昭和産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和産業は東京証券取引所プライム市場に上場し、小麦粉、植物油、糖化製品などの食品および飼料の製造販売を主力事業とする企業です。2026年3月期は、適正価格での販売や生産拠点の運用最適化などにより、売上高が前期比微増、経常利益も増加し増収増益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、昭和産業株式会社の有価証券報告書(第125期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昭和産業ってどんな会社?


小麦粉や植物油、糖化製品、配合飼料などの製造販売を手がける穀物ソリューションカンパニーです。

(1) 会社概要


同社は1936年に肥料や小麦粉、植物油脂などの製造販売を目的に創立されました。1949年に東京証券取引所市場第一部に上場し、1953年には販売網形成のため昭産商事を設立しました。近年では2020年にボーソー油脂へ資本参加し、2024年にはベトナムに子会社を設立するなど国内外で事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で2,927名、単体で1,295名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業提携先である伊藤忠商事で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には同じく事業会社の三井物産が名を連ねており、大手商社との強固な関係性がうかがえる資本構成となっています。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 7.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.40%
三井物産(常任代理人日本カストディ銀行) 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は塚越英行氏が務めており、社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
塚越英行 代表取締役社長執行役員 1992年入社。経営企画部長などを経て2021年取締役常務執行役員。2023年より現職。
新妻一彦 取締役会長 1981年入社。広域営業本部長、製粉部長などを経て2016年代表取締役社長。2026年より現職。
鈴木孝明 取締役専務執行役員事業・営業部門統轄 1990年入社。広域営業部長などを経て2025年専務執行役員。2025年より現職。
山口龍也 取締役 1984年入社。食品部長などを経て2018年取締役常務執行役員。2026年より現職。
大野正史 取締役 1987年入社。船橋工場長などを経て2022年取締役常務執行役員。2026年より現職。
細井義泰 取締役 1985年入社。情報システム部長などを経て2023年取締役常務執行役員。2026年より現職。


社外取締役は、三上直子(元シーボン代表取締役副社長)、柄澤彰(元農林水産省政策統括官)、平真美(税理士法人パートナー)、手島俊裕(元損害保険ジャパン日本興亜取締役常務執行役員)、菅生譲二(元千葉銀行取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」「飼料事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 食品事業


小麦粉やプレミックス等の製粉製品、植物油等の製油製品、糖化製品およびコーンスターチ等の糖質製品を製造販売しています。そのほか、冷凍食品や中華まんじゅう、コンビニエンスストア向けのパン類の製造販売なども手がけ、幅広い顧客のニーズに応える食のソリューションを提供しています。

収益は主にこれら製品の販売代金から得ています。同社が製品の製造販売を行うほか、昭産商事が同社製品を購入して販売しています。製粉では奥本製粉や木田製粉、製油ではボーソー油脂や辻製油、糖質では敷島スターチやサンエイ糖化などがそれぞれ製造販売を担い、グループ各社が強みを生かして事業を展開しています。

(2) 飼料事業


畜産農家などに向けて配合飼料の製造および販売を行っています。また、鶏卵の洗卵・選別による販売や、その他の畜産物の販売も展開しており、飼料原料の調達から畜産物の生産、販売までを連携させた独自のビジネスモデルを通じて畜産分野をサポートしています。

収益は配合飼料や鶏卵などの畜産物の販売代金から得ています。同社が配合飼料の生産を委託して販売し、昭産商事が同社製品を購入して販売を担っています。また、九州昭和産業が配合飼料の製造販売や畜産物等の販売を行い、昭和鶏卵が鶏卵の販売を手がけるなど、グループ企業が地域や専門性に応じて事業を運営しています。

(3) その他


同社グループで取り扱う穀物や冷凍食品などの荷役および保管を行う倉庫業を展開しています。また、所有する建物や商業施設、オフィスビルなどを活用した不動産の賃貸事業も行っており、グループの経営基盤を支える多角的な事業運営を実施しています。

収益は倉庫の荷役・保管料や不動産の賃貸料などから得ています。同社や鹿島サイロ、志布志サイロが穀物の荷役および保管を担い、ショウレイが冷凍食品等の保管を行っています。また、不動産の賃貸事業については、同社および昭産開発が運営の主体となって収益基盤の安定化に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は原材料価格の高騰を背景とした販売価格の改定などにより増加傾向にあり、堅調に推移しています。経常利益についても、生産拠点の運用最適化や付加価値商品の拡販効果などにより、一時的な落ち込みから回復し、安定した収益力を維持していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2876億円 3351億円 3464億円 3344億円 3354億円
経常利益 66億円 65億円 166億円 136億円 145億円
利益率(%) 2.3% 1.9% 4.8% 4.1% 4.3%
当期利益 23億円 67億円 76億円 78億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、徹底したコスト削減やグループ一体となった生産の効率化が進んだことで、売上総利益および営業利益ともに増加しています。コスト変動を適切に販売価格へ転嫁しつつ、基盤事業の収益力を強化していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3344億円 3354億円
売上総利益 571億円 598億円
売上総利益率(%) 17.1% 17.8%
営業利益 111億円 119億円
営業利益率(%) 3.3% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が191億円(構成比40%)、社員給料が66億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の食品事業は業務用パスタや業務用の油脂が好調だったものの、家庭用小麦粉の減少などにより微減となりました。一方、飼料事業は鶏卵の相場が堅調に推移したことで増収となり、全社的な安定に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品事業 2735億円 2718億円
飼料事業 562億円 587億円
その他 47億円 48億円
連結(合計) 3344億円 3354億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業で創出した資金で積極的な設備投資を行うとともに借入金の返済を進める、優良企業に特有の「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 203億円 180億円
投資CF -114億円 -125億円
財務CF -101億円 -40億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「ひと粒の可能性から、価値をひろげ、日々の幸せを共につくる。」です。大地の恵みである小麦、大豆、菜種、トウモロコシなどの穀物を余すところなく活用し、皆様の食生活を豊かにするという創立以来の社会的使命に基づき、穀物と人の無限の可能性を追求して未来に続く幸せを創出することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、持続的成長および企業価値向上に向けて大切にすべき価値観や行動を示した行動指針として、「誠実。」「本質。」「共助。」「打破。」「研鑽。」の5つを定めています。この新たな羅針盤のもと組織文化を変革し、創立100周年とその先も社会全体に寄り添い、選ばれ続ける企業グループとなることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


創立100周年を迎える2035年度のありたい姿「SHOWA VISION 2035」の実現に向け、「中期経営計画26-29」を策定しています。最適な資源配分を通じて企業価値の最大化とPBR1倍以上を目指し、ROIC(投下資本利益率)経営を推進しています。

・ROE:8.0%
・ROIC:6.0%
・営業利益:140億円
・営業利益率:4.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、ROICを基に事業ポートフォリオを再定義しています。「戦略的価値創出領域」としてバイオ燃料等の次世代エネルギーや機能性素材の育成を進めるほか、製粉や製油などの「付加価値創出領域・コア領域」では、製造拠点の最適化やソリューション提案により基盤収益力の強化と海外展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を企業の持続的成長を支える最も重要な経営資本と位置づけ、人財ビジョン「支え合い、自ら考え、挑戦する人財」を掲げています。「思いやり×挑戦」文化の醸成、自律的な成長を促すキャリアオーナーシップの実現、およびデータに基づく最適な配置を行うグループ人財マネジメントの高度化を3つの柱として戦略的投資を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 16.7年 7,613,715円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 76.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 47.0%


※男性育児休業取得率については、取得の対象となる従業員がいなかったため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(50.9)、リスキル投資額(2.4倍)、プレゼンティーズム(64.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料穀物の調達コスト変動


小麦、大豆、菜種、トウモロコシ等の主要原料は海外からの調達が中心であり、国際的な穀物市況、為替変動、海上運賃の影響を強く受けます。急激な高騰は製造原価を押し上げるため、同社は調達地域の分散化や為替予約の活用、適正な販売価格への転嫁を進めて収益性の維持に努めています。

(2) 国内市場の縮小と競争激化


日本国内における人口減少および少子高齢化の進行に伴い、中長期的な国内需要の低下が懸念されます。同社はターゲット業態ごとの提案型営業の強化や付加価値商品の拡販により収益力の強化を図るとともに、ASEAN地域を中心に海外市場への展開を加速させ、成長の取り込みを推進しています。

(3) 製品安全における信用失墜


同社は「食品の安全・安心3原則」を定め、国際基準を取り入れた統合的なマネジメントシステムを運用しています。しかし、万が一、健康被害や製品回収等の予期せぬ事態が発生した場合、費用の発生や売上高の減少を招くとともに、社会的信用が失墜することで中長期的な業績悪化につながる可能性があります。

(4) 物流課題による供給停滞とコスト増


「物流の2024年問題」として、ドライバーの時間外労働規制等による運送能力の不足が懸念されています。これにより原材料の調達や製品の供給が滞る恐れがあるほか、物流コストの上昇が想定されます。同社は積載効率の向上や荷待ち時間の短縮に取り組み、物流事業者と連携して持続可能な物流の実現に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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