東急建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する東急グループのゼネコンです。建設事業(建築および土木)を主力とし、不動産事業なども展開しています。2025年3月期の連結業績は、国内工事の増加等により売上高は前期比で増収となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、東急建設株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東急建設ってどんな会社?


東急グループに属する総合建設会社(ゼネコン)です。建築・土木工事を中核に、不動産事業なども展開しています。

(1) 会社概要


同社の源流は、2003年に設立されたTCホールディングズにあります。同年、旧・東急建設の建設事業部門を承継し、現在の東急建設へと商号変更しました。2011年にはインドネシア、2013年にはミャンマーに現地法人を設立するなど海外展開も推進しています。2022年の東証市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,845名、単体従業員数は2,494名です。筆頭株主は、親会社や兄弟会社との関係を持つ東急グループの中核企業である東急で、14.45%の株式を保有しています。第2位以降は、信託銀行等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
東急 14.45%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.87%
日本カストディ銀行(信託口) 4.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は寺田光宏氏が務めています。なお、取締役会における社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
寺田 光宏 代表取締役社長 1979年同社入社。常務執行役員、土木本部長、取締役専務執行役員、代表取締役副社長執行役員などを経て、2019年6月より現職。
諏訪 嘉彦 代表取締役副社長執行役員経営戦略本部・安全環境本部・価値創造推進室管掌 1980年同社入社。安全環境本部長、住宅事業部長、東急ジオックス代表取締役社長などを経て、2023年6月より現職。
清水 正敏 取締役専務執行役員管理本部・不動産事業部管掌 1982年同社入社。管理本部長、取締役常務執行役員、経営戦略本部長などを経て、2020年4月より現職。
増田 知也 取締役専務執行役員業務統括 1984年同社入社。建築事業本部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2023年6月より現職。
赤田 義宏 取締役常務執行役員土木事業本部長、国際事業部管掌 1984年同社入社。執行役員、常務執行役員などを経て、2023年6月より現職。
柏﨑 和義 取締役 1985年東京急行電鉄(現・東急)入社。東急エージェンシー取締役、東急執行役員などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、恩田勲(元新日本有限責任監査法人常務理事)、吉田可保里(髙木佳子法律事務所弁護士)、腰塚國博(元コニカミノルタ取締役)、綱島勉(元安田信託銀行常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業(建築)」「建設事業(土木)」および「不動産事業等」を展開しています。

(1) 建設事業(建築)


建築工事全般を請け負う事業です。マンション、オフィスビル、商業施設、物流倉庫、工場、医療・福祉施設、教育・研究施設など、多岐にわたる建築物の施工を行っています。顧客は民間企業や官公庁など幅広い層にわたります。

収益は、建築工事の請負代金として顧客から受け取ります。運営は主に同社が担っていますが、子会社の東建産業や東急リニューアル、海外子会社のPT.TOKYU CONSTRUCTION INDONESIAなどが工事および附帯事業を行っています。

(2) 建設事業(土木)


土木工事全般を請け負う事業です。鉄道、道路、トンネル、橋梁、上下水道、造成工事などのインフラ整備を行っています。特に鉄道関連工事に強みを持ち、官公庁および民間企業からの受注に対応しています。

収益は、土木工事の請負代金として顧客から受け取ります。運営は主に同社が担い、海外においては子会社のPT.TOKYU CONSTRUCTION INDONESIAなどが事業を展開しています。

(3) 不動産事業等


不動産の販売や賃貸を行う事業です。また、これに加えてICT関連サービス事業やベンチャー企業への投資事業なども含みます。

収益は、不動産の販売代金や賃貸料、サービス利用料などから得ています。運営は同社が行うほか、子会社の東急リニューアルがICT関連サービスを、大阪消防PFIがPFI事業を、東急建設-GBイノベーション投資事業有限責任組合が投資事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、2025年3月期には2,931億円に達しました。利益面では、2022年3月期に赤字を計上したものの、その後回復し、黒字基調を維持しています。ただし、直近の利益率は3%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,315億円 2,581億円 2,889億円 2,857億円 2,931億円
経常利益 49億円 -51億円 50億円 97億円 97億円
利益率(%) 2.1% -2.0% 1.7% 3.4% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 -75億円 52億円 73億円 66億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりました。売上総利益率は増加しており、本業の収益性は改善傾向にあります。営業利益も増加し、営業利益率は3.0%となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,857億円 2,931億円
売上総利益 261億円 287億円
売上総利益率(%) 9.1% 9.8%
営業利益 82億円 88億円
営業利益率(%) 2.9% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が69億円(構成比35%)、雑費が39億円(同19%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が2,617億円(構成比99%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業(建築)および建設事業(土木)ともに増収増益となりました。特に建設事業(土木)は利益率の改善が見られます。不動産事業等は、売上高が大幅に増加したものの、減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業(建築) 2,156億円 2,197億円 98億円 118億円 5.4%
建設事業(土木) 669億円 685億円 36億円 45億円 6.6%
不動産事業等 32億円 50億円 22億円 15億円 30.0%
調整額 -0億円 -3億円 -75億円 -90億円 -
連結(合計) 2,857億円 2,931億円 82億円 88億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスの状態です。本業で稼いだ資金を、投資および借入金の返済に充てている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -540億円 412億円
投資CF -14億円 -16億円
財務CF 285億円 -319億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業の精神を受け継ぎ、社会課題の解決を強く意識した2030年の企業ビジョン「VISION2030」を掲げています。東急グループの一員として、安心で快適な生活環境を提供し、持続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、東急グループ各社と連携し、安心で快適な生活環境を提供する「東急ブランド」を強固にすることを重視しています。また、人材とデジタル技術を競争優位の源泉と位置づけ、「知の深化」と「知の探索」を実践することで、新たな価値創造に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年度に向けた長期経営計画「To zero, from zero.」を策定し、以下の数値目標を掲げています。

* 2030年度目標
* 連結営業利益:220億円以上(営業利益率5.0%以上)
* 連結ROIC:7.0%以上
* 連結ROE:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つの提供価値を軸に、5つの重点戦略を実行します。国内の土木・建築・リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、既存事業の深掘りと新規分野の開拓を進めます。また、人材とデジタル技術への投資を強化し、競争優位性を構築することで、東急建設ブランドの確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を競争優位の源泉と位置づけ、能力開発と現場力の強化に取り組んでいます。階層別・職種別の教育体系を整備し、若手の早期育成や次世代経営人材の育成を推進しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、女性活躍推進や働き方改革、健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.1歳 18.7年 8,893,212円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.0%
男性育児休業取得率 78.2%
男女賃金差異(全労働者) 65.0%
男女賃金差異(正規雇用) 67.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(19.1%)、従業員エンゲージメント(BB)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設産業の構造変化に関するリスク


技能労働者の不足による供給力低下などが進む中、建設産業の構造変化への対応が遅れた場合、売上高の減少など業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は、協力会社との連携強化や、ICT活用などDXによる生産性向上で対応を進めています。

(2) 従業員の確保に関するリスク


労働人口の減少や人材獲得競争の激化により、従業員の確保が困難となり人員不足に陥った場合、売上高の減少など業績に影響を与える可能性があります。同社は、人材育成の強化やエンゲージメント向上、人事制度改革、ダイバーシティ推進などを通じて人材確保に努めています。

(3) サイバーリスク


サイバー攻撃などによる機密情報の流出やシステム障害が発生した場合、社会的信用の失墜や事業活動の停滞を招き、業績に影響を与える可能性があります。同社は、情報セキュリティ対策の強化や従業員教育の実施により、リスク低減を図っています。

(4) 国際事業の展開に伴うリスク


海外における政治・経済情勢の変化や為替変動、法規制の変更などが生じた場合、売上高の減少など業績に影響を与える可能性があります。同社は、本社機能を含むガバナンスの充実とリスクマネジメントの強化により対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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