新日本建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本建設は東京証券取引所プライム市場に上場し、建設事業と不動産開発事業を主軸に展開する総合建設会社です。第61期は、開発事業等の売上が減少したことで減収となりましたが、利益率の改善により営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも増益を達成しました。


※本記事は、新日本建設株式会社 の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新日本建設ってどんな会社?


建設事業と不動産開発事業を併せ持つ独自のビジネスモデルで、企画から管理まで一貫体制を敷く企業です。

(1) 会社概要


同社は1964年に有限会社金綱工務店として設立され、1972年に現在の商号に変更しました。1994年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2002年には同市場第一部へ銘柄指定されました。2006年には株式会社建研の全株式を取得し子会社化するなど事業基盤を拡大しています。

現在の従業員数は連結660名、単体519名です。筆頭株主は創業者である金綱一男氏の資産管理会社で、第2位も同住所の資産管理会社となっており、安定した株主構成です。第3位には信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社シンニホンコム 33.68%
株式会社ユニオンサイト 11.56%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 6.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は髙見克司氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金綱 一男 取締役会長 1964年金綱工務店設立社長。新日本建設社長を経て、2013年代表取締役会長会長執行役員。2019年より現職。
髙見 克司 代表取締役社長社長執行役員 1989年三和銀行入行。2003年同社入社。管理本部長、常務、副社長を経て2013年より現職。グループ会社社長も兼任。
鈴木 政幸 代表取締役副社長副社長執行役員工事統括管掌兼工事統括本部長兼生産管理本部長施工管理・安全管理・品質管理・工事予算管理・購買統括 1976年同社入社。工事第一部長、常務、専務執行役員を経て2022年代表取締役副社長。2025年より現職。
高橋 苗樹 取締役専務執行役員管理本部長兼経営企画室長総務・人事・財務・法務統括 1991年三和銀行入行。2006年同社入社。執行役員経営企画室長、取締役常務執行役員を経て2023年より現職。
金綱 康人 取締役専務執行役員開発事業本部長兼不動産開発部長兼横浜支店長 2004年日商岩井不動産入社。2007年同社入社。執行役員不動産開発部長、取締役常務執行役員を経て2025年より現職。
木津 進 取締役専務執行役員建設営業本部副本部長兼企画開発部長 1987年同社入社。執行役員営業企画部長、取締役常務執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、高橋真司(弁護士)、鈴木達也(元千葉市副市長)、大嶋幸児(税理士法人大嶋会計代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「開発事業等」事業を展開しています。

建設事業


同社は建築・土木工事の請負、企画、設計および施工を行っています。また、プレキャストコンクリート部材等を用いた建築・土木工事や耐震補強工事、マンションの大規模修繕工事なども手掛けています。

収益は、顧客である発注者からの工事請負代金等から得ています。運営は主に同社が行っているほか、子会社の株式会社建研が特定の建築・土木工事等を、株式会社新日本コミュニティーがマンションの大規模修繕工事等を担当しています。

開発事業等


土地を取得して建物を建設し分譲するマンション事業や、土地・建物の販売を行っています。また、オフィスビルや自社保有物件等の賃貸事業、マンション・ビルの管理受託業務も展開しています。

収益は、不動産の購入者からの販売代金やテナントからの賃貸料、管理組合等からの管理委託料から得ています。運営は同社のほか、株式会社新日本コミュニティーが管理業務を、新日本不動産株式会社が不動産賃貸業務を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりで推移してきましたが、当期は前期比で微減となりました。一方で利益面では、経常利益、当期純利益ともに増加傾向を維持しており、安定した収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,018億円 1,071億円 1,137億円 1,335億円 1,317億円
経常利益 139億円 156億円 172億円 177億円 184億円
利益率(%) 13.7% 14.6% 15.1% 13.2% 14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 93億円 108億円 119億円 119億円 124億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率が改善しています。売上原価の低減や販管費の抑制が寄与し、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,335億円 1,317億円
売上総利益 229億円 236億円
売上総利益率(%) 17.1% 17.9%
営業利益 176億円 183億円
営業利益率(%) 13.2% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が17億円(構成比33%)、広告宣伝費が9億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は、特命受注の強化や非住宅案件への取り組みにより増収増益となりました。一方、開発事業等は売上高が減少しましたが、利益率の改善により増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 714億円 733億円 43億円 51億円 7.0%
開発事業等 621億円 584億円 141億円 142億円 24.4%
その他 - - - - -%
調整額 -1億円 -1億円 -8億円 -10億円 -%
連結(合計) 1,335億円 1,317億円 176億円 183億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を借入金の返済や投資に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 117億円 27億円
投資CF -2億円 -344億円
財務CF -19億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.7%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「建設を通じ社会に貢献することを崇高な使命とする」を経営理念に掲げています。また、「企業文化の創生と共に21世紀日本の新しい建設産業をリードする高資質企業」「建設を通してより豊かな社会創りに貢献する生活総合サポート企業」を経営ビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は、「自主先進の経営」「戦略的経営」「人を育てる経営」を経営の基本スタンスとしています。変化する社会構造や顧客ニーズに柔軟に対応できる、高度なデベロッパー機能を持つ高資質な総合建設業を目指す企業文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、従来の建設受注産業から建設販売産業への転換を目指しています。経営戦略の基本方針として「変化する時代のニーズを捉え、顧客志向に基づいた戦略を徹底」「企業規模の拡大と組織強化による優れた収益力と強固な財務基盤を構築し、企業価値の向上を図る」ことを掲げ、安定成長を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、建設事業と開発事業のシナジー効果の拡充による企業価値向上を目指しています。具体的には、企画開発力・営業力の強化による非住宅設備投資案件への取り組み、自社製販一貫体制の改善による高品質な商品提供、労務不足・資材コスト上昇への対応としてのPC工法や新資材の採用などを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人を育てる経営」を基本目標とし、人材の定着率向上やスキル習得のための研修制度、OJTによる指導を行っています。また、労働者不足への対応や女性活躍推進の観点から、新卒女性採用比率や女性管理職数の目標を設定し、多様な人材が活躍できる環境整備と、新卒・中途採用による優秀な人材の確保を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.8歳 11.9年 8,361,632円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.0%
男女賃金差異(正規雇用) 60.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(14.6%)、女性管理職数(3名)、社員定着率(3年間)(79.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設事業に係るリスク


建設市場の縮小による競争激化、建設労働者や資材価格の上昇・確保難、法令改正等のリスクがあります。これらが顕在化すると、受注減少やコスト増、工期遅延を招き業績に影響する可能性があります。対策として、企画提案型営業や新規協力業者の開拓を行っています。

(2) 開発事業に係るリスク


地価動向や景気、金利上昇等の影響を受けやすく、顧客の購買意欲減退や棚卸資産の価値下落が発生するリスクがあります。これに備え、駅近等の好立地物件の選定や、市況に応じた慎重な販売戦略の検討を行っています。

(3) 取引先の信用リスク


発注者や協力業者の信用不安により、工事代金の回収不能や工事遅延が発生するリスクがあります。これに対し、取引先の信用調査の徹底や代金回収の早期化に努め、リスク低減を図っています。

(4) オペレーショナルリスク


法令違反や不正、システム障害等により、資産の毀損や社会的信用の低下を招くリスクがあります。法務室によるリスク管理、監査室による内部監査、情報セキュリティ強化等、内部統制の拡充によりリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

【面接対策】新日本建設の中途採用面接では何を聞かれるのか

マンションから銀行、学校まで多様な施工実績を持つ新日本建設への転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。