フジ日本 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ日本 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジ日本は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、精製糖や砂糖関連製品を扱う糖類事業、イヌリン等の食品添加物や天然添加物素材を扱う機能性素材事業、不動産賃貸事業を展開しています。直近の連結業績は、インバウンド需要の増加や機能性食品素材の国内外での販売好調に支えられ、増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、フジ日本株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジ日本ってどんな会社?


精製糖事業からスタートし、現在は機能性素材を強化するフードサイエンスカンパニーへと進化しています。

(1) 会社概要


1949年に輸入粗糖を原料とする精製糖製造および販売を目的に設立されました。1961年に株式を上場し、2001年にフジ製糖と合併してフジ日本精糖へと商号を変更しました。その後、2022年に東証スタンダード市場へ移行し、2024年に現在のフジ日本へと商号を変更して、新規事業や海外展開を推進しています。

従業員数は連結で254名、単体で70名です。筆頭株主は総合商社の双日で、第2位に和田製糖、第3位に物流・エネルギー関連事業を展開する鈴与が名を連ねています。

氏名 持株比率
双日 31.78%
和田製糖 9.57%
鈴与 7.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は曾我英俊が務めています。取締役5名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
曾我英俊 代表取締役社長 1981年日商岩井(現双日)入社。同社食料事業部部長、双日食料代表取締役社長などを経て、2023年6月より現職。
谷津裕司 取締役 1991年PIAA入社。1999年同社入社。砂糖本部副本部長、フジ日本商事代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、髙橋明彦(鈴与代表取締役副社長)、埴原正和(双日リテール・コンシューマーサービス本部担当顧問)、大越いづみ(東宝取締役監査等委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「糖類」「機能性素材」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

糖類


精製糖および砂糖関連製品の製造販売を行っており、菓子メーカーや外食産業等の顧客に向けて安定的な製品供給を行っています。また、一部の国産原料糖の仕入れや精製糖の販売にも取り組んでいます。

製品の販売収益が主な収益源です。製造については同社および太平洋製糖などに委託し、販売や仕入れは同社や子会社のフジ日本商事が行っています。

機能性素材


イヌリンを中心とした機能性食品素材、ペクチンやゼラチン等の天然添加物素材、果汁や香料のほか、プラントベーストミートなどの製造販売および仕入販売を行っています。

食品メーカーなどへの製品販売および仕入販売から収益を得ています。運営は同社をはじめ、ユニテックフーズ、Tastable、タイや韓国の現地法人などが幅広く担当しています。

不動産


自社で所有する土地や建物の賃貸管理およびその他の不動産関連事業を展開しています。安定的な収益確保のための不動産活用が行われています。

テナントからの賃貸収入が主な収益源です。事業の運営は同社が主体となって行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、切花活力剤「キープ・フラワー」の製造販売事業を展開しています。

製品の販売から収益を得ており、同社が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けています。経常利益および当期利益についても、原材料高などのコスト上昇圧力がありながらも、国内外での販売強化や事業の多角化効果により、順調な拡大傾向を示しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 227億円 259億円 282億円 284億円
経常利益 21億円 32億円 37億円 38億円
利益率(%) 9.4% 12.4% 12.9% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 18億円 18億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高の微増に対して売上総利益および営業利益が着実に増加しています。付加価値の高い機能性素材事業の成長や、徹底したコスト削減の取り組みが利益率の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 282億円 284億円
売上総利益 76億円 82億円
売上総利益率(%) 27.0% 28.7%
営業利益 32億円 36億円
営業利益率(%) 11.5% 12.5%


販売費及び一般管理費(合計46億円)のうち、給料手当が10億円(構成比21.5%)、運賃が9億円(同19.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、糖類事業はインバウンド需要等があったものの全体として微減となりました。一方、機能性素材事業はイヌリン等の販売数量拡大により堅調に伸長し、全体業績の底上げを牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
糖類 138億円 134億円
機能性素材 135億円 141億円
不動産 7億円 6億円
その他 3億円 2億円
連結(合計) 282億円 284億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業としての健全なキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%であり、いずれもスタンダード市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 33億円 32億円
投資CF -15億円 -17億円
財務CF -4億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、『夢のあるたくましい会社』を目指し、健康な生活づくりに貢献します。」という企業理念のもと、食文化による豊かな生活づくりを通じて社会に貢献し、会社の価値を高めることを基本方針としています。また、「食を科学し世界をパワフルに!」というパーパスを制定し、フードサイエンス技術による新たな価値創造を目指しています。

(2) 企業文化


人間尊重を基本とした企業文化の形成を重視しています。会社の発展と共に社員が成長する企業文化の形成を目指し、多様な人材が意欲をもって活躍できる活力のある組織の構築や、公正で透明性のある企業活動の推進を基本方針に据えて経営を行っています。

(3) 経営計画・目標


2040年までの長期ビジョン「NEXT VISION 2040」の達成に向けて、5ヶ年単位の中期経営計画を策定しています。第1期となる「CHANGE 2028」では“攻めへの転換”をスローガンとして掲げ、グループ全体の成長を示す経営指標として「経常利益」に重点を置いています。また、経営効率、株主還元、財務の安定性を図る指標をそれぞれ重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


糖類事業の安定収益を維持しつつ、将来の中核となる新規事業や新製品を開発する投資、海外事業の展開を積極的に進めます。不透明な事業環境に対して盤石な財務基盤を維持しながら、フードサイエンス領域の拡大やM&Aを軸とした成長分野への投資に注力していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」は「財」であるという認識のもと、競争力の源泉として人材育成を行っています。多様な人材が意欲をもって活躍できる活力ある組織構築を進め、次世代の経営人材やグローバル人材の計画的な輩出に注力しています。また、働き方改革を通じて従業員満足度の向上と定着を促進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 12.4年 8,759,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 28.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率目標(70%)、コンプライアンス研修受講率(100%)、給与総額に対する福利厚生費・研修費の割合目標(4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 農業制度の影響


糖類事業は「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等の法令に基づいて事業を行っており、政府の国内農業政策や各国の貿易政策の変更が業績に影響を与える可能性があります。同社は業界団体に加盟し、適切な情報収集や勉強会を通じて対応を図っています。

(2) 国内市場での消費環境の変化


国内市場において少子高齢化の進行や食への志向の変化に伴う消費者の購買行動の変化など、市場が想定外の規模で変化した場合、国内で食料品の製造販売を中心に事業活動をしている同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 生産拠点の集約と製造物責任


精製糖の生産を他の製造会社に委託しているため、委託先におけるトラブルや災害による操業停止が製品供給に支障をきたすリスクがあります。また、製品の品質問題による製造物責任を問われるリスクにも留意し、保険加入等で対応しています。

(4) 原糖価格および為替の変動


原料糖の大半を海外からの輸入に依存しているため、原糖市況や海上運賃、為替相場の変動により仕入価格が上昇し、収益に影響を及ぼすリスクがあります。為替変動に対しては為替予約によるヘッジを行うなどの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。