昭和産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和産業は東京証券取引所プライム市場に上場する総合食品メーカーです。小麦粉、植物油、糖化製品などの「食品事業」と、配合飼料などの「飼料事業」を二本柱としています。直近の業績は、販売数量の一部回復が見られたものの、製品価格改定の影響などにより、減収減益となりました。


※本記事は、昭和産業株式会社 の有価証券報告書(第124期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昭和産業ってどんな会社?


昭和産業は、小麦、大豆、菜種、トウモロコシ等の穀物を加工し、食品や飼料として提供する「穀物ソリューション・カンパニー」です。

(1) 会社概要


1936年に肥料、小麦粉、植物油脂等の製造販売を目的として設立され、その後、飼料や糖化製品等の事業を開始しました。1949年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たします。1980年代以降、飼料や冷凍食品、製パン、鶏卵などの関連会社を設立または資本参加し、事業領域を拡大しました。2024年にはベトナムに現地法人を設立するなど、海外展開も進めています。

連結従業員数は2,861名、単体では1,303名です。筆頭株主は総合商社の伊藤忠商事であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は地方銀行の千葉銀行となっています。商社や金融機関、取引先持株会などが上位を占めており、安定した株主構成といえます。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 7.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.30%
千葉銀行 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長執行役員は塚越英行氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
新妻 一彦 代表取締役会長 1981年入社。広域営業本部長、製粉部長等を歴任。2016年代表取締役社長に就任し、2023年4月より現職。
塚越 英行 代表取締役社長執行役員 1992年入社。福岡支店長、経営企画部長等を歴任。常務執行役員を経て、2023年4月より現職。
山口 龍也 取締役常務執行役員 1984年入社。札幌支店長、食品部長等を経て、2018年6月より現職。ビジネスプランニング部や各事業部を担当。
大野 正史 取締役常務執行役員 1987年入社。船橋工場長を経て、2022年6月より現職。テクニカル部門を統轄。
細井 義泰 取締役常務執行役員 1985年入社。事業開発部長、情報システム部長等を歴任。2023年6月より現職。コーポレート部門を統轄。


社外取締役は、三上直子(元シーボン代表取締役副社長)、平真美(税理士法人早川・平会計パートナー)、手島俊裕(元損害保険ジャパン日本興亜取締役常務執行役員)、菅生譲二(ちばぎんリース取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」、「飼料事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


製粉カテゴリ(小麦粉、プレミックス等)、製油カテゴリ(植物油等)、糖質カテゴリ(糖化製品、コーンスターチ等)で構成され、食品加工メーカーや外食産業、一般消費者向けに製品を提供しています。これらに加え、パスタや冷凍食品なども取り扱っています。

食品事業の収益は、主に顧客への製品販売代金から得ています。運営は、製粉・製油・糖質事業を行う昭和産業を中心に、製粉では奥本製粉や木田製粉、製油ではボーソー油脂、糖質では敷島スターチやサンエイ糖化などの連結子会社等が担っています。

(2) 飼料事業


配合飼料の製造販売および鶏卵の販売を行っています。畜産農家などを主要顧客とし、家畜の成長や生産性向上に寄与する製品を提供しています。

収益は、配合飼料や鶏卵などの販売代金から得ています。運営は、昭和産業が配合飼料の販売を行うほか、九州昭和産業が配合飼料の製造販売を、昭和鶏卵などが鶏卵の販売を行っています。

(3) その他


穀物の荷役・保管を行う倉庫業、不動産の賃貸事業、運輸業、保険代理業などを含みます。食品・飼料事業を支えるインフラ機能や、保有資産を活用した事業を展開しています。

収益は、倉庫保管料や荷役料、不動産賃貸料などから得ています。運営は、昭和産業のほか、鹿島サイロなどのサイロ会社、ショウレイ(倉庫業)、昭産開発(不動産賃貸)などのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第123期まで増加傾向にありましたが、当期(第124期)は減少に転じました。利益面では、原材料価格変動やコスト上昇の影響を受けつつも、第123期に大きく伸長しましたが、当期は減益となっています。売上高営業利益率は3~4%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,560億円 2,876億円 3,351億円 3,464億円 3,344億円
経常利益 92億円 66億円 65億円 166億円 136億円
利益率(%) 3.6% 2.3% 1.9% 4.8% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 101億円 40億円 78億円 124億円 116億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高は減少しましたが、売上総利益は微増しています。これはコスト管理や適正価格での販売に努めた結果と考えられますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,464億円 3,344億円
売上総利益 569億円 571億円
売上総利益率(%) 16.4% 17.1%
営業利益 131億円 111億円
営業利益率(%) 3.8% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が184億円(構成比40.1%)、社員給料が64億円(同14.0%)を占めています。物流コストの負担が大きい構造となっています。

(3) セグメント収益


食品事業は、販売数量の一部回復が見られたものの、価格改定や家庭用製品の販売減などにより減収減益となりました。飼料事業は、販売数量は増加しましたが、原料価格下落に伴う販売価格の低下により減収減益となりました。その他事業は増収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品事業 2,823億円 2,735億円 110億円 110億円 4.0%
飼料事業 595億円 562億円 7億円 5億円 0.9%
その他 46億円 47億円 13億円 14億円 30.2%
調整額 - - -17億円 -18億円 -
連結(合計) 3,464億円 3,344億円 131億円 111億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は「健全型」です。本業でしっかり現金を稼ぎ出し(営業CFプラス)、将来のための投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済や株主還元を進めている(財務CFマイナス)状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 238億円 203億円
投資CF -124億円 -114億円
財務CF -94億円 -101億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%でプライム市場平均(9.4%)とほぼ同水準からやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.8%で市場平均(非製造業24.2%・製造業46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」ことをグループ経営理念として掲げています。穀物を小麦粉、植物油、糖化製品などに加工し、「食」を通じて社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「穀物ソリューション・カンパニー」として、複合系シナジーソリューションを進化させると共に、ESG視点での取り組みも強化しています。また、「SHOWAの“SHIN-KA”宣言」を掲げ、穀物ソリューションの「進化」、素材の「真価」の追求、サステナビリティ経営の「深化」に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度のありたい姿「SHOWA Next Stage for 2025」の実現に向け、「中期経営計画23-25」を推進しています。最終年度である2025年度の数値目標として以下を掲げています。

* 連結経常利益:130億円
* ROE:7.0%以上
* ROIC:4.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画23-25」では、基盤事業の強化、事業領域の拡大、環境負荷の低減、プラットフォームの再構築、ステークホルダーエンゲージメントの強化の5つの基本戦略を掲げています。具体的には、ワンストップ型営業組織への変革、海外事業や冷凍食品事業の拡大、植物性食材の新ブランド展開、環境配慮型製品の開発などを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「課題解決力の深化」と「イノベーションの促進」を人財育成のコンセプトとし、次世代リーダーの育成や、イノベーションを牽引する人財のための職位「P等級」を設けています。また、「D&Iのドラスティックな推進」を掲げ、多様な人財が能力を発揮できる環境整備や健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均(763万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 15.8年 7,721,812円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 86.2%
男女賃金差異(全労働者) 76.4%
男女賃金差異(正規雇用) 80.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 44.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リスキル投資額(2倍以上(2021年度比))、障がい者雇用率(2.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料穀物調達リスク


主要原料である小麦、大豆等は主に海外から調達しているため、穀物相場、為替相場、海上輸送運賃の変動の影響を強く受けます。これらが急激に高騰した場合、製品原価が上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として製品価格への転嫁や為替予約等を行っています。

(2) 製品安全リスク


食品の安全性に対する意識の高まりや規制強化の中で、食品安全・品質マネジメントシステムを運用していますが、万が一、製品の安全性に懸念が生じた場合、製品回収コストの発生や社会的信用の低下により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 気候変動リスク


気候変動による自然災害や気温上昇は、穀物の収量減少や品質悪化を引き起こし、原料調達コストの増加や製品供給の不安定化につながる可能性があります。同社はTCFD提言への賛同を表明し、シナリオ分析や環境目標の設定を通じて対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。