新日本建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本建設は、東京証券取引所プライム市場に上場し、建築および土木工事を請負う建設事業と、マンションやオフィスビルなどを展開する開発事業を主力とする企業です。直近の業績は完成工事高の増加などにより増収となり、利益面でも利益率の改善により増益と好調な推移を見せています。


※本記事は、新日本建設株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新日本建設ってどんな会社?


新日本建設は、建設事業と開発事業を併せ持つ「自社製販一貫体制」を強みとする総合建設会社です。

(1) 会社概要


1964年に金綱工務店として設立され、主に住宅建築の業務を開始しました。1972年に新日本建設へと商号を変更し、1984年には自社開発の分譲住宅やマンションの販売などに業務を拡張しました。1994年の東京証券取引所市場第二部への上場を経て、2002年には同市場第一部への上場を果たし、総合建設業およびデベロッパーとして事業規模を拡大しています。

現在の従業員数は連結で689名、単体で539名です。筆頭株主は創業者の資産を保有するシンニホンコムで、第2位はユニオンサイト、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
シンニホンコム 33.68%
ユニオンサイト 11.56%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長社長執行役員は髙見克司氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
金綱一男 取締役会長 1964年金綱工務店設立代表取締役社長。1972年新日本建設に商号変更。関係会社各社の代表取締役社長や会長などを歴任し、2019年より現職。
髙見克司 代表取締役社長社長執行役員 1989年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2003年新日本建設入社。管理本部長や建設営業本部長などを経て、2013年より現職。
高橋苗樹 取締役専務執行役員管理本部長兼経営企画室長 1991年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2006年新日本建設入社。経営企画室長や管理本部長を務め、2023年より現職。
金綱康人 取締役専務執行役員開発事業本部長兼不動産開発部長兼横浜支店長 2004年日商岩井不動産(現双日)入社。2007年新日本建設入社。不動産開発部長などを経て、2025年より現職。
木津進 取締役専務執行役員建設営業統括本部副本部長兼第一建設営業本部長兼企画開発部長 1987年新日本建設入社。営業企画部長や企画開発部長などを歴任し、2026年より現職。


社外取締役は、高橋真司(弁護士)、鈴木達也(元千葉市副市長)、大嶋幸児(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「開発事業等」を展開しています。

建設事業


主に建築・土木工事の企画、設計および施工を請負っています。自社や提携工場で製造するコンクリート部材を用いた建築・土木工事や、耐震補強工事などを手掛けており、付加価値の高い企画提案型の営業に注力して受注を確保しています。

収益源は、顧客からの工事請負代金です。運営は主に新日本建設が行うほか、子会社の建研がコンクリート部材を主材とする建築・土木工事などを、新日本コミュニティーがマンションの大規模修繕工事などをそれぞれ担当しています。

開発事業等


土地を取得して自社ブランドのマンションやオフィスビルなどを建設し、分譲または一括譲渡しています。また、保有するオフィスビルの賃貸や、自社関連物件のマンションおよびビル管理、アフターサービスといった不動産関連事業も展開しています。

収益源は、マンションなどの不動産販売代金や物件の賃貸収入、ビル管理の受託手数料などです。事業の運営は主に新日本建設が行い、子会社の新日本コミュニティーがマンションやビルの管理を、新日本不動産が不動産の保有と賃貸を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が一時的な減少を挟みつつも全体として増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益についても毎期安定して増益を達成しており、利益率も13%から15%台の高い水準を維持するなど、着実な成長と優れた収益力を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,071億円 1,137億円 1,335億円 1,317億円 1,384億円
経常利益 156億円 172億円 177億円 184億円 208億円
利益率(%) 14.6% 15.1% 13.2% 14.0% 15.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 108億円 119億円 119億円 124億円 133億円

(2) 損益計算書


売上高は完成工事高の増加などにより前年比で約5%の増収となりました。売上総利益は売上高の増加や利益率の改善により増加し、販売費および一般管理費が微減となった結果、営業利益も堅調に拡大しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,317億円 1,384億円
売上総利益 69億円 99億円
売上総利益率(%) 5.2% 7.2%
営業利益 183億円 204億円
営業利益率(%) 13.9% 14.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が18億円(構成比34%)、広告宣伝費が8億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は、付加価値提案による特命受注の強化や非住宅案件の受注拡大などにより増収となりました。一方、開発事業等は、自社マンションのブランド力強化などを図ったものの、売上高は減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 733億円 836億円
開発事業等 584億円 548億円
連結(合計) 1,317億円 1,384億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いつつ投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 172億円
投資CF -344億円 -76億円
財務CF -37億円 -35億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「建設を通じ社会に貢献することを崇高な使命とする」を経営理念として掲げています。「自主先進の経営」「戦略的経営」「人を育てる経営」を基本スタンスとし、社会構造や顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる、高度なデベロッパー機能を持つ総合建設業として社会からの信頼に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、建設事業と開発事業を併せ持つ独自の「自社製販一貫体制」を基盤に、先見性を持って環境変化に柔軟に対応する企業文化を重視しています。また、時代のニーズに応える技術力や、新たな建設需要を生み出す企画提案型営業など、「価値を創造する力」を最大限に活かして着実に安定成長を追求する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、従来の建設受注産業から建設販売産業への転換を目標としています。企業規模の拡大と組織強化による優れた収益力と強固な財務基盤の構築を通じて、着実に安定成長し、さらなる企業価値の向上を図ることを中長期の経営目標に掲げて事業活動を展開しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、建設事業と開発事業のシナジー効果をさらに拡充するための施策を推進しています。付加価値営業の徹底による特命受注の強化や非住宅の設備投資案件への取り組み強化、好立地に絞った事業用地の仕入、自社ブランドマンションにおける環境配慮設備の標準化促進などに注力し、高品質な商品やサービスの提供を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、経営の基本スタンスの一つである「人を育てる経営」に基づき、人材育成および社内環境整備を推進しています。人材の定着率向上を目標に設定し、各年次や職位に応じた研修制度やOJT、リスキリングなどの学び直しを通じた継続的な育成を行うとともに、多様な人材が活躍できる働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.1歳 12.5年 8,879,186円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 42.9%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 62.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 62.1%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 70.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(17.6%)、女性管理職数(3名)、社員定着率(80.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場における競争激化とコスト上昇


建設業界における市場縮小による競争の激化や、建設労働者の不足、資材価格の急激な上昇と調達難が発生するリスクがあります。これらが顕在化した場合、工事代金の原価上昇や工期の遅れなどが生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は企画提案型の営業や新規協力業者の開拓により、受注および資材の安定確保に努めています。

(2) 不動産市況や経済情勢の変動


開発事業等の属する不動産業界は地価や物件の需給環境の影響を受けやすく、景気悪化や金利上昇などの変化が生じるリスクが存在します。これにより顧客の購買意欲が減退し、棚卸資産の価値下落を招く恐れがあります。同社は需要が堅調な駅近物件の選定や、市場動向に応じた慎重な販売戦略の立案によりリスクの低減を図っています。

(3) 取引先の信用不安による影響


同社グループの発注者や協力業者といった取引先が信用不安に陥るリスクがあります。このリスクが顕在化した場合、工事代金の回収不能や工事の遅延などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は取引先の信用調査を徹底するとともに、代金回収の早期化に努めることで、信用リスクを最小化する活動を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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