亀田製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

亀田製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 プライム市場に上場する同社は、国内トップクラスのシェアを誇る「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」などを展開する米菓事業に加え、海外事業や食品事業も手掛けています。当連結会計年度の業績は、売上高1,033億円(前期比8.1%増)、経常利益69億円(同1.7%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、亀田製菓株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 亀田製菓ってどんな会社?


国内米菓市場で圧倒的な地位を築き、グローバル・フード・カンパニーを目指して海外や食品事業も拡大中です。

(1) 会社概要


同社は1957年に設立され、現亀田工場にて米菓の製造を開始しました。1984年に新潟証券取引所へ上場し、2012年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。2000年代以降は海外展開を加速し、米国やアジア各国に子会社を設立しています。また、2013年には尾西食品を子会社化して長期保存食分野を強化するなど、米菓以外の食品事業への多角化も推進しています。

同社グループは連結従業員4,090名、単体1,418名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は株式会社エイケイで、第2位はKAMEDA共栄会、第3位は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)です。上位株主には創業家関連と見られる法人や従業員持株会が含まれており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
株式会社エイケイ 9.96%
KAMEDA共栄会 8.78%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役会長 CEOにはジュネジャ・レカ・ラジュ氏、代表取締役社長 COOには髙木政紀氏が就任しています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
ジュネジャ・レカ・ラジュ 代表取締役会長 CEO 太陽化学、ロート製薬を経て2020年に同社代表取締役副社長に就任。2022年6月より現職。研究開発や海外事業の経験を持つ。
髙木政紀 代表取締役社長 COO 1990年同社入社。白根工場長、総務部長、業務改革チーム部長、営業本部長などを歴任し、2022年6月より現職。
小林章 専務取締役 CFO 1984年同社入社。経営企画部長、業務推進部長、米菓事業グループ生産本部長、管理本部長などを歴任。2025年4月より現職。
古泉直子 常務取締役サステナビリティ担当 1998年同社入社。商品開発本部長、お米研究所長などを歴任。グループ会社・ダイバーシティ担当を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、三宅峰三郎(元キユーピー代表取締役社長)、伊藤好生(元松下電器産業代表取締役副社長)、金井孝行(元西本WismettacHD社長)、井植敏雅(元三洋電機代表取締役社長)、尚山勝男(元アサヒグループ食品社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内米菓事業」「海外事業」「食品事業」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 国内米菓


国内において米菓の製造販売を行っています。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店を通じて一般消費者に商品を届けています。「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」などの主力ブランドを展開し、百貨店向けや土産物用商品も取り扱っています。

収益は、小売業者や卸売業者への製品販売による対価です。運営は主に亀田製菓が行っているほか、アジカル、とよす、日新製菓などの連結子会社や、関連会社のマスヤが製造販売を担っています。

(2) 海外


海外市場において米菓の製造販売を行っています。北米やアジア地域(タイ、ベトナム、中国、カンボジアなど)を中心に事業を展開しており、現地の嗜好に合わせた商品開発や販売を行っています。グルテンフリー製品などの健康志向に対応した商品も提供しています。

収益は、現地の小売業者や代理店への製品販売による対価です。運営は、米国のKAMEDA USA, INC.やMary's Gone Crackers, Inc.、タイのTHAI KAMEDA CO., LTD.、中国の青島亀田食品有限公司などの海外現地法人が担っています。

(3) 食品


長期保存食、植物性乳酸菌、米粉パンおよびプラントベースフード等の製造販売を行っています。防災備蓄用のアルファ米製品や、アレルギー対応食品、健康機能性食品など、社会的課題に対応した付加価値の高い食品を提供しています。

収益は、官公庁、企業、一般消費者等への製品販売による対価です。運営は、長期保存食を手掛ける尾西食品、米粉パンのタイナイ、プラントベースフードのマイセンおよびマイセンファインフードなどの子会社に加え、亀田製菓本体も関与しています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、主に貨物運送業などを展開しています。グループ内外の物流業務を担い、効率的な配送体制を構築しています。

収益は、荷主からの運送料収入などです。運営は、新潟輸送、亀田トランスポート、エヌ.エイ.エスなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は変動がありつつも増加傾向にあり、当期は1,000億円の大台を回復しました。経常利益は60億円台後半で推移しており、比較的安定した利益水準を維持しています。一方、当期利益については年度ごとの変動が見られ、特に前期は損失を計上しましたが、当期は黒字回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,033億円 852億円 950億円 955億円 1,033億円
経常利益 69億円 61億円 52億円 68億円 69億円
利益率(%) 6.7% 7.1% 5.5% 7.1% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 34億円 11億円 -5億円 35億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。これは価格改定や生産効率化等の取り組みが寄与していると考えられます。営業利益率は5%台を回復し、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 955億円 1,033億円
売上総利益 258億円 281億円
売上総利益率(%) 27.0% 27.2%
営業利益 45億円 55億円
営業利益率(%) 4.7% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が54億円(構成比24.1%)、保管配送費が53億円(同23.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。主力の国内米菓事業は堅調に推移し、海外事業と食品事業は2桁増収と成長を牽引しています。利益面では、海外事業が黒字化を達成し、食品事業も大幅な増益となりました。国内米菓事業も増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内米菓 663億円 697億円 43億円 44億円 6.4%
海外 151億円 172億円 -4億円 1億円 0.8%
食品 73億円 91億円 2億円 7億円 7.2%
その他 69億円 72億円 4億円 2億円 3.5%
調整額 -億円 -億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 955億円 1,033億円 45億円 55億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得たキャッシュを投資活動へ回しており、財務活動による支出も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。本業で稼いだ資金で投資と借入返済を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 97億円 94億円
投資CF -81億円 -78億円
財務CF -13億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%で市場平均(製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ、健やかなライフスタイルに貢献する「Better For You」をパーパス(存在意義)としています。また、お米の可能性を最大限引き出し、世界で新価値・新市場を創造する「Rice Innovation Company」をビジョン(目指す姿)として掲げています。

(2) 企業文化


創業以来の価値観として「創業の心」「社是」「経営理念」「経営基本方針」を継承しつつ、新たなバリュー(価値観・行動指針)として「Kameda’s Craftsmanship」を定義しています。これは、「Full of Humanity(人と自然を愛する気持ちを大切に)」「Be Professional(最高のアイデアと技術をこめる)」「Enjoy the Challenge(新しい挑戦を楽しむ)」から構成されます。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた中長期の事業構想に基づき、2026年度までに安定的な収益体質への転換(最高益)を目指しています。これを基盤として、拡大戦略による高収益の成長を図る計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


「ライスイノベーションカンパニー」の実現に向けて、国内米菓事業では独自価値の追求によるキャッシュ創出力の向上を図り、海外事業と食品事業を成長エンジンと位置付けています。海外や食品事業への先行投資や技術移転を進め、将来的にはアセットライトで高収益なビジネスモデルへの転換を目指します。また、構造改革による早期の収益基盤立て直しを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人、自然、社会を思いやる気持ちを大切に、最高のアイデアと技術で、挑戦や価値創造を楽しめる人材集団」を目指しています。このために「事業基盤を支える人材の育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「従業員の心と体の健康経営」を重要課題として特定し、中長期成長戦略と連動した人材戦略を実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 18.4年 5,636,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規) 71.2%
男女賃金差異(非正規) 54.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料及び商品の安全


原材料や製造工程のトラブルによる生産活動の停止や、それに起因する製品回収・販売中止が発生するリスクがあります。これに対し、品質保証委員会を中心とした体制強化や国際規格「FSSC22000」の取得などの対策を講じています。

(2) 情報セキュリティ


災害等によるシステム障害やサイバー攻撃、ウイルス感染による情報漏洩・改ざん等のリスクがあります。各種規程の整備、外部評価の実施、定期的な研修などを通じて対策を行っています。

(3) 自然災害、パンデミック、大規模な事故


経営インフラが新潟県下越地方に集中しているため、地震等の自然災害や大規模事故による生産・販売拠点の喪失リスクがあります。危機管理マニュアルやBCP(事業継続計画)の策定、耐震補強、安否確認システムの導入などで備えています。

(4) 環境


気候変動への対応が重要な経営課題となっており、これに対する適切な対応が求められています。リスク管理委員会でのモニタリングやTCFD提言への賛同などを通じて、環境リスクへの対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

亀田製菓の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

亀田製菓の2026年3月期3Q決算は、北米事業の連結化により売上高が前年比34.9%増と急拡大。国内も価格改定で収益性が大幅改善。「なぜ今亀田製菓なのか?」、北米戦略の再構築や食品事業のキャパシティ拡大など、転職希望者がどの事業でどんな役割を担えるのかを整理します。