井村屋グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

井村屋グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

井村屋グループは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、「あずきバー」等の冷菓や和菓子を中心とする流通事業と、調味料事業を展開しています。直近の業績は、冷菓や菓子カテゴリーが好調に推移した結果、増収増益となり、売上高および各段階利益ともに過去最高を更新しています。


※本記事は、井村屋グループの有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 井村屋グループってどんな会社?


菓子や冷菓を中心とした流通事業と調味料事業を展開する食品メーカーです。

(1) 会社概要


1896年に和菓子の製造から始まり、1947年に井村屋として法人化しました。1962年の「ゆであずき」、1964年の「肉まん・あんまん」、1973年の「あずきバー」などロングセラー商品を次々と発売しました。2010年に持株会社制へ移行し、現在の体制となりました。直近では海外事業も強化しています。

従業員数は連結で964名、単体で51名です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位は地方銀行となっています。安定した事業基盤と地域金融機関との強固な関係性を背景に、国内だけでなくグローバルな市場展開にも積極的に取り組んでいます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.00%
三十三銀行 4.93%
百五銀行 4.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性4名の計16名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)最高執行責任者(COO)は大西安樹氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大西安樹 代表取締役社長最高経営責任者(CEO)最高執行責任者(COO) 1982年4月同社入社。IMURAYA MALAYSIA SDN. BHD.代表取締役会長等を経て、2025年4月より現職。
冨永治郎 代表取締役副社長最高財務責任者(CFO) 1991年4月同社入社。専務取締役や取締役副社長等を経て、2025年4月より現職。
岩本康 取締役副社長 1986年4月同社入社。経営戦略部長や専務取締役等を経て、2021年4月より現職。
甲斐下方俊 常務取締役 2018年9月同社入社。IMURAYA USA, INC. CEO/COO等を経て、2025年4月より現職。
中島伸子 取締役取締役会議長(COB) 1978年11月同社入社。代表取締役社長や代表取締役会長等を経て、2025年6月より現職。
田中穣治 取締役 1991年4月同社入社。井村屋専務取締役等を経て、2025年6月より現職。
中野憲一 取締役 1990年4月同社入社。井村屋(北京)食品有限公司総経理等を経て、2025年6月より現職。
井村慎 取締役 1997年4月同社入社。IMURAYA MALAYSIA SDN. BHD. Managing Director等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、田中里沙(学校法人先端教育機構事業構想大学院大学学長)、福谷朋子(久屋大通法律事務所設立)、田中洋(中央大学名誉教授)、廣田恵子(元三重県副知事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「流通事業」、「調味料事業」および「その他」事業を展開しています。

流通事業


同事業は、菓子、食品、デイリーチルド、点心・デリ、冷菓、スイーツ、日本酒の製造および販売を行っており、一般消費者や量販店などを顧客としています。主力商品の「あずきバー」や「肉まん・あんまん」などのブランド力と製造技術を活かし、付加価値の高い商品を幅広く提供しています。

収益は、量販店等を通じた製品の販売代金から得ています。運営は主に井村屋が行うほか、製造の一部を井村屋フーズに委託しています。海外では、米国のIMURAYA USA, INC.や中国の井村屋(北京)食品有限公司、マレーシアのIMURAYA MALAYSIA SDN. BHD.などが展開しています。

調味料事業


同事業は、天然調味料、栄養食品、発酵調味料、液体調味料の製造および販売を行っており、主に食品メーカーや外食産業などの法人顧客向けに素材を提供しています。顧客のニーズに合わせた機能性素材を用いたOEM商品の開発・提案にも積極的に取り組んでいます。

収益は、調味料や食品添加物の販売代金および製造受託費から得ています。運営は主に井村屋フーズが行っており、各種調味料素材を製造・販売しています。中国では、井村屋(大連)食品有限公司が粉末調味料の製造や井村屋フーズの製造受託を行い、北京京日井村屋食品有限公司が販売を行っています。

その他事業


同事業は、不動産の賃貸・管理業およびリース代理業などを展開しています。自社所有の土地を活用した不動産賃貸のほか、賃貸住宅の管理や新規事業の企画・事業化支援などを通じて、グループ全体の持続的な成長と経営基盤の強化をサポートしています。

収益は、不動産賃貸収入やリース料、経営管理料などから得ています。運営は、イムラがリース代理業や賃貸住宅の管理業務を行い、井村屋グループが自社所有地の不動産賃貸を営んでいます。また、井村屋スタートアッププランニングが新規事業の総合的な支援を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで成長を続けています。主力商品を中心とした販売強化や価格改定の浸透、生産性向上の取り組みが奏功し、利益率も着実に改善しています。安定した事業基盤のもと、過去最高の業績を更新し続けている状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 422億円 447億円 482億円 511億円 537億円
経常利益 21億円 23億円 29億円 32億円 35億円
利益率(%) 4.9% 5.1% 6.0% 6.2% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 16億円 19億円 22億円 24億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。原材料価格や物流費の高騰といった外部環境の逆風があるものの、価格改定や生産効率の改善により、一定の利益水準と利益率を維持・向上させています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 511億円 537億円
売上総利益 178億円 186億円
売上総利益率(%) 34.8% 34.6%
営業利益 30億円 32億円
営業利益率(%) 5.9% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が47億円(構成比31%)、給料手当が25億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


流通事業は、冷菓カテゴリーにおいて過去最高の売上本数を記録したほか、菓子や食品カテゴリーも好調に推移し、増収を牽引しました。調味料事業も機能性素材を用いたOEM商品の販売が伸長し、全セグメントにおいて前年を上回る売上高を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
流通事業 465億円 489億円
調味料事業 44億円 46億円
その他 2億円 2億円
連結(合計) 511億円 537億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


積極型:営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 61億円 38億円
投資CF -18億円 -52億円
財務CF -41億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「おいしい!の笑顔をつくる」をパーパスに掲げ、ステークホルダーや多様な食、自然環境を大切にしています。顧客、従業員、取引先、社会、地球という「5つの笑顔」を方針とし、「不易流行」の考え方のもと、「特色経営」を磨くことで、社会から必要とされるグループ企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社の行動指針である「井村屋グループクレド」では、「私たち一人ひとりが挑み、成長し続け、ステークホルダーの皆さまと共に『笑顔をつくる人』を目指そう」という人財ビジョンを掲げています。独創的な楽しい商品とすぐれたサービスの提供を通じて、個人と企業が着実に成長する環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、SDGsのゴールでもある2030年を見据えた成長戦略と経営基盤の強化を図るため、中期経営計画「Value Innovation 2026(新価値創造)」に取り組んでいます。最終年度(2026年度)の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高 550億円
* 営業利益 33億円
* 海外事業売上高比率 8.8%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、顧客志向と特色ある価値創造を追求し、社会から共感される企業を目指しています。主力事業では生産能力を高める新工場の建設や付加価値の高い商品開発機能を強化します。海外事業においては、北米での現地生産商品の販売強化や中国・ASEAN市場での販路拡大を進め、グローバルな事業成長を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はダイバーシティを推進し、多様な働き方に柔軟に対応する「人材の人財化」を進めています。外国人やキャリア(中途)採用、定年退職者の再雇用など、国籍・性別に関係なく人材を採用しています。また、多様な教育制度を通じて従業員一人ひとりの成長をサポートし、誰もが活躍できる仕組みの構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 13.8年 6,412,709円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 63.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気象状況及び原材料価格との関連


同社の流通事業は季節商品の占める割合が高く、異常気象や異常気温の影響を受けやすい構造にあります。また、小豆や砂糖などの農作物由来の主要原材料は市況の変動による価格高騰リスクがあり、仕入先との連携強化やグローバルな調達先の選定を通じて対策を図っています。

(2) 特定の販売先への高い依存度


「肉まん・あんまん」などの加温製品はコンビニエンスストアを主要な販売先としています。販売先の事業方針や営業施策に変更が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、様々なカテゴリー展開によるポートフォリオの分散や、新規販路の開拓を進めています。

(3) 製品の安心安全性


食品を提供する企業として、製品の品質クレームやトラブルによる風評拡大は業績に悪影響を与えるリスクがあります。これを防ぐため、国際的な食品安全管理システム認証「FSSC22000」を取得し、品質基準の徹底や生産履歴の明確化など、品質保証体制の継続的な強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。