髙松コンストラクショングループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

髙松コンストラクショングループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

髙松コンストラクショングループは東京証券取引所プライム市場に上場し、建築事業、土木事業、不動産事業を柱に展開しています。直近の連結業績は、売上高3577億円、経常利益175億円と増収増益を達成しました。特に建築事業と不動産開発に注力し、グループ連携による事業基盤の強化を推進しています。


※本記事は、株式会社髙松コンストラクショングループの有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 髙松コンストラクショングループってどんな会社?


建築・土木・不動産事業をグループ連携で展開する総合建設企業です。

(1) 会社概要


1917年に大阪市で土木建築請負業の髙松組として創業しました。1990年に髙松建設へ商号変更し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2005年に市場第一部へ指定され、2008年に純粋持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。近年は積極的なM&Aによる事業拡大を進めています。

現在の従業員数は連結で5119名、単体で100名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業家や役員が議決権を保有する資産管理会社の三孝社で、第2位は創業者の髙松孝之氏、第3位も創業家の資産管理会社である合同会社孝英社となっています。

氏名 持株比率
三孝社 13.80%
髙松孝之 11.30%
合同会社孝英社 7.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は髙松浩孝氏が務めています。社外取締役比率は26.7%(15名中4名)です。

氏名 役職 主な経歴
髙松浩孝 代表取締役社長(社長執行役員) 2007年同社取締役就任、髙松建設代表取締役副社長等を経て、2023年より現職。
髙松孝年 代表取締役副社長 1998年同社入社、髙松建設代表取締役社長等を経て、2024年より現職。
浅井哲 取締役(副社長執行役員) 1985年協和銀行入行、りそな銀行代表取締役副社長等を経て、2026年より現職。
髙松孝之 取締役名誉会長 1965年同社代表取締役社長就任、代表取締役会長等を経て、2005年より現職。
髙松孝嘉 取締役会長 1990年同社入社、代表取締役副会長等を経て、2024年より現職。
髙松英之 取締役(常務執行役員) 2005年たかまつ屋(現髙松フード・クリエイト)設立、2026年より現職。
望月尚幸 取締役 1987年清水建設入社、日本国土開発取締役副社長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、青山繁弘(元サントリーホールディングス副社長・指名報酬委員長)、中原秀人(元三菱商事副社長)、石橋伸子(弁護士)、濱島健爾(元ウシオ電機社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築事業」「土木事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

建築事業


集合住宅や商業施設、オフィスビル、社寺などの建築工事一式を請け負っています。民間建設投資に支えられた旺盛な需要を背景に、企画・設計から施工、リフォーム、リノベーションに至るまで、建築に関する幅広いサービスをワンストップで提供しています。

収益源は発注者からの建築請負代金や改修工事費などです。運営は髙松建設や青木あすなろ建設を中心に、社寺建築を手がける金剛組や中村社寺、リフォームを担う髙松テクノサービスなどのグループ各社が行っています。

土木事業


国や地方自治体などが発注する道路、橋梁、トンネル、港湾などの社会インフラ整備を担っています。国土強靱化対策に伴う公共土木工事や、民間インフラの整備・保全、さらに埋蔵文化財の発掘調査や海洋土木、地盤改良工事など専門性の高い領域にも対応しています。

収益源は官公庁や民間企業からの土木工事請負代金などです。運営は青木あすなろ建設やみらい建設工業の両事業会社に加え、海洋土木を担う青木マリーン、埋蔵文化財発掘の島田組、地盤改良の東興ジオテックなどが担当しています。

不動産事業


戸建住宅の企画・販売、不動産開発、仲介・売買、総合コンサルティングなどを手がけています。グループのバリューチェーンにおける川上・川下領域の強化を目的とし、都市コミュニティの創生や再生を軸とした自社開発プロジェクトにも積極的に投資しています。

収益源は不動産の販売代金や仲介手数料、賃貸収入などです。運営は戸建住宅事業を担うタカマツハウスや、不動産開発の髙松都市開発、総合コンサルタントの髙松エステート、米国で不動産事業を展開する海外子会社などが行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、建設資金の融資事業や再生可能エネルギーを活用した電気事業などを展開しています。

収益源は融資に伴う利息収入や電力の販売収入などです。運営は日本オーナーズクレジットや北海道札幌蓄電合同会社などのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が堅調に推移し、増収傾向が続いています。経常利益は資材価格の高騰等により一時的に伸び悩む時期もありましたが、直近では利益水準が大幅に改善し、収益性の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2639億円 2825億円 3127億円 3467億円 3577億円
経常利益 115億円 118億円 113億円 106億円 175億円
利益率(%) 4.4% 4.2% 3.6% 3.1% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 12億円 31億円 29億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が大きく拡大し、売上総利益率も改善しています。これに伴い営業利益も大幅な増益を達成しており、本業の稼ぐ力が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3467億円 3577億円
売上総利益 328億円 436億円
売上総利益率(%) 9.5% 12.2%
営業利益 115億円 179億円
営業利益率(%) 3.3% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が153億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が37億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、建築事業が着実に成長し、グループ全体の増収を牽引しています。土木事業や不動産事業も高水準で安定して推移しており、バランスの取れた事業ポートフォリオが構築されています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建築事業 1630億円 1728億円
土木事業 1014億円 1007億円
不動産事業 822億円 841億円
連結(合計) 3467億円 3577億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、本業が赤字(マイナス)でありながらも、将来の成長を見据えて外部からの資金調達により投資を継続する「勝負型」の傾向を示しています。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 51億円 -169億円
投資CF -17億円 -36億円
財務CF 55億円 188億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「建設を通じて社会における相互補完の一翼を担う」ことを経営理念として掲げています。お客様や取引先、株主をはじめとするステークホルダーはもちろん、地域社会を含めたすべての人々に対し、それぞれの事業を通じて高い評価を得ることを目指し、グループトータルの企業価値増大を経営目標としています。

(2) 企業文化


同社は「つながりで響きあい、オンリーワンの価値を生み出す」というグループパーパスのもと、共創による相乗効果を最大限に発揮する組織文化を重視しています。また、より大きく高収益なグループを目指す一方で、不正や不当な手段による社益の追求を排し、浮利を追う利益第一主義に陥らないことを経営の基本姿勢としています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「髙松グループ2030vision」において「循環型・持続型社会インフラの創生に貢献するソリューションの提供」をあるべき姿に定めています。また、中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を推進し、増収増益の達成と資本効率の向上を目指しています。

* 売上高3576億円
* 営業利益178億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存の建設請負を中核に据えつつ、社会課題に対して自ら構想・投資・デザインする事業主体への進化を図ります。具体的には、「都市コミュニティー創生・再生」「サーキュラーエコノミー追求」「デジタルインフラ整備」を軸とした新領域の開拓や、事業ポートフォリオの最適化、グループ連携による事業基盤の再構築を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「トップクラスのホワイト企業への挑戦」を基本的な考え方とし、人材の多様性の確保や社内環境の整備を重要課題に位置づけています。社員一人ひとりの個性と能力を尊重するとともに組織の一体感を高めるため、「人材育成」「働き方改革」「ダイバーシティの推進」「エンゲージメントの向上」「健康経営」の5分野に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.3歳 9.9年 8,976,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※同社単体において対象期間内に育児休業を取得した男性社員が算出不可であったため、または有期雇用労働者が存在しないため、一部の項目は省略されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(62.1%)、エンゲージメントスコア(48.9)、海外人材在籍者数(95人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注環境の変化


世界的な資材価格の高騰やエネルギーコストの上昇、中東情勢による原油供給不安などにより、投資意欲の減退が生じた場合、受注が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は開発事業など収益性の高い事業領域への展開を進め、リスクの低減を図っています。

(2) 建設資材・労務単価の上昇


請負契約の締結後に建設資材価格や労務単価が大幅に上昇し、競争激化により請負金額への転嫁が困難な場合、利益率が低下するリスクがあります。各事業会社を中心に、契約に物価上昇に対応できる条項を含めるなどの対策を進めています。

(3) 建設技術者・技能労働者の不足


建設業界全体で技術者の高齢化や新規入職者の減少が進む中、必要な建設技術者や技能労働者を十分に確保できない場合、施工の遅延等により業績に影響を与える可能性があります。同社は労働環境の改善に取り組み、性別や国籍を問わず多様な人材の採用を推進しています。

(4) 情報セキュリティの脅威


サイバー攻撃や不正アクセスにより主要システムが停止したり、情報漏洩が発生した場合、業務の停止や信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。同社はセキュリティ規程の定期的な見直しや社員教育を通じて、リスクの低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。