※本記事は、セルソース株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セルソースってどんな会社?
再生医療の産業化を推進するバイオベンチャー。脂肪・血液由来の細胞加工受託や医療機関への法規対応支援などを主力とします。
■(1) 会社概要
2015年に設立され、翌2016年に再生医療センターを開設し「FatBankサービス」等を開始しました。2017年には「再生医療等法規対応サポートサービス」を提供開始。2019年に東証マザーズへ上場し、2023年には東証プライム市場へ区分変更しました。2024年には卵子凍結保管受託サービスを開始しています。
同社グループは連結従業員148名、単体従業員148名の体制です。筆頭株主は代表取締役社長CEOの山川雅之氏で、第2位は山川氏が代表を務めるシリアルインキュベート、第3位は創業者の裙本理人氏となっており、経営陣および創業者が大株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山川 雅之 | 36.19% |
| シリアルインキュベート | 9.59% |
| 裙本 理人 | 6.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは山川雅之氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山川 雅之 | 代表取締役社長CEO | 1993年聖心美容外科クリニック開設。2015年同社設立代表取締役。2024年同社取締役会長を経て、2025年11月より現職。 |
| 伊賀 智洋 | 取締役 | 日本長期信用銀行、KIACON、リヴァンプ等を経て、アマナ取締役CFOを歴任。2024年同社入社。2026年1月より現職。 |
| 雨宮 猛 | 取締役(常勤監査等委員) | 伊藤忠商事、日本オンライン証券(現auカブコム証券)専務執行役CFOを経て、2017年同社入社。2023年1月より現職。 |
社外取締役は、尾﨑恒康(弁護士、元検事)、紙野愛健(公認会計士、税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「再生医療関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 組織・細胞の加工受託・保管サービス
医療機関から委託を受け、患者の血液や脂肪組織を加工・保管するサービスを提供しています。具体的には、血液から多血小板血漿(PRP)を作成・フリーズドライ化する「PFC-FD」加工や、脂肪由来幹細胞の抽出・培養・保管、脂肪組織自体の保管(FatBank)などを行います。
収益は、加工受託作業や配送、細胞・組織の凍結保存および保管延長料として医療機関から受領します。運営は主にセルソースが行っています。
■(2) 医療機関支援サービス
再生医療を提供する医療機関に対し、法規対応や経営管理を支援します。「再生医療等安全性確保法」に基づく提供計画書の作成支援や定期報告書の作成、特定細胞加工物製造届出の支援などを行います。
収益は、計画書等の作成支援や各種助言等の役務提供の対価として医療機関から受領します。運営は主にセルソースおよび子会社のハイブリッドメディカルが行っています。
■(3) 医療機器販売
医療機関が再生医療を円滑に提供できるよう、血液や脂肪等の組織採取に必要な医療機器を販売しています。韓国の医療機器メーカーMedikan Co., Ltd.と国内販売独占契約を締結し、商品の仕入れ・販売を行っています。
収益は、医療機器の販売代金として医療機関から受領します。運営は主にセルソースが行っています。
■(4) 化粧品販売その他
再生医療センターでの研究成果に基づき開発された化粧品ブランド「シグナリフト」や、化粧品原料の販売を行っています。一般消費者向けのBtoC販売と、化粧品販売事業者への原料提供やOEM製造受託を行うBtoBモデルがあります。
収益は、化粧品や原料の販売代金、OEM製造受託費として消費者や事業者から受領します。運営は主にセルソースが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年10月期より連結財務諸表を作成しているため、比較可能な過去の連結数値はありません。当期は売上高37億円、経常利益1.7億円、当期純利益はマイナスとなりました。
| 項目 | 2025年10月期 |
|---|---|
| 売上高 | 37億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.1億円 |
■(2) 損益計算書
当期は連結初年度のため比較対象はありませんが、売上総利益率は56.2%、営業利益率は4.5%となりました。特別損失として現物配当に伴う交換損失などを計上した結果、当期純利益は損失となりました。
| 項目 | 2025年10月期 |
|---|---|
| 売上高 | 37.1億円 |
| 売上総利益 | 20.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.2% |
| 営業利益 | 1.7億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.1億円(構成比31.9%)、賞与引当金繰入額が0.9億円(同4.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス別の売上高を見ると、主力の加工受託サービスが全体の約66%を占めています。当期は主要顧客における受託件数の伸び悩み等により、加工受託サービスや医療機器販売が前期比(単体ベース)で減少しました。
| 区分 | 売上(2025年10月期) |
|---|---|
| 加工受託サービス | 24.5億円 |
| 医療機関支援サービス | 1.8億円 |
| 医療機器販売 | 7.6億円 |
| 化粧品販売その他 | 3.3億円 |
| 連結(合計) | 37.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
セルソースは、営業活動により資金を獲得し、投資活動では一部資金を使用、財務活動でも資金を獲得しました。営業活動による資金獲得は、主に事業活動から得られた利益や、固定資産の減価償却費の計上などが要因です。投資活動では、敷金・保証金の回収による収入があった一方で、関係会社株式の取得による支出がありました。財務活動では、短期借入金の増加や配当金の支払いなどが行われました。
| 項目 | 2025年10月期 |
|---|---|
| 営業CF | 3.3億円 |
| 投資CF | -0.0億円 |
| 財務CF | 0.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Change Our Future(未来を変える)」をパーパス、「Freedom of Life with Medical Revolution(すべての人生に自由を 医療に革命を)」をミッションとして掲げています。具体的には、「高齢化問題」「少子化問題」「財政問題」という3つの社会課題の解決を通じて、社会に新しい価値を創出することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Ideas Into Reality(アイデアを現実へ)」や「Issue Driven(課題ドリブン)」「ZERO-Based Decision(ゼロベースで考える)」など6つのバリューを掲げています。シンプルで明確な思考、リスペクトと楽しさ、そして幸せを追求する姿勢を行動指針としています。
■(3) 経営計画・目標
現在、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標や数値目標は定めていませんが、以下の項目を主要業務係数としてモニタリングしています。今後、業界動向等を勘案し、早期に経営指標および数値目標を決定する予定です。
* 営業利益率
* 再生医療関連事業における加工受託サービス提供先の医療機関数
* 加工受託件数
■(4) 成長戦略と重点施策
「セルソースビジョン」として「膝の痛みに悩む人をゼロへ」を掲げ、再生医療関連事業の拡大を図ります。具体的には、提携医療機関の増加と新たな治療分野の拡大、新規技術開発や共同研究による臨床応用の加速、学会セミナーの展開とアカデミア・医師との共同治験推進などを重点施策としています。また、蓄積されたデータやノウハウを活用した新たな事業展開も目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「HSF経営(人・社会・未来)」を推進し、人財への投資を最重要な経営課題と捉えています。優秀な人材の採用・育成に妥協せず、公平かつ透明性の高い評価制度のもとで積極的な登用を行う方針です。また、多様性の確保や、人材が企業と共に成長できる研修・教育制度の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 37.6歳 | 3.2年 | 6,632,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.8% |
男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」および「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内再生医療市場の拡大と競争
再生医療市場は黎明期であり不確実性が高く、法令変更や治療効果の動向によっては成長が鈍化する可能性があります。また、将来的に保険診療化された場合の価格引下げ圧力や、市場拡大に伴う新規参入による競争激化が、委託費の価格低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 法的規制とコンプライアンス
加工受託サービス等は「再生医療等安全性確保法」等の規制を受けています。法令違反による許可取消や行政処分、社会的信用の失墜等は業績に重大な影響を及ぼします。また、予期せぬ法令の制定・変更による対応コストの増加もリスク要因となります。
■(3) 品質・安全性と生産体制
細胞加工等は特定細胞加工物製造許可を得た施設で行われますが、処理能力を超える需要増への対応遅れや、設備増強費用の増大、専門人材の不足・流出等は事業拡大の支障となり得ます。また、外部委託している化粧品製造における委託先のトラブルも販売機会の損失につながる可能性があります。
■(4) 特定の取引先への依存
売上高の36.5%(2025年10月期)を医療法人社団活寿会グループが占めており、高い依存度となっています。同法人との関係悪化や同法人の経営環境の変化は、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。



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