益性が改善しました。機器販売及び情報システム事業、機器のメンテナンス事業はともに増収増益となり、堅調に推移しています。一方、電子部品製造事業は半導体受託加工の減少等により減収となりましたが、利益は確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 187億円 184億円 10億円 17億円 9.4%
機器販売及び情報システム事業 72億円 74億円 3億円 3億円 4.5%
機器のメンテナンス事業 69億円 74億円 6億円 7億円 8.9%
電子部品製造事業 18億円 18億円 1億円 1億円 5.1%
連結(合計) 323億円 326億円 22億円 30億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

藤田エンジニアリングでは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金及び設備資金は内部資金または金融機関からの借入等で調達しています。

同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に契約資産の減少等により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の増加等により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や剰余金の配当の実施等により変動しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 11億円
投資CF -11億円 -8億円
財務CF -5億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは創業以来、「信用・社会貢献・豊かな生活環境づくり」を経営理念に掲げています。インフラ整備や維持、地域活動を通じてステークホルダーの信頼を得るとともに、持続可能な社会構築への貢献と中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は中期経営計画の基本方針などで「Integrity(誠実) & Initiative(主導権)」や「価値創造企業への挑戦と進化」といった姿勢を示しています。また、「藤田グループ行動理念」を定め、全役職員が法令や社会規範を遵守した行動をとるよう周知徹底を図っています。誠実な事業活動とコンプライアンスを重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年から2027年度を対象とする中期経営計画において、以下の財務目標を掲げています。

* ROE:8%以上
* 総還元性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「価値創造企業への挑戦と進化」を基本方針とし、事業基盤の強化、人的資本への投資、DXの推進を重点戦略としています。具体的には、M&A等による事業領域の拡大、労働環境の整備、システム化や生産体制の再構築による業務効率化を進め、収益拡大と競争力向上を目指しています。

* 事業基盤戦略:顧客・地域社会との信頼関係強化、強固な事業基盤の構築
* 人材戦略:人的資本投資(人材育成、処遇改善、従業員エンゲージメント推進)
* DXの推進:生産体制の再構築、業務プロセスの改革、情報基盤の強化
* 企業価値の向上:IRの推進、健全な財務体質維持

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は従業員を企業の持続的発展の基盤と捉え、「人材基盤の強化」を重点目標としています。多様な人材を確保し、個々の能力を最大限に発揮させるため、複線型人事制度や研修制度、資格取得支援を拡充しています。また、オフィスのフリーアドレス化やリフレッシュルームの新設など、コミュニケーション活性化や生産性向上のための環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 15.6年 6,207,873円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設事業の市場環境


同社グループの業績は、建設業界の動向、特に公共投資や民間設備投資の影響を強く受けます。景気後退等によりこれらの投資が縮小した場合、受注環境が悪化し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し同社は、公共・民間工事のバランスを注視し、新規顧客の開拓に努めています。

(2) 資材の調達リスク


工事に必要な管材等の資材において、原材料価格の高騰や供給不足による価格上昇、納品遅延が発生した場合、コスト増大や工程への影響が生じ、業績を下押しするリスクがあります。同社は調達先を適度に分散させることでリスクの低減を図っています。

(3) 取引先の信用リスク


建設業の特性上、請負代金が高額となり、引渡時に代金が支払われるケースが多くあります。そのため、取引先の信用不安により代金回収が困難になった場合、貸倒損失等が発生し業績に影響を与える可能性があります。同社は債権保全のため、継続的な情報収集と分析を行っています。

(4) 人的資本に関わるリスク


人材不足や従業員エンゲージメントの低下、新技術への対応遅れなどは、競争力の低下や事業遂行の障害となる可能性があります。同社は複線型人事制度によるキャリアパスの多様化、研修等の能力開発、DXツールの導入、労働環境の整備などを通じて、人材の確保と育成に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。