東急建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急建設は東京証券取引所プライム市場に上場する東急グループの建設会社です。主に建築工事と土木工事を主力とし、不動産事業も展開しています。直近の業績では、国内土木工事での追加設計変更の獲得などにより完成工事総利益が増加し、増収増益を達成しました。脱炭素やデジタル技術を活用した事業変革を推進しています。


※本記事は、東急建設株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東急建設ってどんな会社?


東急グループの開発事業を担い、建築・土木工事を主力に安心で快適な生活環境を提供する建設会社です。

(1) 会社概要


2003年にTCホールディングズとして設立され、同年10月に旧東急建設の建設事業部門を承継して現在の東急建設に商号変更しました。東建産業等を連結子会社とし、2011年にはインドネシア、2013年にはミャンマーに子会社を設立しています。2020年にINDOCHINE ENGINEERING LIMITEDを完全子会社化するなど、海外展開も推進しています。

同社グループの従業員数は連結で2,911名、単体で2,562名です。筆頭株主は事業会社の東急で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
東急 14.45%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.11%
日本カストディ銀行(信託口) 4.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は寺田光宏氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
寺田光宏 代表取締役社長 1979年東急建設入社。土木本部長や代表取締役副社長執行役員を経て、2019年より現職。
増田知也 代表取締役副社長執行役員価値創造推進室・安全環境本部・技術研究所・建築事業本部・不動産事業部管掌 1984年同社入社。建築事業本部長や専務執行役員等を経て、2026年より現職。
赤田義宏 取締役専務執行役員土木事業本部・国際事業部管掌 1984年同社入社。常務執行役員土木事業本部長等を経て、2026年より現職。
諏訪嘉彦 取締役 1980年同社入社。代表取締役副社長執行役員等を経て、2026年より現職。
清水正敏 取締役 1982年同社入社。経営戦略本部長等を経て、2026年より現職。
柏﨑和義 取締役 1985年東京急行電鉄(現・東急)入社。東急の常務執行役員等を務め、2024年より現職。


社外取締役は、恩田勲(GTM税理士法人代表社員)、吉田可保里(T&Tパートナーズ法律事務所所属弁護士)、綱島勉(元みずほ信託銀行常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業(建築)」「建設事業(土木)」「不動産事業等」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 建設事業(建築)


オフィスビル、商業施設、住宅等の建築工事およびそれに附帯する事業を行っています。同社の建築部門を中心に、東建産業や東急リニューアル等の国内子会社、およびインドネシアやミャンマーの海外子会社が連携して事業を推進しています。

収益は、官公庁や民間企業からの建築工事の請負代金から得ています。運営は主に東急建設が行い、国内外の子会社や関連会社と協力しながら、企画・設計から施工、リニューアルに至るまで一貫したサービスを提供しています。

(2) 建設事業(土木)


鉄道、道路、上下水道等のインフラ整備を中心に、土木工事およびそれに附帯する事業を展開しています。同社の土木部門が主体となり、高度な技術力を活かして国内外でのインフラ開発に貢献しています。

収益は、官公庁や民間企業からの土木工事の請負代金によって構成されています。運営は主に東急建設が行っており、インドネシアやミャンマー等に展開する海外子会社を通じても事業を推進しています。

(3) 不動産事業等


不動産の販売や賃貸事業を展開しています。また、子会社の東急リニューアルがICT関連サービス事業を、大阪消防PFIが施設整備等のPFI事業を行っているほか、ベンチャー企業への投資事業も手掛けています。

収益は、賃貸オフィス等の不動産賃貸収入や販売用不動産の売却代金等から得ています。運営は主に東急建設が行うほか、子会社の東急建設-GBイノベーション投資事業有限責任組合等を通じて多角的な事業展開を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調に推移しており、直近では大型工事の進捗等により大幅な増収となっています。利益面では、資材価格の高騰等により一時的に赤字や減益となる時期がありましたが、直近では工事採算の改善や追加設計変更の獲得により大きく回復し、増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,581億円 2,889億円 2,857億円 2,931億円 3,412億円
経常利益 -51億円 50億円 97億円 97億円 176億円
利益率(%) -2.0% 1.7% 3.4% 3.3% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -75億円 38億円 51億円 39億円 116億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績は、売上高が約16%増加し、売上総利益も順調に拡大しました。国内土木工事における追加設計変更の獲得などが利益を押し上げ、営業利益は前期比で大きく増加し、収益性が大幅に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,931億円 3,412億円
売上総利益 287億円 376億円
売上総利益率(%) 9.8% 11.0%
営業利益 88億円 163億円
営業利益率(%) 3.0% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が74億円(構成比35%)、雑費が40億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


建築事業および土木事業ともに、国内の民間工事や官公庁工事が堅調に推移し増収となりました。利益面では、特に土木工事での追加設計変更の獲得が大きく寄与し、土木事業の利益が倍増して全体の業績を牽引しました。不動産事業等は増収ながら減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業(建築) 2,197億円 2,592億円 118億円 155億円 6.0%
建設事業(土木) 685億円 744億円 45億円 97億円 13.1%
不動産事業等 50億円 76億円 15億円 11億円 14.2%
連結(合計) 2,931億円 3,412億円 88億円 163億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 412億円 69億円
投資CF -16億円 -25億円
財務CF -319億円 54億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「存在理念」「経営理念」「行動理念」の3つからなる「企業理念」を掲げています。社会課題の解決を強く意識した2030年の企業ビジョン「VISION2030」を策定し、安心で快適な生活環境を提供する東急ブランドを強固にしながら、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、経営理念の中で「人を活かす経営」を掲げ、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。従業員一人ひとりが企業のビジョンに共感し、自律的に能力を最大限発揮できる組織文化の醸成を推進しており、互いを認め合い、尊重し合い、挑戦を歓迎する風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2030年度に向けた10カ年の「長期経営計画 “To zero, from zero.”」を策定し、財務・非財務両面での企業価値向上を目指しています。主な2030年度の数値目標は以下の通りです。

* 連結営業利益:220億円以上(利益率5.0%以上)
* 連結ROIC:7.0%以上
* 連結ROE:10.0%以上
* 自己資本比率:45%程度

(4) 成長戦略と重点施策


国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけています。人材とデジタル技術を競争優位の源泉とし、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つの提供価値を軸に事業を展開します。既存事業の深掘りと新規分野の探索を両立させ、東急建設ブランドの訴求と確立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」と「デジタル技術」を競争優位の源泉と位置づけ、事業戦略と連動した人材ポートフォリオの変革を進めています。戦略事業をリードできる専門人材のキャリア採用や社内人材のリスキリングを推進し、多様な人材が最大限の力を発揮できる職場環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.5歳 18.0年 10,277,668円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 102.7%
男女賃金差異(全労働者) 65.6%
男女賃金差異(正規雇用) 67.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.1%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術員採用比率(21.3%)、従業員エンゲージメント(BBB)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動や自然災害

脱炭素社会への移行に向けた国内外の政策・規制強化への対応遅れや、気候変動に伴う風水害、地震等の自然災害により事業拠点や従業員が被災するリスクです。「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を軸とした施策の推進や、BCP(事業継続計画)に基づいた訓練の実施により対応しています。

(2) 建設市場の動向

景気変動による国内建設市場の縮小や、国際情勢による調達環境の不安定化により資材・労務価格が急激に変動するリスクです。イノベーションによる新たな事業領域の拡大や、資材の先行調達、代替工法の提案等を通じて、工事採算の悪化等の影響を低減するよう努めています。

(3) 建設産業の構造変化に関するリスク

技能労働者の減少による供給力の低下や、担い手不足の進行に伴う業界再編など、建設産業の構造変化への対応が遅れるリスクです。協力会社との連携を強化しつつ、ICT活用などDXによる建設生産システムの変革と生産性の向上を推進することで対応しています。

(4) 従業員の確保に関するリスク

労働人口の減少や働き方の多様化が進む中、雇用環境の整備が十分に進まない場合、必要な人材の確保が困難となるリスクです。人事制度改革や働き方改革を推進して魅力を高め、人材育成の強化を通じて従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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