※本記事は、株式会社井村屋グループの有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 井村屋グループってどんな会社?
あずきバーや肉まん・あんまんで知られる老舗菓子・食品メーカー。持株会社制のもと多角的な事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1896年に井村和蔵が菓子製造を開始し、1947年に株式会社井村屋を設立しました。1961年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、1997年には東京証券取引所市場第二部に上場しました。2010年に持株会社制へ移行し、井村屋グループ株式会社へ商号変更しました。2017年には東証および名証の市場第一部(現プライム・プレミア市場)に指定されています。
連結従業員数は952名、単体では50名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は株式会社三十三銀行、第3位は株式会社百五銀行となっており、地域の金融機関が上位株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.11% |
| 株式会社三十三銀行 | 4.93% |
| 株式会社百五銀行 | 4.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性4名の計16名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)最高執行責任者(COO)は大西安樹氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西安樹 | 代表取締役社長最高経営責任者(CEO)最高執行責任者(COO) | 1982年入社。経営企画室長、IMURAYA USA, INC. CEO/COO等を経て2016年社長就任。2025年4月より現職。 |
| 冨永治郎 | 代表取締役副社長最高財務責任者(CFO) | 1991年入社。財務部長、専務取締役CFO等を経て2025年4月より現職。井村屋フーズ会長を兼任。 |
| 岩本康 | 取締役副社長 | 1986年入社。経営戦略部長、専務取締役等を経て2021年4月より現職。井村屋社長を兼任。 |
| 中島伸子 | 取締役取締役会議長(COB) | 1978年入社。代表取締役社長COO、代表取締役会長CEO等を経て2025年6月より現職。 |
| 甲斐下方俊 | 常務取締役 | 2018年入社。IMURAYA USA, INC. CEO/COO等を経て2025年4月より現職。 |
| 田中穣治 | 取締役 | 1991年入社。井村屋マーケティング本部長、専務取締役等を経て2025年6月より現職。 |
| 中野憲一 | 取締役 | 1990年入社。井村屋常務取締役、生産本部長等を経て2025年6月より現職。 |
| 井村慎 | 取締役 | 1997年入社。井村屋スタートアッププランニング常務取締役等を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、田中里沙(学校法人先端教育機構事業構想大学院大学学長)、福谷朋子(弁護士)、田中洋(中央大学名誉教授)、廣田恵子(元三重県副知事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「流通事業」「調味料事業」および「その他」事業を展開しています。
■流通事業
菓子(ようかん、カステラ等)、食品、デイリーチルド(豆腐等)、点心・デリ(肉まん・あんまん)、冷菓(あずきバー等)、スイーツ、酒類の製造販売およびレストラン運営を行っています。日本国内のほか、米国や中国、マレーシアなどグローバルに展開しており、一般消費者や量販店等が主な顧客です。
主な収益は、製品や商品の販売による代金です。運営は主に井村屋、井村屋フーズ、IMURAYA USA, INC.、井村屋(北京)食品有限公司などが行っています。
■調味料事業
天然調味料、粉末調味料、発酵調味料、液体調味料などの各種調味料素材の製造販売を行っています。食品メーカーや外食産業などが主な顧客となります。
主な収益は、調味料製品の販売代金や受託加工料などです。運営は主に井村屋フーズ、北京京日井村屋食品有限公司、井村屋(大連)食品有限公司などが行っています。
■その他事業
不動産の賃貸・管理業、リース代理業、中国事業の管理・支援、新規事業の企画・支援などを行っています。
主な収益は、不動産賃貸料やリース料、経営管理料などです。運営はイムラ、井村屋グループ、井村屋(北京)企業管理有限公司、井村屋スタートアッププランニングなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、直近では500億円を突破しました。利益面においても、経常利益は増加基調を維持しており、利益率も改善傾向にあります。当期純利益も堅調に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 422億円 | 422億円 | 447億円 | 482億円 | 511億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 21億円 | 23億円 | 29億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 4.9% | 5.1% | 6.0% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 7億円 | 11億円 | 22億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は上昇しており、収益性が向上しています。営業利益および営業利益率についても前年を上回る水準で推移しており、本業の収益力が強化されています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 482億円 | 511億円 |
| 売上総利益 | 163億円 | 178億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.8% | 34.8% |
| 営業利益 | 25億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が48億円(構成比32%)、給料手当が24億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の流通事業が増収となり、全体を牽引しました。調味料事業も堅調に売上を伸ばしています。その他事業も微増となりました。全体として各セグメントともに売上高は前年を上回っています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 流通事業 | 437億円 | 465億円 |
| 調味料事業 | 42億円 | 44億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 482億円 | 511億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 61億円 |
| 投資CF | -35億円 | -18億円 |
| 財務CF | 5億円 | -41億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「おいしい!の笑顔をつくる」というミッションを掲げています。また、ビジョンとして「Be always for Customers!」、パッションとして「イノベーション(革新)」を掲げ、お客様に満足いただける商品・サービスを提供し、社会から「よい会社」として信頼される企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
「不易流行」の考え方のもと、「特色経営」を磨くことを重視しています。変えてはいけない根本を大切にしながらも、変化する外部環境に対して独創的な楽しい商品と優れたサービスの提供を通じて、社会から必要とされるグループ企業を目指すという文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2030年を見据えた成長戦略の実行と経営基盤の強化を図るため、中期経営計画「Value Innovation 2026(新価値創造)」に取り組んでいます。最終年度である2026年度の数値目標は以下の通りです。
* 売上高:550億円
* 営業利益:33億円(売上高営業利益率 6.0%)
* 海外事業売上高比率:8.8%
■(4) 成長戦略と重点施策
「おいしい!の笑顔をつくる」ために顧客志向を追求し、特色ある価値創造企業を目指しています。「あずきバー」シリーズの販売強化や新工場の建設、冷凍和菓子の育成、海外事業の拡大などを重点施策としています。また、コスト面では生産性向上やDX推進によるイノベーション活動に取り組みます。
* 売上高:525億円(次期見通し)
* 営業利益:30.5億円(次期見通し)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ダイバーシティを推進し、多様な働き方に柔軟に対応する「人材の人財化」を進めています。国籍・性別等に関係なく人材を採用し、女性の活躍推進や外国人・中途採用者の登用を行っています。「井村屋グループクレド」に基づき、個人と企業の成長に向けた環境づくりに取り組み、多様な教育制度で従業員の成長をサポートしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.4歳 | 13.2年 | 6,022,490円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.2% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気象状況及び原材料価格との関連
流通事業における製品は季節商品の割合が高く、異常気象や異常気温の影響を受けることがあります。また、主要原料である小豆・砂糖などの農作物由来の原料は市況の影響を特に受けやすく、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の販売先への高い依存度
加温製品である「肉まん・あんまん」の主要な販売先はコンビニエンスストアであり、同社グループも大手コンビニエンスストア数社に対して販売を行っています。そのため、これら販売先の事業方針や営業施策等に変更があった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食の安全性に係るリスク
食を提供する企業として、原材料の検査体制の充実や生産履歴の明確化、FSSC22000の取得など、安全性と品質管理に最大限の努力を払っています。しかし、偶発的な事由によるものを含め製品事故が発生した場合や、取り組みの範囲を超える事態が発生した場合には、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。



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